揺籃の星

 「揺籃の星」ジェイムズ・P・ホーガン 創元SF文庫 SFホ1−23、SFホ1−24 2004.7 原作1999


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 戦う科学者。地球滅亡編。
 おなじみホーガンの戦う科学者シリーズ(なんて名称は私が勝手に言っているだけ)。今回の仕掛けは惑星規模の大胆な物理現象を扱うという意味で、「星を継ぐもの」に近いスケールになっていて、ついに”あの”ホーガンが復活かという期待を持ってしまったが、後半の話が滅亡寸前の地球からの、個人的脱出という的を絞りすぎた話になっているところがいくらか寂しい。とはいえ、三部作の残る部分で、太陽系人類の復興と(この話ではまったく触れられていないから勝手な憶測だが、星系外の知的生命との接触)という視野の広い物語に発展する期待もある。
 前半におけるような太陽系規模の災害が本当に起こり得るかというと、かなり怪しげではある。それでも、木星が十分に不均質で、さらに偶然かあるいは何らかの摂理にもとづいて、頻繁に内惑星くらいの質量を送り出しているということについて、完全な否定はできない。木星の内部構造について我々はほとんど何も知らない。
 いずれにしても、我々は過去の体験にもとづいて常識としての判断を下すのであって、その意味で高々数千年の経験は裏切られる可能性を含んでいる。そんなわけで、ごく近いうちに地球に深刻な危機が訪れることを否定はできないわけで、問題にすべきはその原因ではなくて、そうしたことが起きた場合の我々の行動と、結果としての人類の行く末であろう。

 ということなら、今回の戦う科学者ランデン・キーンも、単なる狂言回しに過ぎないはずだが、ホーガンのほかの作品と同じように活躍しすぎちゃうところがいくらか私のSFに対する期待を裏切るところなんだよなあ。


 初稿:2004.8.18

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