課題【 きりん 】
足元の餌は大儀な長い首 道 兼
キリンには見果てぬ夢の大草原 昭 二
アフリカが見えるぞキリン背を伸ばし 昭
長い首悩むキリンは十五才 桂
麒麟児の名にふさわしい勝れ者 昭 二
きりんの目地面の蟻が見えるかな 仁一郎
キリン食うバナナはさぞ青かろう 晴 彦
出題者キリンビールの回し者 山 風
梢食むキリンに豹が忍び寄り 丈 測
テレパシー幼児の胸へ千里飛ぶ 喜 彦
隙を見て追いぬく覚悟駑馬の意地 直 樹
鳥三羽麒麟の背なで朝日浴び 博 明
木枯らしにキリン襟巻き欲しかろう 忠 雄
頷くもキリンは首をもて余し 睦 彦
麒麟児と云われし人もリストラに 仁一郎
はかなげに草原を恋うキリンの目 昭 二
はしゃぐ子の目の前にあるキリンの目 卓 三
キリンの絵首足角が決めどころ 山 風
(佳)幻か麒麟廬生の夢を駆け 晃 一
(佳)麒麟児もスタミナ切れで職探し 睦 彦
(佳)題はキリンまずはビールを飲んでから 満寿美
(佳)老いぬれば麒麟もやさしい翁うま まもる
(佳)くび長くのばしてキリン何を待つ 勉
(人) 君を待つキリンの首はまだ伸びる 桂
(地)良い返事キリンの様に待ってます 仁一郎
(天)自負を持つ麒麟老いるをためらわず 晃 一
軸句
麒麟児と云われ傷心まだ続き 岳 人
麒麟児の旅の鞄にある聖書 岳 人
麒麟児の万年筆は赤インキ 岳 人
駆けること忘れたキリン檻の中 岳 人
キリンから見れば人間あわて者 岳 人
【 雑詠 】
(3)初孫や一族郎党かき回す 仁一郎
(3)会いましょと昔昔の女文字 山 風
(3)あの雲に乗るとせがんだ子も不惑 直 樹
(4)好きという心にいつかカビが生え 桂
(4)テレビ消せば見ているという高いびき 忠 雄
(7)手作りの梅酒講釈つきで出る 泰 直
(11)年毎に義理の衣を脱ぎ捨てる 信 子
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☆★☆江戸川柳(その八)☆★☆
犬の声今捨てる子を抱きしめる
子を持って近所の犬の名をおぼえ
犬の退屈縁側へあごを乗せ
夢ならば覚めよ覚めよと一ト七日
夢さめてそこらあたりをさがして見
夫とは向きをちがえて昼寝する
昼寝する天狗の鼻で蝉が鳴き
小姑も見よう見真似にいびるなり
小姑も芝居願いはぐるになり
「柳多留」より
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課題【 渡る 】
婦唱夫随世渡り上手い妻がいる 直 樹
世渡りが下手な男のホームラン 昭 二
渡り鳥四季のうつりを知らしつつ 勉
洪水の三途の河は渡りかね 昭 二
渡る世は鬼も仏も馬鹿もいる 紀代子
渡り合う相手もなくて波立たず 信 子
世渡りの下手な親爺で嘘がない 晃 一
渡る世は鬼と背中で擦れ違う 卓 三
いくつかは渡り損ねた橋がある 忠 雄
聞き流し世渡り出来る度胸つき 信 子
水渡る田毎の月にする懺悔 晃 一
渦潮を眼下に夢の橋渡る 博 明
世渡りが下手で程よく眠れます 忠 雄
世渡りが上手な人と後ろ指 喜 彦
警官に渡り損ねた黄信号 紀代子
夢抱いて渡ってみたい虹の橋 信 子
家を出て世間の鬼と渡り合う 満寿美
冷えきった不況を渡る職探し 道 兼
渡ろうと決めてうしろは振り向かず 桂
政事昔遣唐今渡米 山 風
(佳)あなただけ渡って消えた虹の橋 桂
(佳)四十年渡った橋を振り返る 昭
(佳)渡し舟櫓をこぐ音の侘しかり し ず
(佳)吊り橋を挟み月日が渡り合う 晃 一
(佳)渡る世に未練残して茜雲 直 樹
(佳) 弁慶が渡った橋を跳んで見る 昭
(人) 掛け橋が渡船の風情押し流す 睦 彦
(地)とりあえず渡ってみよう向う岸 桂
(天)天の川わたる逢瀬の星ロマン 丈 測
軸句
渡らねば逢えぬひとあり丸太橋 岳 人
年上のひとと内緒で渡る橋 岳 人
強引な男と渡る夫婦橋 岳 人
【 雑詠 】
(3)異常さにまたかと慣れてきた異常 忠 雄
(5)顔みしり名前の出ない古い友 勉
(6)人生のところどころに刀きず 仁一郎
(8)虫食いが誇らしげなる無農薬 晃 一
(10)靴べらが欠伸している定年後 泰 直
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☆★☆江戸川柳(その七)☆★☆
(前句 おもしろい事おもしろい事)
逢ふたびに怖がりながら逢ひたがり
(前句 美しひこと美しいこと)
白骨になっても歌はやまぬ也
(前句 つくりこそすれつくりこそすれ)
鶏は何か云ひたい足遣い
(前句 こまりこそすれこまりこそすれ)
夕立を四角に逃げる丸の内
(前句 どうぞどうぞとどうぞどうぞと)
口説かれて娘は猫にものを云い
(前句 つきぬ事かなつきぬ事かな)
光陰の一幕過ぎてホトトギス
「柳多留」より
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課題【 バナナ 】
物価高バナナ卵の落ちこぼれ 博 明
朝寝坊バナナほお張り飛び出した 丈 測
ほのぼのと異国の味のするバナナ 忠 雄
日暮れまでついて回ったバナナ売り 睦 彦
焼きすぎたバナナケーキをもて余し 信 子
美味滋養台湾バナナはすぐれもの 紀代子
あこがれのバナナはいまや特価品 勉
一本のバナナでしのぐ腹の虫 満寿美
叩き売り声に乗せられバナナ買う 昭
一房のバナナ絵心誘い出す 信 子
食傷のバナナで空腹なつかしみ 卓 三
口ずさむワンゴーホーも千鳥足 喜 彦
あわてるなバナナはいつも待っている 桂
悪童はバナナの皮を道に置き 仁一郎
飢えた日々遠く懐かし乾しバナナ 直 樹
鼻歌も飛び出すバナナの叩き売り 昭 二
バナナショー話術呼吸で叩き売り 晃 一
衣だけ残しバナナに逃げられる 桂
噛むほどに遠い匂いの干しバナナ 睦 彦
青バナナショーウインドウで化粧する 仁一郎
青春のバナナソングに老いの春 卓 三
バナナの実赤子のように手をひろげ 道 兼
バナナ買う平凡な日続いてる 桂
バナナ売り負けてやるよとたたき売り し づ
かくれんぼヤシもバナナもあるところ 卓 三
(佳)一房のバナナを提げて友見舞う 昭 二
(佳)遠足の昔を思いバナナ買う 勉
(佳)遠足にいつもバナナを入れる母 丈 測
(佳)飽食でタタキ売りから座を追われ 道 兼
(佳)兄弟の多さ恨んだ日のバナナ 忠 雄
(人)おいバナナ見舞いの主役いつ降りた 睦 彦
(地)篭の隅バナナどっしり主張する 直 樹
(天)温室のバナナも嫁ぐ頃となり 昭
軸句
店頭のバナナ懺悔するごとし 岳 人
熟れているバナナ味方だと思う 岳 人
一本が腐っていても敵にせず 岳 人
【 雑詠 】
(3)リストラを強いて訳せば使い捨て 博 明
(3)つり革の揺れる向こうに鯉のぼり 昭
(3)桃の花私の好きな色で咲く 信 子
(4)連休を待ってた頃にもどりたい 睦 彦
(4)春雷できっぱり冬と縁を切る 桂
(4)通りぬけ人生もまた通り抜け 晴 彦
(4)櫻散りやっと自分を取り戻す 昭 二
(5)あれも言いこれも聞きたい父の背な 晃 一
(6)悔い多少それでよかった遠い恋 忠 雄
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☆★☆江戸川柳(その七)☆★☆
生酔いを巻きつけて来る下戸の首
生酔いの蛸足もとがこぐらかり
生酔いをあつかわせては年増也
小便は向こうへしなと柳原
小便もならむ股引買かぶり
越中のなかに越前しなびてる
越前で嫁人知らぬ不楽しみ
越前は肥後の加勢を頼むなり
信長は日本一の猿つかい
三日でも取られぬものを明智とり
ひっかかぬ猿だんだんと位つき
<注>越前=包茎
「柳多留」より
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課題【 空 】
満開のすき間を埋める空の青 丈 測
青空は不平不満を笑ってる 仁一郎
空の果て知っているような顔をする 桂
空遠く春の夢追う揚げ雲雀 直 樹
綺羅星を腹いっぱいに深呼吸 昭
仙人も雲があるから空に住む 泰 直
花びらを空に舞い上げ春が行く 仁一郎
いい事がちょっとありそな茜雲 睦 彦
望郷の翼が空を飛んでいく 昭 二
大空へ話しかけてる揚げ雲雀 晃 一
煌いて花火夜空を賑わせる し づ
大空に放り出されたボーイング 昭 二
都会から星座は見えぬ空の色 道 兼
満天の星も肴に花見酒 直 樹
空襲が無くて平和な半世紀 博 明
迷う日は空を仰いで雲に聞く 満須美
佳作
青空に恋のボールをほうり投げ 桂
頂上を極めて空の高さ知る 山 嵐
大空が一番嫌うきのこ雲 晃 一
残り福まだある広い空の下 山 嵐
大空を隠してさくらさくらかな 昭 二
とりあえず青空だけは見ておこう 桂
人間の心で変わる空の色 仁一郎
星空に熊もさそりもすんでいる 勉
解脱する男遮二無二空を斬る 山 嵐
赤と白青き空にはよく似合う 千代子
軸句
雲に手が届く高さに来て背伸び 岳 人
逢える日の空を見上げる赤い花 岳 人
大空の何処かに棲んでいる射手座 岳 人
【 雑詠 】
(3)愛想を本気暇人不意に来る 山 風
(3)姥桜舞ってみようかそれなりに 信 子
(3)場所取りで新人社員花見れず 勉
(4)里帰りかけ込み寺のようになり 卓 三
(5)叱られた亡母にお返し出来ぬまま 昭 二
(9)無言よりキライ夫の生返事 睦 彦
(軸)一寸だけ愛を下さい男傘 岳 人
(軸)逢いたくて森から出ない千羽鶴 岳 人
(軸)たっぷりと妻としゃべって卵割る 岳 人
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☆★☆江戸川柳(その六)☆★☆
明石から起し手の来る花の朝
花の山昔は虎の住家なり
飛鳥山なんとよんだか拝むなり
この花を折るなだろうと石碑見る
うららかさしきりに銭が欲しく成り
顔をしてくるくる巻きは花ぐもり
化粧の間不時にあけるとももんがぁ
顔をする前に見ていて叱られる
身を投げに今いきますと母へいう
投げるなと押さえた袖に石っころ
身を投げた上を屋形で三さがり
「柳多留」より
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課題【 花 】
三十年邂逅あわれ花は蕊 山 風
病んでいる地球に春の花届く 順 子
満開の桜の下で行き止まり 昭 二
早春を覗き咲いてる福寿草 昭
蜜もらい蜂は花粉で化粧する 勉
一枝の櫻かついで恋の道 昭 二
恋人よ菜の花色の国で待つ 順 子
仏前に育てた花の一周忌 睦 彦
花芽摘むメジロと視線ハタと合う 仁一郎
うららかな春は憂鬱花粉症 喜 彦
世界から丹精競う花市場 睦 彦
(佳)嬉しい日ひとり明るい花を買う 昭
(佳)花冷えに弁当殻も震えてる 喜 彦
(佳)花の名を問うて話が盛り上がり 信 子
(佳)花束の悪の香りに誘われる 睦 彦
(佳)夜の宴大トラ子トラ花を見ず 仁一郎
(佳)チューリップ庭先にある自己主張 忠 雄
(人)妖怪も神も私も花に舞う 順 子
(地)花束に照れくさそうな添え手紙 昭
(天)春一番櫻のねむりゆりおこし 勉
(軸)うれしくて花芯覗いて悲しませ 岳 人
(軸)咲くサクラ三島由紀夫は散り急ぐ 岳 人
(軸)湖の底で咲きたや水中花 岳 人
【 雑詠 】
(3)照れと見栄バージンロ−ドを歩む父 喜 彦
(3)我が身には去年と同じ世紀末 隆 治
(3)人情を削る文明というかんな 忠 雄
(3)もみ消しも今年からは逮捕する 泰 直
(3)幕尻が結び努める大相撲 隆 治
(3)ホワイトデー催促いたす悪女待ち 山 風
(4)旅楽し女房の肩をただで借り 昭
(4)予防よりいつも治療のお国柄 晃 一
(6)ライバルに破れてからの良い寝つき 直 樹
(6)不景気を知らずや土筆首を出す 山 風
(8)十円玉切れた賽銭また今度 丈 測
(軸)うっかりと妻に好きだと言いました 岳 人
(軸)咲いてすぐ散る理由知らぬ春の風 岳 人
(軸)わたくしを叱ってくれた月明かり 岳 人
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☆★☆江戸川柳(その五)☆★☆
のまぬやつ弁当食うと花にあき
花の雨寝ずに塗ったをくやしがり
花の山幕のふくれるたびに散り
来て見ろと生酔い花をふり廻し
花の枝持って風雅な倒れ者
女房の知恵は花見に子を付ける
女房は忍びの術を見あらわし
間男をするよと女房強意見
間男は出雲で余りくじと見え
間男を知って旅立ち煮えきらず
「柳多留」より
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