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![]() 鉄腕バイト ( 19980623 ) 日本経済新聞の「春秋」を読んでいて、2つの矛盾する内容を見つけた。ある日の「春秋」は、地球温暖化防止京都会議の決議をうけて、日本が消費エネルギーを削減するには、国民一人ひとりが「省エネ」を心がける必要がある、という主旨だった。 別の日は、「春秋」の筆者がリニアモーターカーに試乗したレポートで、東京=大阪間を1時間で結ぶ構想について、需要があるなら実現するだろう、というもの。ただし、リニアモーターカーは新幹線の4倍の電力を消費するとある。 それぞれ独立した記事で、筆者はたぶん違う人物だと思うけれど、この2つの矛盾した「春秋」の記事に、環境問題に関する一般の人たちの「常識的な」考え方がよく現れていると思う。 僕の働いているオフィスでも、毎年のように「省エネ」ということが言われ、既定の気温以上でないと冷房はダメなどのルールが決められている。直接には経費削減のためだが、お題目は「環境にやさしい企業」ということらしい。 最初に「省エネ」といわれ始めたのは、たぶん石油ショックがきっかけじゃないかと思うのだが、みなさんご存知のとおり、この「省エネ」という掛け声にはまったく効果がない。言われ始めて20年近くたつのに、電力消費量は毎年確実に増加している(たとえば、電気事業連合会の統計)。 結局のところ、一人ひとりが「省エネだ!」とエアコンを切って暑さに耐えたところで、そんなガマンの効果はかんたんに相殺されてしまうのだ。この手の「省エネ」には啓蒙的な効果しかない(いや、啓蒙的な効果も疑わしい)。 上記の2つの「春秋」に現れているエネルギー消費に対する見方は、一般常識の間違いを代弁していて、とてもおもしろい。新幹線に比べて4倍も電力を消費するリニアモーターカーを「需要があればOK」と言う一方で、個人レベルの省エネをすすめている。 個人レベルでは「省エネ」という徳目を熱心に奨励しておきながら、社会全体として利便性のために「燃費の悪い」リニアモーターカーを容認する、という見方。 もっと簡潔に言えば、「個人の倹約・集団の浪費」という図式だ。個人レベルで「省エネしてます!」ということが、集団としての浪費の言い訳になっていないか。 僕のオフィスを例にとれば、オフィスの冷房を切るより、僕の会社がエネルギー消費の少ない製品を開発する方が、よっぽと地球温暖化の防止になる。根本的にエネルギー消費の少ない製品が大量に販売され、現行の製品をリプレースすることによる規模の効果は絶大である。 そして、この問題にはもう一つ別の論点がある。つい先日、自動車一台とパソコン一台の経済的な波及効果を論じたとんちんかんな記事を紹介したが、リニアモーターカーについても同じことが言える。 東京=大阪間を、新幹線の2時間半から、リニアモーターカーの1時間に短縮するのは、せっかちなビジネスマンにしか意味を持たない。ただ、本当に東京から大阪まで生身の人間が足を運ばなければならないのか?ここから見直す必要がある。 高速な回線が安く利用できるようになれば、なめらかな動画のTV会議で十分事足りるだろう。大量の会議資料もコピーして郵送するよりデータとして送信すればいい。物理的にサンプルを見たり食べたりしながら打ち合せする必要があれば、前日に宅配便で送っておけばいい。 そうやって「物理的な移動」を最小限におさえることで、リニアモーターカーの必要性など吹き飛んでしまう(だいたい、リニアモーターカーで早めに出先に着いて、することといえば喫茶店でスポーツ新聞を読むことくらいなんだから。そのために資源を浪費する必要などまったくない)。 アトムの時代からビットの時代へ、というのはちょっと前のベストセラーだけれど、そういう根本的な発想転換ができれば、冷房をこまめに切るみたいな小手先の対応とは比較にならない劇的な「省エネ」効果が期待できるのではないか。 今までいくら「省エネ」キャンペーンをやっても効果がなかったのは、「個人の倹約・集団の浪費」という図式が結局は変わらなかったからだ。じゃあなぜこの図式が変わらなかったのかと言えば、マイカー行楽や新幹線出張など、「物理的に移動する」という発想そのものを変えられなかったからだ。 SOHOにしてもそうだが、「物理的な移動」「物理的な消費」という発想を、「情報の移動」「情報の消費」という発想へ根本的に変えないことには、地球温暖化防止会議で提示された目標はとても達成できそうにない。それをみんな分かっているのだろうか? 多くの人は、「方向は間違っていない、ただ努力が足りなかっただけだ」と思っているようだが、とんでもない。方向そのものが間違っているのだ。 僕はオフィスで「冷房やパソコンはこまめに切りましょう」という回覧がまわってくるたびにうんざりする。そんなことより、マイカー通勤禁止・TV会議化の推進・在宅勤務の導入・社用車廃止・電子メールのプリントアウト禁止など、経費節減の意味でも省エネの意味でも、ずっと効果の大きい方策はいくらでもあるように思うのだが、どうやら発想そのものが切り替わらないようである。 無断転載禁止
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