「新宇宙大作戦 鏡像世界からの侵略」ウィリアム・シャトナー ハヤカワSF文庫<SF1386>、<SF1387> 2002.1 原作1998
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amazon.co.jp (上) (下)宇宙連邦随一の超人と化した、ジェームス・T・カークが再び戦いの場へと呼び返される。戦う相手は、もう一つの宇宙、カークのかたわれ、ティベリウス皇帝が支配していた世界、かつて(宇宙連邦の)初代エンタープライズが遭遇した悪者カークがいた宇宙だ。
自分自身と戦うという様式は、強くなりすぎてしまった主人公にとってはおいしい設定。平行世界ものは、わりと簡単に筋立てを複雑化できるところも魅力。というわけで、冒険活劇としてはかなり期待できる。宇宙連邦の宇宙へ、大規模な侵入がなされる。お互いの宇宙に同一人物(かたわれ)がいることを利用して、宇宙連邦内の重要人物が入れ替わっているのだ。
そんな中、平行宇宙でコピー製造された<ヴォイジャー>がピカード指揮する<エンタープライズE>の前に現れる。行方不明の宇宙艦を囮にした、<エンタープライズE>奪取作戦だ。
一方、カークもまた平行宇宙からの訪問者に協力要請を受ける。平行宇宙での反旗を掲げる、平行スポックだった。てな具合に、平行宇宙からの侵略が顕在化する中、スタートレックの主要人物たちが次々と巻き込まれ、宇宙連邦の危機が進行する。あまたの平行宇宙がある中で、なぜこの二つの宇宙だけが強く関連するのか。あるいは、二つの宇宙はどこまで同じで、どこまで違うのか。などの疑問にもある程度の解決を与えつつ物語が進む。
当初カークが巻き込まれるところで、いくつか腑に落ちない点があるのだが、その後スポックが登場して、そのあたりの大きな疑問を解決する。これまでの経験で高い論理能力を身につけたと評価されるカークにしては見落としが多すぎるのではないか。
大きな不整合点を囮にして、スポックに解決させることで物語全体の整合があるように印象づけているが、そのおかげで明示的に示されない部分の矛盾に読者の目がいかないような仕掛けになっていて、なんとなく納得できないままに、戦闘場面へと突入。このあたりはある意味気持ち良い。あらためて、矛盾を探し出して後でひそかに楽しむこともできる(平行パリスと平行ジェインウェイの関係とか)。てなことで、読んでいるときは深く考えすぎずに、おなじみの人物たちが、それぞれのおなじみの行動で問題解決につなげていく過程を楽しみましょう。
初稿:2002.2.24