港区生活も2か月になり、少しずつ生活の感覚がつかめてきた。越したばかりのときは「買い物するなら大井町」と思っていたが、実は都営三田線・芝公園駅まで歩くのはひと苦労だとわかった。それに都営三田線・三田駅からJR田町までは殺風景な地下道をしばらく歩かなければならず、週末の田町駅はゴーストタウンなのだ。
いちばん近いバス停から目黒駅までの路線があり「これは使える!」と思った時期もあったが、目黒駅ビルのセンスの悪さに辟易した上、この路線、1時間に2本しかない。こちらもあえなくボツとなった。
勤め先からの帰り道なら日比谷線・神谷町駅が途中にあるので恵比寿まで出ることもできるが、日比谷線は妙に駅間が長い。恵比寿と反対の東銀座方面ならまだ近いが、僕は銀座に用はない。
結局残ったのは都営バスの「都06」路線だ。渋谷から新橋まで、途中広尾のハイソな住宅街を経由して走る路線で、何しろ本数が多い。ほぼ3分おきに便があるので待たされるということがない。渋谷まで30分とやや遠いのが難だが、渋谷ならそれを押して出かける価値がある。
今までは冴えない本屋しかなかった渋谷にもBook1stができたし、スターバックスが常に満員でもエクセルシオールに入ることはできる。この春オープンしたマークシティーの地下ではAfternoon TeaやSony Plazaの雑貨でヒマつぶしもできる。パソコンの周辺機器や家電を買うためのカメラ屋もある。
「都06」の反対側の終着である新橋駅はウィークデーなら寄りつきたくもない脂ぎった街だが、週末はスーツ姿もなく比較的さわやかな風が吹いている。高架下にサンディーヌ・エクスプレスとベッカーズがあるので昼飯にも困らず、駅から少し歩けばスターバックスがあり、タバコの煙やわがもの顔のオッサンに煩わされることなくコーヒーが味わえる。電車の中で座り込んでいる若者を見て眉をひそめるオジサンたちも、自分たちこそ社会公害になっていることに早く気づいて欲しいものだ。
実はこのエッセーもYahoo!Japanのオークションで定価の7割引で手に入れたばかりのMobile Gear II for Docomoを使ってそのスターバックスで書いている。日曜日の夕方6時前だが客の半分以上が「若い女性」で、ちょっと新橋とは思えない。駅前にはカメラ屋の大型店舗もあるので家に帰る最後に重い荷物の買い物をするという算段もできる。パソコンの価格を見る限り秋葉原の大手量販店と同水準だ。
新橋駅なら横浜方面にも出やすい。イトーヨーカ堂とユニクロに行きたいときには、このあたりではやはり大井町しかないので、陰気くさい都営三田線を使うよりは、バスで新橋駅に乗りつけた方がはるかに快適な日曜日になる。
そういうわけで今日は「都06」でまず新橋駅に出て、ベッカーズで昼食をすませた後、有楽町に向かった。先日帰省したとき、なんばCITYで見つけた紳士服店INHALE+EXHALEが日比谷にもあると知ったからだ(ちなみにinhale、exhaleとは英語で「息を吸い込む・吐き出す」という意味で、どうやら京都で起業されたアパレルらしいが、ここに付したリンク先のオフィシャルサイトはまったく更新されていないようだ)。
INHALE+EXHALEはスーツが全点\19,000または\28,000という統一価格になっており、デパートの紳士服売り場のようにおばさん店員がしつこくからみついてくることもないし、紳士服のAOKIのようにジジむさいプリント柄のシャツが売っていたりすることもない。若い店員たちはこちらから声をかけない限り近づいてこず、じっくりと自分で品定めできる、他人に干渉されるのがイヤな1970年以降生まれのX世代のためのスーツ屋。BGMも紳士服量販店のとってつけたような邦楽ヒット曲集ではなくX世代にふさわしいラウンジ系だ。
INHALE+EXHALE日比谷店は意外にも昭和30年代の趣を残す東宝ツインタワーの1階と2階にある。1階は高めの年齢層をターゲットにしているのか、価格帯が高い。2階はなんばCITYで見つけた店と同じ\19,000か\28,000の価格帯だ。洋服においてはひたすらチープシックを目指している僕としては、\19,000でかなり気にいった黒のスーツがあったのだが、ふと「夏物の黒のスーツが3着もあってどうする」と気付いたので何も買わずに立ち去った。もちろんシャツも売っているのだが、あまり品ぞろえがいいとは言えない。ネクタイについてはなんばCITY店では気の利いたパッケージングがされていたが、日比谷店は包装なしのままではあるが整然と陳列されていたが、使えそうなものはあまりなかった。
有楽町にはもう用がなかったので、さっさとJRで大井町に出る。衣裳ケースの中の夏物カジュアルを総入れ換えするつもりでユニクロに行った。ボタンダウンからTシャツ、チノパンまで、これでもかと大型の紙バッグいっぱいに買い物しても1万円ちょっと。アメカジのボタンダウンに5000円以上かけるのは金持ちの贅沢だという気がする。
そうして新橋に帰ってきて、スターバックスでアイス・ショート・ラテを飲みながらこのエッセーを書いている。2週間前にひきはじめた夏風邪がなかなか治らず、ついに抗性物質(モバイルギアの辞書にこの四文字熟語はないらしい)に頼ることにした。
風邪をひくたびに抗性物質を飲んでいたのでは、そのうち体内に多剤耐性のウイルスを飼うことになるおそれはあるが、咳が長引くとただでさえ夏バテて気味のこの季節、体力の消耗も激しいし、毎日が不愉快なのでやむを得ない。
なぜ今年に限って風邪が長引くのか。僕としては今働いているオフィス環境を疑っている。まず冷房が利きすぎ。それから完全分煙でない。タバコをすわない人間にとって一日中タバコの煙にさらされることの影響はそう小さくはない。人殺しぃ!
たまにはこんな中身のないエッセーもいいだろう。このエッセーの論旨は次のとおり。いろいろ探しまわればどこかしら居心地のいい場所(cozy space)が見つかる。それが東京の人工集積がもつ最大の長所なのかもしれない。