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![]() 名古屋といえば手羽先 ( 19980531 ) 先日、東京にある本社からSEの応援部隊が、僕の勤めている名古屋支社にやってくるということがあった。で、その応援部隊の一人である、入社2年目の新人女性が言うことには、「名古屋に来たら手羽先を食べなきゃ、って○×先輩に言われたんですよ」。というわけで、入社以来20数年間、名古屋支社に勤めている上司が、その応援部隊を手羽先の出る居酒屋に連れていった。 大企業の地方拠点に勤めているサラリーマンなら、この手の話は日常茶飯事ではないかと思う。ただ、この手の「名古屋に来たら...」「大阪に来たら...」のたぐいの話を聞くたび、「別に名古屋人が毎日手羽先食うてるわけちゃうやろ!」「大阪人が毎日たこ焼食ってるわけじゃないんだよ!」というツッコミをしたくなるのは僕だけではないだろう。 横浜にいったら中華街、大阪にいったらたこ焼、そういう名物に条件反射してしまう心性というのは、むしろノーマルなのだということは分かっている。ただ、僕はまったく逆で、学生時代に甲府や新潟、仙台、松本と、地方都市を転々とする一人旅を趣味としていたのだが、どこに行っても、絶対その地方の名物は口にしなかった。別にやせがまんをしていたわけではなく、そんなことをしてもまったく意味がないからだ。 じゃあ僕が何をしていたのかというと、マクドナルドに入って、長時間まったりと過ごすことである。もしマクドナルドがなかったら、とにかく全国にチェーン店をもっているファーストフードに入ることだ。 マクドナルドのサービスマニュアルは、全国どころか、世界中ほぼ同一である。同一のサービスが提供されている空間であるにもかかわらず、大阪のマクドナルドと、甲府のマクドナルドの雰囲気に差異があるとすれば、それこそほんものの「地方色」と言えるのではないか? (もう一つ、とにかく街の中を徹底的に歩きまわるというのもある。店の看板や、貼り紙、街のつくりなど、きょろきょろしながら歩いてまわる。卒業旅行でパリに行ったときは、凍える寒さの中、一日中脚が棒になるまで歩いた。おかげで下品なセックスショップが集中するムーランルージュ界隈や、一目でユダヤ街と分かる地区、ジム・モリソンの墓にたむろするアナクロなヒッピーたち、日本とたいして変わらない家電量販店など、ふつうの観光客がまず出会えない多くのものに出会うことができた) 名古屋の繁華街で手羽先屋に入って、名古屋の何が分かるのか?吉祥寺の地下街にはきしめんを食べさせる店があるし、名古屋の地下街には関西風の薄味うどんを食べさせる店もある。そんなに手羽先が食べたいなら、東京の名古屋風手羽先屋に入ればいい。そういえば東京の日野駅前には、広島風お好み焼きの店があった。 もっと言えば、韓国へ焼き肉を食べに行くのも、パリでフォーションの紅茶を買うのも、土産ばなしにはなるだろうが、なんのために韓国やパリに行ってるのか?と言いたくなる。これらはすべて「誤解された地方色」の典型である。 この「誤解された地方色」の背後にあるものをよくよく考えてみれば、それは自分自身の地方性にたいする無関心なのではないか。たとえば僕自身は大阪出身だが、東京や名古屋で暮らすことではじめて見えてくる大阪の独自性というのが確かに存在する。同時に東京や名古屋の独自性も見えてくる。 そうやって自分が当たり前のものとして育ってきた文化を相対化できれば、「誤解された地方色」の落とし穴におちいることはない。どの土地を訪れたって、その土地の日常生活が見えてくるのは特産品店でない、このことだけは確かなのだ。 本社から出張でやってきた応援部隊が手羽先にこだわった理由は、おそらく東京=日本標準という発想から、彼らもぬけきらないからだろう。名古屋の手羽先は、東京を日本の平均値として測定すれば、十分食べる価値のある特殊な食物ということになる。僕らも往々にして東京を日本標準というか、日本平均というか、目もりのゼロ点と考えがちである。 しかし、「日本標準」というのも、大いなる「偏向」である。「日本標準」というのは、ものすごく強烈な「地方色」の一変種である。首都圏に住む多くの人にとっては、寅さんの世界も今や名古屋の手羽先と同じ意味での「地方色」となってしまっているが、実際には整備された郊外に生活する彼らの生活も、ひじょうに「地方色」豊かなのだ。それを「地方色」と思わずに、「日本標準」と思っているところに、彼らが名古屋に来ると手羽先にこだわり、大阪に来るとたこ焼にこだわる理由がある。 僕は個人的に、一刻も早く東京の郊外の生活にもどりたいと、名古屋で悶々とした日々を過ごしているが、それは、東京郊外という「地方色」がひじょうに性に合っているからだ。東京郊外という一「地方」には、名古屋郊外や大阪郊外にはない魅力がある。 その魅力については、また日をあらためてじっくりと書いてみたい。 無断転載禁止
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