黒曜石のなかの不死鳥

 「黒曜石のなかの不死鳥―永遠の戦士エレコーゼ〈1〉」マイクル・ムアコック ハヤカワSF文庫<SF1610> 2007.5 原作1970
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 永遠の戦士エレコーゼ。無数の転生の記憶をたずさえて、くりかえし異なる世界へ召還させられる。何かに困って伝説の戦士を召還する側は、召還される側の都合など考えていないわけで、エレコーゼにとってはそれまでいた世界から引き離されるのは不本意なこと。ともあれ、呼び出されてしまえば抵抗しようが無い。
 呼び出された先のある種幻想的世界描写が良い。

こんなことを考えた:
 昔読んだときは作品の前後関係に無知だったので、てっきりエルリックの後にエレコーゼが書かれたと思ったのだが。言われてみると構成としては単純で、より初期の作品と思える。それでも、作品をまとめるときに加筆修正されて、後の作品の世界観が入り込んで、基調とは微妙に異なる深みができているから、当初の印象もそれほど的外れではない。
 呼び出されてそれまでの世界から、いつ切り離されてしまうかしれない主人公の立場は運命を受け入れるしかない点で宿命的だ。普通の世界に住む我々も運命を選択できない点では変わらないはずだが、こうした設定がそれをわかりやすく提示する。
 ムアコック作品はその意味で寓意的だ。寓意が過ぎてしまうと作品は陳腐になるが、この本の段階では楽しく読める。コルムとホークムーンもやはり楽しい。エルリックは代表作とは思うが、ある種の破綻に目をつぶらないと受け入れられない。そうした点ではエルリックを読まずにエレコーゼからはじめたほうが、ムアコックを好きになりやすいかもしれない。

おすすめ度:★★★★
 ムアコック世界の全体像が見通せるような気がする。エルリックが受け入れにくいと思った人の再挑戦を期待。
 (2007.6.16)


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