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日本の終末論
( 19980421 )

Japanese/English

景気の悪さを嘆く声が日増しに強くなるようだが、嘆いてばかりでは何にもならない。今の日本がかかえる問題が構造的な問題であるとは、ずいぶん前から言われていることだ。しかし、先日のASEMにも見られたように、遅々として進まない日本の構造改革に、欧米諸国はそうとうイライラしているらしい。

英『エコノミスト』誌は、つい最近「Japan Puzzle」と題する特集で、どうすれば日本が構造改革をなしとげられるかについて具体的なプランを紹介していた。が、依然として有効な対策を打てない日本にイラだってか、とうとう「If Japan should crash」という特集を組んだ。

つまり「どうすれば日本を救えるか?」という問いから、「日本が崩壊したらどうなるか?」という問いへと、大きくニュアンスが変わっている。日本ののろまさ加減に半ばさじを投げたというところか。

この2つの特集の間には、たった1か月の期間しかない。たった1か月での論調の変化は、欧米と日本の認識に大きなへだたりがあることを示してはいないか。欧米に比べて、当事者である日本がのんびりしすぎているのだ。

まぁ僕自身、典型的な日本企業で働いていて、一工場の一部門のシステム開発計画の見直しに3週間もかけるような、のぉ〜んびりした意思決定を目の前にしているので、国家レベルの意思決定に何か月もかかるのは仕方ないと思っているが。

では、しびれを切らした『エコノミスト』誌の「If Japan should crash」(万一日本が崩壊したら)という特集の中身を、僕なりにまとめてみたい。

同誌の分析によれば、日本の景気がさらに後退しても世界経済に大きな影響はない。世界のGDPに占める日本の割合、欧米諸国の対日輸出の割合はそれほど大きくないし、アジアの景気後退は欧米の好景気やラテンアメリカの成長で埋め合わせられる。

ただ間接的な影響として、日本の輸出増大からくる保護主義の台頭と、アメリカ株式市場の暴落が懸念されるとし、仮に日本の不況が欧米に悪影響をあたえても、それは日本のせいではなく各国の責任だと付け加えている。

個人的な感想だが、同誌は、日本の景気後退など些細な問題だと言うことで、間接的に日本の国際社会における地位の見直しを含意しているのではないか。たかが日本の不況にビクビクせず、欧米諸国は自分で手綱をひきしめよう、と。だとすれば、日本は愛想をつかされていることになる。

それを示すように同誌はひきつづき「Japan on the brink」(瀬戸際の日本)と題した3ページにわたる記事で、日本の構造問題について鋭い批判を展開している。

主要な問題として取り上げられているのは、日本企業の投資効率の悪さである。

利益を考えないムダな投資を続けてきた結果、日本企業の債務はふくらんだが、「日銀の手ぬるい金融政策のおかげで、過去数年間は切り抜けられた。」ところが銀行自身の不良債権と、債権市場の資金調達コスト増で、とくに「公共事業という飼い葉桶」で食わせてもらっていた建設業が危機的な状況にある。

製造業も例外ではなく、日立・東芝・三菱の3大電機メーカーは「ソニーのように一握りの成長分野にruthless(無慈悲)に特化しなければならないだろう。」「もっとも危ないのは明らかに三菱電機である。

また、日本企業が利益を軽視しすぎるのも問題である。先日、三菱重工の社長が「利潤の最大化は適切でない」と述べたことにふれて、いまだに日本企業は利益よりも、シェアと雇用維持を優先させていると非難してる。

投資はとにかくやればよくて、資源の再配分については市場より官僚が頼りになり、日本企業はアメリカと違って長期の利益を上げることができる、などといった日本的理論はもはや無効だと断じている。

ではその原因はなにか?この記事は、(1)証券市場のマヒ(2)銀行機能のマヒ、(3)高率の法人税の3つをあげている。、つまり、(1)株式の持ち合いのおかげで「利益の悪い企業でも、資本をムダづかいしながら買収されない。」(2)銀行も持ち合い株主になり、土地を担保に債務保証するというムダな投資をする。(3)企業は、法人税逃れのために不必要に、資産の償却期間を現実の耐久年数に関係なく短くする。そうしたことがすべて、ものすごいスケールでムダな投資を引き起こしているというのだ。

在庫と余剰人員の削減への圧力は増すばかり。このような日本企業の崩壊をうながす要因はまだある。

一つは国際的な会計基準の導入だ。今のところ日本企業は、「はじめに利益ありき」で、その利益めざして費用をつみあげるという、まったく透明性のない「ボトムアップ式」会計基準であるとしている。また、子会社のあつかいはひどいもので、50%基準を利用することで、子会社の業績の悪さをどのようにでも隠蔽できる。

しかし、国際会計基準の採用により、「隠し留保の時代は終わり」、「不愉快な真実を公開せざるをえなくなるだろう」と述べている。

もう一つは、法人税法改正、とくに「工事完成基準」の廃止である。このおかげで建設業者は利益計上を工事の完成まで遅らせることができていたが、今後は、収益と費用をもっと厳密に対応づける必要が出てくる。「これは、すでに枯渇している経営資源に対して、ますます重い負担となるだろう。」さらに企業会計には、企業年金の破綻という「時限爆弾」がひそんでいる。

以上のように、日本経済のあらゆる悪弊をならべ立てた上で、日本は本来の意味での市場主義経済に方向転換しなければならないと結論づけている。さらに、フォルクスワーゲンが日産を、GEが東芝を買収する方が望ましいという状況も生まれかねないとして、そうなったときには、本当に日本株式会社の商習慣は死に絶えるだろうと書いている。

もちろんここまでこきおろされている日本経済は、とりわけ僕のようなサラリーマンにとっては他人事ではない。しかし現場の責任者たちにそういう自覚があるかというと、きわめて疑わしい。別のページでも何度か指摘しているが、おじさん世代は終身雇用や年功序列といった最近の発明を、永続する制度であるかのように勘違いしている。

また、彼らの意思決定が遅さにはイライラさせられる。会社の制度自体が、意思決定を彼らに集中させ、彼らの仕事をわざわざ増やすようになっているのだから自業自得なのだが、いつまでたっても「権限委譲」や「情報公開」をしようとしない。制度を変えるも変えないも彼ら次第なのに、忙しさをこぼしている。

そういった制度疲労は、その中にどっぷりつかっている人間にとっては「居心地のよさ」としか感じられないのだろう。たしかに意思決定の遅い組織は居心地がよい。のんびり楽しく仕事ができる。効率の悪い仕事をしてもクビにならない。文句さえ言わなければヘンなところへ飛ばされることもない。ぬるま湯のような環境だ。みなさん楽しく仕事をしましょう。陽気に明るくのんびりと。うららかな春の陽がさしこむオフィスで、のんきにのんきに。


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