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![]() ダウンサイジングコストの適正把握 ( 19970831 ) 日本企業の情報化戦略を阻害しているのは、経営者の判断の遅滞と、たこつぼ型に過ぎる縦割り組織だけではない。 とりわけ従来の工業簿記における部門別原価計算制度が、ともするとダウンサイジングのコストの適正配分を妨げ、その結果、どの部門も情報化投資にしり込みする結果を招いている。 メインフレーム中心の時代は、ベンダーがハードウェア、ソフトウェア、運用ノウハウにいたるまで丸抱えで提供できたため、社内情報システム部門は自然に独立した外部組織として、あらゆる部門の情報システムを一括して運用・開発していた。 このような形態は、原始的なアウトソーシングとでも言うべきものであり、情報システム部門が独立している限り、従来の部門別原価計算制度で、十分情報システムのコストを適正に把握することができた。 また、部門別の費用負担についても、一定の課金制度が確立されていた(もちろん、利用すればするほど、コストが高くなるというのは、システムの利用促進につながらないので、大いに問題があるが)。 しかし、情報システムのダウンサイジングが進展するにつれて、このようなコスト把握、費用配分のしくみは明らかに限界にきている。 メインフレームとダウンサイジング後のクライアントサーバシステムの最大の違いは、管理・開発部門と、ユーザ部門が、はっきりと区別できるかできないかである。 メインフレームは両者の区別が明確なため、一方で発生したコストを、他方へ合理的に配賦するという仕組みが簡単に作れた。なぜなら、開発部門/ユーザ部門という二分法は、製造部門/間接部門という二分法と完全にパラレルだからだ。従来どおりの部門別原価計算をやってさえいれば、それでよいのである。 しかし、クライアントサーバシステムの場合、ダウンサイジングを関連会社や外部のSI業者にアウトソーシングしない限り、開発部門/ユーザ部門という明確な二分法はありえない。 したがって、従来どおりの部門別原価計算の考え方から抜け出せない限り、いったいコストは「どこで」発生したのか?「だれが」負担すべきなのかという、不毛な問題に頭を悩ませることになる。 まったく新しい種類の経済活動には、新しいコスト測定の尺度が必要なのは言うまでもないことだが、多くの関係者は旧来の概念を見直せないでいる。 ダウンサイジング後の情報システムの問題点をまとめると、次のようになる。
これらの問題を解決するためには、まず、コスト把握の制度上、仮想的な情報システム部門を作ることである。 もちろん、現実の組織改変がともなうことが望ましいが、それができない場合は、ダウンサイジングについて利害の共通する複数の部門について、それらすべてのダウンサイジング・コストを計上するための、バーチャルな情報システム部門を設定する。 この方法の新しさは、実在する組織に必ずしも対応しない、仮想的なコスト計上単位という点にある。 実際、情報システムとは、実体のないものであり、その利益は物理的に分割された一つの部門だけが享受するとは考えにくい。 (例えば、ある部門がイントラネットで情報発信する場合、その利益は、発信した部門での事務処理の合理化か?受信した部門での機会損失の減少か?答えは、その「両方」である)。 したがって、コストを集中して計上するシステムを、人為的に作らない限り、クライアントサーバシステムのコストを正確に把握する事は絶対に不可能である。 もしもこのバーチャルな原価部門という方法を採用しなければどうなるだろうか?確実に部門間のダウンサイジングの不均衡が起こる。ある部門では異常なまでにダウンサイジングが進んでいるのに、他の部門ではまったく手もつけられていないという状況である。 確かにこのような部門間の不均衡は、ある部門の部門長の鼻を高くすることには貢献するかもしれないが、企業全体として見た場合は、非効率以外の何物でもない。ダウンサイジングは、全部門が並行して展開しなければ決して実のあがらないものだからだ。 販売部門でいえば、業績のいい部門だけがシステム開発に金をかけることができ、悪い部門は一向にその余裕ができない。 この状況は前者にとっての好循環と、後者にとっての悪循環にロックインし、ますます部門間の格差を広げる結果になる。システム開発によって合理化の進んだ部門はますます利益を上げ、合理化の遅れた部門はますます赤字幅を広げるといった具合に。 これは企業全体としては明らかに不利であると認識する視点が、経営者に求められている。情報システムに限っては、部門間競争・独立採算は無意味である。 次に、ダウンサイジング・コストを計上するためのバーチャルな部門を設定した後、計上された費用をどのように、実在する各部門に配賦するかという問題がある。 犯してはいけない誤りは、利用量に従って配賦するという方法をとることである。 通常の間接費用の配賦などでは、「どれだけ当該の費用の支出に対応する利益を享受しているか」という基準から配賦がなされる。「レート」という考え方はその最たるものである。 そして、頭の固い経営者たちは、ダウンサイジング・コストについても、この原則を適用しようとする。つまり、まず誰がそのシステムを利用するかを名指しにし、その部門にコストを負担させるという方法である。 しかし、少し考えれば分かることだか、この方法では、そのうち誰もダウンサイジング後のシステムを使いたがらなくなる。 つまり、ダウンサイジングに積極的になればなるほど、自分のふところを痛めることになるからである。しかも、クライアントサーバシステムによって「誰が」利益を受けるかなど、簡単に名指しできるはずがない。強いて言えば、「全員」である。 では、何を基準にコストを配賦するのか。それは、「合理化の遅れ具合と比例する要素」である。たとえば、人員比など。間違っても、端末数や、ネットワーク上のパケットの流量など、合理化の「進展」と比例する要素を配賦基準に選んではならない。 合理化が遅れて、いつまでも人海戦術で対応しようとする部門は、逆に他部門で進行する情報システム開発のコストをより多く負担させられることになる。これは、部門の責任者にとって、情報システムによる効率化を進めるための、強力なモチベーションになるはずである。 幸い、部門単位のクライアントサーバシステム開発コストは、部門の予算全額に比べて致命的な割合にはならない。おそらく人件費の方が数十倍の額になっているはずである。 その意味で、このようないわば「逆進的」なコスト配賦の方法は、経営者が社内システムのダウンサイジングを進める当たって、戦略的なコスト管理の方法の一つとして、十分な有効性を持っている。 ただ、従来どおりの部門別原価計算の考え方から抜け出せない限り、このような戦略的なコスト管理の手法を考え出すことはできないだろう。クライアントサーバシステムという、まったく新しい情報システムの登場にともなって、コストを管理する立場にある人々も、新たな時代に適応した発想の転換と、素早い対応を迫られている。 無断転載禁止
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