| 「王狼たちの戦旗」ジョージ・R・R・マーティン ハヤカワSF文庫<SF1604>、<SF1608>、<SF1613>、<SF1617>、<SF1625> 2007.3〜7 原作1999 | |||||
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長い物語「氷と炎の歌」の第2部。まだまだ、少なくとも第5部までは続く。第1部でロバート王とエダード・スタークが死んで、七王国を複数の王が割拠する。これ幸いに王位を狙うものやら、正統な後継者を名乗って争いあうものやら。放逐されながらも七王国への帰還を狙うデーナリス。壁のむこうの謎を追いかける夜警団。公正を守ろうとする者、卑怯者、個人の欲求に忠実な者、陰謀家、義務につかえようとする者などなど。 これらが視点を変えながら、それぞれの立場が語られるので物語としては錯綜した印象になる。それぞれが関係しながら、それぞれの目的を追いかけていく深みのある構造とも言える。 ファンタジー風の怪異も数々出てくるが、主体はそれらを操る人間。いやまあ、中心になっている生き物が人間かどうかは明言されていないが、描写されている範囲では人間みたいではある。 | ||||
こんなことを考えた: 世界は広くて、それぞれの思惑も容易には交錯しない。それでもいくらか交わることもありで、個々の物語がわくわくするものなら作品として面白くなることもある。 | |||||
おすすめ度:★★★ 馬と鎧と剣で戦う世界の、いくらか怪異が混ざった長い物語が好きな人はどうぞ。 | |||||
| (2007.9.2) | |||||
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| 「最後から二番目の真実」フィリップ.K.ディック 創元SF文庫<SF テ-1-18> 2007.5 | |
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世界戦争が始まり、大部分の住民が地下へ避難して15年。苦しい耐乏生活が続くが、地上ではしかし戦争終結を隠して特権的なくらしが営まれていた。 |
こんなことを考えた: 例によって核戦争とそれに続く皮肉な状況。今回はしかし、かなり具体的なメッセージがこめられていて、その点は良い。 ディックの作品が読みにくいのは、登場人物の動機が読めないせいかと思う。ある人物があるところで行動するのだが、それまでの描写との脈絡が乏しいと思える。それが意外性につながるので、肯定的に受け止めることもできる。他者の行動など読めないのがあたりまえだから、そこが良いのだという見方ももちろんあり。 | |
おすすめ度:★★★ 物語としてはわかりやすい。怪しい道具もたくさん。 | |
| (2007.7.28) | |
| 「剣のなかの竜―永遠の戦士エレコーゼ〈2〉」マイクル・ムアコック ハヤカワSF文庫<SF1620> 2007.7 原作1986 | |
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現実世界で16年を経てふたたび永遠の戦士エレコーゼの出番。今回は黒い船に乗ったり黒玉と黄金の戦士と掛け合いをしたりと、他の物語との関係を暗示されることがますます多くなる。 今回は、呼ばれもせずに(宿命の導くまま)別世界へと転生するエレコーゼ。しかも、呼び出されたはずの世界には自分と瓜二つの存在が。というわけで、以前のエレコーゼとはいくらか違って、作品の陰影・深みが大きくなっている。 |
こんなことを考えた: 作品のメッセージとしては割合に単純だと思えるが、他の物語が重なり合ったりして言外の部分で深読みをしてしまう。物語を読むことは作者のメッセージを汲み取ることではなくて、自分の世界を深めることに眼目があるのだから、錯綜して深読みしてしまう物語は、何度読んでも得るものがある良い物語ということになる。 | |
おすすめ度:★★★★ まとまり良く、深読みの余地があるという点で悪くない。 | |
| (2007.7.24) | |
| 「竜と竪琴師」アン・マキャフリイ ハヤカワSF文庫<SF1618> 2007.6 原作1998 | |
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内燃機関を持たない牧歌的社会を構成する惑星パーン。しかしそこにも人間の確執はある。後の物語において卓越した見識を発揮することになる竪琴師ロビントンの若き日の物語。レサやフ−ラルなど、「竜の戦士」で中心的な働きをすることになる懐かしい人たちも登場。 |
こんなことを考えた: パーンの物語は、文明形態の比較・変化を追いかけている点で興味深い。 | |
おすすめ度:★★★ 牧歌的過ぎて、物語としては波乱の少ない展開。さまざまな葛藤とその対決をあちこち配して興味を引くところはマキャフリイの持ち味として健在。と言うより、こうした起伏の少ない物語を読ませるものにできるという点で抜群の冴えを示している。 「竜の戦士」に直接つながる前日譚になっている点が嬉しい。 | |
| (2007.7.24) | |
| 「ゴールデン・エイジ2 フェニックスの飛翔」ジョン・C・ライト ハヤカワSF文庫<SF1612> 2007.5 原作2003 | |
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三部作の2。黄金の普遍を追放されたファエトンは、地球へと降り立つ。この時代は第七精神構造紀だが、地球には第六以前の世界の残滓があり、それを遍歴するファエトン。第六以前の勢力を糾合して、黄金の普遍に立ち向かえるのかというと、それほど世の中は甘くできているわけではなく、第七勢力に立ち向かえないからこそ地球でほそぼそと生き延びているそれ以前の勢力。 結局、救いは主流勢力である黄金の普遍側からもたらされるしかないのだが、その中にもあれこれと思惑がある。 |
こんなことを考えた: 旧文明残滓の状況と過去の歴史をたどり、読者はより深くこの世界を知ることになる。第1巻と同じく、多様で幅広いさまざまな価値観。錯綜した世界では読者は結果を受け入れるしかない。いろいろあってともかく、果たして沈黙の普遍はファエトンたちの妄想なのか(あるに決まっているが)。複雑な世界の状況を流れるように受け入れながら楽しむのが吉。 | |
おすすめ度:★★★ 圧倒的なごたまぜを、詳細にこだわりつつ、全体の流れを見失わないように読むことができるという倒錯的快感にとらえられた。 | |
| (2007.7.24) | |
| 「黒曜石のなかの不死鳥―永遠の戦士エレコーゼ〈1〉」マイクル・ムアコック ハヤカワSF文庫<SF1610> 2007.5 原作1970 | |
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永遠の戦士エレコーゼ。無数の転生の記憶をたずさえて、くりかえし異なる世界へ召還させられる。何かに困って伝説の戦士を召還する側は、召還される側の都合など考えていないわけで、エレコーゼにとってはそれまでいた世界から引き離されるのは不本意なこと。ともあれ、呼び出されてしまえば抵抗しようが無い。 呼び出された先のある種幻想的世界描写が良い。 |
こんなことを考えた: 昔読んだときは作品の前後関係に無知だったので、てっきりエルリックの後にエレコーゼが書かれたと思ったのだが。言われてみると構成としては単純で、より初期の作品と思える。それでも、作品をまとめるときに加筆修正されて、後の作品の世界観が入り込んで、基調とは微妙に異なる深みができているから、当初の印象もそれほど的外れではない。 呼び出されてそれまでの世界から、いつ切り離されてしまうかしれない主人公の立場は運命を受け入れるしかない点で宿命的だ。普通の世界に住む我々も運命を選択できない点では変わらないはずだが、こうした設定がそれをわかりやすく提示する。 ムアコック作品はその意味で寓意的だ。寓意が過ぎてしまうと作品は陳腐になるが、この本の段階では楽しく読める。コルムとホークムーンもやはり楽しい。エルリックは代表作とは思うが、ある種の破綻に目をつぶらないと受け入れられない。そうした点ではエルリックを読まずにエレコーゼからはじめたほうが、ムアコックを好きになりやすいかもしれない。 | |
おすすめ度:★★★★ ムアコック世界の全体像が見通せるような気がする。エルリックが受け入れにくいと思った人の再挑戦を期待。 | |
| (2007.6.16) | |
| 「ほとんど無害」ダグラス・アダムス 河出SF文庫<ア 4-5> 2006.8 原作1992 | |
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銀河ヒッチハイク・ガイドの5巻。地球をまきこむ並行宇宙の秘密があきらかに。だからどうってことも無いが。冒頭ではそうではなかった世界が展開。そうではなかった世界とそうだった世界が交錯して、時間的逆行工作は何者のたくらみか。読み進む上で話の筋はあまり重要ではない。 |
こんなことを考えた: 平行宇宙をネタにするとやっぱりこうなっちゃうんだよね。 | |
おすすめ度:★★★★ しだいに質が変化しているとはいえ、楽しいお話がたくさん。読むときは1巻からどうぞ。 | |
| (2007.6.5) | |
| 「白き狼の息子―永遠の戦士エルリック〈7〉」マイクル・ムアコック ハヤカワSF文庫<SF1603> 2007.3 原作2005 | |
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エルリック7冊目。ムアコックの世界でもとびきり怪しい、魔法機械をあやつるグランブレタン帝国。ホークムーン率いる革命勢力側に肩入れすることになるエルリック一行。 |
こんなことを考えた: エルリックとホークムーンがまたしても邂逅かと思わせておいてというあたりの演出がにくい。特定の能力者なら時空を超えて、多元宇宙に影響を及ぼせる。多元宇宙だけあってこのホークムーンはあのホークムーンとなんか違うようなところも。勝利の戦いも、別の宇宙では敗北となり、その数は知れず、ならば多元宇宙に影響するというのは影響を及ぼしていることになるのか。 すべてありうることは、あるとする世界の中でしだいに浮かび上がる個人の姿勢。まるで薄っぺらながら、本人は気に入っている哲学を見るかのようだ。 先が見えないこの現実を反映していく物語の結末はそれとして、個々の状況を楽しむのが吉。 | |
おすすめ度:★★★ ホークムーンと暗黒帝国の内実が踏み込んで描かれているのが好き。 | |
| (2007.5.30) | |
| 「海底二万海里」ヴェルヌ 角川文庫2531 1963.10、2002.10 原作1869 | |
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不本意ながらもネモ船長の操る驚異の電気潜水艦ノーチラス号に捕獲された私は2人の仲間とともに、世界の海を二万海里に渡ってめぐりゆくことになる。 |
こんなことを考えた: 先端にドリルを構えた金色の潜水艦が、大イカと鯨の格闘に巻き込まれ…という映画の印象だけに支えられて読んだ。大イカも鯨も登場するが、両者が嵐の海で争うなどの活劇要素はまったく無い。 世界の海を経巡るなかで、海の多様さが、600ページを越えて次々と語られていく。同じ構成の繰り返しでここまでの差異を出せるというヴェルヌの力量には感心する。博物学的な要素満載で、世界の多様性を知らしめる啓蒙書として優れている。 | |
おすすめ度:★★ 文学的可能性として、かつてこのようなものが試みられ、成立していたということを知る上で貴重。活劇ではない、静かな興奮を味わおうとする向きに良い。 | |
| (2007.5.30) | |
| 「さようなら、いままで魚をありがとう」ダグラス・アダムス 河出SF文庫<ア 4-4> 2006.6 原作1984 | |
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銀河ヒッチハイク・ガイドの4巻。第1巻冒頭で破壊・消滅した地球に、なぜかアーサーが到着。いくらか主観的時間差はあるものの、アーサーの家もある。それに加えて周囲にはいいくつかのおかしな現象もある。がまあ、ストーリーなどどうでもよいと思えるジョーク満載。 |
こんなことを考えた: 時間旅行も多元宇宙も超知性も超常現象もありの作品だから、消えた地球があらわれてもどうということはない。地球が消えたことだって、見方によってはまったく深刻ではないのだから十分なジョークになる。 深刻な状況を、見方を変えて笑い飛ばそうというのがジョークだと思うから、最大規模のジョークはすでに第1巻で尽くされていて、同じことを期待するのはもちろん無理だ。 今回もそれなりに”地球消失”規模の(それよりはいくらか小さい)ジョークを繰り広げようという、著者の心意気を感じる。 | |
おすすめ度:★★★ ジョークが好きで、第1巻から第3巻を読んでもまだ飽きていない人は、最後まで付き合うのが筋というものだ。 | |
| (2007.5.30) | |
| 「老人と宇宙」ジョン・スコルジー ハヤカワSF文庫<SF1600> 2007.2 原作2005 | |
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入隊すれば元気になるが、命懸けの戦闘を義務とされる。二度と地球には戻れない。75歳の老人には魅力のある誘惑ではある。行く手に待つのは果たしてどんな世界か。 |
こんなことを考えた: 超技術的手段で戦う宇宙歩兵。死亡率は高い。相互理解の望みのない、数々のエイリアンとの闘争。 物語の主題が、軍隊内部の謎解きと、自分探しということになるのも、戦争自体が個人ではどうしようもないものだからで、その意味現実味があり、また物語として軽く楽しめる。 宇宙軍がかたくなに地球自体を拒む理由はよくわからなかった。 | |
おすすめ度:★★★ そういうものが読みたいという読者の期待を裏切らないであろう、おなじみ宇宙戦闘物語。 | |
| (2007.4.21) | |
| 「スクレイリングの樹―永遠の戦士エルリック〈6〉」マイクル・ムアコック ハヤカワSF文庫<SF1596> 2007.1 原作2003 | |
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エルリック6冊目。みずからの呪われた宿命を全世界とともに滅ぼそうとするゲイナー。とは言っても多元宇宙だから、一つの世界だけにとどまるのではその狂気の野望を果たすことにはならない。 多元宇宙全体が盛衰する仕組みが要請され、その仕組みをめぐる攻防が始まる。 |
こんなことを考えた: 手段があればひとはどこへでもでかけていく。そこに起こるのは規模を増した、おなじみの構造。<上方世界の神々>はひとの道具となり、時空は入り混じる。前面に立つのはひとの動機と行動。ひとは自己認識に直面する(可能/不可避になったときあなたはどうする)。 他者との戦いを追求して、ついに自己との対決に追い込まれる、というのは現実世界とも共通の構造だ。それを作品の中でやってしまうと、作者の個人的満足につき合わされたような気になる。 | |
おすすめ度:★★ ここまでくると、好き嫌いが分かれるだろう。単独で読んでも意味が無いだろうから、読むかどうかは先行作品と他のムアコック作品を通して決めれば良い。 | |
| (2007.4.20) | |
| 「夢盗人の娘―永遠の戦士エルリック〈5〉」マイクル・ムアコック ハヤカワSF文庫<SF1589> 2006.11 原作2001 | |
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エルリック5冊目。ナチスドイツと戦うエルリック。軽機関銃対ストームブリンガー。ナチス空軍対竜。時空の輻輳は先の作品にまして複雑化するが、<上方世界の神々>の力はあまり及んでこない。それだけ人間たちの意志が表立つことに。 |
こんなことを考えた: あまりにはまりすぎているだけに、著者自らがこんなことをして良いのかと嬉しくなってしまう。筋書きは以前にも増して複雑化し、ある意味地味な作品になっている。第三期もそのはじまりということで、構成は過去のエルリックからそのままを踏襲しようとしたようだ。 | |
おすすめ度:★★★ 前作から現実世界で20年以上。いくらかとまどうが、ムアコック好きにはなんの問題も無い。 | |
| (2007.4.17) | |
| 「ストームブリンガー―永遠の戦士エルリック〈4〉」マイクル・ムアコック ハヤカワSF文庫<SF1579> 2006.9 原作1977 | |
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エルリック、新訳4冊目。またもやセレブ・カーナとの対決。それが終わると、いよいよ宿命のもと、世界の命運を賭けた戦いへと巻き込まれるエルリック。 |
こんなことを考えた: 第一期と第二期がこれで完結。召還されないと出てこれない<上方世界の神々>はあいかわらず不可思議な存在だ。宇宙の構造が、一つの世界の終わりということでちょっとだけあきらかになる。ムアコックが物語の完結というかたちでひとまずの結論を出したところで、その先が気にかかるというのが<永遠の戦士>らしいところ。 | |
おすすめ度:★★★★ いったんの完結。これだけ読んでも意味が通らないと思うが、シリーズのかなめ。 | |
| (2007.4.17) | |
| 「反逆者の月」デイヴィッド・ウェーバー ハヤカワSF文庫<SF1601> 2007.2 原作1991 | |
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月で発見された”帝国”の巨大宇宙艦。艦長となったコリン・マッキンタイアだが、帝国をおびやかすアチュルタニの侵攻が間近に迫っていた。 |
こんなことを考えた: 著者のデビュー後間もない作品だから、設定がどこかで聞いたことのあるようなのは許す。ご都合主義のいかにもな設定をそれなりに、地球の裏の歴史とかをからめてこれだけの規模に仕上げたところはたいしたもの。 いくらなんでもこれだけの宇宙艦をひとりでは運用できない、と心配したが、これまたうまい具合で、著者得意の戦闘場面につながる。 ハリントン・シリーズと比べると、軍隊は内輪もめではなくて、やはり民間人を守るために戦ってもらいたい。その意味でハリントンがうけている理由がわかるように思う。 | |
おすすめ度:★★★ それなりに先が気になる、定番の筋書き。地球史とダハク乗員とのかかわりには怪しいところもあるが、規模をここまで広げているから許す。 | |
| (2007.4.17) | |
| 「暁の女王マイシェラ―永遠の戦士エルリック〈3〉」マイクル・ムアコック ハヤカワSF文庫<SF1570> 2006.7 原作1977、1991 | |
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エルリック、新訳3冊目。エルリックに復讐を誓う魔術師セレブ・カーナとの<混沌>と世界を巻き込んだ対決。死んだはずの父王サドリックに召喚されたエルリックは<薔薇>が仕掛けた精緻な復讐の一端を担うことに。 前半は普通の冒険活劇だが、後半では世界に影響を及ぼす力が<混沌><法><天秤>以外にも多数あることをうかがわせる。 |
こんなことを考えた: 第一期に当たる前半と、第二期に当たる後半。類似の、次元を超えた、神々の力をも巻き込む、似たような長さと構成の冒険だが、世界の構造をどう見るかという点で、対照的。 世界にはさまざまな要素があり、絶対的なものと思えるものは無く、自分の力でできることは限られている。そうした中でどんな行動を選択するのか悩む主人公。となれば、もはや活劇ではなくて人生の戯画。それが次元が錯綜する絢爛華麗なイメージを伴って描かれるのはムアコックならではの持ち味。 著者自身の思想の変化・深化が作品を通じてなされていくのを見るのは、読者の大きな楽しみのひとつだろう。願わくば、第三期において凡庸な結論に落ち着かないことを。 宇宙にどんな力が働いていようと、影響しあうのは同程度の力を持つもの同士。となれば、人間も<上方世界の神々>もたいして変わらないということになる。 | |
おすすめ度:★★★★ 時間をかけて書き継がれた物語だから、それを並べていくと起伏があるのはやむをえない。好き嫌いはそれぞれだが、思索を伴う物語の変容は注目に値すると思う。 | |
| (2007.3.4) | |
| 「この世の彼方の海―永遠の戦士エルリック〈2〉」マイクル・ムアコック ハヤカワSF文庫<SF1561> 2006.5 原作1976、1977 | |
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エルリック、新訳2冊目。本人の記憶にも残らない不思議な旅と、一なる四者の邂逅。イムルイルの崩壊から、あての無い彷徨が始まる。 |
こんなことを考えた: 本書に含まれる「<夢見る都>」がエルリックの最初の話。解説では<コナン>との関係が触れられているが、確かに初期に書かれた話はまだエルリックらしさが足りない。エルリックらしさとは、宿命に翻弄され、本人も知らない強い力をほのめかされ、自分以外の思惑が状況に絡んでくること。 ”宿命に翻弄され”というところが、読者の中毒を起こすのかも。何をしても本人は満たされることが無い。それでいて、物語には宇宙の知られざる構造をほのめかすような壮大さがついて回る。 | |
おすすめ度:★★★ 何話も続けてエルリック漬けになると、パターンの繰り返しが、神秘性を薄めてしまうようなところがある。まとめ読みは、意外に上級者向けかも。 | |
| (2007.2.19) | |
| 「鉄の神経お許しを他全短編 キャプテン・フューチャー全集11」エドモンド・ハミルトン 創元SF文庫<SF ハ-6-21> 2007.1 | |
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1950年と1951年に発表されたキャプテン・フューチャー全短編7作。それに<キャプテン・フューチャー>誌に毎号掲載されたコラム、その他統計など。 |
こんなことを考えた: 1946年までに発表された長編とはおもむきが異なる。キャプテン・フューチャーの活躍そのものというより、周辺のひと(など)の状況や考えや行動が大きな割合を占める。そのぶん幅があって楽しめる。 キャプテン・フューチャー自身の行動様式はあまり変化が無いようだ。俺は行かなくてはならないとか、それが俺の使命だとか、正義感というよりも強烈な使命感に私はどうもなじめない。理由も、友人だからとか、あんな奴の好きにはさせておけないからとか、自己の判断に忠実なのは良いが、もっと広い視野で説明して欲しいところ。 コラムのほうで、あくまでも法に則った裁きというキャプテン・フューチャーの行動原理が語られている。法が正義となるためには万人に認められる必要がある。太陽系全体(人類全体?)が一つの法体系で統一されているこの世界ならそうした原理は成立するのかも。しかし、人類社会外から悪い宇宙人が攻めてきた場合はどうなっていたんだったか。 | |
おすすめ度:★★ 今の時代から見て、あんまりウケないんではないか。お年寄りのSF者やそうしたひとに強い影響を受けているひとの話をわかるためには、あるいは特定の時代の文化的傾向をつかむためには役立つ。 | |
| (2007.2.12) | |
| 「メルニボネの皇子―永遠の戦士エルリック〈1〉」マイクル・ムアコック ハヤカワSF文庫<SF1551> 2006.3 原作1972、1989 | |
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エルリックの冒険、新訳。旧訳当時よりもさらに整理された形で、物語の順序に沿って、数話をまとめた編集。第1冊は、メルニボネの王であるエルリックが、ストーム・ブリンガーを手に入れ、放浪の旅へ向かう話と、夢盗人との最初の出会いの話。 |
こんなことを考えた: 多元世界をめぐる<混沌>と<法>の争い。その中で人間の存在などは意味も無いほどの小さなものというわけではなく、<混沌>や<法>の戦いの行く末を定めるかもしれないくらいの宿命を担う。人間の存在が宇宙の中でどれほどの意味があるのかと悩む一般人の共感を呼び覚ます宿命の主人公、超自然的存在、宇宙規模の闘争、多元世界、となれば面白い物語の舞台としてはすっかり整っている。ここはエルリックとともにさまざまに悩みを共感しながら読み進むしかない。 困るのは、ムアコックの全作品が多元宇宙を通じて何らかの関係を持つこと。その全貌を理解しようと思えば、まだ書かれていないもの、決して書かれないものを含めたムアコックのすべてを受け入れる方向に向かう。 中毒が嵩じて、満員電車の中で思わず黒い長剣を振り回してしまう、なんてことが無いことを祈る。 | |
おすすめ度:★★★★ もはや歴史的名著だから、少なくとも文庫で手に入る全作品くらいは読むほうが良い。最初の入門としては最適と思う。 | |
| (2007.2.2) | |
| 「魔女誕生」ロバート・E・ハワード 創元推理文庫<F ハ-1-12> 2006.12 | |
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新訂版コナン全集全6巻のうちの第2巻。ハイボリア世界の西側、ヴィラエット内海付近に居を構えるコナン。コナンの実力が知れはじめたのか、戦闘部隊の隊長や、状況によっては全軍指揮までを任せられたりする。巻き込まれる事件も国家間の戦争や、特定国内の権力争いと複雑さが増す。 体力と無駄に恐れぬ性癖によって、他者には逃れられない困難をも切り抜けるところは痛快。 |
こんなことを考えた: AとBの対決。これに絡む他の要素C。そのせいで物事は複雑になり、怪異の出番がある。Aはどちらかというと弱点を持って責められる側、Bは攻める側。コナンはCだったりBだったりAだったり。コナンが体力と気力を持ってある要素を打ち破っている間に、もう一つがそのあおりで自滅したりする。 ある種のパターンがあるようだが、それがむしろ物語の良い要素になっているようだ。 | |
おすすめ度:★★★★ 前作のひとり働きのコナンも良いが、いっそう絡みあった要素が増えた今回もまた良い。 | |
| (2007.1.21) | |
| 「囚われの女提督」デイヴィッド・ウェーバー ハヤカワSF文庫<SF1585> 2006.10 原作2002 | |
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女提督ってあのねえ、な邦題だが、ハリントン第7話。マンティコア航宙軍准将となったハリントンだが、暫定的な輸送任務の途上ヘイヴン人民共和国の捕虜になってしまう。死刑の運命を免れないハリントンの脱出はっ。 敵の一部将官にも一目置かれているハリントンということで、それなりにうれしい展開だが、ヘイヴンの軍規はもはや腐りきっていて、だからこその展開ではあるけれどあまりにもヘイヴンはだらしなさすぎ。シリーズとして完全脱出は次話に持ち越されるということでそこはお楽しみだが、都合の良すぎる展開は読者の期待を裏切りかねない。 |
こんなことを考えた: ハリントンは敵も味方も、常に意識しなくてはならない存在に上り詰めた。お決まりとはいえ読者にとってはうれしい展開。そこに降りかかる最大の試練はこれまた期待に反しない。とはいえ相手の弱みにつけ込んだ脱出は相手の弱さを見せ付けるだけに、どうしてこんな相手にいつまで戦争しているんだろうと、全体の整合性に疑問を持ちたくもなってくる。今回はこうした物語の避けて通れない部分ということで、笑って読み飛ばしておきたい。 | |
おすすめ度:★★★ ヘイヴン弱すぎ。でもハリントンに対するこれまでの業績を称える声には嬉しくなるから、まあそういうことで。 | |
| (2007.1.13) | |
| 「No.1レディーズ探偵社、引っ越しす―ミス・ラモツエの事件簿〈3〉」アレグザンダー・マコール・スミス ヴィレッジブックス<F-ス 5-3> 2006.8 原作2001 | |
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ミス・ラモツエの事件簿、第3巻。ボツワナで起きる日常の事件を、真摯な態度で解決に導くマ・ラモツエとその助手マ・マクチ。周囲の男性のあなた任せの態度が混迷のもとになっている事件を、女性なりの細やかな熱心さが救う。 今回の事件は、ブッシュで見つかった謎の少年、ラ・マテコニの憂鬱、美人コンテストの優勝の行方と日常的ながらあいかわらず多彩。専門化の進んでいない、ボツワナ独自の事情が絡んでマ・ラモツエの行動が冴える。 |
こんなことを考えた: ところ変われば、問題も解決方法もいろいろ。日常の生活の中で忘れていた何かを思い出しそうな、ほのぼのとした雰囲気は相変わらず。今回は、男性と女性の価値や考え方の対立という色合いがやや強いか。 | |
おすすめ度:★★★★ 独自の問題には独自の解決、それでも人間の考え方の基本は変わらないのかもと思わせてくれるこの雰囲気が好き。第3巻に入って、著者の筆もずいぶんと練れてきたようだ。ページ数に比べると値段がちょっと高いようにも思う。 | |
| (2007.1.13) | |
| 「ゴールデン・エイジ1 幻覚のラビリンス」ジョン・C・ライト ハヤカワSF文庫<SF1585> 2006.10 原作2002 | |
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三部作のうちの1。いつとも知れぬ未来、超光速飛行は実現していないが、人工の超知性や、記憶・人格の保存、仮想的現実などは、人類社会を多層的に構築するに至る。エネルギーや物質の取り扱いも大きく自由度を上げている。 記憶喪失状態で登場する主人公ファエトン。彼は何らかの犯罪を犯した結果、自らの記憶と引き換えに何かを受け入れることにしたらしい。しかし、彼を取り巻く環境は、必ずしも彼の過去と無関係ではなかった。 自分は記憶を取り戻すべきなのか、また身に覚えの無い事件の結果をどう受け止めれば良いのか。逡巡と模索を通じて、彼の過去の計画は、彼を一つの方向へと向かわせる。 |
こんなことを考えた: 記憶の無い主人公、というのは現在とは異質な社会を読者が受け入れていくための方便として機能する。したがって、混沌としか見えない社会の仕組みを事件を追いながら少しずつ理解していくのが、読者の取るべき正しい態度だ。そうしてあきらかになる広大な風景に、読者は何を見るのか。 肩透かし、というほど質の悪い未来社会ではなく、一つ一つの要素を見ていけばなるほどとうなずけるところは多い。 それにしても、望めばはるかに超越した知性を利用できるはずの人間たちが、さまざま・独自の現実感を持って同一の宇宙を解釈しようとするこの世界は、知的活動を通じて単一最良の宇宙解釈に至るという私の信念とは異なる世界だ。どう思弁をこらしても、結局最良の生き方というものは手に入らない。だからこそこの世界の人間は相変わらず、そして技術が許す限りに多様な独自の解釈にこだわっている。 そういうものかもしれないが、そうした社会が無条件で成立するとも思えない。しかし、それに関する説明は特に無い。 惑星とか太陽とか人体などと、情報空間との関連は確かにあるはずなのだが、その関連がよくわからない。作中で、ある人物が太陽に飲まれて死んでいるのだが、その死は肉体的なものを伴っていたと思える。すると、情報世界に再現されたその人物は肉体を伴っているのかいないのか。あるいは実はファエトンは合成された人格であるのだが、現実世界にも対応する肉体を所有しているらしい。その由来はなんなのか。 説明を与えられていない事象は多いが、現実に対する多様な解釈の幅こそがこの物語の読みどころだと思う。自分の解釈に沿って多様な認識を許す世界の中で、どれほど飛躍した思弁が展開するか、そのあたりを楽しみたい。 | |
おすすめ度:★★★ 理屈を追っていくと追いきれない、推理物とすれば寄り道が多い、やはり仮想現実のさまざまな可能性を個別に味わっていくのが良いと思う。 | |
| (2007.1.13) | |
| 「黒い海岸の女王」ロバート・E・ハワード 創元推理文庫<F ハ-1-11> 2006.10 | |
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新訂版コナン全集全6巻のうちの第1巻。コナン作品のうち、ハワードの原典に忠実に コナンの活躍の時系列で並べる。梗概や断片、関連する手紙などを資料集として含む。 コナンの活躍のうち、盗賊や海賊などをして主にひとり働きをしながらハイボリア世界を遍歴した頃の話。東京創元社のホームページに中村融による刊行のことばがあり、コナンものの日本での過去の出版事情についても書かれている。 |
こんなことを考えた: コナンというと私には過去に日本で出版された作品のカバー絵の印象が強い。鎧兜に身を固めた筋肉男が槍を構え馬に乗って疾駆するという、単なる戦闘活劇のように考えていた。シュワルツェネッガー主演の映画の印象がさらに重なる。それに、シリーズものは最初から、しかもオリジナル作品があるのならそこから手をつけないと、味わいが出ないと思っていたから、最初から手を出そうとは思わなかった。 あれからかなりの時間が経って、ファンタジー作品に対する私の取り組みもいくらか変わっていて、それほどまでに人気があって、しかも原典回帰であるならと考えて手をつけた。 アトランティス大陸没後から、現在の陸地が形成されるまでの間にあったハイボリア時代とか、コナンの戦う相手が別の世界からの漂着者であったりとか、けっこうSF的な想像力を刺激する。コナンの強さの秘密が、死を恐れぬ大胆不敵さと割り切った考え方というパターンの強さはヒーローとしての存在にふさわしい。 進化に関する怪しげな著者の理解についてはついていけないところがあるが、それは一種のご愛嬌として済ませることができる。敵の持つ妖しい不気味さの記述もまた読んで楽しい。 | |
おすすめ度:★★★★ 殺人と筋肉男と妖しい存在に反射的拒否反応を起こさないでいられるなら、お決まりの、それでいて意表をつく展開が気に入るだろう。ファファード&マウザーの雰囲気に共通するところを感じる。 | |
| (2007.1.13) | |
| 「明日への誓い」エリザベス・ムーン ハヤカワSF文庫<SF1591> 2006.11 原作2006 | |
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若き女船長カイの挑戦第3巻だが、シリーズ邦題にこだわらないのが吉。壊滅状態の宇宙商社ヴァッタ家を再興すべく努力を続けるカイ。敵がもくろむ宇宙海賊業の実態が解明されるに従い、単なる復讐ではすまないことがしだいにあきらかになる。人類社会共通の脅威に立ち向かう決意を固めたカイは、私掠船艦隊を組むことを提唱。 |
こんなことを考えた: 話の必然性は、超光速通信アンシブル網に依存し、物理的接触が乏しい恒星社会にかかってくる。都合の良い偶然と、ヴァッタ家が築いてきた冗長度の高い家族組織に助けられて、個人の才能が発揮されるという前巻までの流れはそのまま。今回の読みどころは、惑星系ごとに異なる社会の仕組みを利用し、都合の悪いところをすり抜けながらカイが支持者を獲得していくところ。若干の謎解きや、商売上のくすぐりもあって楽しい。 個人では解決できない問題も、それなりの根回しや説得をしながら、相手の利益に訴えつつ組織作りをすればなんとかなる、というあたりが超人的能力を持つ主人公が特出して活躍する従来的な形式から外れていて新鮮味がある。 | |
おすすめ度:★★★ いわゆる冒険活劇。それなりのご都合主義的展開はあるものの、個人の力ではどうしようもないところがあるというのはある意味リアリティに通じるが、日頃から社会の中で組織に対する無力感を感じているひとにとっては、脱日常的爽快感の点で不満を感じるかもしれない。 | |
| (2007.1.12) | |
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