野菜の買い方:専門店やマルシェ(青空市場)はまた違うのだが、スーパーでは野菜の買い方というのがある。野菜は売場に雑然と積み上げたり並べたりしてあって、客は近くにある透明な袋に種類ごとに欲しいだけ入れる。それを、必ずどこかにいる「計量担当」の所へ持っていくのである。彼(彼女)の前にはバーコード印刷機能が付いたはかりが置いてあるので、自分ではかりに乗せるか、手渡す。彼が、トマトならトマトのボタンを押すと、重さに応じて値段を印刷したバーコードが出てきて、それを袋に貼って渡してくれる。これをレジに持っていくのである。もちろん、1個いくらで売られるものや袋詰めのものはこうではない。この計量担当を見ていると、時々、この人の人生ってなんだろう、と感じないでもない。 もうひとつ、果物の買い方に独特の習慣(?)がある。たとえばブドウなんかは、みなさん売り物を試食してしまうのである。いやしからぬ身なりのご婦人でも、ひとつふたつつまんで味見をしている。ひとつふたつで済まないご婦人もいる。さらに他の房を試す人もいる。試した上で買わない人も、もちろんいっぱいいる。最近はぼくの妻もこの習慣に染まっている。

はしとフランス人:クリュニーとセーヌの間に、ミラマ(美麗華酒家)という、たいへんおいしい中華料理店がある。ここの麺類はとてつもなくおいしい。ぼくが好きなのは、(日本語で言うと)エビワンタン入りタンメンである。ちなみにフランスではワンタン・ギョウザはどちらも「ラビオリ」という。確かにね。この店は油断して遅く行くと、長蛇の列である。フランス料理に比べると回転が速いので、見た目ほど待たなくてもよいが、ここは混んでいる時間帯の方がおもしろい。評判を聞いて麺類を食べるフランス人の、いろんなはしさばきが目にできるからだ。はさむ・つまむは今時けっこうみな上手だが、熱い麺となるとそうはいかない。若いカップルも多いのだが、なぜかこのパターンは男の方が慣れていて、珍しい体験させようと彼女を連れてくるのだ。彼女に、こうやって持つんだ、と、はしの握り方を教えたり、必死の格闘をにやにやして見たりするのが楽しいらしい。たいていの場合彼女は戦いを放棄して、麺を間に挟んでパスタのように巻き付けて食べることになる。子供連れとなると悲惨である。子供ははしを二本揃えてしまって(もはやはしの用を足していない)、巻き付けて食べる。麺であるから当然ズルズルと滑ってボッチャンとスープに落ちるので、とっても見苦しい。しかし、親も自分が食べる方に必死なので、子供に構ってなどいられないのだ。 われわれ東洋人が右手にはし、左手にれんげを持って器用にすすると、まわりの人がみんな見るのでちょっと恥ずかしい。  (続く

のどをうるおす:カフェに入ったら何を飲もうか。とりあえず、ノン・アルコールの話である。一番簡単なのはもちろんカフェ、ただしエスプレッソである。普通のコーヒーはフランスにはない。いわんやアメリカンなどはない。カフェ・オ・レはもちろん本場である。大甘ショコラ(ココア)もある。紅茶も日本で言われているよりは飲まれている。冷たいものならいろんなジュ(ジュース)があるが、必ず100%果汁なので時にはかえってのどが渇く。ぼくのお気に入りはオランジーナである。要するにキリン・オレンジみたいなものである。これがけっこうフランス人に飲まれる。先日、コカ・コーラとオランジーナが買収だか合併だかを試みたところ、フランスの清涼飲料市場を事実上独占してしまうので、独禁法上問題があるとしてストップがかかったくらいである。他には、最近日本でも知られてきたディアボロとか、単にペリエ(炭酸入りミネラル・ウォーター)レモン付きを飲む人も多い。自販機には、日本では売れなかった「リプトニック(炭酸入りアイスティ)」がまだある。ところで、冷たい飲み物といえば、決定的に違うところがある。アイス・コーヒーがないのだ。ぼくの大好物なのに。

食べられないもの・2:ぼくの職場には、日本語を話すフランス人が何人かいる。もともと日本好きなわけだから、日本の食べ物はだいたい好きである。フランス人にとっての日本料理は、おおむね生の魚が食べられるかどうかで決まるのだが、彼女らはとっくにクリアしている。あとは個人の好みである。ところが彼女らが全員食べられないと言ってるものがある。ちょっと意外だがおでんである。練り物の歯触りが気持ち悪くて食べられないらしい。こんにゃくについても、フランス人には食べられないでしょう、と言い切っている。日本のチーズもダメ。これは単純にまずいからだ。彼女らの一人が日本でホームステイした折、家の人が気を使って毎朝チーズを出してくれたのだが、これがまずくてびっくり。けれども値段を聞いてさらにびっくりで、申し訳なくて「もういらない」と言えなくなってしまい、毎日頑張って食べたそうだ。確かにフランスのチーズはどれもすごくおいしい。キャリアの違いはどうしようもない。

食べられないもの:今のパリでは、日本食品はほとんどの物が手に入る。キュウリやピーマンなど似て非なるものもあるが、根本的には同じだ(当たり前か)。加工品では、豆腐も(最近卸元が倒産したと聞いたが)、パックのものがある。油揚げや蒲鉾・ちくわも強引に冷凍して売られている。納豆は日本での安さを考えると何でこんなもんにこんな金を、と感じるが、手に入る。中国人街まで足を運べば、値段もまあ許せる範囲まで下がっている。結局この項の結論はひとつである。「おいしいご飯」だ。いい米を使おうが、日本製の炊飯器を買おうが、水をいろいろ工夫しようが、どうしてもおいしいご飯は炊けないのである。なぜだかわからないが、それはこちらの日本人がみんな認めていることだ。

ミラマ続編:さて、またまたミラマ(ここを参照)へ行ってきたので、箸さばきの続きを書く。中華料理店で出されるあの長い箸を手にすると、彼らがどうしても始めてしまうことがある。まずチャンバラである。最初は一人でチャキチャキやっているのだが、そのうち連れの彼や彼女とチャンバラ(フェンシングと言うべきか)を始める。われわれが箸で遊んではいけないとしつけられているように、フランス人も少なくともレストランではフォークやナイフでは決して遊ばないのだが、なぜか箸だとやってしまうようだ。それから、箸をスティックにしてテーブルを叩く。子供じゃあるまいし、いい大人でもこれをやる人がよくいるのだ。もちろん、どちらもさすがに食べている最中にはやらない。料理を待っている間である。それにしても、われわれから見るとたいへんなお行儀である。 ところで、先日フランス人の究極の箸使いを目撃した。箸でメニューをつまんでめくってるやつ(笑)。これはもう、行儀というのか、何と言えばいいのか・・・。