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SEのための会社類型論
( 20050703 )

Japanese/English

今年の春に執筆にたずさわった翔泳社『SEの現場 2005』が先月2005/06/14に発売され、Amazon.co.jpの読者コメントでは評価が分かれているが、個人的には第7章の会社選択力(伊藤靖さん執筆)が面白かった。SEにとっての就職先・転職先の会社選びを、ここまですっきり整理した記事には今までお目にかかったことがない。

僕自身、いままですでに7社のそれなりに名前のとおった企業で正社員の社内SEやベンダー側のプリセールスSEとして働いてきているが、たしかにシステムを開発する側、使う側の企業をタテ軸、成長しつつある企業と、成熟した、あるいは衰退しつつある企業をヨコ軸にとって、企業を4つに分類するというマトリックス表は、会社選びの一つの基準としてわかりやすすぎるほどにわかりやすい。

企業文化というのは「企業それぞれ」という面はあるが、それでも企業文化のかなりの部分は、システム構築にかかわる立場の違いや、創業からの歴史の長さを基準にして一般的な説明が可能である。おそらく日本という環境では、創業以来の歴史の長さが企業文化に与える影響は、欧米よりもはるかに大きいのではないか。

欧米企業に比べて日本企業はまだまだ前任者の方針を踏襲するタイプの、連続性を重視した経営陣の交代が圧倒的多数で、経営トップが変わったからと言って、がらっと文化が変わるということはほとんどない。ということは、創業からの時間が経てば経つほど、企業文化は固定され、社員の日常業務における行動もその型に合ったものに固定される。

日本ではITの世界でさえ、まだまだ労働力の流動性が低く、僕のように6回も転職している会社員が特殊な人物と見られる。だからなおさら、企業の年齢が高くなればなるほど、社員もそれだけ長くその企業にとどまって企業文化の固定化に貢献するということになる。

このような日本の労働市場の性質を考えると、むしろ日本企業こそ、『SEの現場 2005』の第7章がやっているようなわりきった類型分析が、かなり役立つということになる。

そしてこの第7章の秀逸なところは、マトリックス表のそれぞれの分類にあてはまる企業が、マトリックス表の他の部分に移動していくという、企業のライフサイクルの動態論まで扱っているところだ。最初はベンチャーだった企業も、時間の経過とともにその文化を変質させていく。当然といえば当然のことだが、「自分に合う会社」という基準で働く会社を選択できる人にとっては、自分よりも企業の変化のスピードが速いということだってありうる。そのときは会社の年齢も転職のきっかけになり得る。

転職を考えている人たちはSEに限らず、なかなか自分の転職先の選択基準を客観的に見つめなおすことが難しい。この第7章のような一種わりきった類型論というのは、そんな転職志願者にとってはかなりの手助けになるのではないか。「会社なんて関係ない。自分の仕事に集中するだけだ」という職人的SEにとって会社の類型論などどうでもいいことだろうが、働く環境を大切にしたいSEにとってはとても重要なことである。


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