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知性化シリーズ


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知性化シリーズの背景

 SFでは知性を持った宇宙人が良く描かれるが、そうした宇宙人の実在については疑わしいことが多い。まず、生命の存在が宇宙に普遍的なものかどうか。次に、生命が発達して我々と意見交換可能な知性を獲得するということがよくあることなのか。知性を持った存在が、十分長い時間存在し続けて、互いに出合う機会を持つことができるかどうか。

 SFはそれに対して都合の良い回答を用意した。つまり、いったん発生した知性は自分の世界を拡大するために、生命の種子を宇宙にばらまき(播種)、さらに生まれた生命に知性を与えるかもしれない。
 もう少し小規模な話であれば、さまざまな惑星を自分たちの住みやすいように改造して、植民するかもしれない。後者であれば、いったん没落して過去の記録を失った我々植民者の後裔がふたたび宇宙に進出したときには、たくさんの地球型惑星と、自分たちに良く似た宇宙人に出会うことができる。

 知性化のアイデアは、現実世界で遺伝子工学の可能性が言われるようになって、あらためてその現実味を増すことになった。

 ブリンの”知性化シリーズ”では、”始祖”と呼ばれる存在が12の銀河に居住する他種属に知性化を施し、やがて姿を隠してから10億年以上が経過している。銀河の各種族は次々と別の種族を知性化して、知性化の連鎖が広がっている。

 人類は”始祖”以来初めて、他種属に知性化されないままに知性を獲得した種族と思われる。華々しく五銀河系に登場した人類の活躍はいかに。
 というほど、物語は人類に都合良くは進まない。たかだか数世紀の技術しか持たない人類が桁違いの技術を駆使する大勢力にまともに向き合えるはずがない。人類は五銀河文明との接触直後、いきなり存続の危機に見舞われる。

継続する宇宙文明

 著者デイヴィッド・ブリンの当初のもくろみは”宇宙人がいっぱい”のSFを描くことの域を出ていなかったと思うのだが、五銀河文明が10億年以上の歴史を持つことを宣言したことで、構想全体がかなり苦しくなってしまったのではないだろうか。
 つまり、当初の作品に書かれた闘争渦巻く世界が、全体としては10億年継続という途方もなく安定した世界であることを説明しなくてはならなくなった。
 ひとつの文明が10億年間継続したら一体どうなるだろう。おそらく、科学技術的な発想は出尽くしてしまって、ほとんどあらゆることに回答が出てしまうのではないか。
 あるいは、精神的な高みに達した種族は、通常の世界を超越して何か別のものを求めて消えてしまうかもしれない。それは、通常の世界の側から見たときどう見えるだろうか。
 あらたな後継者によって文明が引き継がれるとして、どのような機構があればそれが円満に、少なくとも文明全体の崩壊を招かないで行われるだろうか。

 こうなると、もはや地球人類の運命など些細な問題としてしか扱えなくなってしまうのではないか。「変革への序章」から始まる”知性化の嵐”三部作は、上の疑問に対するブリンの一応の回答であろう。そこでは予想通り人類の運命とはほとんど無関係な、宇宙知性の変遷が語られている。

地球への回帰

 とはいえ、ここまで壮大な話を展開されてしまうと、この広大な宇宙に存在する自分てのはなんなのよという疑問があらためて湧いてくるから不思議なものだ。この宇宙に唯一の知的種族として悩むのも、それこそ宇宙を埋め尽くすような大量の知性の中の一つとして悩むのも、たいした違いにはならないらしい。(2004.6.9)

(1998.1.31〜)