ロンドン紀行

 たった2日だが、またロンドンへ行って来た。あまり音楽の話題はないのだが、せっかくだから、タワー・レコードへ行った話を書く。 ロンドンのタワー・レコードは、ご存じピカデリー・サーカスに面した一等地にある。肝心のCDについては、フランスと同じでただ「高い」としかコメントはないが、イギリスの特徴として、音楽の本が充実している、ということがある。楽譜集はそれほどでもないが、自伝・伝記物や、いわゆるチャート本がすごい。音楽ファン・マニアの数が違うようだ。百科事典のような厚さのヒット・チャートの記録集が、シングルやらアルバムやらインディーズやら何種類も出ている。世紀末の総決算というタイミングもあるようだ。記念に1冊、これぞイギリスというのを買ってきた。"Rock family trees" というモノで、要するにブリティッシュ・ロックの相関図、どのバンドにどのメンバーが入って、いつ脱退して、代わりにそれまでどのバンドにいた誰が入って、という詳細極まる樹形図である。小さい字でぎっしり埋められた大型版で、買ってきた本人が読む気もしないほどだ。

 イギリスの音楽産業やヒット・チャートというものは、日本のファンが感じるような悪い意味合いはない。つまり、インディーズや、音楽産業に背を向けるのがかっこよくて正しい姿勢である、というのでは決してない。逆に、かつてプライマル・スクリームのボビー・ギレスピーが、「イギリスの悪しきインディー・エリート主義」を批判した記事を読んだことがある。彼の実践を見ると、たいへん説得力がある。

 それとも関連するが、前にトップ・オブ・ザ・ポップスのことを書いたが、日本で神格化されているかのようなバンド、たとえばジョイ・ディヴィジョンジャムバウハウスバズコックスであるとか、ナショナル・ヒットをたくさん持っているスミスやエコバニももちろん、こういうテレビ番組にポップスターとして登場するのである。こないだなんてPILが出てきて、ジョニー・ロットン(ライドン)がちゃんと口パクをしていた。そういうことの是非はともかく、新しくて勢いのあるものをナショナル・レベルで受け入れる素地があるようだ。まあ実は、イギリスにはポップ・ミュージックを決して聞かない層というのがけっこういて、マーケット自体が小さい、従ってすぐにナショナル・ヒットになってしまう、という事情もあるのだが。

 ロンドンに話を戻すと、同じピカデリー・サーカスに「ロック・サーカス」というのがある。例のタッソー蝋人形館のロック・スター版なのだが、さすがにここに行きたいとは思わなかった。

West Side Story

 フランスという国は、となりのイギリスに比べるとミュージカル不毛の地であるが、今回パリに West Side Story がアメリカからやってきた。

 ぼく自身はあまりステージでやるミュージカルは見たことがないので、どうしても映画の話になってしまう。現在は映画嫌いになったぼくだが、ミュージカル映画は好きである。一番好きなのは「雨に歌えば」。フレッド・アステアの優雅さよりもジーン・ケリーの型破りなダンスが好きである。あの時代の最高のミュージカル女優はレスリー・キャロンだと思うが、彼女は実は生粋のパリジェンヌである。それを生かした「恋の手ほどき」も大好きな作品のひとつ。「パリのアメリカ人」はむしろダンスの方がかっこいい。今年はガーシュウィンの生誕100年ということで、フランスでことのほか好かれているこの作曲家の話題が一杯だった。

 さて、West Side Story であるが、音楽については何も言うことはない。これがまだロックのない時代に、クラシックの大作曲家によって書かれたというのは考えてみるとおもしろい。今回の配役も、主役2人の発声が映画よりクラシカルなものだった。マリアをやった女優はオペレッタとかにも出ているらしい。そのせいか、全体の筋や他の配役に比べるとちょっと上品すぎて浮いてるかな、という感じもした。映画の配役のイメージも強いのでその分やりにくいと思うが、それでも堂々と演じていた。主役に劣らず重要な男性脇役陣の面々も上手だった。女性陣については、ダンサーというのはそれなりに細身なものだと思ってたが、かなり重そうな人が多かったんでちょっと驚いた。ダイナミズムが要求される作品なので、パワフルな体格の方がいいのかもしれない。

 ところで、フランスでミュージカル映画と言えば、「シェルブールの雨傘」。シェルブールという美しい語感、あのおしゃれな歌と映像のおかげで誤解されているが、本物のシェルブールはぱっとしない漁港である。間違っても行ってみない方がいいと思う。

シャンソン

 フランス語を知っている人にとってはどうということのない話なのだが、「シャンソン」というのは、単に「ソング」の意味である。300年前のはやり歌だろうと、アメリカのカントリー・ソングだろうと、アムロの歌だろうと、ローリング・ストーンズのヒット曲だろうと、それはフランスでは「シャンソン」と呼ばれる。「日本の有名なシャンソンは」と聞かれても、決して金子由香里や三輪明宏の名を挙げてはいけない。ましてやバスケット・ボールが強い化粧品会社のことではない。

だんご三兄弟

 以前日記のどこかに、外国にいると日本のテレビドラマの話題が追えない、という話を書いた記憶がある。同じようなことが、例の「だんご三兄弟」にも言える。何人もの人たちがある時期一斉に、メールに「だんご三兄弟、というのが流行っています」と書き添えてきた。モノが音楽であるから、メールで伝えられるはずもない。だんごがどーだろうが、正直言ってどうでもいいのだが、あれだけ話題になるとどうしても気になってしまう(笑)。

 ぼくの妻の妹は、オーケストラでバイオリンを弾いているのだが、クラシック畑の彼女までもがこの話題に触れてきた。だが、さすがにプロフェッショナル。ちゃんと音楽を送ってきた。このように。

休ハハニ変ホ変ホニハロ休ニ休ロ休ニ休
休ニニ変ホへへ変ホニハ休変ホ休ハ休変ホ休
休ハハニ変ホ変ホニハロ休ニ休ロ休ニ休
休トト変イトヘ変ホニハ休ローハ!

 (ひたすら爆・・・)

 ま、一応申し添えておくと、これは妹自身が書いたものではなく、彼女の友人が彼女に送ってきたものを転送したのであるが、それにしてもだな・・・(また爆)。 タンゴであるという情報は入っていたので、まあこれで頭の中で再現はできた。ぼくとしては、できたらCDEF・・・で書いてほしかったのだが(笑)。あ、そうそう、ちゃんとテンポも指定してあったのだ。さすが。

 結局、ぼくの職場に知恵者がいて、どこそこのサイトでリアル・オーディオで聞ける、と教えてくれた。聞いてみたら、ぼくが頭の中で再現したのと全く変わらなかった(笑)。

 後日談として、ぼくの職場の面々も、日頃日本の流行などあまり構わない素振りをしているものの、さすがにこのブームは気になったらしい。ある日誰かが遂にシングルCDを入手し、引っ張りだこになった。だが、あまりのばかばかしさか、一通り回った後、誰も話題にしなくなった(笑)。