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CHIBA GINZA
( 19991205 )

Japanese/English

街歩きの楽しみは孤独とともに深まる。誰が残した言葉かは知らないがひとりきりの日曜日を千葉で過ごしてみると新しい発見がまだ残されていることがわかる。

夕方から雨になるというので昼少し前から出かけて近所のモスバーガーで昼食をとる。この冬のモス・ランチ・コンボのポテトがジャガイモではなくサツマイモになるのもささやかな楽しみのひとつ。今日はPLENAから向こうへは行ったことがない海浜幕張駅からスタートすることにした。総武線に乗って幕張本郷に出て、そこから海浜幕張に向かう京成バスは平日の朝とまったく違うのんびりした表情だ。平日の日中と土日は全便が海浜幕張駅を通過してマリンスタジアムまで行く。僕もそのバスに乗った。

他に乗客は5人だけで、マリンスタジアムまで残ったのは僕ひとりだった。うら寂しい一面のコンクリートに沈みかけたタンカーが舳先だけを水面に浮かばせているようにスタジアムがそびえている。海の方角を見ると松林の中に「人工海浜幕張の浜」の看板が埋もれて錆び付いている。その矢印のとおりに松林を抜けると思いがけなく静かな砂浜がひと目で見わたせないほどに広がっている。

打ちよせる波の音と、手の届きそうな距離の水面に群れて浮かんでいる海鳥の鳴き声は、濡れた砂にやわらかく響いている。曇りがちの空は海にとけ込んで水平線がはっきりしない。ところが雲が切れて日が射してくると、はるか彼方まで波の細かな粒が光を散らして輝き、水平線が白く輝きはじめる。浜のところどころには木の柱に白いペンキのはげかけた監視台が立ち、四方に拡声器のついた鉄柱には松林の中にある事務所から音声を伝えるケーブルが空を這ってつながっている。その拡声器を見つめると真夏にこの砂浜を埋めつくしていた海水浴客のざわめきが聞こえるようだ。色とりどりのビーチパラソルの夢からさめて冷たい陸風に背中をなでられる冬の海にもどる。もっと天気のよい日に来れば、おそらく東京湾の向こう岸や富士山を見晴らせるかもしれない。なんというしあわせだろう。

海浜幕張駅までゆっくり歩いてもどり、どうやって千葉駅に出たものかと考えながら下りの京葉線に乗る。上りホームのKIOSKは営業しているのに下りホームにはなく、申しわけ程度にレンズ付きフイルムの自販機が置いてある。千葉みなと駅にポートタワーというものがあるのを地図で調べて知っていたので、とにかくそこで降りてみることにした。

千葉みなと駅の改札を出てすぐのマツモトキヨシの小さな店舗がにぎやかな駅前を予感させたが、意外にもポートタワーのある海側はあまりに殺伐としていた。ついさっき幕張海岸でたっぷり孤独を味わってきた身にはひとり歩きがこたえたので、予定を変更して蘇我まわりで千葉駅に出ようとした。そこで山側を見ると千葉駅前で見慣れた懸垂式モノレールが見えるではないか(ちなみに三菱重工製)。じっさい千葉みなと駅から千葉駅までタウンライナーが通じていたのを僕は知らなかったのだ。わざわざ外房線の蘇我駅に出るまでもなく、そこから千葉へショートカットできる。

10分おきに便があるのはありがたいが、懸垂式モノレールというのは車両が軌道から宙づりになっているのでやや乗り心地がぞっとしない。しかも千葉駅の手前からビル街をぬって軌道がぐっと高度を上げるのでなかなかスリルがある。いっそのこと床を強化ガラスにしてはどうかと思う。ちなみに千葉みなとから千葉県庁前までのタウンライナーは1号線で1996年に開業したばかり。1号線の中でも千葉駅から県庁前駅までの部分が開業したのは1999年3月24日、つまり今年になってからだ。2号線は1988年の開業で千葉駅からベッドタウンの千城台まで続いている。千葉は東京のベッドタウンとしてはそれなりの歴史があるとは言えまだまだ発展途上の若い街ということだ。

CHIBA GINZA

タウンライナーを降りて千葉駅からどう歩くかと考える。前回はBEE-ONEの裏通りをつきあたりタウンライナー2号線の下をくぐってPARCOまで歩いたので、今回は中央公園に向かう大通りを歩くことにする。大通りといってもオフィスビルがほとんどで商業ビルはBEE-ONEと三越だけ。歩道を歩く人もまばらで実はかなりつまらない。ただ大通りを右側へ一本入るとかなりいかがわしい界隈が広がる。駅前の大通りを左へ入るといかがわしくなるのは津田沼北口や、船橋南口にも共通した特徴である。

中央公園に着くとまずは定石どおりPARCOへ入ってエスカレーターで6階の無印良品へ。何を買うでもないつもりがチャコールグレーのネクタイを買ってしまう。ライトグレーのワイシャツに合わせるネクタイが足りずに困っていたこと思い出したのだ。それから7階のTOWER RECORDSに寄る。千葉ではここしかなく、外資系らしく試聴コーナーが充実していて選びやすい。以前から気になっていたケン・イシイ、テイ・トウワなどが参加しているY.M.Oリミックス版をさらっと試聴して何も買わずに1階まで降りた。

PARCOを出て住友銀行の角を曲がり、タウンライナーに沿って歩くと、前方に「メディアバレー」の青い看板が見えてくる。ダイエーグループのパソコン専門店で町田と千葉の2店舗しかない。1階に入ってNTTドコモのパルディオ611Sの価格を見ると9800円で大して安くはないショップだということが一目でわかる(東京駅八重洲南口のヨドバシカメラなら6800円)。念のため2階に上がってマイクロソフトのPowerPoint2000をチェックすると19800円でこれも安くはない(秋葉原なら18000円で手に入る)。3階から上を見る気がすっかり萎えてしまった。

メディアバレーを出ると交差点の向かい側に「セントラルプラザ」というデパートらしき建物、はす向かいにJEANS MATEの大きな店舗が見える。セントラルプラザのうらぶれた感じに惹かれた僕はさらにタウンライナーに沿って歩いた。けばけばしいテレクラの看板の角を左折してセントラルプラザの建物を舐めるように歩く。なぜ素直に建物に入らなかったのか。それは入るのがためらわれるほどうらぶれていたからだ。

ローソンのある交差点までやってきてようやく決心のついた僕はセントラルプラザの内部に潜入した。そこはデパートというより狭い個人商店がひしめく商店街の趣。ままこじゃれた店もあるので中学生らしき女の子3人が連れ立って厚底ブーツを物色していたりする。2階には100円ショップ。4階はなぜか骨董店専門フロア。5階には中古ビデオ・CDを売る店。

6階のアメリカン・カジュアルのフロアを見てまわったところでこの百貨店の何たるかをはっきりと把握できた。PARCOを歩くのはちょっと恥ずかしい「地方都市としての千葉」に根づいたヤンキーの方々、および地元お年寄りのたまり場のようだ。しかもたまり場であるわりに、各フロアに客が20人足らずしか見当たらない。

7階にはDance Dance Revolution 2ndMIXに調整中の張り紙がしてあるままのゲームセンターと、アクターズ・インターナショナルの事務所。このアクターズ・インターナショナルは言うまでもなくスターを目指す少年少女にチャンスを与えるための企業だが、千葉テレビというローカル局で毎週オーディション番組をやっている。名古屋にも『AAA』という同様の番組があったのだが、誰がどう見ても『ASAYAN』のパクりなのだ。貧弱なカメラワークの中で妙に生き生きと歌う少女たちは千葉から全国区へ飛び立つことを夢見ているに違いないのだが、その事務所がセントラルプラザにあったのでは説得力がない。

8階へ上がったとき僕はあまりの「わびさび」に鳥肌が立った。なんとそこは川の流れる食堂街だったのだ。レストラン街に川が流れること自体悪趣味だが、それでもそごうの川の流れるレストラン街にはゆったりとした空間と大理石の上品さが漂わないでもない。ところがセントラルプラザの「川」は狭いフロアにそれぞれの食堂の間をぬって無理やり流してある風で見るからに痛々しい。豪華な看板のかかる中華料理店にはlazy Susanのある個室も見えたが、表のサンプルにはレバニラ炒め定食に980円の値札がついている。津田沼イトーヨーカ堂のレストラン街にある中華料理屋が店頭で麻花を土産に売って中国のアイデンティティーを主張しているのに比べれば、さらに庶民的な食堂街だ。

しかも8階には貸会議室があり、収容人数28人の第一会議室、60人の第二会議室ともに1時間2000円で貸してくれる。千葉で会議の際にはぜひご活用頂きたい。同じフロアで韓国風焼肉が楽しめるので言うことなしだ。

セントラルプラザの建物を出ると、そこは千葉銀座と名付けられた商店街になっている。ローソンの隣りはカラオケのBIG ECHO、その隣りの雑居ビルの入口には韓国料理の店の看板が「オモニ」「アリラン2」と二件も出ている。実は中央公園まで駅前の大通りを歩いてくるときに後ろを歩くカップルの会話が韓国語だったのだが、もしかするとこの近辺に大阪・鶴橋のような韓国人街があるのかもしれない。

そこを過ぎてPARCOに向かって歩き始めると、この千葉銀座という通りには繁華街にありがちなチェーン店がひととおりならんでいることに驚く。珈琲館、オリーブの木、ドトール・コーヒー、マクドナルド、カプリチョーザ、サイゼリヤ。何と言ってもイタ飯が3件も並んでいるのが不思議である。『オリーブの木』は津田沼南口の駅ビルにもある。サイゼリヤは全国にあるが近場では海浜幕張駅の幕張PLENAにある。カプリチョーザは僕にとって学生時代に下北沢にあるのを研究室の飲み会で使って以来、いちばん付き合いの古いイタ飯で、各地に店舗を見つけるたびに軽い感動をおぼえずにはいられない。また、この千葉銀座にある中島書店はこんなところにポツンとあるわりに広い本屋で品揃えもまあまあ良い。

そのまま千葉銀座をぬけて中央公園にもどってくる。PARCOを出たとき「PARCOツイン」なるものが近くにあるのでどこだろうかと位置関係を測りかねていたが、どうやらワンフロアーだけの婦人服専門店街のようだった。P4などメジャーなブランドが入っているようだが、ブランドには無縁な僕はそのままぐるりと中央公園の外周を回る。

するとPARCOツインの北側にハミングロードパルサという看板のあるアーケードが見え、茶色にくすんだ伝統的な商店街が続いている。あの色合いは名古屋に住んでいたとき、大曽根駅前商店街で見て以来のものだ。そして目をやや左に転じるとシネロマン千葉という小さな劇場がある。言うまでもなくポルノ映画がかかっている。その劇場の隣りは『大人専科』というポルノショップ。中央公園の方から歩いてきた労働者風の中年男性がひとり、その猥雑な劇場のポスターを見て、入ったものかと逡巡している。中央公園をはさんでPARCO真向かいにポルノ映画がかかっているのだ。なかなか千葉という街もあなどれない。

ここまで歩きづめでいい加減疲れてくるので千葉駅まで歩いて帰る気がしない。タウンライナーの葭川(よしかわ)公園駅(実は1999/03/24に開業したばかりの無人駅)の前にあるバス停で「どうせ10分は待たなきゃ来ないんだろうな」と思いつつ時刻表を見ているところへ古い車体のバスが着いた。千葉駅まで大人100円。ちなみにこの近辺には「チーバス」という無料巡回バスまで走っている。千葉を楽しむのにバスは欠かせない。

前回おとずれたときは京成千葉中央駅のロケット電器の空き店舗ばかりが「死んだ街」としての印象に残って、千葉駅には二度と来るまいという気さえしたが、歩きつめてみるといろいろな意味で面白い見つけ物がそこここに転がっている。当分、街歩きの開拓の旅はつづきそうだ。


リンク集:
千葉銀座
チーバス(千葉市のページ)
チーバス(京成バスのページ)


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