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「変える」SE/「変えない」SE
( 20000928 )

Japanese/English

IT技術者の求人市場は売り手市場と言われ、転職する技術者が他業種と比べて多いようだ。業務系のシステムエンジニア(SE)の中には、社内の情報システム部門からSIベンダーに転職してお客様相手のSEになる人もいれば、その逆のパターンもある。どちらにしてもSEはお客様=利用者に対するサービス業であるから基本姿勢はまったく同じだ、と思っている人が多いのではないだろうか。

社内SEであっても利用部門を外部のお客様のように考えて、使いやすいシステムを構築しなければならない。それは一見もっともな意見である。しかし本当は両者には微妙な差異がある。僕自身は社内と外販を両方経験しているのでその差異を敏感に感じとっているが、外販から社内情報システム部門に転職したSEの中にはこの差異を認識していない人がままいる。

お客様相手の外販SEは純粋にビジネスとしてシステム利用者(=顧客)に向き合う。したがって業務分析など上流工程では多少かっこいいコンセプトを掲げるが、実際にシステムを構築する実装段階に入れば、結局は顧客の言いなりにならざるを得ない。外販SEにとって文字通り「お客様は神様」であり、最終的にはお客様の言いなりに動く習慣がついてしまっている。

こんな風に書くと「いや、提案型SEはお客様の嫌がることも時にはやらなければならない」と反論する方もいらっしゃるだろうが、当然のことながらSIベンダーが顧客に対してコンサルできるのは、顧客がコンサルを望んでいる場合だけだ。コンサルを嫌う顧客にコンサルをやろうとして失注するのは単なるおバカさんである。

しかし社内SEは違う。社内情報システム部門は会社全体の経営目標にリンクした情報システムの構築を任務としている。社内情報システム部門は利用者=顧客の意向よりもむしろ全社の経営戦略が絶対であり、そのためにはときに利用者部門に対して反論しなければならない場合がある。

外販SEはお客様の要求を忠実にシステム化するのが使命であるのに対し、社内SEはトップの経営目標を効率的に実現することが使命である。もっと単純化すると、外販SEは利用者の要求を勝手に「変えてはいけない」が、社内SEは大きな目標のためには利用者の要求を「変える」努力をしなければならない。

自社の経営改革に何の寄与もできない社内情報システム部門など存在価値はない。たとえ外部のコンサルを雇うにせよ、最後のところで自社の人間を動かせるのは社内の人間だけだからである。つまり社内SEは情報技術を使って利用者の業務をいかに「変える」か、その点に存在意義がある。「変える」意思のない社内SEに存在意義はない。

ところが外部のお客様相手から社内情報システムに転身したSEの中には、相変わらず利用者の言いなりに動いてしまう人がいる。利用者部門の事細かな要求を一つひとつ正確に実装してしまい、そうすることが全体としての効率化につながるのか、コスト削減につながるのか、利用者に対して「反論」する習慣がない。

社内情報システム部門が基幹系だけをやっていた時代には、既存の業務をコンピュータ化するだけでも効率化に結びついたので、利用者部門の要求を鵜呑みにするのがむしろ理想的なSE像だったかもしれない。

しかし、今は情報技術を使っていかに業務改革をするか、資本効率を上げるか、ホワイトカラーの生産性を上げるかという時代だ。そんな時代に利用者部門と議論を戦わせることなく、「言われたとおりに何でもやります」とばかりに細かな仕様を正確に実装するだけのSEはあまり存在価値がない。一生、基幹システムの保守要員として心静かに生活したいというなら話は別だが。


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