Notes/Dominoとデスクネッツ・スタンダード版の機能比較の続き。今回は「ワークフロー」機能である。デスクネッツが同じ製品カテゴリで、同じ価格帯のサイボウズOfficeと比較してコストパフォーマンスで優位に立っているのは、主にこの「ワークフロー」機能にある。
デスクネッツ・スタンダード版にはワークフロー機能が付属しているが、サイボウズOfficeではオプションとなっているためだ。サイボウズにワークフロー・オプションを付けると価格が約1.5倍になる。したがって、中小・中堅企業が手軽に使えるグループウェアを導入しようということで、「どうせ導入するなら承認や稟議も電子化したいな」と考えると、必然的にデスクネッツを選択する結果になる。
しかし、ワークフロー機能を導入する場合は、承認済の書類をどのように保管したいのかをよく考えてからにした方がよい。
たとえばデスクネッツのワークフロー機能では、最終決裁者が承認した承認済み書類は、すべて「文書管理」機能の「ワークフロー」という名称のフォルダに、HTML形式の添付ファイルとして蓄積されるという仕様になっている。
「ワークフロー」という名称のフォルダではなく、別のフォルダに蓄積したいと思っても設定変更はできない。申請書の内容によって異なるフォルダに整理したい場合は、承認が完了して「ワークフロー」フォルダに順次蓄積されていく申請書を、一つひとつ手作業で別のフォルダに変更して保存する必要がある。
また、承認済み書類がHTML文書の添付ファイルとして蓄積されるので、その申請書に埋め込まれている文字・数値の情報を、たとえばCSVファイルで書き出すなどして再利用することがまったくできない。せめてXML文書になっていれば、まだXML解析ツールで解析してデータベース化することもできるが、INPUTタグにIDやNAMEさえ付いていない単なるHTML文書なので、そこから先のデータ活用が全く不可能なのだ。
しかもデスクネッツの「文書管理」機能は、添付ファイルの全文検索が不可能なため、HTML文書の添付ファイルとして大量に蓄積された承認済み申請書から、ほしい申請書を探すには、件名を手がかりにするか、一つひとつ添付のHTML文書を開いていくしかない。
Notes/Dominoのワークフローであれば、承認済み文書に埋め込まれているデータの再利用は当然可能である。Notes/Domino用のワークフローパッケージなら、カスタマイズ用に設計が公開されている製品であれば、自作のNotes/Dominoデータベースと同様、承認済み文書をLotusScriptや外部からODBC接続するなどして再利用できる。自作のワークフロー・アプリケーションは言うまでもない。
たしかにデスクネッツのワークフロー機能には便利な点もある。承認フローを申請者自身が自由に設定・変更でき、承認ステップ数は無制限である。ただしこれは逆に言えば、承認者によって自動的に承認フローを決定できず、内部牽制がまったく働かないと言える。また、設定できる承認フローは、1人ずつ書類がわたっていくという直線的なフローのみで、金額による分岐処理や、N人のうち1人承認すればOK、などといった複雑なワークフロー処理はまったく不可能だ。
ついでにデスクネッツの「タイムカード」機能にもふれておくと、本来なら上司は部下の提出した勤務表に対して、承認行為を行いたいはずだ。上司が承認して初めて、正式な勤務実績として人事担当者にわたる、というのが一般的な勤怠管理の業務の流れだろう。しかしデスクネッツの「タイムカード」には上司が電子的に、部下の勤務実績を承認する機能がない。本当に単に出退勤の時間を記録するだけの機能なのだ。
また、デスクネッツのワークフロー機能では、申請書式の入力フォームをWebブラウザ上で組み立てる機能がある。テキスト入力欄やチェックボックス、ラジオボタンなどで、申請書の書式を組み立てる機能で、これはなかなか使いやすい。デスクネッツの「アンケート」機能にも同じように入力フォームを組み立てる機能が付いているので、項目どうしの計算処理などをやらない限り、かなりイメージに近い入力フォームを簡単に組み立てることができる。
しかしこれらの便利な点も、承認済みの申請書がデータとして利用できないのでは、かなり存在意義があやしくなる。
そもそもデスクネッツ・スタンダード版は内部的に関連データベースを使わず、すべてのデータをファイルベースで管理している。デスクネッツを導入したサーバのデータフォルダをのぞくと、あらゆるデータがテキストファイルとして保存されているので、デスクネッツ上の権限設定などまったく無関係に、他人のスケジュールなどがのぞき放題になる。したがって承認済み申請書がデータとして再利用できないのは、システム構成上、当然といえば当然である。
以上のように、デスクネッツやサイボウズなどのWeb型グループウェアを導入しようとしている中小・中堅企業は、ワークフロー機能にわずかな期待も持ってはいけない。デスクネッツ・スタンダード版についているワークフロー機能で間に合うような承認フローなら、紙を回すか、電子メールで添付ファイルを回す運用で十分なはずである。
「帯に短し、たすきに長し」というやつで、デスクネッツ・スタンダード版やサイボウズOfficeのワークフロー機能は、存在しないものと考えるのがいいだろう。そして紙を回したり、電子メールで回覧したりする以上の機能をワークフローに求めるのであれば、Notes/Dominoや、ワークフロー・パッケージを別途導入すべきである。
そして、グループウェアとワークフロー・パッケージで、ユーザIDとパスワードが別々になるなどというのはナンセンスなので、Notes/Dominoのようにグループウェアとしてもワークフロー基盤としても使える製品を思い切って導入するのが、結局は二重投資を避ける賢明な方法になる。