米IBMのロータスソフトウェアWebサイトに法律事務所のノーツ活用事例が2003/01/14付けで掲載されたので早速ご紹介したい。多少気の利いた題名がついていて「法律事務所の判決〜『ロータス・ソフトウェアは効率性を促進する』」。この事例は2003/01/26-30にディズニー・ワールドリゾートで開催されるLotusphereで詳細に発表されるらしい。
Weil, Gotshal & Manges法律事務所は、NBC、アメリカン航空、ゼネラルモーターズ、リーマンブラザーズ証券の法務アドバイザーになっている世界最大の法律事務所の一つで、買収案件などを専門としている。同社の社内情報システム部門であるグローバル・インフォメーション・サービスチームには120人のスタッフがおり、世界各地の現地事務所に分散配置されている。
同事務所はさまざまなSIベンダーと協力して、早くからITを利用した社内のコミュニケーションや協働作業の改善に取り組んできたという。ITの有効性を認識している法律事務所はたくさんあるが、過去10年にわたってWeil, Gotshal & Mangesほど積極的に取り組んでいる法律事務所はないとのことだ。このあたりはロータスWebサイトのリップサービスと読んだ方がよいだろう。
同事務所が導入しているロータス製品は、ノーツ/ドミノ、QuickPlace、Sametime、Discovery Serverというフルラインナップだ。ノーツ/ドミノは全世界に散在する2,400人の弁護士やスタッフの電子メール基盤となっている。そして重要訴訟案件のトラッキングなど、ワークフローの自動化も実現しており、ほとんどの主要な業務フローを社内外で開発したアプリケーションを使ってノーツ化し、PeopleSoftで構築した基幹システムとも連携させているようだ。
QuickPlaceは全世界で情報・文書・専門知識を共有するための「グローバル・ディールルーム」というアプリケーションの基盤として利用されているらしい。同事務所は平均して常時15,000件の案件を抱えており、うち約5,000件がアクティブな状態で、さらにこのうち1割以上がQuickPlace上の協働作業で処理されているという。QuickPlaceを導入したことによって、チームによる作業が必要な場合に、セキュリティーを確保した上で顧客企業の社内弁護士なども参加したタスクごとの協働作業ができるようになった。
QuickPlaceの利点は、弁護士が各案件ごとの協働作業スペースを社内情報システム部門の支援なしに数分で開設でき、特別のトレーニングが不要で、その機能についてユーザがほとんど疑問を抱かなくてもすむ点だという。QuickPlaceは社内外の評判が良く、とくに顧客企業から高く評価されているようだ。
Lotus Sametimeはそれぞれのスタッフがどの専門分野に強みを持っているかを、全世界の拠点横断で検索するために使われている。たとえば同事務所のニューヨーク事務所には1,700人が働いているが、各人がどのような強みや専門知識をもっているかをいちいち調べるのは大変だ。しかしSametimeの導入によって、電子メールを一斉送信することなく、誰がどういった専門分野に強いかを検索し、その人が在籍しているかどうかまで確認できるようになった。
Discovery Serverについては、過去の成果物を再利用することで業務を効率化することをねらっている。同事務所はDiscovery Serverを使って知的財産の完全な知識マップを作成しているらしい。ニューヨーク事務所だけでもノーツに400万件の文書が蓄積されているため、ノーツのNSFファイル内のデータまで検索できる機能は必須だった。Discovery Serverという製品選択は必至だったようだ。
すべてをロータス製品で統一することによって、電子メールから協働作業ツールまで、画面の見た目を共通化できたため、弁護士たちはそれぞれのツールがどの会社の製品化をあまり意識する必要がない。
同法律事務所はさらに携帯端末で情報を検索できる環境を整えつつある一方で、ポータルを使ったアプリケーションについてはIBMのWebSphereを標準製品にしているようだ。十年前に電子メールから始まった協働作業の基盤整備は、さらなる効率化と費用削減、そして弁護士の能力開発に寄与しているとのことだ。
ロータス製品をDiscovery Serverまで含めて一式そろえる導入事例というのも珍しいが、ここまで大規模な構築費用に対する効果を、この法律事務所がどのように数量化したのかがいちばん興味のあるところだ。情報共有化による効率化や費用削減効果というのは数値化が難しい。
よくやる手は資料検索にかかる時間がどれだけ減るかを、時間あたりの労働単価で乗算して費用削減効果として数値化するというものだが、だからといって実際に人を減らすわけではない。現実の効果としては残業代が減るくらいだが、これとて実際に減るかといえば、そうならないことが多い。特に日本企業の場合、残業は個々の従業員の生産性の低さではなく、組織としての意思決定が遅いことや、そもそも遅れを予期した無理のある日程計画で仕事をしていることがほとんどの原因だからだ。
また出張旅費の削減というのもあるが、ひざを突きあわせないと話にならないというのも日本的な文化で、大規模なシステム基盤を導入することを正当化するほどの効果が出るかどうか疑わしい。この法律事務所の場合は顧客をも含めた協働作業の場を提供しているので、直接顧客へのインパクトがある。情報共有基盤は社内や関連会社の範囲に限られる場合が多いので、この点は顧客満足度の向上による収益増として効果に織り込むことができるだろう。
僕も個人的に法律事務所のような知識集約型のオフィスに情報共有基盤を導入するプロジェクトにかかわったことがあるが、その会社はたまたま資金の豊富な時期に当たっていたので厳しく費用対効果を問われなかったからよいとして、情報共有や協働作業の基盤導入を財務的にどう正当化するかは永遠の課題だ。