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ノーツがなくなる日
( 20021219 )

Japanese/English

2002/12/11、米CNETのWebサイトにLotus Notes 6についてのレビュー記事が掲載されていたらしい。DominoではなくNotesのレビューなのでクライアント側に限定した評価だ。日本のIBMロータス・ソフトウェアのWebサイトにも紹介されていないので、ここで是非紹介しておきたい。それにしても日本のロータス・ソフトウェアのWebサイトはもう1か月も更新されていないし、ソフトバンクパブリッシングの『Notes/Domino Magazine』は毎月薄くなっていくような気がするし、こんなことではOracleのコラボレーション製品に追いつかれてしまうぞ。

最初のページに掲載されているレビューの要約には、「良い点」として「Welcomeページの新しいカスタマイズ機能、メール件名の色分け、添付ファイルを保存せずにそのまま編集できる点」の3点が挙げられている。あくまでクライアント側の評価のみなので、システム管理機能は触れられていない。「悪い点」として「スタンドアローンの電子メールソフトとしては不適、ロータスのアプリケーションとしかオンライン・コラボレーションの統合ができない」の2点があげられている。ノーツを単独のメールソフトと考えるユーザはいないと思うが。

要約の本文は、ノーツは企業向けメールソフトであり、マイクロソフトでいえばOutlookではなくExchangeの対抗馬であるとしている。これは当然。要約の最後は「もしノーツを利用している企業、あるいはノーツに移行しようとしている企業に勤めているなら、IT部門に行ってノーツ6.0のことを話さないほうがよい」と締めくくられている。この文の含意は「そんなこと話したらIT部門の人は飛びついちゃう」ということのようだ。

レビューは「セットアップとインターフェース」「機能」「サービスとサポート」「仕様」「ユーザからのコメント」「企業情報」に分かれている。「企業情報」は直接IBMのサイトに当たればわかるので、ここでは省略するとして、他の項について一つひとつ見ていこう。

まず「セットアップとインターフェース」の項ではセットアップの容易さが強調され、「たった5分間でメールを読むことができた」としている。インターフェースについては、以前のバージョンと「完全に違う」と書かれている。システム管理者が個々のユーザのWelcomeページを規定できる機能についても触れられ、あまりにWelcomeページが柔軟にカスタマイズできるので、「本当に便利に使うにはカスタマイズ機能でしばらく遊んでみる必要があるだろう」としている。ノーツ6のWelcomeページは、ビューを1個しか表示できないと言うR5での制約もなくなっているようだし、ローカルフォルダまで表示できるようだし、確かにそこまでやるかという感じだ。

次の「機能」の項では、「もっとも歓迎すべき新機能」として、メールを発信者別に色分けできること、システム管理者側での初歩的なスパム防止機能があげられている。メールの色分けは僕が仕事の関係で新宿のマイクロソフト本社に出向いてExchange2000のデモを拝見したとき、ノーツの経験があるという同社の技術スタッフが一生懸命宣伝していた機能だが、ノーツがようやく追いついたことになる。

そして添付ファイルを添付したままで編集できる機能が取り上げられている。Outlookでは編集前にいったん添付ファイルを保存し、編集してから添付しなおす必要があるのに、ノーツ6.0ではノーツ文書内でExcel、Wordなどのアプリケーションが起動され、そのまま編集・保存できる点が強調されている。このインライン編集機能は上記のMS本社のデモで、MSのスタッフが「これはノーツには出来ない」と強調していた機能。これもノーツが追いついたということだ。

あとはメールをカレンダービューの方にコピーして保管しておける機能や、グループスケジュールでの複数の時間帯(タイムゾーン)への対応、空き時間検索などがあげられている。またSameTimeとの連携も触れられている。常識的なレビューといった感じであまり面白みはない。

次は「サービスとサポート」の項だが、ノーツの導入にはIT部門の支援が必要だという点が最初に書かれている。これもノーツは単なるスタンドアローンのメールソフトではないのだから当然だ。その他に、オンラインヘルプやナレッジデータベースが提供されており、電子メールやフリーダイヤルのサポートも受けられる点がプラスに評価されている(日本国内でフリーダイヤルのサポートがあるかどうかは僕はよく知らない)。

次の「仕様」の項は単に動作環境やライセンス体系が書かれているだけなので、ここでは省略させていただく。その次、「ユーザからのコメント」では、56名のユーザのうち、89%が「良い」、11%が「悪い」という評価を与えている。ここではあえて悪い方のコメントだけを拾ってみる。

まず開発環境として最悪だ、という評価がある。関係データベースでもないし、Javaの実装も中途半端だし、COM/OLE関係もバグだらけで、いまだに帳票出力のカスタマイズができないし、J2EEのサポートもないなどなどの記述。ノーツは固有のアーキテクチャに閉じており、開発者はスパゲッティ―・プログラムを書かざるを得ないというのだ。

ノーツを関係データベースでないと非難するのは、餅屋に箪笥が売っていないと文句を言うようなものなので的外れもはなはだしいが、それ以外の部分は当たっているだろう。というよりノーツにオープンで標準的な開発環境を求めること自体がお門違いなのだ。ノーツは固有のアーキテクチャに依存しているからこそ、コラボレーション基盤として独自の地位を築き得ているのだ。

次のコメントは、社内でワークフローの追加機能を開発したい企業にとっては良い選択だろう、という主旨。マイクロソフト党であろうとIBM党であろうと、ノーツ6.0がR5より良くなっていることは認めざるを得ないと書いてある。なかなか公平な評価だ。

そしてワークフロー機能を拡張するために開発負荷を割くつもりがない企業なら、ノーツは単なるおそまつな電子メールソフトにしかならないと言っている。これにはまったく同意できる。ノーツをメールと掲示板、スケジュール管理にしか使わない企業は、ノーツのような高価なプラットフォームを維持する必要はない。

残り4つのコメントは、ユーザインターフェースの出来の悪さを非難するものが3件、メールデータベース以外にR5と変わったところは何もないという主旨のものが1件である。おそらくノーツのユーザインターフェースの悪さを非難する人たちは、ノーツが原形をとどめなくなるまで、つまりノーツがノーツでなくなるまで、文句を言いつづけるだろう。

そういうわけでノーツに対するマイナス評価はいつの時代も同じで、その個性(固有のアーキテクチャとインターフェース)に対する非難に他ならない。ノーツ6になったからといって目新しい非難は見つからない。このことは、ノーツの製品戦略と差別化ポイントが基本的に変わらないことを示している。

つまりノーツがこの世から消え去ることがあるとすれば、それはノーツをしのぐコラボレーション基盤がノーツにとって替わる場合だけだ。日本国内でサイボウズが頭打ちになっている状況を見ても、あと数年はノーツがその独特の地位をおびやかされることはないだろう。

しかしこのことはノーツが消える日が永遠に来ないということではない。たとえば、100Mbps級の実質帯域が企業内の端末一台にまで普及し、当然のようにパソコン上で複数拠点間のビデオ会議が可能になり、テキストベースのインタラクションが不要になったとしたらどうだろう。そのときはノーツだけでなく、電話もWebも含めて、電子的なコミュニケーションの世界そのものが大きく様変わりしているだろう。そうなったらノーツどころの話ではなくなっていることに間違いない。


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