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![]() 新生基本ソフトの行方 ( 19990402 ) 新生基本ソフトの行方〜ボランティア精神と市場原理〜(京都経済新聞1999/02/11掲載) 彗星Linux パソコンのOS(基本ソフト)市場ではウィンドウズが圧倒的シェアを握っているが、いまLinux(リヌクス)というOSが急成長している。米国の調査会社IDCの発表によれば、1998年のLinux出荷本数は前年比212%の伸び。サーバと呼ばれる上位機種の市場ではシェア17.2%に達した。ウィンドウズのシェアは36%だから確かに猛追撃だ。 急成長の理由は無料で入手できることと基本性能の高さだ。LinuxはUNIX(ユニックス)という大規模システム用のOSを基に開発されており、処理速度や安定性でウィンドウズに勝るという。ダイムラー・クライスラー、シスコシステムズ、米国郵政公社など、有名企業や政府機関で採用実績がある。 無償の努力・英知の結集 Linuxがコンピュータ業界の寵児となった理由はその開発体制にある。通常OSはマイクロソフトのような営利企業で極秘裡に開発されるが、Linuxは内部の設計がすべてインターネット上で公開され、世界中の一流の技術者たちが無償の努力で共同開発している。 誰もが開発に参加でき、報酬の代わりに理想的なOSの開発に参加する名誉を得る。Linuxはインターネットならではの開放性と自主独立の精神の産物だ。 民主主義革命? 業界にはこのようなLinuxの開放性を手放しで賞賛する声がある。企業によって私物化されていたOSが、やっと一般市民の「公共財」になった!LinuxはOSの「民主主義革命」だ!などなど。 しかしこうした「私企業=悪、市民=善」という図式はあまりに素朴すぎる。マサチューセッツ工科大学の経済学教授ポール・クルーグマンは、昨年末『ニューヨーク・タイムズ・マガジン』のコラムで、情報技術はもはや理想主義者たちのお遊びではなく、巨大なビジネスになっていると断じた。 商業化するLinux 現に今まで市場原理と無縁だったLinuxは、利用者の増加によって急速に商業化している。米国ではインテルやネットスケープなどの企業がLinuxに出資し、国内でも日本オラクルやロータス社が今年、Linux対応製品を発売する。価格はウィンドウズ対応製品と同じ。決して無料ではない。 また、Linuxが一般の利用者に必ずしも優しくない点を利用したビジネスも生まれている。Linuxは精鋭の技術者たちがボランティア精神で開発したため、利用者にも厳しい自助努力を求めている。トラブルは自力で解決しなければならない。そのためインターネット上に膨大なマニュアルが用意されているが、初心者向きとは言い難い。 株式会社サードウェアはそこに目をつけ、企業のLinux利用者を対象に年間100万円からの支援サービスを始めた。また富士写真フイルムの子会社はLinuxの運用管理を容易にするツールを発売している。 夢見られない時代 Linuxがここまで商業化すると、OSそのものが有料か無料かは本質的な問題ではなくなる。そもそもLinuxは自動車のない時代に自動車を発明するような「技術革新」ではなく、既存品の「改良」にすぎない。他のOSと飽くまで同じ土俵で競争することになる。 ビジネスの立場からすれば、Linuxの急成長に乗じてその周辺市場で莫大な利益を手にするチャンスが転がっているというわけだ。技術者の無償の努力から生まれたというLinuxの「革命性」も、市場では一つのセールスポイントにすぎない。情報技術の世界で汚れない夢を追い求められる時代はもう終わっているのだ。 無断転載禁止
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