川柳入門教室
平成十二年度第3四半期




2000年12月19日の教室

              課題【 歳暮 】   板尾岳人選

   (佳作)
    近頃は歳暮の時期も忘れがち     紀 子
    不景気風吹いて小さく成る歳暮    晃 一
    独り居て暮れの荒巻持て余す     信 子
    お歳暮が日本らしさを呼び戻す    郁 子
    お歳暮も賀状も絶えて縛が解け    泰 直
    お歳暮に日頃の無沙汰を背負わせる   勉
    お歳暮のカレンダーだけは数が増え  喜 彦
    辛党と知れてビールの来る歳暮    昭 二
    夫の歳暮いつも私が開けている     桂
    奮発の歳暮打算も包み込む      睦 彦
   (入選句) 
    真心にのし紙を貼り年の暮れ      昭
    お歳暮も財布のひもに締められる   昭 二
    さりげないギフトの裏を見透かされ  泰 直
    うまそうな歳暮自分に送りたい    忠 雄
    お歳暮に添える手書きのメッセ−ジ  睦 彦
    お歳暮が少なくなった定年後      保
    くれるならお歳暮よりもお年玉    丈 測
    ほしい品親子聞き合いする歳暮    晃 一
    お歳暮に心が見える里の友       昭
    お歳暮を選ぶ苦楽は妻のもの     喜 彦
    それぞれに真心お贈る年の暮れ    晃 一 

  (人)歳暮一号大きな顔で鎮座する      桂

  (地)中元の借りを歳暮で調整す      紀代子

  (天)老妻に歳暮代りの蟹料理       忠 雄

         (軸吟)
    
    歳暮が方向音痴で届けられ      岳 人 
    
    恋人が一杯つめてある歳暮      岳 人

    母からの歳暮乳房が入れてある    岳 人 
 

             【 雑詠 】   生徒互選

  (3)冬よ来い鰤大根の友がいる       山 風
  (3)熊野古道歩いて心入れかえる      紀 子
  (3)背を向けた女の咳に暮れの風       昭
  (3)私の味方なのだろ晴れてきた       桂
  (3)たまに来てさっさと帰る嫁夫婦     睦 彦
  (7)講演を賢い顔で聞きにいく       昭 二




2000年12月5日の教室

              課題【 残る 】   板尾岳人選

    残る日も三十路となった世紀末     昭
    残高のある通帳は捨てられず     睦 彦
    華やかに色香残して友帰る      信 子
    同窓会面影残る友と会う        勉
    残り物集めて一品主婦の腕      紀 子
    茶柱を残し縁起の味を呑む      晃 一
    残照や小さな炎みつけたり      信 子
    次世代へ借金残して見栄を張る    忠 雄
    吸殻を残したままで恋が行く      桂
    残り火を抱いた枯葉が燃え尽きる   晃 一
    大好物残したままで夢が覚め     忠 雄

  (佳)あと味の悪さが残る茶番劇      昭 二

  (佳)慕情なお溶けぬ谷間の残り雪     山 風 
  
  (佳)残された渋柿一つ冬睨む       忠 雄

  (佳)云い過ぎの悔いが残って寒い道    丈 測

  (佳)通帳に遊んだつけが残っている    信 子

  (人)どうしても残っていたい訳がある    桂

  (地)塔影を残して兄は向こう岸      山 風

  (天)残照に照れた木の葉が舞い踊る    紀代子

         (軸吟)
    
    愛という文字が残っていた妻に    岳 人 
    
    バラの包装紙に残る女偏       岳 人

    もう少し妻と眺めている残花     岳 人  

             【 雑詠 】   生徒互選

  (3)胸底に足りない彩が一つある      信 子
  (4)人恋し黙ってすする中華そば      睦 彦
  (4)来なくてもいいのにまた来る十二月   紀 子
  (4)乗り越して坐っていたい暖房車     忠 雄
  (5)もう一本あと半本の親子酒        昭
  (7)背中から押されるような年の暮れ     勉




2000年11月21日の教室

              課題【 深い 】   板尾岳人選

    深いしわ笑顔の奥の強い意思     紀 子
    清濁を呑んで静まる深い海      昭 二
    娘も嫁ぎため息深く秋暮色       昭
    薄幸な人には深い話する        桂
    深い溝測ってみればただの愚痴    泰 直
    慈悲深き弥陀のうてなに身を委ね   晃 一
    深深と頭を下げる選挙前        勉
    血の絆遺産巡って深い溝       信 子
    焼き芋の売り声秋を深くする     忠 雄
    百才の笑引きたてる深いしわ     丈 測
    この水の深さ知らない水すまし    忠 雄
    時雨れ空女疑い深くなり       山 風
    お愛想が良すぎて疑念深くなる    直 樹
    深み行く秋と戯れ紅葉狩り       昭
    深い溝思わぬ人が越えてきた      桂
    罪深く生きる懺悔のボランティア   晃 一
    あの時の深いおじぎは何の意味    紀 子
    深い理由有りそで無いのが夫婦の縁  紀代子
    深海で本音が云えず二日酔い     泰 直

  (佳)深い皺戦中戦後を物語る       山 風

  (佳)聞き耳が興味の深い方に向き     晃 一 
  
  (佳)甘言に踊った果ての蟻地獄      直 樹

  (佳)深い穴掘って私の根を探す       桂

  (佳)年月で癒せぬ深い傷もある      睦 彦

  (人)干し柿の黒づき母の深い皺       昭

  (地)深呼吸元気なわたし演じよう     信 子

  (天)愛憎の深いところに住む魔物     忠 雄

         (軸吟)
    
    ふる里の池の深さに嫉妬する     岳 人   

             【 雑詠 】   生徒互選

  (3)強がりがひらきなおって眠られず    郁 子
  (4)指先に止まってよりの深き仲      晃 一
  (5)電車内しゃべってみたい人がいる     桂
  (6)原人が石投げ返した考古学       泰 直 




2000年11月7日の教室

              課題【 化粧 】   板尾岳人選

    犬走り子供もはしゃぐ化粧雪      昭
    いい予感今日は化粧の乗りが良い   睦 彦
    光陰不惜妻自画自賛化粧室      山 風
    化粧箱開ける場所を考えて      紀 子
    化粧品家計簿には載せてない      保
    髪寂し男も化粧したい秋       晃 一
    母はまだ化粧している秋の街      桂
    お化粧で痴呆の女も輝きぬ       まもる
    チンドン屋道化化粧のあたたかさ   信 子
    捨てきれぬ女の意地が眉を引く    昭 二
    冷え込みが山の化粧を促せる     晃 一
    お化粧の手順を堪能した車中     泰 直 
    
  (佳)顔は無理心の化粧いたします     紀代子

  (佳)化粧するつもりはないが化粧室    喜 彦 
  
  (佳)睨みっこ鏡が笑う長化粧       晃 一

  (佳)化粧して出陣の時待っている      桂

  (佳)十五夜の月もすすきで化粧する     昭

  (佳)そようなら祖母へ冥土の紅をさす   満寿美

  (佳)丹念に電車で化粧する少女      昭 二

  (人)化粧した糟糠の妻に惚れ直し      保

  (地)泣き言を言うまい強く紅を引く    忠 雄 
 
  (天)化粧するきのうの悪事消すように   満寿美

         (軸吟)
    喜びを洩らさぬように化粧する    岳 人

    私に手紙下さい薄化粧        岳 人

    淋しさに向き合っている三面鏡    岳 人   

             【 雑詠 】   生徒互選

  (3)会いたいなあけびほんのり母の味    直 樹
  (3)終章は神にまかせて日々を舞う     信 子
  (4)子沢山ますます細る親のすね       勉
  (4)裸婦の絵に目線上げ下げ美術展     山 風
  (4)ぬくもりを手に残したまま孫帰る    郁 子
  (4)手を抜けばひねくれて咲く菊の花    泰 直
  (5)ちゃん付けで呼び合う友が減っていく  昭 二 




2000年10月17日の教室

              課題【 板 】   板尾岳人選

    痴話喧嘩見栄と未練の板ばさみ    紀代子
    初秋刀魚ぴんといばって板の上    郁 子
    親方の声に板場が張詰める      直 樹
    自分史にどの看板を掲げよう     満寿美
    板前のこだわり箸で迎え撃つ      桂
    立て板に水の訓示は眠くなる     昭 二
    月の宴美女に肩貸す渡り板      晃 一
    黒板の恋がいまだに消せずいる     桂
    板になる日が早かれと苗樹植え     保
    畳より板張り好む世とはなり     喜 彦
    柏木の音高らかにミレニアム     まもる
    黒板が学ぶ心をノックする      紀代子
    板ばさみ悲しき性が抜けられず     昭
    羽子板の羽音響けよ新世紀      まもる
  (佳)羽子板の巳が新世紀待ちわびる     昭
  (佳)ノータイの姿がやっと板につき    昭 二    
  (佳)踏み板を奇妙に渡る千鳥足       昭
  (佳)まな板のリズム機嫌がいいらしい   昭 二
  (佳)まな板が同根のドブ板思いやる    まもる
  (人)まな板にのっても鯉ははねまわる    勉
  (地)じゅうたんを剥がし板の間大あくび  泰 直
  (天)まな板の傷が知ってる妻の愚痴    忠 雄
 
       (軸吟)
    長い塀だ男の長い一生だ       岳 人
    柩にはたっぷり濡れた板がよい    岳 人
    立て板に水なり愛は未熟なり     岳 人

     
             【 雑詠 】   生徒互選

  (3)料理の本積んでばかりの秋の夜     郁 子
  (4)自分史のページの中にある涙      信 子
  (5)まっすぐに投げれば届く距離なのに    桂
  (5)おらが村神は出雲にに行ったまま    睦 彦
  (6)カーテンを開けておこうよ秋の月    満寿美
  (6)さぞ着物似合う人だな筆の跡      直 樹


古典鑑賞

     ☆★☆江戸川柳(艶句、その二)☆★☆


     乱れても今朝はご機嫌おぐし上げ

     させもせずしもせず二人名を残し

     口説きいいよふに若後家とりまわし

     柏餅餡をくじって叱られる

     借金の穴を娘の穴でうめ

     鼻息で知れる隣の仲直り

     初陣の娘こわごわ組み敷かれ     

                                「誹風柳多留」より




2000年10月3日の教室

              課題【 坐る 】   板尾岳人選

    坐禅組み警策の音風に乗る      信 子
    長居客坐り直した俄か雨        昭
    超ミニが向かいに坐り目が困る    信 子
  (佳)茶を点てる娘の足指が泳ぎ出す     昭
  (佳)鬱の日は私の坐る場所が無い     満寿美    
  (佳)正座した私にはやく会いに来て     桂
  (佳)耳寄りな話しと聞いて坐りこむ    昭 二
  (佳)どしゃ降りで新幹線と坐りこむ    満寿美
  (人)肩書きが外れて坐る固い椅子     昭 二
  (地)瞑想も足の痺れが邪魔をする     山 風
  (天)野仏と横に坐って深呼吸       睦 彦

 例句 温泉や坐る羅漢に寝る羅漢       栞 
       (軸吟)
    盛り合せパセリ一つが坐るなり    岳 人
    御所へ手をついて高山彦九郎     岳 人
     
   

             【 雑詠 】   生徒互選
  (2)咳ばらい一つ残して秋に出る      山 風
  (2)叶わない願いを海に捨てに行く      昭
  (3)吊るされた服が出番を待っている     勉
  (4)まだやる気満々辞書を買ってくる    昭 二
  (7)行儀よく寝かせてくれる秋の風     晃 一
  (9)ゴミ置き場エゴも誠意も置いてある   忠 雄 


古典鑑賞

     ☆★☆江戸川柳(艶句、その一)☆★☆


     なぜ小豆飯だと兄は聞きたがり

     毛は立った三冊の秘書かりて置き

     茶臼では柄洩りがすると亭主言い

     山伏へよなよな見廻ふ大天狗

     薬師様かわらけもあり蛸もあり

     これからはどこですべえと麦を刈り

     伊勢の留守床闇にする不届きさ

                                「誹風柳多留」より






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