川柳入門教室
平成十二年度第1四半期


2000年6月20日の教室

              課題【 きりん 】
  
   足元の餌は大儀な長い首       道 兼
   キリンには見果てぬ夢の大草原    昭 二
   アフリカが見えるぞキリン背を伸ばし  昭
   長い首悩むキリンは十五才       桂
   麒麟児の名にふさわしい勝れ者    昭 二
   きりんの目地面の蟻が見えるかな   仁一郎
   キリン食うバナナはさぞ青かろう   晴 彦
   出題者キリンビールの回し者     山 風
   梢食むキリンに豹が忍び寄り     丈 測
   テレパシー幼児の胸へ千里飛ぶ    喜 彦
   隙を見て追いぬく覚悟駑馬の意地   直 樹
   鳥三羽麒麟の背なで朝日浴び     博 明
   木枯らしにキリン襟巻き欲しかろう  忠 雄
   頷くもキリンは首をもて余し     睦 彦
   麒麟児と云われし人もリストラに   仁一郎
   はかなげに草原を恋うキリンの目   昭 二
   はしゃぐ子の目の前にあるキリンの目 卓 三
   キリンの絵首足角が決めどころ    山 風
(佳)幻か麒麟廬生の夢を駆け       晃 一
(佳)麒麟児もスタミナ切れで職探し    睦 彦
(佳)題はキリンまずはビールを飲んでから 満寿美
(佳)老いぬれば麒麟もやさしい翁うま   まもる
(佳)くび長くのばしてキリン何を待つ    勉 
 (人) 君を待つキリンの首はまだ伸びる    桂
(地)良い返事キリンの様に待ってます   仁一郎 
(天)自負を持つ麒麟老いるをためらわず  晃 一
         軸句
   麒麟児と云われ傷心まだ続き     岳 人
   麒麟児の旅の鞄にある聖書      岳 人
   麒麟児の万年筆は赤インキ      岳 人
   駆けること忘れたキリン檻の中    岳 人
   キリンから見れば人間あわて者    岳 人
  
              【 雑詠 】

 (3)初孫や一族郎党かき回す        仁一郎
 (3)会いましょと昔昔の女文字       山 風
 (3)あの雲に乗るとせがんだ子も不惑    直 樹
 (4)好きという心にいつかカビが生え     桂
 (4)テレビ消せば見ているという高いびき  忠 雄
 (7)手作りの梅酒講釈つきで出る      泰 直
 (11)年毎に義理の衣を脱ぎ捨てる      信 子  
 


古典鑑賞

     ☆★☆江戸川柳(その八)☆★☆
   
   犬の声今捨てる子を抱きしめる

   子を持って近所の犬の名をおぼえ

   犬の退屈縁側へあごを乗せ

   夢ならば覚めよ覚めよと一ト七日

   夢さめてそこらあたりをさがして見

   夫とは向きをちがえて昼寝する

   昼寝する天狗の鼻で蝉が鳴き

   小姑も見よう見真似にいびるなり

   小姑も芝居願いはぐるになり
                                「柳多留」より



2000年6月6日の教室

              課題【 渡る 】
  
   婦唱夫随世渡り上手い妻がいる    直 樹
   世渡りが下手な男のホームラン    昭 二
   渡り鳥四季のうつりを知らしつつ    勉
   洪水の三途の河は渡りかね      昭 二
   渡る世は鬼も仏も馬鹿もいる     紀代子
   渡り合う相手もなくて波立たず    信 子
   世渡りの下手な親爺で嘘がない    晃 一
   渡る世は鬼と背中で擦れ違う     卓 三
   いくつかは渡り損ねた橋がある    忠 雄
   聞き流し世渡り出来る度胸つき    信 子
   水渡る田毎の月にする懺悔      晃 一
   渦潮を眼下に夢の橋渡る       博 明
   世渡りが下手で程よく眠れます    忠 雄
   世渡りが上手な人と後ろ指      喜 彦
   警官に渡り損ねた黄信号       紀代子
   夢抱いて渡ってみたい虹の橋     信 子
   家を出て世間の鬼と渡り合う     満寿美
   冷えきった不況を渡る職探し     道 兼
   渡ろうと決めてうしろは振り向かず   桂
   政事昔遣唐今渡米          山 風
(佳)あなただけ渡って消えた虹の橋     桂
(佳)四十年渡った橋を振り返る       昭
(佳)渡し舟櫓をこぐ音の侘しかり     し ず
(佳)吊り橋を挟み月日が渡り合う     晃 一
(佳)渡る世に未練残して茜雲       直 樹 
 (佳) 弁慶が渡った橋を跳んで見る      昭
 (人) 掛け橋が渡船の風情押し流す     睦 彦
(地)とりあえず渡ってみよう向う岸     桂
(天)天の川わたる逢瀬の星ロマン     丈 測
         軸句
   渡らねば逢えぬひとあり丸太橋    岳 人
   年上のひとと内緒で渡る橋      岳 人
   強引な男と渡る夫婦橋        岳 人

  
              【 雑詠 】

 (3)異常さにまたかと慣れてきた異常    忠 雄
 (5)顔みしり名前の出ない古い友       勉
 (6)人生のところどころに刀きず      仁一郎
 (8)虫食いが誇らしげなる無農薬      晃 一
 (10)靴べらが欠伸している定年後      泰 直  
 


古典鑑賞

     ☆★☆江戸川柳(その七)☆★☆
   
   (前句 おもしろい事おもしろい事)
   逢ふたびに怖がりながら逢ひたがり

   (前句 美しひこと美しいこと)
   白骨になっても歌はやまぬ也

   (前句 つくりこそすれつくりこそすれ)
     鶏は何か云ひたい足遣い

   (前句 こまりこそすれこまりこそすれ)
     夕立を四角に逃げる丸の内

   (前句 どうぞどうぞとどうぞどうぞと)
     口説かれて娘は猫にものを云い

      (前句 つきぬ事かなつきぬ事かな)
    光陰の一幕過ぎてホトトギス

    
                
                                「柳多留」より



2000年5月16日の教室

              課題【 バナナ 】
  
   物価高バナナ卵の落ちこぼれ     博 明
   朝寝坊バナナほお張り飛び出した   丈 測
   ほのぼのと異国の味のするバナナ   忠 雄
   日暮れまでついて回ったバナナ売り  睦 彦
   焼きすぎたバナナケーキをもて余し  信 子
   美味滋養台湾バナナはすぐれもの   紀代子
   あこがれのバナナはいまや特価品    勉
   一本のバナナでしのぐ腹の虫     満寿美
   叩き売り声に乗せられバナナ買う    昭
   一房のバナナ絵心誘い出す      信 子
   食傷のバナナで空腹なつかしみ    卓 三
   口ずさむワンゴーホーも千鳥足    喜 彦
   あわてるなバナナはいつも待っている  桂
   悪童はバナナの皮を道に置き     仁一郎
   飢えた日々遠く懐かし乾しバナナ   直 樹
   鼻歌も飛び出すバナナの叩き売り   昭 二
   バナナショー話術呼吸で叩き売り   晃 一
   衣だけ残しバナナに逃げられる     桂
   噛むほどに遠い匂いの干しバナナ   睦 彦
   青バナナショーウインドウで化粧する 仁一郎
   青春のバナナソングに老いの春    卓 三
   バナナの実赤子のように手をひろげ  道 兼
   バナナ買う平凡な日続いてる      桂
   バナナ売り負けてやるよとたたき売り し づ
   かくれんぼヤシもバナナもあるところ 卓 三
(佳)一房のバナナを提げて友見舞う    昭 二
(佳)遠足の昔を思いバナナ買う       勉
(佳)遠足にいつもバナナを入れる母    丈 測
(佳)飽食でタタキ売りから座を追われ   道 兼
(佳)兄弟の多さ恨んだ日のバナナ     忠 雄
 (人)おいバナナ見舞いの主役いつ降りた   睦 彦
(地)篭の隅バナナどっしり主張する    直 樹
(天)温室のバナナも嫁ぐ頃となり      昭
         軸句
   店頭のバナナ懺悔するごとし     岳 人
   熟れているバナナ味方だと思う    岳 人
   一本が腐っていても敵にせず     岳 人

  
              【 雑詠 】

 (3)リストラを強いて訳せば使い捨て    博 明
 (3)つり革の揺れる向こうに鯉のぼり     昭
 (3)桃の花私の好きな色で咲く       信 子 
 (4)連休を待ってた頃にもどりたい     睦 彦
 (4)春雷できっぱり冬と縁を切る       桂
 (4)通りぬけ人生もまた通り抜け      晴 彦
 (4)櫻散りやっと自分を取り戻す      昭 二 
 (5)あれも言いこれも聞きたい父の背な   晃 一
 (6)悔い多少それでよかった遠い恋      忠 雄 


古典鑑賞

     ☆★☆江戸川柳(その七)☆★☆
   
    生酔いを巻きつけて来る下戸の首
  
    生酔いの蛸足もとがこぐらかり

    生酔いをあつかわせては年増也

    小便は向こうへしなと柳原

    小便もならむ股引買かぶり

    越中のなかに越前しなびてる

    越前で嫁人知らぬ不楽しみ

    越前は肥後の加勢を頼むなり

    信長は日本一の猿つかい

    三日でも取られぬものを明智とり

    ひっかかぬ猿だんだんと位つき
    

     <注>越前=包茎  
                
                            「柳多留」より


2000年4月18日の教室

              課題【 空 】
  
   満開のすき間を埋める空の青     丈 測
   青空は不平不満を笑ってる      仁一郎
   空の果て知っているような顔をする   桂
   空遠く春の夢追う揚げ雲雀      直 樹
   綺羅星を腹いっぱいに深呼吸      昭
   仙人も雲があるから空に住む     泰 直
   花びらを空に舞い上げ春が行く    仁一郎
   いい事がちょっとありそな茜雲    睦 彦
   望郷の翼が空を飛んでいく      昭 二
   大空へ話しかけてる揚げ雲雀     晃 一
   煌いて花火夜空を賑わせる      し づ
   大空に放り出されたボーイング    昭 二
   都会から星座は見えぬ空の色     道 兼
   満天の星も肴に花見酒        直 樹
   空襲が無くて平和な半世紀      博 明
   迷う日は空を仰いで雲に聞く     満須美
  佳作 
   青空に恋のボールをほうり投げ     桂
   頂上を極めて空の高さ知る      山 嵐
   大空が一番嫌うきのこ雲       晃 一
   残り福まだある広い空の下      山 嵐
   大空を隠してさくらさくらかな    昭 二
   とりあえず青空だけは見ておこう    桂
   人間の心で変わる空の色       仁一郎
   星空に熊もさそりもすんでいる     勉
   解脱する男遮二無二空を斬る     山 嵐
   赤と白青き空にはよく似合う     千代子  
  軸句
   雲に手が届く高さに来て背伸び    岳 人
   逢える日の空を見上げる赤い花    岳 人
   大空の何処かに棲んでいる射手座   岳 人
 
              【 雑詠 】

 (3)愛想を本気暇人不意に来る       山 風
 (3)姥桜舞ってみようかそれなりに     信 子
 (3)場所取りで新人社員花見れず       勉 
 (4)里帰りかけ込み寺のようになり     卓 三
 (5)叱られた亡母にお返し出来ぬまま    昭 二
 (9)無言よりキライ夫の生返事       睦 彦
  (軸)一寸だけ愛を下さい男傘        岳 人
 (軸)逢いたくて森から出ない千羽鶴     岳 人
 (軸)たっぷりと妻としゃべって卵割る    岳 人


古典鑑賞

     ☆★☆江戸川柳(その六)☆★☆
   
    明石から起し手の来る花の朝

    花の山昔は虎の住家なり

    飛鳥山なんとよんだか拝むなり

    この花を折るなだろうと石碑見る

    うららかさしきりに銭が欲しく成り
   
    顔をしてくるくる巻きは花ぐもり

    化粧の間不時にあけるとももんがぁ

    顔をする前に見ていて叱られる

    身を投げに今いきますと母へいう

    投げるなと押さえた袖に石っころ

    身を投げた上を屋形で三さがり

    
                
                                「柳多留」より


2000年4月4日の教室

              課題【 花 】

   三十年邂逅あわれ花は蕊       山 風
   病んでいる地球に春の花届く     順 子 
   満開の桜の下で行き止まり      昭 二
   早春を覗き咲いてる福寿草       昭
   蜜もらい蜂は花粉で化粧する      勉
   一枝の櫻かついで恋の道       昭 二
   恋人よ菜の花色の国で待つ      順 子
   仏前に育てた花の一周忌       睦 彦
   花芽摘むメジロと視線ハタと合う   仁一郎
   うららかな春は憂鬱花粉症      喜 彦
   世界から丹精競う花市場       睦 彦
 (佳)嬉しい日ひとり明るい花を買う     昭  
 (佳)花冷えに弁当殻も震えてる      喜 彦
 (佳)花の名を問うて話が盛り上がり    信 子 
 (佳)花束の悪の香りに誘われる      睦 彦
 (佳)夜の宴大トラ子トラ花を見ず     仁一郎
 (佳)チューリップ庭先にある自己主張   忠 雄  
 (人)妖怪も神も私も花に舞う       順 子
 (地)花束に照れくさそうな添え手紙     昭
 (天)春一番櫻のねむりゆりおこし      勉 
 (軸)うれしくて花芯覗いて悲しませ    岳 人
 (軸)咲くサクラ三島由紀夫は散り急ぐ   岳 人
 (軸)湖の底で咲きたや水中花       岳 人

              【 雑詠 】

 (3)照れと見栄バージンロ−ドを歩む父   喜 彦 
 (3)我が身には去年と同じ世紀末      隆 治
 (3)人情を削る文明というかんな      忠 雄
 (3)もみ消しも今年からは逮捕する     泰 直
 (3)幕尻が結び努める大相撲        隆 治
 (3)ホワイトデー催促いたす悪女待ち    山 風
 (4)旅楽し女房の肩をただで借り       昭
 (4)予防よりいつも治療のお国柄      晃 一 
 (6)ライバルに破れてからの良い寝つき   直 樹
 (6)不景気を知らずや土筆首を出す     山 風
 (8)十円玉切れた賽銭また今度       丈 測
  (軸)うっかりと妻に好きだと言いました   岳 人
 (軸)咲いてすぐ散る理由知らぬ春の風    岳 人
 (軸)わたくしを叱ってくれた月明かり    岳 人


古典鑑賞

     ☆★☆江戸川柳(その五)☆★☆
   
    のまぬやつ弁当食うと花にあき

    花の雨寝ずに塗ったをくやしがり

    花の山幕のふくれるたびに散り

    来て見ろと生酔い花をふり廻し

    花の枝持って風雅な倒れ者

    女房の知恵は花見に子を付ける

    女房は忍びの術を見あらわし

    間男をするよと女房強意見

    間男は出雲で余りくじと見え

    間男を知って旅立ち煮えきらず 

    
                
                                「柳多留」より




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