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![]() 中小企業のための社内SE採用戦略 ( 20050406 ) 生意気と思われることを承知で書くのだが、過去の転職活動でいろいろな会社の社内SEの面接を受けさせて頂くなかで、「こうすれば長期間定着してくれる良い人材が採用できるのになぁ」と感じることがたびたびあった。 ユーザ企業側の社内SEと、ベンダー企業側のSEのもっとも大きな違いは、社内SEはその会社独特の事情を、時間をかけて理解する必要があるという点だ。良い社内SEがいなければ、社内ユーザと社外のベンダー側SEの橋わたしが機能しなくなる。ひいては良い社内ITが構築できなくなる。その意味で社内SEはできるだけ長く勤続するのが望ましい。このことは社内SEを採用しようとしている各社の人事担当者もよく分かっているはずだ。 ところが中小企業の場合、採用担当者がIT業界の事情に疎いことが多い。そのためSEという「人種」が、自分のキャリアについて一般的にどういう考えを持っているかを分かっていない。 そんな中小企業の採用担当者に、自分はIT業界やSEという人種について疎いという認識があれば、求人広告の代理店をつかうのはやめた方がいい。そうではなく、転職仲介業者を活用して、どうすれば望みの社内SEが採用できるかを相談した方が、最後には良い人材が得られるはずだ。しかし小さな会社はおうおうにして高額な仲介手数料を嫌い、求人広告の代理店から、広告スペースだけを買う方法をとることが多い。 小さな会社が出しがちな、明らかに無理のある社内SEのキャリア採用求人の典型というのは、たとえば次のようなものである。 「社内のIT全般を一人でとりまとめて頂きます。新しいシステムを構築するときの要件定義もお願いします。ただし、パソコンのトラブル対応や、利用者からの問い合わせ対応(ヘルプデスク業務)、サーバ機のバックアップなど、日々の実作業もお願いします。中途採用なので社内的には『新人さん』扱いになってしまいますし、SIベンダーのような高い給料はお支払できません。社内ITの中核となる人材ですので、短期で辞めて頂くのは困ります。定年まで働くつもりで入社してください」。 IT業界である程度の経験を積んでいるSEなら、このような求人が、ある意味、矛盾だらけであることはお分かりだろう。こういった求人に応募するのはどんなSEかを思い描いてみよう。 「一つの企業の社内SEとして、上流工程からトラブル対応まで、何でも屋さんとして活躍しながら定年まで勤めたい」という志向を持っているSEは、まず転職など考えない。僕も過去に勤めた企業で、まさにこういうタイプの、会社に対する忠誠心の高い社内SEの方々を見てきたが、こういった人たちはそもそも転職することなど考えず、今いる会社のために定年まで働こうとしている。これはこれで社内SEとして正しい姿だ。 一定の経験をもった30代半ば以降のSEは、社内SEかベンダー側のSEかにかかわらず、勤続している自分の会社に対する忠誠心は高い。したがって、このような「就社」意識の強いタイプのSEを、中途で採用するという点にまず無理がある。 しかし二十代後半までの若手で、今の職場にいろいろな理由で不満を持っているSEは違う。こういうSEなら、小さな会社の社内IT全般をとりまとめるという立場に魅力を感じて応募してくるだろう。 しかし、社内のIT全般をとりまとめるという経験は、若手SEにとっては次のステップアップのための非常に貴重な経験になる。それまで単なるプログラマや、下流工程しか経験したことのなかった若手SEが、小さな会社の社内SEとして、企画段階や要件定義の段階までを経験すれば、当然の流れとして、「もっと大きな会社で、大きなプロジェクトで実力を発揮したい」と考える。そして2〜3年後にはその小さな会社から次の会社へ転職することになる。 このような若手SEが、社内のIT全般をとりまとめるという求人内容に魅力を感じるのは、こういった「上昇志向」があるからだ。今よりもステップアップしたいという意欲があるからだ。その意欲を、入社した途端におさえこんで、「この小さな会社で定年まで働いて下さい」というのは、採用担当者側の無理のある願望である。 こうして見てみると、上述のような中小企業の社内SE求人には、さまざまな年齢層のSEがキャリアに対してもっている考え方からすると、明らかに無理があることがわかる。 さらに言えば、30代半ばといった一定の年齢に達したSEが、サーバのお守りもしながら、社内IT全般の企画立案もやるという仕事内容でモチベーションを維持するのはきわめて困難だ。それでもモチベーションを維持できるとすれば、会社そのものに対する忠誠心しかないわけだが、前述のように、会社に対する忠誠心の高いSEは、そもそも転職など考えない。 まして中途採用だからということで「新人さん」扱いされたり、転職前より給料が下がるというようなことになれば、ますます上記のような社内SE求人に応募しようというSEは少なくなる。 この問題を解決する方法は、実はとてもかんたんだ。パソコンのトラブル対応、サーバのお守り、ヘルプデスクなどの単純業務は、派遣社員に任せてしまえばいい。そうして単純業務を切り離した体制を作った上で、企画業務・上流工程をやってもらうための社内SEを募集すればいい。こういった本当にかんたんな方法で、望みの人材を確保できる。 おそらく上記のような明らかに無理のある社内SE求人を出している、中小企業の採用担当者は、そんなことは重々承知なのかもしれない。しかしSEの経験者労働市場は、比較的売り手市場で、中小企業が自社に都合の良すぎる求人広告を出すのは採用コストをムダにすることになる。 採用コストをムダにすると言ったのは、二つの意味がある。一つは、希望の人材が見つからず、求人広告の出稿料がムダになるということ。 もう一つは、希望の人材が見つかったと思って、うまく採用に成功したとしても、その社内SEが結局は短期間で辞めてしまうことによるムダだ。短期間で辞められてしまうと、ふたたび求人活動をするためのコストが発生するし、そうやってふたたび採用に成功しても、再教育のための既存社員側のコストが発生するし、社内のIT環境についてのノウハウがきっちり伝承されないことによるコストも発生する。 そういうわけで、人よりも多めに転職を経験している僕からすると、少し採用方針を変えるだけで、ムダなく、望みどおりの人材を確保できるのになぁ、と考えさせられてしまう社内SE求人はかなりたくさんあるのだ。 無断転載禁止
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