読書して考えよう 分野別

伝説・物語

2009-11-22「北欧神話と伝説」ヴィルヘルム・グレンベック(講談社学術文庫)
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はごたえ:ふつう
あじつけ:軽快
そざい :北欧神話、エッダ、サガ

 1927年初版の著作の全訳。北欧に伝わるエッダとサガから代表的な神話(とそれに継続する物語)を網羅する。


内容について
 世界の創造、北欧の神々のくらし、ラグナロク、その後の神々と人間のかかわり。最高神オーディンやフレイ、トール、オーディンなどがどういう神なのかがわかる。また、キリスト教の普及につれてひとを誤らせる神となったオーディンの姿。
 いわゆる”北欧神話”として知られているものを系統的に示している。ハムレットもサガの中の人物であるのは興味深い。

この本にもとづく随想
 キリスト教の普及が、現世利益的に進められたのは「ベーダ英国民教会史」で語られているが、もはや世界にほとんど影響を与えることができなくなったオーディンの姿がこれに重なる。
 北欧神話は巨人族との戦い没落を描き、あるいは人間の血を流さない限り鞘に納まらないテュルフィングの剣などの皮肉な道具立てもあって、現代のファンタジーやSFの素材にもしばしば取り上げられる。その本来の語られ方を承知してそれらを読むとまた一段と興味が増すと思う。

2009-9-3「魔法昔話の研究 口承文芸学とは何か」V.プロップ(講談社学術文庫)
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はごたえ:ふつう
あじつけ:濃厚、軽快
そざい :ソビエトの民間伝承研究

 国際的にも有名なプロップの、昔話に関わる論文集。ソビエト連邦社会においてかかれたものであることを反映し、参照可能な学術論文が限定されているなかでの研究成果であり、社会主義的な社会の発展モデルについての言及もある。(後者については研究内容に影響があるとは思えないが、章の最後に民俗の不滅を確信したりするサービスがついている。)


内容について
 おもにソビエト連邦で語られている昔話を題材として、その共通性から昔話の成立過程を推測する方法論を示す。民話は神話でも叙事詩でも無いとされ、プロットの時代的変化は社会構造の変化に起因すると論じられる。
 羽の付いた馬はいかにして昔話の素材に組み込まれるかといった話は興味深いが、古代魔法にはどんなものがあるかとか、邪悪な魔法使いはどんな手法を使うかとか、不思議な生物には何があるかとかといったファンタジー小説の素材を探すには不向き。
 昔話の成立過程に社会がどうかかわっているかという考察が主体。

この本にもとづく随想
 論文集は一般的にその傾向があるが、取り上げられた主題が論文ごとに異なり、相互のつながりがわかりにくい。この点、まとまった著作物を読むよりも著者の思想全体を合理的に理解するのに苦労する。そもそも個々の論文中で、論点がどこにあるのかを絞りにくい。
 なおかつ、まじめな論証がつぎつぎと続くので、朝の電車の中で切れ切れに読み進むのはいくらか辛い。読みさしておいて「ナポレオン フーシェ タレーラン」に浮気して、ふたたび戻ってきた。
 考察自体は興味深いが、各地に伝わる昔話を蒐集して、その起源や変化の過程を推定するのは社会的生産性としてはあまり高いとは言えない。1960年頃のソビエト連邦で、学術研究をするのは難しいものだと思った。そのおかげで、ここに示されたような思索がされたことは、世界的に見て成果ではある。ソビエト連邦の現実と昔話の考察が二重になって理解できるという意味でも興味を引かれた。

2007-5-30「アラビアンナイト―文明のはざまに生まれた物語」西尾哲夫(岩波新書)
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 18世紀初頭にヨーロッパに紹介されたアラビアンナイト。アラビアでの成立は9世紀ということだから、異本も数多く存在する。そこにヨーロッパ側の事情が絡んで錯綜し、世界文学化していく過程が紹介される。

気に入り度:◎◎◎◎
 アラビアで語られた寝物語だから、中国の話が出てきても確かにおかしくない。私には意外なアラビアンナイトの多様な性質と、その受け入れ方。
 巻末に本書に登場する主な物語の要約があるから、知らない物語のあらすじもわかってお徳。

おすすめ度:★★★
 18世紀以降のヨーロッパ文化史と、ヨーロッパオリエンタリズムの様相が楽しい。

2004-8-3 (水)「ケルト神話と中世騎士物語―「他界」への旅と冒険」田中仁彦(中公新書)

 映画「キング・アーサー」関連書籍フェアで入手。
 ローマ帝国に追われてアイルランドやブルターニュへと移り住んだケルト人の伝説はどのようなものだったか。また、キリスト教とどう関わったか、さらにはアーサー王の物語にどう反映しているかを読み解く。
 アーサーの物語がユダヤ・キリスト的物語と何が違っているかが、ケルトの伝説と比較するときにはっきりしてくるというのは興味深い。ケルトの影響が濃い「聖パトリックの煉獄」がダンテの「神曲」に影響を与えているなど、西欧文化とケルトとのかかわりなどにも触れられている。
 アーサー王の物語との関連では、「荷車の騎士」ランスロとケルト神話との類似について主に語られている。
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2004-8-3 (水)「アーサー王伝説紀行―神秘の城を求めて」加藤恭子(中公新書)

 映画「キング・アーサー」関連書籍フェアで入手。
 中世の伝説の王アーサーの物語に由来する土地を訪れて、アーサーの物語と、物語が現地の人にどう受け止められているかを紹介する。
 アーサーは実在の王ではないから、由来の地と言っても王宮のカムロットとか、アーサー王の墓とかは言い伝えであり、かつ複数の場所が名乗りを上げていたりする。厳密な検証は無意味だから、それらの土地の雰囲気を通じてアーサーの物語のより深い理解につなげようというのが旅の目的であろう。
 アーサー王の物語についてほとんど知らない私としては、名前を聞いたことのある程度だったブリトン人、円卓、聖杯、などが、物語の大枠とともに紹介されているところがありがたい。
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