「決戦!太陽系戦域」デイヴィッド・ファインタック ハヤカワSF文庫 SF1283、SF1284 1999 原作1996
amazon.co.jp (上) (下)太陽系に迫る”金魚”とシーフォートの戦い、と前作のあとがきで野田大元帥は書いておられるが、そういう話だと思って読むのは健康に悪い。それが始まるのは下巻の半分を過ぎたところだ。「おお、神よお許しください。私はネタバレをしてしまった。」てな具合にシーフォートの贖罪意識が全面に押し出されて描かれるこのシリーズ、こういう抹香臭い罪の意識が嫌いでシーフォートを読む気がしないという感想も聞かれるその第四弾なのだ。
行き過ぎた自由社会が荒廃にいたり、人類はあらたな規範のもとに社会を築き始めた23世紀という舞台。SFのテーマのひとつに異文化を描くことがあるが、このシーフォートの世界は我々とは規範を異にする別の人類社会だ。そこに教訓を読みとるもよし、異質な雰囲気に浸って楽しむも良しだが、ここに描かれた文化を直接的に現在の社会規範に対応するものとして受け取ってしまうのはSFを味わう態度として私の採用するものではない。
異なる文化社会をどこまで緻密に構成し、しかも現代の読者をいかに楽しませるかはSFの醍醐味のひとつだが、その意味で今回は今まで以上にSFした作品に仕上がっていると思う。
選民により構成される国連宇宙軍士官学校という組織、一方にいる賤民であるトランスホップの社会が1000ページを越える作品の中でじっくりと、筋を通すというよりは癇癪持ちの性格があらわになった我らの英雄シーフォートの行動を通じて描き出されていく。
社会のプレッシャーに曝され、悩みながら、それでもなお自分自身を押し出していくシーフォート。その生き様は文化の違いを越えて私に快感をもたらす。
続く第五巻で社会を描くというこの作品のテーマが更に深化するという予感があって、ますます期待が膨らんでいく。
「激闘ホープ・ネーション!」の感想
初稿:1999.9.14