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![]() お詫びと訂正:ライフォー・ファイフォー ( 19990313 ) 僕もたまに大ウソを書くことがあるので注意したほうがいい。「愛と苦悩の日記」3月9日で、初級シスアドの期末棚卸資産の残高を評価する問題に「ぜったい経理のことを分かってない情報処理技術者が作った問題だ!」といちゃもんをつけたけれど、経理のことが分かっていないのは僕のほうでした。ここにおわびして訂正いたします。 間違いにすぐ気づくというのは、間違いに気づくような勉強を今やっているからで、やっぱり毎日ちょっとずつでも勉強していると、不用意に過ちを犯しつづけるリスクを回避できるわけです。春スキーよりお勉強。 企業はIncome statement(損益計算書)を作成するときに、Cost of goods sold(売上原価)を確定させる必要がある。売上高から売上原価を引いて利益(Gross profit)を計算するからだ(以下、話を単純にするために製造業じゃなくて商業だとする)。で、この売上原価を計算するには、年度始めの棚卸資産の残高(売れずに残っている商品)、プラス、この一年間に仕入れた商品の総額、マイナス、年度末の棚卸資産の残高、という計算式を使う。 この3つの要素のうち、年度始めの棚卸資産の残高は、昨年度末に計算して帳簿に書いてあるはずなので計算する必要なし。2つめの仕入れた商品の総額は、仕入れるたびに帳簿の「仕入」勘定に記帳していくので、年度末の仕入勘定残高を見れば一発で分かるから、これも計算する必要なし。 最後の期末の棚卸資産の残高だけは計算する必要がある。計算するには、まずいったい何個の商品が売れ残っているのかをきっちり数えなきゃだめ。これが実地棚卸というやつで、よく商店街で年度末に在庫一掃セールとかやっているのは、実地棚卸前に売れ残りの商品をできるだけ少なくしようって魂胆ですな。 僕はだいたい栄という繁華街で用事を済ませるので、めったに名古屋駅まで出ないんだけれど(京王井の頭線の住人がわざわざ池袋まで出ないのと同じ)、去年のある日、たまたま名古屋駅地下街にある三省堂に夕方6時ごろ出ていったら、運の悪いことに実地棚卸の日に重なってしまって、早々に閉店して、店員そろって棚卸資産のカウント体制に入ってた。陳列棚に番号を書いた紙が貼り付けてあって、たぶん何番の棚にはどういう本が何冊とか数えていくんだろうね。 で、棚卸資産の数量は実地棚卸で確定するとして、その数量にたいして一個あたりの単価をかけないことには金額が計算できない。このときに先入先出法(FIFO = First In First Out)を使うか、後入先出法(LIFO = Last In First Out)を使うかがポイントになってくる。ほかにも移動平均法とかいろいろあるけど、ここでは説明カット。 先入先出法というのは、先に仕入れたものから先に売れたと仮定すること。つまり期末に売れ残っているのは、後から仕入れたものだと仮定する。だから期末の棚卸資産を評価するときには、実地棚卸で確定した数量に対して、最新の単価をかけることになるね。 このFIFOのメリットは、実際のモノの流れに近くなること。ふつうは先に仕入れたものから先に売ろうとするよね。でなきゃ古い商品が売れ残ったままになっちゃう。そのかわり、たとえこの商品が今売れたとしても、その商品は昔に仕入れたものだと仮定するから、現時点での売上と、その売上に対する仕入値の間に時間的なギャップが生じてしまう短所がある。 逆に、後入先出法というのは、最近仕入れたものから売れていくと仮定するので、期末に売れ残っているのは、昔に仕入れたものだと仮定することになる。だから棚卸評価のときは、実地棚卸で確定した数に昔の単価をかけることになる。 このLIFOのメリットは、FIFOのちょうど逆で、今売れた商品の仕入値を、最新の単価だと仮定することになるので、現在の売上と仕入値の間の時間的なギャップが小さい。でも、実際のモノの流れとは食い違うことが多い。 FIFOで評価しようが、LIFOで評価しようが、初級シスアドみたいな「受験勉強」レベルにしか関係ないでしょ、と思ったら大間違いで、FIFOをとるかLIFOをとるかで企業の損益にめちゃ大きい影響が出てしまう。 今の日本はデフレっぽい状態になっているけど、ふつうはインフレで毎年すこしずつ物価は上がっていく。それにつれて仕入値もふつうはすこしずつ上がっていく。そういうインフレ状態を前提にすると、LIFOの方が企業にとっては税金の節約になることが多い。 すこしずつ仕入れ値が上がっている状態でLIFOをとると、LIFOは昔の安い単価で期末の棚卸資産を計算するから、金額を少なく見積ることになる。そこで売上原価の計算式を思い出そう。期首棚卸残高+期中の仕入高−期末棚卸残高で、最後のマイナスが小さくなるということは、売上原価をそれだけ高めに計算することになる。 ところで企業のもうけは、売上−売上原価だよね。この売上原価を高めに計算するということは、もうけを少なめに計算することになる。もうけが少なめということは、税金の対象になる金額が少なめになる、つまり税金を節約できるということになる。だからインフレ環境下ではLIFOの方が節税になるというわけ。 逆にFIFOは、仕入値が少しずつ下がるような産業の場合に節税になる。FIFOは最新単価で評価するから、それだけ低く期末の棚卸残高を見積もることになって....あとの理屈はさっきと同じ。コンピュータを作っているメーカーは、たぶんFIFOの方が有利だろうね。コンピュータの部品の値段は少しずつ下がるから。 で、今僕の手元にある Kieso & Weygandt, Intermediate Accounting によれば、Dow Jones Industrials Average (日本で言えば日経平均株価みたいなもの)の30社のうち、実に20社がLIFOを採用しているらしい。たとえば1995年12月31日(ご承知のとおりアメリカの会社は12月決算が多い)ゼネラル・モーターズはLIFOで1兆1500億ドルの期末の棚卸資産を報告しているけれど、もしFIFOだったら2400億ドル多かったという。これだけで7億2000万円の節税効果があったらしい。 初級シスアドの問題ひとつとっても、たんなる受験勉強として消化するのと、企業が1円でも税金を節約してキャッシュフローを改善しようとしている現実の生々しい努力とむすびつけて考えるのとでは、大きな違いがある。 無断転載禁止
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