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今週の流行語大賞!「3層C/S」
( 19980701 )

Japanese/English

大企業の情報システム部門の質は、「メインフレーム文化」から「クライアントサーバ(以下C/S)文化」へどれだけ脱却できているかにかかっている。

ところが、多くの情報システム部門は、お金をかけてC/Sシステム要員を育てる気がないようである。それはなぜか。メインフレーマーは、心の奥底でC/Sシステムを「おもちゃだ」と思っているからだ。

このページは僕と同じ会社の方も読んでおられるようなので、あまり露骨に表現できないのだけれど、最近、僕は職場の方々にグループウェアの開発手法を2時間ほどで講義するという機会を頂いた。

学生時代に塾講師のバイトに熱中していた僕としては、人にものを教えることは嫌いではない。だから、この機会もとても楽しみにして、講義そのものもそれなりに楽しむことができた。

ただ、個人的な楽しみの一方で、疑問に思ったことが二つある。一つは、「SEだったらグループウェアの開発手法くらい自分で勉強すべきだろう」ということ。もう一つは、「グループウェアの開発手法を、たった2時間で教えられるはずがないだろう」ということだ。この2点はいずれも、「メインフレーム文化」が強い情報システム部門の「C/S差別観」をよく示している。

最初の点は「たかがグループウェアごときの教育に大金は使えない」という考えのあらわれであり、第二点は「グループウェア程度の『おもちゃ』の使い方なら2時間で一定の理解に達する」という安易な発想を示している。

一部のメインフレーム出身SEの頭には、どうやら次のような三段論法が染みついているようだ。


  • メインフレームだってC/Sだって、やってることは同じだ。
  • メインフレームに比べれば、C/Sは小さいし、信頼性も低い。

  • だから、C/Sは、メインフレームに比べると「ちゃち」だ。

    こんな「C/S差別観」を持っていないと言い切れるメインフレーム出身SEがどれだけいるだろうか。

    もし本当にこのような差別観を持っていないなら、人から教えられなくても必死でグループウェアを勉強するだろう。また、たった2時間でC/S開発環境をひととおり理解できるなどと考えないだろう。

    たとえば、英語の例で考えてみよう。ここに英語ペラペラのAさんがいる。Aさんがあなたに2時間英語を教えただけで、あなたも英語ペラペラになるだろうか?あなたがすでに英語ペラペラでない限り、まず無理だろう。

    では、C/S開発環境(グループウェアなど)をマスターするのにたった2時間で十分だとどうして思うのか?「C/Sシステムを軽く見ているから」という以外の理由が、そこにあるだろうか。

    このような「メインフレーム文化」の根強い情報システム部門は、C/S開発環境の選定や教育に本気で取り組もうとしないだろう。C/S経験のないメインフレームSEがC/S開発環境の決定権を持つなどというボタンの掛け違えを平気でやったり、C/S開発環境の教育のほとんどを社員の自己啓発にまかせたりする。

    そのような情報システム部門では、今ごろ「3層C/S」が流行語になったりするのだ。

    僕は就職活動中、いくつか独立系システム・インテグレーターの面接も受けたが、当時からすでに「3層C/S」はホットな技術だった。

    去年、ある理由で、某電子機器メーカー販社の情報システム部門のマネージャーにお話をうかがう機会があった。そこではアメリカで「3層C/S」に関する論文が発表されたときからすでにこの技術に着目し、実際にTPモニタを利用した「3層C/S」を、96年春の段階で開発着手し、約1年間で稼動にこぎつけている。しかも、コンポーネント開発の手法も取り入れている。

    こうしたことが可能だったのは、このマネージャーがC/Sをメインフレームの単なる縮小版や「おもちゃ」と考えず、C/Sシステム構築へ向けて「ヒト・モノ・カネ」の体制を整える姿勢を持っていたからだろう。

    これに対して、いつまでも「メインフレーム文化」がぬけない情報システム部門は、メインフレーム出身の古参技術者にさまざまな決定権を与えたままで、正しい技術的判断ができない。また、C/Sに関する十分な教育の機会も与えない。

    結果として、安易な設計のデータベースを作って運用に苦しんだり、とんちんかんなC/S開発環境を選定して予算をいたずらにふくらませる。

    こうして「メインフレーム文化」をもつ情報システム部門は、ユーザ部門にメインフレームを使いつづける口実を与えてしまう。そして情報システム部門自身は、「メインフレームの方が信頼性がある」という言い訳をするが、真実は彼らがC/Sに本気で取り組んでいないだけなのだ。

    「C/S文化」へ切り替えるためのコストを負担しなかったばっかりに、結局メインフレームの高コスト体制を温存している。その元凶は、いつまでたっても「メインフレーム文化」から脱却できない彼ら自身なのに。

    これは情報システム部門が抱える一つの「構造問題」であり、一朝一夕に変わるものではないだろう。


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