シャドウ・パペッツ

 「シャドウ・パペッツ」オースン・スコット・カード ハヤカワSF文庫<SF1491> 2004.10 原作2002


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 カードによるエンダー世界の話の続編。「シャドウ・オブ・ヘゲモン」に続く話。世界の闘争と調和が語られる。

 地球の総力を挙げた異星種族バガーとの戦いのため、地球のすべての天才少年・少女がバトル・スクールに集められ戦闘と戦争の訓練を受けた。バガー戦役は終結し、最高指令のエンダーは地球を離れ、それ以外の子どもたちは地球の各地へと戻った。
 地球はバガーに対する共闘から開放されて、ふたたび国家間の戦火を交えることになった。各国の戦争指導者は、かつてのバトル・スクールの同胞たちだ。

 そんなわけで、地球の戦争を語るには、バトル・スクールの生徒たちの関係を語れば良いという(そのほかの人材はあまりにも能力不足で簡単に排除されてしまう)箱庭的特異社会が生まれていた。
 際立ったのは、優秀な能力を備えていながら良心を欠いたアシルと、エンダーの副官であり、エンダー以上の能力を秘めたビーンだ。もうひとりの重要人物、エンダーの兄で覇権政府のヘゲモンであるピーター・ウィッギンもその前では精彩を欠く。

 国家間を舞台にした超天才同士の戦いは、相手の弱みを攻め、なおかつみずからの防衛を固めることによって進められるが、互いの能力が拮抗しているから容易な進展は望めない。
 難攻不落な相手を攻略するためには、相手のおかれた立場、考え方をつきつめ、その出方を予想した上で裏をかき、さらに裏をかこうとする相手を出し抜かなくてはならない。
 ここに恐るべき背理が生まれる。超天才同士が相手を攻略するためには、相手を十分に理解しなくてはならない。激烈な闘争は、相互理解によってこそ継続しうるものであり、相互理解は必然的に調和へとつながっていく。もちろんとことん相手を理解したうえで、それを相容れないものとして、理解したが故に排除しなくてはならない場合もありうる。

 二人の超天才の戦いにひとまずの決着がついたものの、世界の混沌はいまだに継続し、あらたな理解と調和が必要とされているようだ。


 さて、さらに問うことにする。互いに相手を理解しつつ、一方は勝ち、もう一方は負ける。その理由は片方の理解不足ではなくその支持者の差だ。これは民意の集約なのか、それとも神の意思のあらわれなのだろうか。


 初稿:2004.11.15

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