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![]() 音もなく近づく足音 ( 19980331 ) 大学時代の友人から、下記のようなメールをもらった。そのまま掲載するには不適切な内容なので、いくらかの脚色を加えてみた。 「自分で言うのもなんだけれど、僕は一見鈍感なようでいて、空気の微妙な変化を察知する能力にはたけている(察知しても行動を起こすまでの時間がかかるのが、自分の欠点だという認識はあるけれども)。最近、仕事をしていて感じるのは、空気が変わっているということではなく、空気が変わらなさすぎる、ということだ。 昨今の不況で97年度についてはどの企業も厳しい決算見込みを発表している。僕の所属する会社も、幸い経常赤字転落には到らなかったが、バブル絶頂期に比較して20分の1という、ほとんどゼロ利益に近い状態にまで追い込まれている。 さまざまなメディアで言われているとおり、この不況は戦後日本が体験した不況の中でも最悪のもののひとつで、構造的な変革がなされない限り景気回復はないだろうと、先週の英『エコノミスト』誌も、「ジャパン・パズル」と題した特集で大変厳しい見方をしている。 にもかかわらず、だ。僕の働いている会社もよほど「大企業病」が進行してしまっているのか、職場には、自分の会社がほとんど利益ゼロの水準にあるということから当然生まれていいはずの緊張感のかけらもない。まるで、自分の会社の決算予測が、他の会社のそれであるかのようなのだ。 僕自身、入社した頃と変わらず緊張感のない職場で一日を過ごしていると、あたかも自分の会社が業界で一人勝ちしている超優良企業なのかという錯覚に陥る。実際はその逆で、きっと業績が厳しくなっているにもかかわらず緊張感がないからこそ、僕の会社は業績が悪くなったのだ。 もちろん、やたらと社員の不安感をあおってもかえってモラールが低下するだけなので、職場の明るい雰囲気というのは必要だ。しかし問題は職場の雰囲気ではなく、仕事の進め方そのものだ。これだけ業績が悪化しても、仕事の中身や方向修正のペースがまったく変わっていないというのは信じ難い。 バブル期には多少ルーズなコスト管理をしていても、予算オーバーの暁には「ごめんなさい」と謝ればなんとかなっただろう。バブル崩壊後も、会社が利益を出している限りは、そうした対応も許容範囲だったのだろう。 しかし、ほとんどゼロに近い水準にまで経常利益が落ち込んでいるのに、この予算管理の杜撰さは何だろうと思う。どの職場でも最優先課題になるのは、間接費削減をねらった経営計画の見直しのはずだ。今までののんびりしたやり方が骨身に染みついてしまって、敏捷な動きが取れなくなっているのだ。 ふつう経営計画の見直しは、経理部門からブレークダウンされて、各部門別にノルマが与えられ、各部門は何をおいても予算の削減目標をクリアするための計画修正を最優先事項に取り組まねばならない。 にもかかわらず同僚の話しによると、ある部門では、今までどおりに計画を進めるばかりか、より多くの要求をその計画に盛り込もうという、まったく逆方向の努力を続け、誰が見ても最終的な総コストが膨らむのは分かっているのに、計画を進行するに任せているという。 いったいこれはどういうことだろうか?自分たちの首が切られてもやむを得ない経営状況なのだから、一刻も早く軌道修正をして計画の抜本的な見直しをすべきであるのに、まるで今までのように最後の最後に「ごめんなさい」と謝ればそれで許されるかのような「お気楽な」雰囲気で事が運んでいく。 この経営的な面での緊張感のなさは一体何なのだ?いや、きっと経営幹部はその厳しさを痛感しているに違いない。ところが一人ひとりの社員に、自分も経営の一翼を担っており、自分の使っているお金は、ますます少なくなる一方の会社のお金だというリアルな自覚が欠けているのだ。個々人に経営的な視点がなさすぎるのだ。 ある会社では新入社員に、昨年度の営業実績と今年度の経営計画が書かれた分厚い資料を一冊わたして、自分が経営の一翼を担っているのだという責任感を持たせるという。ところが、大企業病の進行した会社では、数値は幹部だけが知っていればよく、一般の社員は今までどおりに、与えられた自分の仕事のことだけを考えて一生懸命やっていればよい、というやり方になっている。 本当にこれでいいのか?僕は最近不安でたまらないのだが、この不安感を共有してくれそうな同僚は、上述の一人をのぞいてまったく存在しない。彼も、彼の部署の課長や部長が、何かがおかしいとは思わないのだろうか、不思議で仕方ないという。 確かに与えられた仕事に没入することは大事なことだが、それは、巨視的な観点で、つまり、会社全体の利益や理念といったより大きな考え方に適合しているかどうか、常にチェックされなければならない。 そのような自己チェック機能が麻痺したとき、企業は本当に赤字に転落して、そのまま浮上できなくなるのではないか。その意味では僕は、まだ赤字転落を免れている自分の会社は救われていると思うし、まだ復活の可能性はあると思う。 ただ残念なのは、僕が「全社の業績」などと言い出すと煙たがられるだけの、一担当者でしかないということだ。」 彼の不安は、どの企業の担当者レベルの社員も共有できるのではないか?と僕は考えるのだが...。 無断転載禁止
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