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![]() 社内情シス部門のraison d'etre ( 20011120 ) 今回論証したい命題は「創業年次の浅い企業が社内にグランドプランの描けるITコンサル人材を確保することは不可能である」ということだ。これを採用する企業側と、採用されるITコンサルタント側の両面から証明してみたい。 まず採用する企業側の諸条件を考えてみよう。創業年次の浅い企業は成長とともに業態が多様化し、組織の整備・拡大にともなって社内の業務フローも絶えず変化する。つまり社内の基幹業務の事務手続きや業務の種類そのものが進化し続け、一定でないということだ。 このような企業の中で社内情報システム部門のSEが経営戦略に沿った長期のグランドプランと同時に短期の非常に具体的なシステム展開プランを立案することは極めて難しい。 その理由の第一は、社員自身が急激に成長する会社の社内の組織変化や業務変化を「初めて」経験するからである。初めて経験する状況に対して体系的なリスク管理の知識のない社内情報システム部門の人員が、急激な成長にともなうリスクを加味したグランドプランを作成できるわけがない。作成できると考えること自体、非常に大きなリスクをともなう。 ではどうすればいいのか。話は単純で、過去に急激な成長企業のIT化を経験したことのある外部のITコンサルにプランニングフェーズをまかせることである。「餅は餅屋」ということだ。ただ、そんなことをすれば社内情報システム部の存在意義がなくなるではないかと思われる方もいらっしゃるかもしれない。 しかし社内に情報システム部を置く意味とはいったい何か、もう一度よく考えてほしい。社内の情報システム部門は、外部のITコンサルやSIベンダーの「勇み足」に対して、社内の情報化予算や社員の平均的な情報リテラシーのレベルといった経営資源上の制約条件を考慮して、それにストップをかける役割を果たすべきなのだ。 外部のITコンサルがひたすら全体最適を追求した攻撃的・革新的なグランドプランを描くのに対して、社内の情報システム部門はそれを社内の経営資源制約を加味した現実的な実行計画に落とす。両者のこのような牽制・協力関係があって初めて最適な情報戦略の青写真が描けるのである。 そのために社内の情報システム部門にとっていちばん重要な使命のひとつは、社内のユーザ部門と日頃のシステム構築を通じて長期的な信頼関係を築いておくということだ。つまり、情報システム部門が社外のコンサルやベンダーの言いなりにならないだけの知識とリスク回避の意識をもっているということを、日頃の業務のなかでユーザ部門に納得させておくこと。これが社内情報システム部門の存在意義ではないか。間違っても社内情報システム部門がリスク回避とは逆の「リスクをとる」ようなことをしてはいけないのである。 以上が採用する企業側から論証した「創業年次の浅い企業が社内にグランドプランの描けるITコンサル人材を確保することは不可能である」という命題である。次に、採用される人材側から同じ命題を論証してみたい。 が、これは論証するまでもないだろう。急激な成長をむかえている企業に対して、その経営戦略と整合性のある情報化のグランドプランを描けるような人材は、アクセンチュアやIBMコンサルなど外資系の企業でバリバリ働いた方が、はるかに儲かるからである。そこまで有能な人材がどうして一企業の社内情報システム部門に安住する気になるだろうか。コンサルティングファームで実績に見合った報酬を得たい、というのがそういうタイプの人材にとっては自然な発想だろう。 雇用される人材、つまり、情報システム構築の主に上流工程を指向する情報技術者の雇用市場を俯瞰してみたとき、アクセンチュアやIBMコンサルといったベンダー側を志望するのか、ユーザ企業の社内情報システム部門を志望するのかでハッキリと2色に塗りわけられる。 前者を志望する人材は、一つの企業に縛られず、場数を踏むことでスキルアップを目指している。後者を志望する人材は、逆に一つの企業の中でユーザ部門との長期的な信頼関係を築くなかで、経営資源の制約に見合った現実解を指向している。 創業年次が古く、社内の業務スタイルが固まっている企業や、ビジネスモデルが比較的安定している大企業の場合は、ユーザに密着している社内の情報システム部門であっても、経営戦略に沿った情報化の長期計画を立案することは可能であるし、むしろそうすべきだろう。 しかし、創業年次が浅い企業や、これからビジネスモデルが拡張・変動するような企業の場合は、社内の人員で情報化のグランドプランを描こうというのは危険である。しかるべき社外のコンサルティングファームに野心的な計画を作らせた上で、それを社内の情報システム部門が現実解に落とし込むというのがベストな体制だろう。しかも上述のように野心的な計画ができるITコンサルは、そもそも一企業に縛られたいと思うはずがない。 以上に見てきたように、創業年次の浅い企業、または今後ビジネスモデルの大きな変革を予定している企業が、グランドプランを描ける人材を社内に抱えようとすることは、採用する企業側からしても適切な選択肢ではないし、採用される人材からすれば「一ユーザ企業で社内調整みたいな仕事はしたくないよ」ということになる。これが雇用のミスマッチでなくてなんだろうか。 社内の情報システム部門のSEにはそれに適した、どちらかといえば保守的・現時主義的な仕事があり、外部のITコンサルにもそれに適した、どちらかといえば攻撃的・理想主義的な仕事がある。 両者がそれぞれの利害(社内情シス部門は経営資源の制約と利用者部門のITスキルという現実主義/外部のITコンサルは経営トップの意図にそった野心的なグランドプランという理想主義)で、お互いに牽制し合いながら同じプロジェクトにかかわるからこそ、結果として良い情報システムができあがるのであって、ビジネスモデルの安定した創業年次の古い企業でない限りは、社内の情シスが現実主義的な役割と同時に理想主義的な役割を担うことは望ましくないし、そもそも人材獲得においてミスマッチを起こすことになるのである。 以上のような観点から、社内の情報システム部門は本来何をすべきなのか、それぞれの会社の古さ・新しさや、社内業務やビジネスモデルの安定度を尺度として再考してみるべきだろう。 無断転載禁止
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