ダーウィンの使者

 「ダーウィンの使者」グレッグ・ベア ヴィレッジブックス F-ヘ3-1F-ヘ3-2、 2002.12 原作1999


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 ダーウィンが進化を作ったわけではないので、不思議な題名だが、それでも題名からわかるとおりの進化/新人類/ウィルスを取り扱った物語。
 ヨーロッパアルプスで発見される太古の遺体が冒頭で登場。これでは”5000年前の男”アイスマンを思い出さないわけには行かない。と思っているとまさしくそのとおり。地球温暖化の影響でアルプスの氷河はアイスマンの当時よりもさらに溶けてきているから、今回の発見はさらに時代がさかのぼって…。
 うーむ、退屈な展開だぞ。まさか冷凍死体から未知のウイルスが蔓延して人類の危機が訪れるなんて話になるのではあるまいか。とか思っているとどうやらそんなわけでもなく、お話の舞台と登場人物がともに切り替わる。主人公はどうもこちららしい。冒頭のテンポは失速して、地味なウイルス論議が展開。いつになったら新人類と旧人類の戦いが始まるのであろうか。

 これはもう少し先入観を押さえて読み進む方が良いようだ。ある種のウイルスが引き起こす人類の惨劇。それにしても物語の後半に入って合衆国と西ヨーロッパ以外の状況はどうなっているのか。全世界的災厄のはずだが、アジア・アフリカ・オセアニア地域はなすすべもなく取り残されてしまっているのだろうか。物語ではまるであらゆる事象が合衆国に集約してしまっているようではないか。
 それも道理で、物語の展開経路はまさしくアメリカ自由賞賛物語。最初に真実に気付いた少数者は、災厄の元凶として迫害され追い詰められていく。だが、あくまでも屈することなく真実を守り続けることで少しずつ意見を同じくする少数者を糾合し、ついに解放されると共に真実を認めさせることに成功するのだ。
 アメリカ的自由主義が、個人的な信条を異にするさまざまな人たちが共に暮らしていくための優れた方法論だというのは認めるところであるが、だからといって常に真実が勝利を収めることにはならないと思うのだがなあ。ともあれ今回もアメリカの自由主義によって困難は解決を迎え人類のあらたな歴史が切り開かれていくのだった。

 ウイルスを媒介にしたあらたな進化の仕組み、あるいは現人類があらたな進化の時を迎えたとして、どこがどのように変化するのか、人類の生物的機能にどんな改善の余地があるのかなんてのがSF的には興味深いところ。進化の仕組みにおけるネットワーク機能を私は信じないけど。


 初稿:2003.7.29

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