「レンズの子供たち」E・E・スミス 創元SF文庫 SFス1−4 2003.3 原作1954
![]()
amazon.co.jpこの世界には”精神科学”というものがあって、アリシア人たちは長年に渡りその追求を重ね力を養ってきた。その力を使えば、宇宙のかなたを見通し、他の精神を操り、物質的なものを破壊することもできる。
平和と繁栄を愛するアリシアにはエッドアという対抗勢力があった。エッドアは物質作用の助けを借りた精神力の涵養を目的として研鑽を重ねていた。しかし、その目的はこの宇宙を支配することだった。アリシアの力を持ってしてもエッドアの本拠を攻め滅ぼすことはできない、またエッドアがアリシアを滅ぼすこともできなかった。
互いを攻撃するための手段として、この宇宙が道具となった。エッドアはこの宇宙を支配するために、アリシアはこの宇宙を守るために、ともに宇宙の支配権を求めて争わなくてはならないというのは何という皮肉だろう。
そしてついにアリシアの計画は最終段階を迎え、宇宙の若い種族の中からアリシア以上の強力な存在を生み出すことに成功した。戦闘・殺戮描写を抜いてレンズマンをみるならそういうことになる。”守るために戦う”というのは近・現代の社会生活においてあらわになった人類が抱える皮肉だ。レンズマンは第4巻は、ついにその皮肉の本質をむき出しにして”守るために滅ぼす”ことを描写するに至る。
しかし、正義の味方は傷つかない。作品においては、都合良く贖罪がなされ、宇宙はあらたな出発の時を迎える。第二次世界大戦を通して、多くの人が世界全体を見渡すようになり、その結果あらたな課題が認識されつつあった、そのことをスミスはこの作品を通じて具体化した。
4人(+1人)の第2段階レンズマンの書き分けや、子供たちとの対応、愛の神秘性への言及など、作品世界の緻密さ、わかりやすさにおいてもこの時代を代表する作品だと思う。
初稿:2003.4.15