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![]() 情報システム触角論 ( 19980531 ) 大企業で働いていて、すでに財務計算や購買管理など、主要な定形業務がコンピュータ化されているなかで、これからの情報システムの役割はなんだろうか、と考えさせられることがある。 マネージャーたちにも分かりやすいのは、定形業務に関する情報処理の過程で蓄積されたデータの有効活用である。財務計算でいえば、各部門で発生した取引が帳簿に記入されるときの、一件一件の仕訳データの有効活用であったりする。いままでは利用できなかったような、ひじょうに細かい単位の情報を分析することで、見逃していたかもしれないことをそこから読み取ろうというマネージャーたちの期待がある。 しかし、一方には、マネージャーたちがなかなかその有効性を納得しない情報システムの役割もある。それは、組織の変革にかかわるものである。僕が思うに、日本企業のマネージャーは彼らの現場偏重主義もあって、目標のマネージメントには熱心だが、その目標を達成するための組織のマネージメントは後手にまわることが多いのではないか。 グループウェアやワークフローなど、最近の情報技術は組織の変革そのものをねらったものが登場している。にもかかわらず、マネージャーたちはそうした側面を過小評価しているように思う。たとえ掛け声として組織変革のためにグループウェアを導入しても、結局は営業成績の掲示板がわりなど、目標管理の道具にしてしまい、その真価を生かせない。 それはなぜかと考えてみるに、僕が所属しているような大企業のマネージャーは、組織を変革しようとしてもムダだというあきらめにとりつかれているのだ。ある大手電機メーカーの最近の社長交代劇で、社風改革に完全に失敗した前社長が記者会見で悔し涙を浮かべたのは有名な話である。 しかし、僕自身の会社をふりかえってみても、彼が社風改革に取り組んだと公言しても、それを言葉どおりに信じることはできないと思う。日本の大企業のマネージャーたちは、結局、組織マネージメントにかんしては自分たちの方法が正しいと思い込んでいる。その方法をなかなか変えることができないのだ。上述の社長も、自分は精一杯努力したのに、と言いたげだが、ほんとうに組織改革をするためには、どれほどの血を流す必要があるか、その認識が甘かったのだと言われて反論の余地があるだろうか? そんな日本の大企業では、いくら組織改革の切り札であるグループウェアやワークフローシステムを導入したところで、完全に骨抜きにされるのがオチである。それらのツールの導入は、あくまですでに業務フローの分析と見直しが行われているのが前提条件だからだ。現状のワークフローをそのまま最新ツールにのせたところで、手間が増えるだけ。そんな単純なことも分からないマネージャーが、日本企業には山ほど存在する。 ただ、このページの読者には大企業のサラリーマンではなく、中小企業に勤務したり、中小企業の経営者の方もいらっしゃるので、中小企業にとっての情報システムとはどうあるべきか、僕の現時点での考えも記しておきたい。 つい先日、平成10年度版の中小企業白書が出版されたけれども、昨年の同白書でも言われていたことだが、中小企業が変化の激しい経済環境を乗り切るためには、同業種・異業種をとわず、ヨコの連携が必要であると書かれている。 僕が思うに、中小企業にはグループウェアのような社内コミュニケーションの改善を目的としたツールは必要ない。なぜなら、中小企業はマネージャーと従業員のface to faceのコミュニケーションをベースになりたっているからだ。中小企業にグループウェアを導入するなら、100人以上くらいの規模がなければ割にあわないだろう。 もちろん、経理業務や在庫管理など、ルーチンワークの効率化のためなら、中小企業もどんどん情報システムを導入すべきだし、これも白書に書かれていることだが、とくに製造業の製造現場の生産効率を向上させるために、工程管理システムを導入して、業績を改善した事例が多く引用されている。 そのように社内の業務管理・製造管理の面で情報システムを導入した後に、いったいなにをすべきか?(ただし日本の中小企業では、情報技術を活用できる人材不足のためと、オーナー経営者の保守性のため、このレベルにさえ達していない企業が大半を占めているようだが) 大企業なら、社内業務フローやコミュニケーション改善のための、グループウェア導入となるだろうが、中小企業は、対外的なネットワーク形成を先に考えるべきだろう。 対外的なネットワークといったときには、元請会社との垂直的なネットワーク、同じ中小企業どうしの水平的ネットワーク、最終消費者に対する拡散的ネットワークの3種類があると思う。 まず、とくに製造業種の中小企業で大手メーカーの下請加工を行っている企業は、元請会社との密なネットワークづくりのために、情報システムを活用すべきだろう。たとえば、今、多くの大企業は調達コスト削減をねらってEDIの導入に積極的である。同白書にも、大企業のほとんどが、今後の取引関係において、EDIの導入に協力的かどうかが、取引継続の大きな決め手になると考えていることがわかる。 多角化による元請企業からの独立性の保持も、中小企業の企業努力としては重要だが、安定した取引の維持の側面では、こうした大企業の動向に積極的に協力することも重要である。EDIを積極的に導入し、あわよくば同じしくみを他の取引先との取引にも流用するくらいの前向きさが必要だ。 こうした垂直的な社外ネットワークに加えて、同じ中小企業どうしの水平的なネットワークづくりにも、情報システムを活用できる。たとえば、元請企業とのEDIシステムの構築が、自分の会社だけでは手に余る可能性がある。そのような場合には、数社で共同してひとつの通信サーバの導入・管理をアウトソーシングするなど、水平的なネットワークの形成が不可欠になる。 ひとつの通信サーバを共有するということは、協力した中小企業どうしが、プライベートなネットワークを手にいれるということだ。日ごろから対面的なコミュニケーションをすることも重要だが、いつでも会社にいながらにして業界の情報交換が電子メールなどで行えることは、より環境変化に強い協力関係を形成するうえで、重要な役割を果たすだろう。 最後にあげた、拡散的なネットワーク形成は、多角化の際の新規顧客獲得や、最終消費者をターゲットにした業種の中小企業にとってのマーケティングに重要な役割を果たす。中小企業は人的資源が限られていることから、大企業ほど組織的な販売促進活動を行うことは難しい。一方で、セールスのプロといわれるような人材の育成も必要だが、ホームページを利用して、企業そのものの知名度・イメージの向上や、電子的な決済システムを利用して、ネットワーク上で直接商売をするという可能性もある。逆に、インターネットを利用した情報収集にも利用できる。 このように、情報システムによっていちおうの社内業務効率化をはたした中小企業にとって、次にふみ出すべきステップとは、対外的なネットワーク形成であるべきだと、個人的には思っている。 社内のコミュニケーションについては、やはり従来どおり、対面的で人間的なコミュニケーションを深めていくことが、大企業にはない中小企業の強みを育てることにもなる。そこからさらに、中小企業ならではの機動性を生かそうと思えば、環境変化に対応するために、アンテナを外へ外へと張らなければならない。情報システムをそこに生かさない手はないだろう。 無断転載禁止
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