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![]() フェイのバランス ( 19981025 ) 待望のフェイ・ウォンの新作がリリースされた。EMI移籍第二弾で、彼女が母親になって初めてのアルバムだ。 母親になったからといって、B級ハリウッド映画に出演してから国際女優気どりの日本の元アイドル歌手のように、アルバムでいきなり親バカぶりを恥ずかしげもなくさらけ出すようなフェイではない。 もちろん彼女自身の作詞・作曲によって2人の子供にささげられた曲がアルバムの最後に入っている(「チャイルド」)。しかし、赤ん坊の声は引用されているものの、ほとんどサンプリング素材に近いクールな扱い方で、上述の某歌手のようにベタベタのバラードでもなんでもない。 16ビートの細かいリズムで、イントロからメロディー部分への大胆な転調でアッと言わせるコズミックサウンドなのだ。子供への愛情とアーチストとしての妥協のない音楽づくりが見事に両立している。 ミーハーなトーンで続けさせてもらえば、母親になったとは思えないのは、この新作のジャケット写真である。『天空』のドレッドヘアーに比べれば軟化したと言えるのかもしれないが、鼻から両頬にピンクのファンデーションを濃くぬっているのが、鼻ペチャの彼女に似合いすぎて、個人的には今までのジャケットの中では『ANXIETY』を抜いて一番のお気に入りになった。 これを引き延ばしたポスターでもあれば部屋に貼ってず〜っと眺めていたいくらいだ(興味のある方は、HMVやタワーレコードなど、大きなレコード屋のAsian Popのコーナーに行って是非チェックして欲しい)。 もちろん母親になったからといって保守化するというのは性差別的な偏見以外の何ものでもなく、新作も非常にバランスのよいアルバムになっている。バランスが良いという意味は、メロディアスなポップスもあれば、上述の「チャイルド」のような斬新な音もあるということだ。 そしてアルバムの10曲を聴いてみれば、彼女自身の作曲による楽曲がむしろアーティスティックな音になっており、他のソングライターによる作品がむしろポップスの王道を行っている点が興味深い。 1曲目の彼女独特のファルセットや、2曲目のクライマックスの音の厚み、7曲目のリズムのインド色の強さ、そして上述の「チャイルド」も含めて、彼女が作曲した楽曲は、他の典型的なポップスに比べてやや収まりが悪いくらいにクリエイティブである。 このバランス感覚は、今回の新作の良さでもあると同時に欠点でもある。仮に全曲彼女自身が作曲すれば、こう言っては語弊があるかもしれないが、日本のマーケットでも通用するアルバムに仕上がるに違いない。 このバランスの良さ=「ふっきれなさ」というのが、フェイ・ウォンの置かれている中国という環境の限界なのかもしれない。 このアルバムのライナーノーツでも触れられているように、中国という環境の中では彼女は相当エキセントリックな存在である。しかし日本にいる僕がこの新作を聴くと、彼女が本当は作りたいはずの音をもっと聴きたい!という欲求不満を感じずにはいられない。 いつか日本でもニューヨークでもロンドンでもどこでもいいのだが、フェイ・ウォンが納得のいくまで自分の才能を出しきったアルバムを作ることが出来れば、ビョークも真っ青の作品が完成するに違いない!(そう言えば彼女の意思の強そうな眉と、ぺちゃんこの鼻や少女っぽい口元のアンバランスさは、ビョークを連想させなくもない) そういう日はいつやってくるだろうか? 無断転載禁止
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