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NO.78  
2003年11月30日  -モーツァルトを聴こう-

 今朝は降り続いた雨が止んで、風が吹いています。雨雲が南東の方へ流されて空が少し明るくなって来ました。紅葉と言うより黄葉と言う方が正確なこの辺りの山の色が鮮やかさを増して来ました。そんな爽やかな朝からずっとモーツァルトを聴いています。
 私には音楽の才能は全くありません。楽器を弾ける訳でもなく、楽譜が読める訳でもなく、ただ少年時代から音楽を聴くことは好きでした。戦前から戦中にかけて音楽的な環境は皆無と言って良かったと思います。音楽が好きなどと言おうものなら、軟弱だとか非国民だと謗られかねない時代だったのです。軍歌とか歌謡曲で無く、本当の音楽と言えるものに出会ったのは旧制中学の三年生の頃「今日は凄いものを聴かせてやる」と友人が持参したレコード盤をポータブル蓄音機で聴いたのがクラシックとの最初の出会いで、それがベートーベンの「田園」でした。次に聴いたのが「運命」で、この曲で心臓をぎゅっと一掴みにされたと言う戦慄的な記憶が残っています。
 とにかく戦後の荒廃期で文化的なものに飢えていた所為でしょうか、純粋に楽しく美しいものに圧倒されたのでした。その後アメリカ映画の中のジャズやミュージカルの楽しさに陶酔したものですが、中でも記憶に残っているのは「オーケストラの少女」の中で聴いたハンガリアン・ラプソディ第2番のクライマックスとストコフスキイの指揮するシーンです。ドラマの感動とギリシャ彫刻の塑像のようなストコフスキイの端正な美しさが脳裏にこびりついて、半世紀以上経った今でも忘れられません。
 最近、体調が悪くなってからストレスと音楽の関係に非常に関心が高まるようになりました。音楽を聴かせて育てた野菜の話題とか、乳牛にモーツァルトを聴かせると乳の出が増すとか、或る養護老人ホームでは就寝前の時間に穏やかなクラシック曲を流して安眠効果があったとか、様々な話を聞きます。それらの中でも強烈に私の心に響いたのは、癌に侵されて余命僅かと宣告された少年の話でした。医師のアイディアで少年の得意な美術の才能を生かして、癌細胞と闘うストーリィの絵を描かせた所、みるみる内に癌が治ったと言うのです。そして或る医師の研究に依ると自己治癒力を増すためには、ストレスを排して楽しく笑ったり、快い刺激や感動が大切だとのことです。更にその音楽好きな医師は、クラシック曲の中ではモーツァルトが一番良いと言うのです。
 さて、私にとってもモーツァルトは最も楽しく聴けるものなのです。何故か良く判らないのですが、様々なクラシック曲の中で一番嬉しく響くものなのです。それは映画「アマデウス」に描かれた天才の軽薄とも思える奔放な生き方と、才能の乱費と悲劇的な死の結末を知っても全く損なわれることはなく、日々益々支配されて行く感じで、今や宗教に近いものになりつつあります。もしかすると私は聞き手としてのサリエリになってしまうのかも知れませんが、それはそれでも良いと思っています。  では、また。





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