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ノーツアプリはWeb化しない!
( 20050519 )

Japanese/English

Notes/Dominoはこれからどうなっちゃうのかについて最新情報を得るために、東京国際フォーラムで2005/05/17から05/18まで開催されていた「IBM Software World 2005」に参加した。ノーツに関する日本IBMからのメッセージをひとことで言うとこうなる。「ノーツを使うならノーツクライアント。ノーツアプリケーションをWeb化する必要はありません」。ノーツアプリを一生懸命Webブラウザから使えるように変換するのは、まったくのナンセンスとは言わないまでも、ほぼ無駄な努力ということだ。

その理由は、短期的には「ポータル」、中長期的には「リッチクライアント」の2つである。

まず、Websphere Portalという製品を使うと、ノーツデータベースを自動的に社内ポータルの部品化してWebブラウザで使えるようにしてくれるし、Web化しづらいノーツデータベースについては「Notes://サーバ名/ノーツデータベース名/」というリンクを張ることで、Webブラウザから直接ノーツクライアントを起動させることができる。

このWebsphere Portalという製品は、ノーツの観点から見るとノーツデータベースのWeb化を促進するのではなく、ノーツデータベースのWeb化を適当なところでいさぎよくあきらめてもらうための製品という印象である。Websphere Portalは「ポータル」という基本的な発想からして、あくまでWebブラウザというシン・クライアント(thin client)の中に、ノーツやERP、Webベースのアプリをすべて収容してしまおうという製品だ。

しかしIBMはノーツアプリについて、2、3年前まではとにかくWeb化してWebsphereのようなWebアプリケーションサーバ上で動くように変換しましょうというトーンだったのに対して、いまや「ノーツクライアントを使い続けましょう」という方向に完全に転換している。それにはちゃんとした理由があって、ノーツクライアントを使い続けるための道がしっかりついたからだ。それが「Workplace Managed Client」というリッチクライアント製品である。

「Workplace Managed Client」は、クライアントパソコン側にノーツをインストールして回らなくてもノーツクライアントが使える。Microsoft Excel, Word, PowerPointをインストールして回らなくてもそれらと互換性のあるオフィスソフトが使える。Microsoft Projectを持っていなくても、ガントチャートを描けるプロジェクト管理ソフトが使える。

「ポータル」というものが、Webブラウザの中にすべてのアプリケーションを収容してしまおうという考え方で、おのずとWord, Excel, ノーツなどのような高機能なソフトウェアを収容できないという限界があるのに対して、「リッチクライアント」というものは、いままでクライアントサーバ型、スタンドアローン型で動いていたソフトにいたるまですべてを収容してしまえる製品なのである。

ここまで書くと、CitrixのMetaFrameのような製品を思い浮かべる方がいらっしゃるだろうが、あれはどちらかといえばUNIXのX端末や、メインフレームのダム端末のように、「あたかも中央にあるコンピュータの画面を直接操作しているかのような状態を手元のパソコンで再現する」しくみでしかない。画面を再描画するためのデータ、キーボード入力やマウスの動きなどのイベントデータだけをサーバとやりとりする、遠隔操作のちょっと高級版みたいな感じだ。

対してWorkplace Managed Clientのような「リッチクライアント」は、あくまでソフトウェアはパソコン側で、パソコンのメモリやディクスを使って動かす。ただ、ノーツやワープロ、表計算、プロジェクト管理、プレゼンテーションなどのソフトウェアを、「リッチクライアント」という製品の一つの部品にしてしまい、その部品はサーバ(Websphere)から自動的に最新のものがダウンロードされる。

Workplace Managed Clientはクライアントパソコン側の基本ソフトがLinuxでも動く。と、ここまで書くと今度は、最近、日立製作所が個人情報保護法に対応するために全社的に導入しつつある、「パソコン側に情報をもたせないしくみ」のことを思い出す方がいらっしゃるだろう。ソフトウェアも含めてすべての使用ソフトをサーバから一時的にダウンロードする方式にして、作成したデータもパソコンには保存させず、中央にあるサーバへ強制的に保存させるようにするしくみだ。

Worksplace Managed Clientのような「リッチクライアント」はまさにこういった情報セキュリティを高めるためにも使える。Worksplace Managed Clientを集中管理するサーバ側の設定によっては、ワープロ、表計算ソフトなどで作ったファイルを、個人のパソコン側に保存させず、強制的にサーバ内のフォルダに保存させるようにできるのだ。

ところでWorkplace Managed Clientに搭載されているワープロ、表計算、プレゼンテーションは、マイクロソフト製品とどの程度互換性があるのかが気になるところだが、仕事でマイクロソフト・オフィス製品を使っている人のほとんどが、これらのソフトの全機能の1割しか使っていないという調査がある。Worksplace Managed Client搭載のこれらのソフトは、Word形式、Excel形式でファイルを読み書きすることはできるので、企業の経理部門・事業管理部門などのヘビーユーザ、そしてVisual Basic for Applicationを使っているファイルを除けば十分にカバーできる。

個々のワープロ、表計算のファイルにマクロという形でロジックが埋め込まれているというのは、たしかにヘビーユーザから見ると便利ではあるが、企業としてのIT資産管理から見ると「引継ぎできない業務ロジック」が散在しているということになり、リスクが高い。

Workplace Managed Clientの背後には「オフィスソフトから業務ロジックを排除しよう」という思想が隠れていて、業務に本当に必要なロジックは中央にあるコンピュータ側に実装すべきという、いかにもIBMらしい、とっても正しいIT資産管理の考え方が読みとれる。

IBMはWorkplace Managed Clientという「リッチクライアント」製品によって、「ノーツアプリケーションはノーツクライアントで」という明確なメッセージを伝えているだけでなく、クライアントパソコン側から情報漏えいが起こらないようにする情報セキュリティへの抜本的な対策を提示し、さらにはなんと、企業としての正しいIT資産の管理という思想にもとづいて、マイクロソフト・オフィス製品の牙城まで切り崩しにかかっているのである。

「リッチクライアント」というのは単なる技術の名前ではない。IBMはWorkplace Managed Clientという製品の背後に、これだけの野心を紳士的に隠し持っているのだ。すごい!


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