| フランス人の名刺:フランスには元来は名刺という習慣はないが、日本とのビジネスから広がったのだろうか、最近はだいたいの職業人は名刺を持っている。ほぼ全員が、初対面での名刺の交換を、たいへん便利な習慣と考えているようだ。ただ、日本では名刺と言えばほぼ大きさが決まっているのに対し、こちらはそうでもない。なんたって個性を重んじる国であるから、名刺入れに収まらないようなのは迷惑だ、とは考えてくれない。ぼくがもらった中で最大のものは、縦8cm、横12cmの巨大な名刺。これは住宅保険の営業をしているイタリア人なのだが、さすがに押しの強さが要求される職業、名刺も押しが強い。体も大きい男だった。ぼくがびっくりしたら、「裏にたくさんメモが書けて便利だからこうした。」と言っていた。確かにそうだが・・・。まあ、おおらかである。 あとおもしろいのは、会社・所属までは印刷してあるのだが、各々に作ってくれないのか、肩書・氏名が自筆になっている名刺。合理的な発想だが、問題は、フランス人の書く筆記体は日本人には読めない場合が多いのだ。フランス人に見てもらっても読めないことすら、しばしばある。肝心の肩書と氏名が読めなくては、名刺になってないのであるが。 |
| ストライキ:とにかくいろいろある。今まで経験したのは以下の通り。もっともな物もあるのだが、いちいち解説はしない。 国鉄・メトロ(運転手)→完全にストップというのはまだ経験がない。いわゆる間引き。 飛行機関係(パイロット、管制官、貨物輸送、燃料補充の担当)→いずれの場合もまともに飛ばなくなる。 銀行(!)→窓口の人がいなくなる。 美術館→国立美術館組合みたいのがやるので交代で閉まる。 エッフェル塔(笑)→何でも、それまで職員が使っていた駐車場が使えなくなるという措置に反対してということらしい。 教師。 生徒。 医師・看護婦→待遇改善。 国立図書館。 それから、ストライキではないが、大通りを埋めての示威行動(マニフェスタシオン)なら、政治団体からゲイまで、ありとあらゆるものがある。 キャベツ生産者がトラックにキャベツを山積みにして往来にぶちまけ、火を付ける。 豚肉生産者もやったが、さすがに焼き豚にはしなかった。 特にシリアスなのは、「サン・パピエ」と言われる人たち。これは、直訳では「書類のない人」つまり不法滞在者だが、そもそもは不法でももはや根付いて生活し、生産し、次世代はここで生まれ育っている、という既成事実があるのでそれを認め、合法滞在者として認可をせよ、というムーブメントである。 それからもちろん、失業者。 フランス語ができない人がパリへ来て最初に覚える言葉は、グレーヴ(ストライキ)とマニフェスタシオンだと言われる。 |
| ビジュアル系:以前パソコンの雑誌を見ていて気づいたことがある。フランスはパソコン本体やディスプレイ、音源ボードなど、すべて日本よりだいぶ高いのだが、スキャナーとかデジタル・カメラが意外と安い。それに、パソコンやインターネットの普及率が低い割には、企業や公共機関のホームページがたいへんセンスが良く、またJAVAなど凝っているのが多い。思うに、フランスはやはりビジュアル系の国なのだ。マッキントッシュが多いのもうなずける。 写真屋でもそれを感じる。うちの近所のDPEの店では、現像に出すと勝手に「おすすめ」の1枚を選んで勝手に拡大して、額付きで売ろうとする。欧米人全般に言えることだが、家族の写真を額に入れて飾るのが本当に好きなのだ。ぼくもつい口車に乗って額ごと買ってしまったことがあるが、要らないと言うと、中身の拡大した写真はタダでくれる。デジタル化やスライド化を頼んでいる客もけっこういる。日本で写真屋との付き合いは、製品と料金の受け渡しの一瞬に過ぎないが、こちらでは、その場で1枚1枚じっくりと吟味して、店員とあれこれ語り合ったり、注文を付けたり、アドバイスを受けたり、一人当たりの接客時間が本当に長いのだ。 ビジュアルと言えば、テレビを見ていると、コマーシャルは即物的で味気ないのだが、埋め草というか、番組とコマーシャルの間に流れる数秒のつなぎ映像が、どのチャンネルも実に個性的で美しい。これは言葉では表現できないので残念だが・・・。 |
| Coluche:「コリューシュ」と聞いてわかる人はどれくらいいるだろうか。これは人の名前である。名字と名前の区別はなく、こういう芸名である。そして、この名前を知らないフランス人はまずいない。それくらい有名である。日本語表記がしにくい綴りなので、ひょっとしたら日本では別の書き方をするかもしれない。映画に詳しい人は、たぶん知っているだろう。この男は、かなり毒々しいコメディアンであり、映画人であり、演劇人である。日本でいえばちょうどビートたけし=北野武に存在がよく似ている。バイクで事故を起こしたのも同じである。ただ、命が助かったか助からなかったかの違いがある。彼が亡くなって何年もたつが、彼のビデオやCDはビデオ屋にあふれているし、毎日のようにテレビで映画が見られる。いわゆる特番もいまだにしょっちゅうやっている。カリスマというか、シンボルというか、そういう存在である。生前からそうであった。これほど有名なのに、フランスが大好きな日本人に知られていない人物も珍しい。確かに、ちょっとくどい感じはするが。 ところで、コメディアンと書いてしまったが、本当はフランス語で「コメディアン」「コメディエンヌ」というのは純粋に演劇俳優のことである。決してお笑いコメディアンのことではないので、要注意。フランス古典演劇の牙城が「コメディ・フランセーズ」という名であることからもわかるだろう。 |
| 懐かしの女優:ぼくは自分が生まれるよりずっとずっと前のフランス映画が大好きである。そういうぼくにとってはここは幸せな場所で、「クラシック」と称して、日本では絶対に手に入らないような戦前の映画のビデオが手に入る。 戦前からの女優さんで一番好きなのは、やはりダニエル・ダリュー。何たってきれいだから。大のつく女優であるが、実は映画の中も含めかなりの数の歌を録音している歌手でもある。これは日本ではあまり知られていない。今でも戦前のシャンソンのCDの売り場へ行くと、ジョゼフィン・ベイカーやリュシエンヌ・ボワイエとかと並んで、彼女の復刻CDが10種類くらい売られているのだ。 彼女は戦後も活躍したが、次の世代ではミシュリーヌ・プレールがいい。何たってきれいだから。日本で見られたのはジェラール・フィリップとのラディゲ作「肉体の悪魔」くらいで、だからこそぼくには永遠の美女のような存在だったが、こちらへ来てテレビでけっこうお目にかかる。1929年以降のフランス映画の歴史とデータ満載のCD−ROMがあるのだが、これによると彼女は今に至るまで異常とも言える数の映画に出ている。ちょっとありがたみが薄れた気がする。 さらに下ると、日本で「往年のフランス女優人気投票」で必ず1位になるフランソワーズ・アルヌール。何たってきれいだから(少ししつこい)。彼女についてが、実のところ一番意外なのだ。端役すらも詳細に出ている上記CD−ROMや、詳しい映画の本を見ても、なぜか彼女は出てこないのである。理由はわからない。確かに、日本で有名な「ヘッドライト」「女猫」のビデオは見あたらない。あまりに意外で、狐に摘まれたような気分がする。 それにしても、こんな内容書いて、インターネット見る世代の何人がわかってくれるというのだろう(笑)。きりがないので、少しだけ現役も登場してもらう。現役でぼくが一番好きなのは、サビーヌ・アゼマである。何たって・・・やめとこう(笑)。 →男優編へ続く |
| 懐かしの男優:(ここからの続き)男優となれば、やはりジャン・ギャバンだろう。ところがこれまた意外な事実がある。ぼくの職場に30歳前後のフランス人女性が5人ほどいるが、何とだれもジャン・ギャバンの顔を知らないのである。映画も見たことないそうだ。名前すら聞いたことがないと言う人も2人いた。お前らはフランス人のくせに、あの「望郷」を知らないのか。とはいえ、ビデオ屋ではギャバンの映画はたくさん売られているから、フランソワーズ・アルヌールの場合とは違うようだ。それにしても、時代が遠すぎるんだろうか。考えてみれば、ぼくだって田村正和の顔はわかっても阪妻の顔は知らないから、そういうもんだろうか。一方で、先日亡くなったジャン・マレーは全員がよく知っていた。不思議である。 それから、フェルナンデル。彼はフランスではいまだに大スターで、毎日のようにテレビで彼の作品をやっている(フランスには映画専門のチャンネルが12もあるのだ)。彼はぼくの父に顔が似ているので、他人のような気がしないのである(笑)。 ルイ・ジューヴェとなれば、これはもう単なる映画俳優の域を越えている。彼はフランスでも日本でも同様に人気があるので、ここで詳しく話す必要もない。墓巡りをしたことがあるが、今も花でいっぱいである。 とどめはやはりジェラール・フィリップ。男が見てもほれぼれする。彼も短い人生の割にはものすごい数の映画に出ているが、彼が出るだけでそれがいい映画に見えるからすごい。 最後にベルモンドも一言。彼はコンセルヴァトワールを首席で卒業した本物の俳優である。最近も映画に出てるのかどうかよく知らないが、すっかり白くなった頭で舞台によく出ている。彼とは逆に演劇を学んでいないアラン・ドロンはこのほど映画界を引退したが、彼も実は最近は舞台に出ている。だから、パリにいれば彼らを舞台で、即ちナマで見ることは簡単にできるということだ。しかし、年老いた彼らをナマで見るのは、ちょっと辛いかもしれない。 |
| テニス三題:今ちょうど全豪オープンがたけなわである。男子はふがいないが、女子はモーリスモという選手が決勝まで進んで、フランスが沸いている。それにしても、あのダベンポートに「男のようだ」と言われる女子選手っていうのは・・・。 ところで、フランスでダントツに有名なテニス・プレーヤーは、ヤニック・ノアである。現在はあの強烈な個性でタレントとして大活躍している。3年ほど前には、自伝がベストセラーにもなった。それから、昨年末に出た、フランスの売れっ子ミュージシャン総出演のCD+ビデオがあって、いわゆるエイドものなのだが、彼も楽しそうに出演している。ただ、ここには先頃やはりタレント・俳優に転向したサッカーのスーパースター、カントーナも出ていて、さすがに彼の存在感にはかなわなかったようだ。本業のテニスの方では、数年前、何かの大会でフランスが団体で予想外の快進撃を見せた時、コーチだった彼の派手な喜びようが印象に残っている。 現役では女子のピエルスが大人気。実力もさることながら、ランキング上位の選手の中では際だって美しく、また感情をむやみに出さないその気品が、フランス人にとっては鼻高々なようだ。確かに彼女の落ち着きというか、優雅な物腰は、もちろん彼女だって若いのだが、さらに若いヒンギスが逆立ちしたってかなわない。ぼくも大ファンである。彼女が負けると、相手がいじめっ子に見えてくる(笑)。 ところで、テニスであるから、女子選手は呼び捨てにはされない。英語圏なら「ミス」「ミセス」を付けるわけだが、ご存じの通りフランスでの試合では「マドモワゼル」「マダム」を使う。しかし、あの感情丸出しの激しいスポーツに、この語感は今ひとつ似合わない。「マダム・サンチェス」というアナウンスと、あのアランチャを結びつけるのは、ちょっと難しい(笑)。 |