川柳入門教室
平成十二年度第2四半期




2000年9月26日の教室

              課題【 背中 】   板尾岳人選

    孫の手を使って一人背中掻く     信 子
    銭湯で背中流して知る人情      紀代子
    好々爺孫に恥らう灸のあと     山 風
    マウンドで投げる背中に孤独見る   信 子
    背を晒す若さ視線をはねかえす    忠 雄
    背伸びする子へ煽てたり諭したり   山 風
    振り向かず去るには背中狭すぎる    桂
    背中越し妻の指図で走らされ     睦 彦
    勝ち名乗り花道を行く光る背な    丈 測
    恋人の眼は背中でも感じます     喜 彦
    背水の陣で背中さむくなり       勉
    バレタかな返事は背中でいたします  満寿美
    背と腹とかわってほしい時もある    勉
    背伸びして一流校を視野に入れ    昭 二
  (佳)不覚にも背中ばかりに傷をもつ     桂
  (佳)父の背が許すと云って揺れている    昭    
  (佳)やせた背に男の意地をのぞかせる   昭 二
  (佳)背を向けてギターと語る子に夕陽   泰 直
  (佳)わらべ歌母の背中は夢の国      山 風
  (人)子に見せる背中がまぁるくなっている 卓 三
  (地)しゃれた名の街を背にして屋台酒   昭 二
  (天)野良帰り夕日背中を滑り落ち     晃 一 
       (軸吟)
    どうしょうもないので背中曲げてみる 岳 人
    つくづくと他人になった丸い背な   岳 人
    気の弱い背中叩くひとが居る     岳 人 
   

             【 雑詠 】   生徒互選

  (3)宇宙から願い心を覗かれる       晃 一
  (3)わけもなく私の前で枯れる花       桂
  (4)秋風に表も裏も人が好き        満寿美
  (6)寝転べば足裏秋が撫でて行く      信 子
  (11)どん底の失意に明日という薬    昭 二
  
 


古典鑑賞

     ☆★☆江戸川柳(その十四)☆★☆

     蚊帳やめてわづかな手間のその楽さ

     風呂敷きを解くと駆出す真桑瓜

     くつわ虫寝しなに一つゆすぶられ

     おもざしは馬に似ているきりぎりす

     栗の木の下へ毛抜きをもって来る

     姑に月見ひかせる気の毒さ

     緋の衣着れば浮世がおしくなり

     後家の供庫裏でゆすって酒を飲み

     新尼の我をいやがる影法師

     町内のにくまれ者があつ湯好き

    
                                「柳多留」より




2000年9月12日の教室

              課題【 音 】   板尾岳人選

   音たてずびっくりさせてどなられた  丈 測
   鹿威し虫も慣れてか音を競う      昭
   チンチロリンわが家のコロちゃん里帰り 泰直
   音のない月の世界の土地を買い    道 兼
   碁仇に石音だけは負けられぬ     卓 三
   雑音が入り決心鈍らせる       昭 二
   虫の音もわがもの顔の過疎の村    忠 雄
   軍歌なら音痴も熱唱宴の席      山 風
   お人好し本音で生きた母想う     泰 直
   音無しの構えで迫る森の雄      道 兼
   気がつけば亡父に似てる靴の音    卓 三
   虫の音に窓少し開け秋の月       昭
   玉音に昭和が哭いて五十年      山 風
   名月や妻の包丁ご機嫌だ       直 樹
   虫の音が秋の訪れいそがせる      勉
   新生児手のなる方へ顔を向け     道 兼
   救急車命の音を鳴らし行く      信 子
   真っ昼間音なく扉開く怪        桂
   墨をする音に余念を消す写経     山 風
   虫の音に聞き耳立てつ忍び足     直 樹
   うわさすりゃとなりの部屋でせきばらい 勉
   ダンジリのはやしの音に血がさわぎ  丈 測
   琴の音に蚕無心に絹を綯う      晃 一
   故郷の風鈴の音耳すます       昭 二
   ボリュウムをあげて癇癪だま冷やす  直 樹
   川音に目覚めて星の露天風呂     忠 雄
 (佳)音もなく地球が回るように生き     桂
 (佳)ドラの音を背負って船長旅に出る   泰 直 
 (佳)音たえて恋呼ぶ虫のシンフォニ―   晃 一
 (佳)虫の音にほっと一息手紙書く     信 子
 (佳)秋の蚊の見えない音と睨みあう     昭
 (人)神様が鳴らす音なら起きようか     桂
 (地)和太鼓の音が古傷打ちに来る     睦 彦
 (天)漏らさない本音化粧落とすまで    忠 雄 
       (軸吟)
   することがないので鈴を振ってみる  岳 人
   神様の鈴を鳴らして阿弥陀籤     岳 人 
   

             【 雑詠 】   生徒互選

 (3)子旅行でごまかしている夫婦愛     丈 測
 (4)遠吠えの犬もひとりか月見酒      直 樹
 (4)碁会所は医者と坊主が殺し合い     卓 三
 (4)ほどほどがいいね自由も不自由も    忠 雄
 (5)虫達がはりつけ刑で登校す       睦 彦
  
 


古典鑑賞

     ☆★☆江戸川柳(その十三)☆★☆

     秋茄子は姑の留守にばかり食い

     月見には母をまるめるどら息子

     名月の生酔い昼の気で歩き

     女同士どこしかあらを見だし合い

     立ちそうにして又咄す女客

     生娘をくどいてごうをさらすなり

     女房は髪結い亭主油売り

     女房の思った程はもてぬ也

    
                                「柳多留」より




2000年8月29日の教室

              課題【 踊る 】   板尾岳人選

   月だけが踊る私を知っている      桂
   中年以上十才未満盆踊り       忠 雄
   字が踊る花丸嬉し1年生       山 風
   商いの上手お客を踊らせる      晃 一
   どうしても踊らぬ狸いる月夜      桂
   情熱の炎散らしてフラメンコ     信 子
   ヒトゲノム株屋薬屋踊らせる     直 樹
   踊り食い喉くすぐって落ちて行き    昭
   ときめいてダンスパーティの客になる 昭 二
   虫の音も合いの手にして踊りの輪   直 樹
   声だけで心踊らすにくい人      睦 彦
   盆踊り浴衣美人のコンテスト     卓 三
 (佳)はちきれる若さが踊る謝肉祭     晃 一
 (佳)盆踊り今日も明日もあさっても     勉   
 (佳)今日だけはあほがあふれる阿波の国  忠 雄
 (佳)よう踊らんわたしゃ生涯壁の花      紀代子
 (佳)手話の指それぞれ踊り会話する    信 子      
 (佳)掌に感情線が踊ってる        昭 二 
 (人)この辺で踊ってアホになりましょか  満寿美
 (地)夫とは未だ踊ったことがない      桂
 (天)初恋も子連れで踊る郷里の盆     晃 一
       (軸吟)
   踊りすぎ離婚届けは未完成      岳 人
   わがままで踊り上手なシクラメン   岳 人 
   一身上の都合で踊る夏帽子      岳 人


             【 雑詠 】   生徒互選

 (3)法師蝉子らに宿題急きたてる      山 風
 (5)待つことを楽しむだけのゆとりでき    昭
 (5)甲子園神と仏が大熱戦         丈 測
 (5)おぼえより忘れる方が先を行き      勉
 (7)靴ずれであなたを今日も取り逃がし    桂
  
 


古典鑑賞

     ☆★☆江戸川柳(その十二)☆★☆

     へのこには手こずっているひとり者

     赤貝が血で男湯へ蜆(しじみ)来る

     とんだこと婿の寝床に母の櫛

     酔いまぎれ芋田楽を舅食い

     おもざしは馬に似ているきりぎりす

     馬鹿なこと居眠っていてつん逃がし

     鼻をつまんでさあ言いなマミムメモ

     鼻息で知れる隣りの仲直り
   
   
                                「柳多留」より




2000年8月8日の教室

              課題【 はがき 】   板尾岳人選

   暑中見舞行間の文字温かい      卓 三
   絵はがきでアリバイ作る隠れ旅    道 兼
   書き損の賀状にあった当たり籤    直 樹
   金送れたった五文字のはがき着き   信 子
   絵はがきを自分で受けるエアメール  睦 彦
   ガキ大将はがきに残るごつい文字   直 樹
   一枚のハガキがいまだかみ切れず    桂
   絵葉書にしあわせ溢れさせて秋    直 樹
   絵葉書に大阪弁が旅してる      泰 直
   友のハガキ孫誕生に踊っている    信 子
   絵葉書に思いが飛んだ曾遊地     喜 彦
   添え書きに本音がのぞく挨拶状    忠 雄
   出席に喜んで丸書いて出す       勉
   書き足りぬ葉書電話で用を足し    昭 二
 (佳)無事帰国はがき遅れてたどり着き   山 風
 (佳)ポストにも懲りぬ投句を笑われる   晃 一   
 (佳)一存でハガキ一枚破り捨て       桂
 (佳)絵葉書に一筆近況したためる     昭 二
 (佳)絵ハガキで旅の気分をおすそわけ    勉      
 (人)一枚の葉書に和むつむじ風      晃 一
 (地)カラフルに応募ハガキはメイクする  睦 彦
 (天)ご無沙汰を暑中見舞に詫びさせる   直 樹
       (軸吟)
   一枚のハガキが届く昼の闇      岳 人
   神様に感謝ハガキで返事する     岳 人 
   ポストから出ると眩暈がするハガキ  岳 人




 


古典鑑賞

     ☆★☆江戸川柳(その十一)☆★☆

     暑いこととんぼ座敷を通りぬけ

     蝶々の生酔いなぶるのどやかさ

     蜻蛉(トンボ)は石の地蔵に髪を結い

     糸つけてあるかと思う蝶二つ

     馬の屁にひり起こされる草の蝶

     物指しで昼寝の蝿を追ってやり

     大笑い鼠に猫の画を食われ

     大笑い近眼案山子に道を聞き

     蟻ひとつ娘ざかりを裸にし

     合いの手に舌うちするきりぎりす   
     
   
   
                                「柳多留」より




2000年7月18日の教室

              課題【 団扇(うちわ) 】   板尾岳人選

   必勝の団扇球児に渇を入れ      山 風
   寿司飯をあおぐうちわも浮かれだす   桂
   経入りの団扇であおぎよく眠る    満寿美
   妻の留守逆さ団扇でせなを掻き    まもる
   浴衣着に腰にうちわで伊達をきめ   まもる
   夏祭りうちわで金魚すくう真似    睦 彦
   好きだからうちわの風で甘えてる    昭 
   うたた寝の妻に団扇をそっと向け    昭
   右うちわ左うちわも同じ風       勉 
   必需品夏の楽園呼ぶ団扇       紀代子
   街角で貰ううちわのコマーシャル   道 兼
   風情かくうちわの骨まで化成品    道 兼
   ゴキブリを団扇で叩き取り逃し    信 子
   美人画の団扇持つ手のしなやかさ   信 子
   クーラーに負けず団扇の自己主張   信 子
   くじ運が悪くてうちわばかりなり   昭 二
   ばさばさとうちわ使って蚊を払い   昭 二
   浴衣にはうちわが似合う夏祭り    昭 二
   散らし鮨妻を手伝ううちわ風     晃 一
   クーラーに任せて左うちわで居    晃 一
   山車かつぐ熱気を煽る大うちわ    直 樹
   帯にさすうちわも踊る夏祭り     直 樹
   いっせいにうちわ動いて勝ち名乗り  忠 雄
   義理で来てうちわで隠す生あくび   忠 雄
   ほんのりとうちわがくれる香りかな  忠 雄
   大勝負廻しうちわで取り直し     丈 測
   だんじりの屋根で団扇が舞って飛ぶ  丈 測
   トイレからうちわであおぐ気配する  丈 測 
 (佳)土用丑うちわいちにちいそがしい    勉
 (佳)まどろめる母のうちわに蝿留まる    昭   
 (佳)なんとよく喋るうちわだ夕涼み     桂
 (佳)かば焼きの匂いをかがす渋団扇    喜 彦
 (佳)肩の手をうちわでたたく夕涼み    睦 彦  
 (佳)夏座敷うちわの似合う人を待つ     桂
       (軸吟)
   逢いたいと云わずうちわで暑中見舞  岳 人
   自己主張しながらうちわ風になる   岳 人 
   また人を好きになったと云う団扇   岳 人


        【 雑詠 】   生徒互選

 (3)席譲られてプライドがゆれ動き     信 子
 (3)七夕は一年まってもまたも雨       勉
 (4)優しそうな人に出会って道を聞く    昭 二
 (5)優しさが枯れてあわてて水をやる     桂
 (6)熱帯夜水葬にして下さいな       満寿美
 (7)時と云う良薬があり許し合い      晃 一

 


古典鑑賞

     ☆★☆江戸川柳(その十)☆★☆

   
      かいま見は尻をつめって代りあい

      洗濯の時は足駄を尻にはき
 
      尻べたのあざを聞かれて母こまり

      手を付ける時も手を切る時も金
 
      手をとると片手で櫛を深くさし

      きつい降り昼寝も起きてかしこまり

      夕立に暑さも何処かぶん流し

      涼み台ぎしりぎしりと人がふえ

      路地口をかかぁで埋める夕涼み

      花火をもらい日が暮れろ日が暮れろ
   
   
                                「柳多留」より




2000年7月4日の教室

              課題【 暑い 】
  
   ベタベタとくっついてくる暑い虫    桂
   むっとくる暑さ嬉しいサウナ風呂   喜 彦
   暑気払いなどと熱燗の人もいて    忠 雄
   井戸に浮く西瓜を偲ぶ昼下がり    直 樹
   蝉しぐれ暑さ我が世と謳歌する    信 子
   タイガースはがゆいゲームに増す暑さ 卓 三
   ジベタリアン暑さに負けて椅子探す   昭
   残暑見舞はがき一枚果たす義理    道 兼
   のど越しにひとときの涼冷やっこ   直 樹
   暑い午後仁王の口もだらしなく    山 風
   夫婦喧嘩やがて怒声となる暑さ    卓 三
   休まずに歩いておこう暑い道      桂
   黒い牛影じっとして炎天下      丈 測
   温度計見れば一層暑さ増す       勉
   梅雨あけてカッと照りつく暑さかな  し づ
   炎天下白が揺れてる甲子園      昭 二
   寒がりのくせに暑さが尚苦手     睦 彦
   一年が暑い寒いで暮れて行く     紀代子
   口癖は暑い暑いをくり返えし     し づ
   人も犬も木陰に逃げて涼をとる    昭 二
(佳)苛立ってつい怒鳴らせるこの暑さ    昭
(佳)けだるげに行商が行く炎暑かな    昭 二
(佳)地下鉄を出て炎天にぶっつかる    直 樹
(佳)ネクタイをゆるめ暑さをホット抜く  睦 彦
(佳)人間でよかった暑さ脱ぎすてる    晃 一
 (人) 夕立で今日のいのちが吹き返す    信 子 
(地)愛染が口火で燃える暑い月      晃 一 
(天)あまりにも暑く白状してしまう     桂 
         軸句
   羊羹を切って八月十五日       岳 人
   折りたたみ傘に相談買う帽子     岳 人
   熱帯夜面倒くさい恋すてる      岳 人
   
  
              【 雑詠 】

 (3)寝姿を月に見られて熱帯夜        桂
 (3)いい日だな花が笑って咲いている    信 子
 (4)腹立てて投票したはず変化なし     泰 直
 (4)母のいきかけては運ぶ離乳食      晃 一
 (4)土に帰る思いを秘めた野良仕事     山 風
 (5)生きがいを探してカルチャはしごする  直 樹      
 (5)人喰ってきたから今も元気です     卓 三
 


古典鑑賞

     ☆★☆江戸川柳(その九)☆★☆
   
   近づきを考えている雨宿り

   雨宿りはるかむこうは蝉の声

   にわか雨思い思いに化けて行き

   にわか雨女がいいと傘がふり

   わが尻はいわずたらいをちいさがり

   行水のたらいにうつる松の月

   夕立にすました顔の石地蔵

   雷のおかげで新造に抱きつかれ

   きつい降り昼寝も起きてかしこまり

                                「柳多留」より







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