課題【 背中 】 板尾岳人選
孫の手を使って一人背中掻く 信 子
銭湯で背中流して知る人情 紀代子
好々爺孫に恥らう灸のあと 山 風
マウンドで投げる背中に孤独見る 信 子
背を晒す若さ視線をはねかえす 忠 雄
背伸びする子へ煽てたり諭したり 山 風
振り向かず去るには背中狭すぎる 桂
背中越し妻の指図で走らされ 睦 彦
勝ち名乗り花道を行く光る背な 丈 測
恋人の眼は背中でも感じます 喜 彦
背水の陣で背中さむくなり 勉
バレタかな返事は背中でいたします 満寿美
背と腹とかわってほしい時もある 勉
背伸びして一流校を視野に入れ 昭 二
(佳)不覚にも背中ばかりに傷をもつ 桂
(佳)父の背が許すと云って揺れている 昭
(佳)やせた背に男の意地をのぞかせる 昭 二
(佳)背を向けてギターと語る子に夕陽 泰 直
(佳)わらべ歌母の背中は夢の国 山 風
(人)子に見せる背中がまぁるくなっている 卓 三
(地)しゃれた名の街を背にして屋台酒 昭 二
(天)野良帰り夕日背中を滑り落ち 晃 一
(軸吟)
どうしょうもないので背中曲げてみる 岳 人
つくづくと他人になった丸い背な 岳 人
気の弱い背中叩くひとが居る 岳 人
【 雑詠 】 生徒互選
(3)宇宙から願い心を覗かれる 晃 一
(3)わけもなく私の前で枯れる花 桂
(4)秋風に表も裏も人が好き 満寿美
(6)寝転べば足裏秋が撫でて行く 信 子
(11)どん底の失意に明日という薬 昭 二
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☆★☆江戸川柳(その十四)☆★☆
蚊帳やめてわづかな手間のその楽さ
風呂敷きを解くと駆出す真桑瓜
くつわ虫寝しなに一つゆすぶられ
おもざしは馬に似ているきりぎりす
栗の木の下へ毛抜きをもって来る
姑に月見ひかせる気の毒さ
緋の衣着れば浮世がおしくなり
後家の供庫裏でゆすって酒を飲み
新尼の我をいやがる影法師
町内のにくまれ者があつ湯好き
「柳多留」より
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課題【 音 】 板尾岳人選
音たてずびっくりさせてどなられた 丈 測
鹿威し虫も慣れてか音を競う 昭
チンチロリンわが家のコロちゃん里帰り 泰直
音のない月の世界の土地を買い 道 兼
碁仇に石音だけは負けられぬ 卓 三
雑音が入り決心鈍らせる 昭 二
虫の音もわがもの顔の過疎の村 忠 雄
軍歌なら音痴も熱唱宴の席 山 風
お人好し本音で生きた母想う 泰 直
音無しの構えで迫る森の雄 道 兼
気がつけば亡父に似てる靴の音 卓 三
虫の音に窓少し開け秋の月 昭
玉音に昭和が哭いて五十年 山 風
名月や妻の包丁ご機嫌だ 直 樹
虫の音が秋の訪れいそがせる 勉
新生児手のなる方へ顔を向け 道 兼
救急車命の音を鳴らし行く 信 子
真っ昼間音なく扉開く怪 桂
墨をする音に余念を消す写経 山 風
虫の音に聞き耳立てつ忍び足 直 樹
うわさすりゃとなりの部屋でせきばらい 勉
ダンジリのはやしの音に血がさわぎ 丈 測
琴の音に蚕無心に絹を綯う 晃 一
故郷の風鈴の音耳すます 昭 二
ボリュウムをあげて癇癪だま冷やす 直 樹
川音に目覚めて星の露天風呂 忠 雄
(佳)音もなく地球が回るように生き 桂
(佳)ドラの音を背負って船長旅に出る 泰 直
(佳)音たえて恋呼ぶ虫のシンフォニ― 晃 一
(佳)虫の音にほっと一息手紙書く 信 子
(佳)秋の蚊の見えない音と睨みあう 昭
(人)神様が鳴らす音なら起きようか 桂
(地)和太鼓の音が古傷打ちに来る 睦 彦
(天)漏らさない本音化粧落とすまで 忠 雄
(軸吟)
することがないので鈴を振ってみる 岳 人
神様の鈴を鳴らして阿弥陀籤 岳 人
【 雑詠 】 生徒互選
(3)子旅行でごまかしている夫婦愛 丈 測
(4)遠吠えの犬もひとりか月見酒 直 樹
(4)碁会所は医者と坊主が殺し合い 卓 三
(4)ほどほどがいいね自由も不自由も 忠 雄
(5)虫達がはりつけ刑で登校す 睦 彦
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☆★☆江戸川柳(その十三)☆★☆
秋茄子は姑の留守にばかり食い
月見には母をまるめるどら息子
名月の生酔い昼の気で歩き
女同士どこしかあらを見だし合い
立ちそうにして又咄す女客
生娘をくどいてごうをさらすなり
女房は髪結い亭主油売り
女房の思った程はもてぬ也
「柳多留」より
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課題【 踊る 】 板尾岳人選
月だけが踊る私を知っている 桂
中年以上十才未満盆踊り 忠 雄
字が踊る花丸嬉し1年生 山 風
商いの上手お客を踊らせる 晃 一
どうしても踊らぬ狸いる月夜 桂
情熱の炎散らしてフラメンコ 信 子
ヒトゲノム株屋薬屋踊らせる 直 樹
踊り食い喉くすぐって落ちて行き 昭
ときめいてダンスパーティの客になる 昭 二
虫の音も合いの手にして踊りの輪 直 樹
声だけで心踊らすにくい人 睦 彦
盆踊り浴衣美人のコンテスト 卓 三
(佳)はちきれる若さが踊る謝肉祭 晃 一
(佳)盆踊り今日も明日もあさっても 勉
(佳)今日だけはあほがあふれる阿波の国 忠 雄
(佳)よう踊らんわたしゃ生涯壁の花 紀代子
(佳)手話の指それぞれ踊り会話する 信 子
(佳)掌に感情線が踊ってる 昭 二
(人)この辺で踊ってアホになりましょか 満寿美
(地)夫とは未だ踊ったことがない 桂
(天)初恋も子連れで踊る郷里の盆 晃 一
(軸吟)
踊りすぎ離婚届けは未完成 岳 人
わがままで踊り上手なシクラメン 岳 人
一身上の都合で踊る夏帽子 岳 人
【 雑詠 】 生徒互選
(3)法師蝉子らに宿題急きたてる 山 風
(5)待つことを楽しむだけのゆとりでき 昭
(5)甲子園神と仏が大熱戦 丈 測
(5)おぼえより忘れる方が先を行き 勉
(7)靴ずれであなたを今日も取り逃がし 桂
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☆★☆江戸川柳(その十二)☆★☆
へのこには手こずっているひとり者
赤貝が血で男湯へ蜆(しじみ)来る
とんだこと婿の寝床に母の櫛
酔いまぎれ芋田楽を舅食い
おもざしは馬に似ているきりぎりす
馬鹿なこと居眠っていてつん逃がし
鼻をつまんでさあ言いなマミムメモ
鼻息で知れる隣りの仲直り
「柳多留」より
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課題【 はがき 】 板尾岳人選
暑中見舞行間の文字温かい 卓 三
絵はがきでアリバイ作る隠れ旅 道 兼
書き損の賀状にあった当たり籤 直 樹
金送れたった五文字のはがき着き 信 子
絵はがきを自分で受けるエアメール 睦 彦
ガキ大将はがきに残るごつい文字 直 樹
一枚のハガキがいまだかみ切れず 桂
絵葉書にしあわせ溢れさせて秋 直 樹
絵葉書に大阪弁が旅してる 泰 直
友のハガキ孫誕生に踊っている 信 子
絵葉書に思いが飛んだ曾遊地 喜 彦
添え書きに本音がのぞく挨拶状 忠 雄
出席に喜んで丸書いて出す 勉
書き足りぬ葉書電話で用を足し 昭 二
(佳)無事帰国はがき遅れてたどり着き 山 風
(佳)ポストにも懲りぬ投句を笑われる 晃 一
(佳)一存でハガキ一枚破り捨て 桂
(佳)絵葉書に一筆近況したためる 昭 二
(佳)絵ハガキで旅の気分をおすそわけ 勉
(人)一枚の葉書に和むつむじ風 晃 一
(地)カラフルに応募ハガキはメイクする 睦 彦
(天)ご無沙汰を暑中見舞に詫びさせる 直 樹
(軸吟)
一枚のハガキが届く昼の闇 岳 人
神様に感謝ハガキで返事する 岳 人
ポストから出ると眩暈がするハガキ 岳 人
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☆★☆江戸川柳(その十一)☆★☆
暑いこととんぼ座敷を通りぬけ
蝶々の生酔いなぶるのどやかさ
蜻蛉(トンボ)は石の地蔵に髪を結い
糸つけてあるかと思う蝶二つ
馬の屁にひり起こされる草の蝶
物指しで昼寝の蝿を追ってやり
大笑い鼠に猫の画を食われ
大笑い近眼案山子に道を聞き
蟻ひとつ娘ざかりを裸にし
合いの手に舌うちするきりぎりす
「柳多留」より
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課題【 団扇(うちわ) 】 板尾岳人選
必勝の団扇球児に渇を入れ 山 風
寿司飯をあおぐうちわも浮かれだす 桂
経入りの団扇であおぎよく眠る 満寿美
妻の留守逆さ団扇でせなを掻き まもる
浴衣着に腰にうちわで伊達をきめ まもる
夏祭りうちわで金魚すくう真似 睦 彦
好きだからうちわの風で甘えてる 昭
うたた寝の妻に団扇をそっと向け 昭
右うちわ左うちわも同じ風 勉
必需品夏の楽園呼ぶ団扇 紀代子
街角で貰ううちわのコマーシャル 道 兼
風情かくうちわの骨まで化成品 道 兼
ゴキブリを団扇で叩き取り逃し 信 子
美人画の団扇持つ手のしなやかさ 信 子
クーラーに負けず団扇の自己主張 信 子
くじ運が悪くてうちわばかりなり 昭 二
ばさばさとうちわ使って蚊を払い 昭 二
浴衣にはうちわが似合う夏祭り 昭 二
散らし鮨妻を手伝ううちわ風 晃 一
クーラーに任せて左うちわで居 晃 一
山車かつぐ熱気を煽る大うちわ 直 樹
帯にさすうちわも踊る夏祭り 直 樹
いっせいにうちわ動いて勝ち名乗り 忠 雄
義理で来てうちわで隠す生あくび 忠 雄
ほんのりとうちわがくれる香りかな 忠 雄
大勝負廻しうちわで取り直し 丈 測
だんじりの屋根で団扇が舞って飛ぶ 丈 測
トイレからうちわであおぐ気配する 丈 測
(佳)土用丑うちわいちにちいそがしい 勉
(佳)まどろめる母のうちわに蝿留まる 昭
(佳)なんとよく喋るうちわだ夕涼み 桂
(佳)かば焼きの匂いをかがす渋団扇 喜 彦
(佳)肩の手をうちわでたたく夕涼み 睦 彦
(佳)夏座敷うちわの似合う人を待つ 桂
(軸吟)
逢いたいと云わずうちわで暑中見舞 岳 人
自己主張しながらうちわ風になる 岳 人
また人を好きになったと云う団扇 岳 人
【 雑詠 】 生徒互選
(3)席譲られてプライドがゆれ動き 信 子
(3)七夕は一年まってもまたも雨 勉
(4)優しそうな人に出会って道を聞く 昭 二
(5)優しさが枯れてあわてて水をやる 桂
(6)熱帯夜水葬にして下さいな 満寿美
(7)時と云う良薬があり許し合い 晃 一
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☆★☆江戸川柳(その十)☆★☆
かいま見は尻をつめって代りあい
洗濯の時は足駄を尻にはき
尻べたのあざを聞かれて母こまり
手を付ける時も手を切る時も金
手をとると片手で櫛を深くさし
きつい降り昼寝も起きてかしこまり
夕立に暑さも何処かぶん流し
涼み台ぎしりぎしりと人がふえ
路地口をかかぁで埋める夕涼み
花火をもらい日が暮れろ日が暮れろ
「柳多留」より
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課題【 暑い 】
ベタベタとくっついてくる暑い虫 桂
むっとくる暑さ嬉しいサウナ風呂 喜 彦
暑気払いなどと熱燗の人もいて 忠 雄
井戸に浮く西瓜を偲ぶ昼下がり 直 樹
蝉しぐれ暑さ我が世と謳歌する 信 子
タイガースはがゆいゲームに増す暑さ 卓 三
ジベタリアン暑さに負けて椅子探す 昭
残暑見舞はがき一枚果たす義理 道 兼
のど越しにひとときの涼冷やっこ 直 樹
暑い午後仁王の口もだらしなく 山 風
夫婦喧嘩やがて怒声となる暑さ 卓 三
休まずに歩いておこう暑い道 桂
黒い牛影じっとして炎天下 丈 測
温度計見れば一層暑さ増す 勉
梅雨あけてカッと照りつく暑さかな し づ
炎天下白が揺れてる甲子園 昭 二
寒がりのくせに暑さが尚苦手 睦 彦
一年が暑い寒いで暮れて行く 紀代子
口癖は暑い暑いをくり返えし し づ
人も犬も木陰に逃げて涼をとる 昭 二
(佳)苛立ってつい怒鳴らせるこの暑さ 昭
(佳)けだるげに行商が行く炎暑かな 昭 二
(佳)地下鉄を出て炎天にぶっつかる 直 樹
(佳)ネクタイをゆるめ暑さをホット抜く 睦 彦
(佳)人間でよかった暑さ脱ぎすてる 晃 一
(人) 夕立で今日のいのちが吹き返す 信 子
(地)愛染が口火で燃える暑い月 晃 一
(天)あまりにも暑く白状してしまう 桂
軸句
羊羹を切って八月十五日 岳 人
折りたたみ傘に相談買う帽子 岳 人
熱帯夜面倒くさい恋すてる 岳 人
【 雑詠 】
(3)寝姿を月に見られて熱帯夜 桂
(3)いい日だな花が笑って咲いている 信 子
(4)腹立てて投票したはず変化なし 泰 直
(4)母のいきかけては運ぶ離乳食 晃 一
(4)土に帰る思いを秘めた野良仕事 山 風
(5)生きがいを探してカルチャはしごする 直 樹
(5)人喰ってきたから今も元気です 卓 三
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☆★☆江戸川柳(その九)☆★☆
近づきを考えている雨宿り
雨宿りはるかむこうは蝉の声
にわか雨思い思いに化けて行き
にわか雨女がいいと傘がふり
わが尻はいわずたらいをちいさがり
行水のたらいにうつる松の月
夕立にすました顔の石地蔵
雷のおかげで新造に抱きつかれ
きつい降り昼寝も起きてかしこまり
「柳多留」より
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