| 恐怖のカニ女:フランスの人は、野外でもメトロでも平気で物を食べる。歩きながら昼食を済ませるのは当たり前。これはぼくでも毎日やっている。ぼくの同僚のパリジェンヌは、帰宅時間が近づくと机の引出しからリンゴを出して(買い置きがあるのだ)、かじりながら去っていく。 ホームや車両で、おもむろにチーズとナイフを出して切り始めるおばあさんとかもいる。立派な紳士も車両で立ったままチョコレートを食べる。それも大まじめな顔で。パックのサラダを膝に広げる人もいる。ここまで来れば、タイトルの意味は分かっただろう。今日メトロでわれわれの正面に座った女性は、身なりもまともな普通の人なのだが、何かスーパーの袋をゴソゴソやってるなあと思ったら、中にカニを隠していた。親指と人差し指でカニの中身をつまみ出して、延々と食っているのである。さらには指で(!)甲羅のミソをさらえてなめたりしている。指先はベタベタだし、あたりはカニの臭いが・・・。 どうして「今」「ここで」「カニ」を食べずにいられないのか、その精神構造が計り知れない。 (下へ続く) |
| 夫婦間の不一致:実際、食べ物に関するフランス人の忍耐力のなさはすごい。スーパーでヨーグルトとかチョコレートを買って、レジに並んでいる間に待ちきれずに食べ始めるオトナもよく見かける。当人もレジの人も慣れたもんで、「これね」という感じで見せれば、ちゃんとレジを打ってくれる。 それから、彼らにとってデザートというのは人生のたいへん大きな部分を占めている(笑)。セルフ・サービスのカフェテリアで行列が進まないのは、最後のデザートで散々迷っている人がいるせいである。スーパーでのデザートの品揃えは驚異的で、カップに入ったムースやプリンなどが8とか12とかの単位でパックになっている。それをまた何種類も一度に買っていくのだ。笑えるのは、中年あるいは老年夫婦が、このデザートのところでしばしば、本当にしばしば深刻に話し合っている場面を見かけること。デザートに何を買うかが一致しないため白熱した議論になっているのだが、身振り手振りも大げさで、何というか、かわいい。 |
| 哀れなvalentine:フランスに関係あると言えば関係ある間抜けな話をひとつ。 おととしのバレンタイン・デー、ぼくはまだ日本にいた。当然職場で親しい女性達はチョコレートをくれる。妻もくれる。で、まあ一応の礼儀として、妻の分は「一番大事だから、最後に取って置く」などと言ってやって、義理チョコの方を気が向いた時に少しずつ食べていた。ところが、当時のぼくはフランス行き間近でたいへん忙しく、結局妻の分はすっかり忘れて手つかずでパリに来てしまった。 数ヶ月後、食器戸棚を整理していた妻は、カビの生えたチョコレートを発見し、「これなんだろう」と不思議に思った(→本人も自分の贈ったものを忘れている)。 ややあって、これは自分があげた物だと思い出し、後日パリに抗議の電話が来た(笑)。 ま、結婚5年もすると、お互いこんなもんだよな(笑)。 |
| わが友コレアン:フランス料理の外食は時間がかかって疲れるので、わが家はアジア系に行くことが多い。中華が多いのはもちろんだが、韓国料理のレストランへもしばしば行く。近所に2件ほどある。焼き肉の定食なんかを頼むと、焼き肉自体のおいしさもさることながら、キムチ・ナムル・豆などが山のように付いてくるのがうれしい。残りを持って帰りたくなる。また、パリの中華レストランの米は長細いのだが、韓国レストランはちゃんと丸い米が出る。これもすごくうれしい。 近所に韓国の食料品店もある。米やもやしなどは、ここで手に入れている。日本人客も多いので、うどんに焼きそば、もちも売っている。ポッカの缶コーヒーもある。こないだ、妻が夕飯を作ろうとしたら米が底をついていたので、あわてて買いに行った。もう閉店過ぎだったのだが、「米を切らした!」と言ったら入れてくれたそうだ。日本人にとって米がないことの意味、事の重大さをすぐにわかってくれたらしい。さすがにわれらが仲間である。 |
| カフェ・ド・コメルス:うちから歩いて15分くらいの所に「コメルス(商業)」という妙な名前の町があり、そこに「カフェ・ド・コメルス」というレストランがある。中は3階建てで中央が吹き抜けになっている。本物の緑がたくさん植えてあって、天井がガラス張りで温室のようである。調度類やギャルソンの雰囲気がクラシックなのに気取ってなくて、いかにもフランスらしい感じのいい店である。値段も手頃で日曜も開いているので、われわれはよく行く。 ここは、何とスズメを放し飼いにしている。フランスのスズメは日本のに比べて人を怖がらなくて、よくカフェのテラスでも寄ってくるのだが、ここの連中はずうずうしいにもほどがある。なにしろ、客に出すために山と盛ってあるパンのかごに入り込んで、「極楽、極楽」という感じでつついているのだ。ギャルソンはもちろん気づいているんだろうが、スズメがつついたパンを平然と客に出してくる。野外を飛んでいるスズメではないとは言え、衛生的なことを考えると日本人には信じがたい。でも、かわいらしくてほほえましいので、許せてしまう。客もよく餌付けをしている。 |
| 瞬間湯沸かし:フランスは寒い国なので、どこでもお湯が出るようになっている。どんな小さなカフェの、どんなみすぼらしいトイレでも、手洗いでお湯が出ないということは、まず考えられない(ただし、それ以前の問題として、レバーが壊れていてお湯も何も出ない、ということはしばしばある・笑)。かようにお湯というものが必需品なのである。 それとは直接関係ないが、フランスの湯沸かしポットの性能というのは、ぼくがフランスに住んでみて非常に感動したことのひとつである。日本では禁止されているタイプで、電気が流れて熱せられるバーあるいは金属板がむき出しになっていて、直接水を温めるようになっている。これがものの見事に、あっと言う間にお湯を沸かしてくれる。問題は、ミネラル・ウォーターはよいが水道水だと石灰がこびりつくことである。これは人体には影響ないのだが、分厚く付着した石灰を見ると、よくこんな水を体に入れているものだと恐ろしくなる。ただし、これは酢を入れて沸かすことで、これまたものの見事にはがれる。 ついでにフランスらしい話をひとつ。わが家で使っている湯沸かしポットはT社の製品で、同じメーカーのひとつ上の大きさの製品を職場で使っている。ところが、わが家のはレバーを上げるとスイッチが入るのに、職場のは下げるとスイッチが入るのである(笑)。もう一度書くが、大きさは多少違うものの同じメーカーの同じデザインのものなのだ(笑)。どーしてこーゆーふーにするんだろう・・・。 |