読書して考えよう 分野別

政治・経済

2007-7-18 「ゆたかな社会 決定版」J.K.ガルブレイス(岩波現代文庫)
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 生産性の向上を目指して組み立てられた経済理論をもとに作り上げられた社会が、豊かになった今、どんな課題を抱えているのか。初版から40年後に改定された第5版。
 前半部分では、社会と経済理論の発展をたどることから、経済理論の入門書としても適当。

気に入り度:◎◎◎◎◎
 歴史的に経済理論が生産性の向上を目的として発展し、現代社会はその目標を達成して、新たな課題が持ち上がっているように見える。経済社会の発展が300年の歴史を持つに至る今、著者の問題提起から50年を経ても、その方面での社会の劇的な変化は無い。
 社会は豊かさを増し、著者の問題提起は一層あきらかになったようだ。著者の提案する解決策を現代社会は適用できるのかどうか、興味深い。
 一つの時代にとらわれない、広範な視野を提供してくれた点で気に入っている。

おすすめ度:★★★★★
 生産性向上を至上の価値とする現代社会への疑問に、経済理論の面から応えるという正統で納得のいく一冊。

2007-6-12 「現代中国の産業―勃興する中国企業の強さと脆さ」丸川知雄(中公新書)
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 中国で発展する現代産業の構造と、その理由。家電、ケータイ、パソコン、自動車など。日本や欧米とも異なる巨大市場は、今後の世界を予想する際の参考にもなる。

気に入り度:◎◎◎◎
 平均収入が日本よりもはるかに低い大人口が住む中国。自分の生活にかかわりが無いなどと判断するのは間違いで、いまだ産業化されていない世界は、日本や欧米よりも中国に似ているように思う。
 異なる前提条件がある場所で、ケイザイの論理がどう適用されていくのかは、ケイザイを知る上でも恰好の題材になる。

おすすめ度:★★★★
 旬な話題なので、時を置いて読むと情報価値は下がると思うが、経済論理の実例として優れている。海外市場を狙う経済人ならこうした認識は必須。海外市場にかかわりが無いとしても、経済の仕組みに触れたいと思う人なら、わかりやすい実例説明として読める。
 日本製品との差異を知ることは、中国製品を自分で使う場合にも大きく役に立つ。

2007-4-8 「「国語」の近代史―帝国日本と国語学者たち 」安田敏朗(中公新書)
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 明治の国家近代化による統一、大東亜共通言語としての運用、と「国語」が政治的にどう位置づけられてきたかを示し、またその後の変遷をたどる。政治と「国語」の関連は見通し良くまとめられているが、統合と整理の中で国語自体がどう変化したかについての記述は乏しい。丸谷才一編著の「国語改革を批判する」などを併読すると一層考察を深めることができるだろう。

気に入り度:◎◎
 国語改革は政治的にも重要な歴史事件だと思うが、国語から失われた要素が日常生活においては政治的な意味以上に重要だと思う。その意味で、政治的な意味合いだけを強調する本書は、読者に全貌を伝えきっていないと思える点で不満が残る。

おすすめ度:★★★
 言語が政治的な材料になることに気付くのは重要だ。その上で、「国語」から取り去られた要素が何であるかを知れば、その意味をより深く考えることができると思う。

2007-4-8 「シャドウ・ワーク―生活のあり方を問う」I・イリイチ(岩波現代文庫)
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 歴史学者の立場から、現代社会・経済をながめて、経済成長によってなにが破壊されるかを示すエッセイ集。シャドウ・ワークの他にヴァナキュラーな価値の話など、現代生活が当然としているものが、いかに当然でないかを気付かせてくれる。

気に入り度:◎◎◎◎
 普段意識していないもの、そこにあることすら気付かないものを気付かせてくれた点で、おおいに気に入っている。ヴァナキュラーな価値は、しかし守るべきものかどうか、そこまでは教えてくれない。
 新しいとされる考え方にも、歴史的に必ず先駆ける者がいるという歴史観も新鮮。すでに思考を尽くして道をつけているひとがいたのであれば、それをふまえてさらに考えを進めるという方法論は、思考の節約と効率の意味で適切だ。

おすすめ度:★★★
 読む上で、前提を求める本書は難解ではある。見えないものを見せてもらえる点で、それを押してでも読む価値がある。

2005-12-26 「マッカーシズム」リチャード・H・ロービア(岩波文庫)
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 1950年から1953年にかけて、アメリカ合衆国内で共産主義者に対するすさまじいほどの追求が行われた。その中心にいたのが上院議員のマッカーシー。彼は何をし、何をもたらしたのか。
 この本は、マッカーシーの動機や、信条、政治姿勢をジャーナリストの立場から報告するもので、そのときアメリカ合衆国社会に何が起きていたかについての情報は乏しい。書かれた時が1959年だから、その時期の読者は社会に何が起きていたのかはよく知っていたのだろうと思う。
 自分が期待した内容とは異なっていたが、アメリカ合衆国的民主主義の弱みと、結果的に時間はかかったものの自浄力を発揮する基本的な強みを語る意味で、また州選出の上院議員というものがどのような存在であるのかを示す意味で、民主主義がどう機能するかの具体事例を知ることができたのは良かった。

2005-10-19 「サウジアラビア―変わりゆく石油王国」保坂修司(岩波新書)
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 テロとイスラムは、現在社会の関心事だ。ところで、サウジアラビアってイラクじゃないしパキスタンとも離れているから、いくらか関心領域からは外れているよね。なんて思っていたら、アル・カイーダもパレスチナ問題もこの国が深く関わっている。
 王族政治で、国家歳入の大部分が石油に依存している。それでいて、持続する状態を維持しているのだから、日本を標準的な国家として考える私には想像できない世界だ。そのあたりの仕組みがどうなっているのかから初めて、国民の生活のありよう、イスラムとのかかわり、社会の変化の方向を示す本書は、世界に関わるイスラムの現状を理解するおおきな前提条件の一つを解き明かしている。

2005-6-21 (火)「さおだけ屋はなぜ潰れないのか? 身近な疑問からはじめる会計学」山田真哉(光文社新書)

 そう、それは確かに不思議だ。しかし、現実世界のことだから納得のいく説明ができるはず。ほとんど人が入らないような場所にあるフランス料理店もやはり不思議だ。そうした身近な疑問に会計学の原則を当てはめて説明してくれる本書は、私にとって興味深い。
 それから、本書はどうやればお金を稼ぐことができるかを教えてくれる。これもありがたい。少なくとも(まっとうな)さおだけやがどうしてお金を稼いでいるのかがわからないひとは、お金を稼ぐ方法の一つに気付いていない可能性がある。お金を稼ぐ方法はひとつでも多く知っておくほうが良い。
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2005-5-26 (木)「戦国策」近藤光男(講談社学術文庫)

 「まず、隗より始めよ」、「漁夫の利」、「遠交近攻」などの成句の出典である戦国策486章から100章を選んで紹介するもの。戦国策は紀元元年頃にまとめられたが、そのもとは春秋時代にさかのぼる竹簡。何事も原典を知るのは大切なので読むことにしたが、戦国擾乱の春秋時代がどんな時代であったかの雰囲気を感じることができた。
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2005-2-25 (金)「東アジア共同体―経済統合のゆくえと日本」谷口誠(岩波新書)

 標題の東アジア共同体についての関心もさることながら、むしろその雛形として参考にされるべきEUや世界経済の状況についての関心から読むことにした。世界貿易の現状をアジアの視点から眺めるという意味では、それなりによくまとまっていると思う。
 東アジア共同体という点では、やはり経済の立場からその必要性と課題が整理されて示されている。ただ、必要性から実現につなげる上で避けて通れない政治的選択や文化的な融和に関わる提言は本書の範囲には含めていないようだ。
 必要性という点では、確かに経済の視点だけで判断すべきなのだろうが、私のような素人の立場からはあまりに技術的に偏った断定のように思えてしまう。というか、私の関心は政治や文化を含めたところにあることを改めて意識した。経済の専門家の視点がどういうものかについて、うかがい知ることができた点はよかった。
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2004-4-18 (日)「経済再生は「現場」から始まる―市民・企業・行政の新しい関係」山口義行(中公新書)

 現場におけるいろいろな工夫が、経済の活性化を生む。ということで、まずはその実例から。ああ、そういう発想はあるなあとか、たいしたものだとか思うのだが、いわゆる現場の知恵はその状況だから通じるもので、そうした実例を読んで元気は出ても、自分がそのまま使うわけにはいかない。
 このまま次々と実例ばかり出てくるのでは単なるお説教に終わってしまう。そう思っていると最後の第3章になって、そうした現場の知恵を生かす行政や社会の仕組みはどうあるべきかという総論がはじまる。
 第2章から第3章への話題転換はいささか唐突で戸惑ってしまったが、話がわかりにくいわけではない。いずれも著者の実践的経験に基づくもので、これまでに達成できた部分、まだ達成できない部分、提言から構成されている。
 金融と中小企業の良い関係はどうあるべきか、それを支えるには日本の金融政策をどうしたら良いのか、そのために何ができるかが全体として語られている。
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2004-3-15 (月)「ゼロからわかる個人投資」真壁昭夫(講談社現代新書)

 私は株を買ったこともないし、貯蓄もほとんど無いが、ケイザイの仕組みには興味があるし、もしも儲かるものであるのなら金融商品を買うのも悪くはないなとか思う。
 そういうわけで、たまたま目に付いたこの本だが、最初の心得編に書いてあるのが”一寸先は闇”という言葉。もうそこで読むのを打ち切ろうかと思ったくらいだが、そのあとの実践編ではバランスシートとか、キャッシュフロートか、現在価値と将来価値の定義などなど。プロのディーラーによる個人投資家向けの啓蒙書という意味で、たぶん基本的なところがしっかり押さえられているようだ。少なくとも、聞いたことのある用語の定義が、私の常識と矛盾無く理解できるように、興味のある順序で示されていた。
 この本を読み進みながら、さっそく株を買ってみようかという思いがわいて、あれこれと会社情報を収集すると、いくつか興味をそそられる会社があった。インターネットを使うだけでもそれなりの情報が得られる。たしかに株を買うというのはある面の社会情勢に興味を持つきっかけとしても良いようだ。
 ところで”一寸先は闇”という言葉には悪い意味を読みとらずたんに”先のことはわからない、良いこともあれば悪いことも起こる”という解釈もある(こっちの方が普通かもしれない)。たぶん著者が言うのはその意味なのだろう。どうなるかわからない中で、どうしたら市場の中でより多くの利益が出せるか、それを人にだまされたり、人をだましたりせずにやるための入門書が本書だ。人にだまされないためだけにでも、本書の内容程度のことは知っていたほうが良さそうだ。
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2004-3-14 (日)「昭和恐慌と経済政策」中村隆英(講談社学術文庫)

 経済政策の目標を決めるのは政治家の仕事で、経済学者の仕事ではない。と著者は言う。庶民生活を圧迫することがわかっていても、あえてそのような政策を採るのも政治家の決断だ。また、その結果を経済学者が十分に予想できないこともあり得る。
 困難な状況の中で、政策がどう決定され、その結果がどうだったのかを昭和初期の金解禁を焦点にして本書は説明する。

 金融が引き締められると、インフレ傾向の時代には隠れていたさまざまの経営上の不備が表面化するのは、平成のバブル崩壊後の現在の不況期に通じるものがある。とはいえ、イギリスの覇権のもとに確立していた金本位制の崩壊や帝国主義的列強の対立を背景にする意味で、大きく現在と異なるところもある。
 歴史的視点からは、満州事件に至る経済的な背景状況が描かれていると見ることもできるし、政治・経済的視点からは、経済的見通しにもとづく政治的に困難な決断のケーススタディと見ることもできる。私としては、どちらも興味深いところ。

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2004-2-10 (火)「政治学講義」佐々木毅(東京大学出版会)

 政治が学問になっているということを知ったからには、どんなふうな学問であるのかということが気になる。書店の政治学の棚は狭いし、そこにある本の大部分は現代の政治を解説するもので、普遍的な原理を説くものではない。
 この本にしても、最初に原理があってそこから現代の政治の様相を解き明かしていくといった構成でないのはあきらかだが、ともあれいくつかの概念を比較検討しているらしいことから読んでみることにした。
 第1部原論では、政治学史をたどりながら、政治においてどのようなことが論点になりうるかを論じる。そして第2部現代民主政治論では民主政治の代表的要素、民主政治制度、政党、官僚、利益集団といった概念を解説することで現代の自由主義を見渡した上で、どのような課題があるかを示す。
 それにしても、政治を構成する要素は多くあって、本書は詳細な議論のための手がかりを、大筋に沿ってまとめたものという印象を受ける。とはいえ、手がかりが整理されて示されるわけだから、今後の探求の出発点としては有用だと思う。

 ともあれ、この本を読んだことでさまざまな概念の違いや、それらの役割がこれまでよりもわかるようになった。政党は政争の道具ではなようだし、民主主義と市場経済も(違うとは、以前から思っていたけれど)明確に異なる。二大政党制や多党制がどういう状況で有効かとか、ロールズの正義概念とか、現実の政治を見ていく上で有用な概念を整理した形で得られたのは確かだ。
 豊富な内容を300ページ弱に盛り込むということで、表現はかなり凝縮されている。その意味では文を読み返したり乏しいながらも社会常識を援用したりとかしないと意味が取りきれなかったが、それはこちらの教養不足のせいであって、主張自体が難解だったり筋が通っていなかったりするせいではないと思う。

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2004-1-5 (月)「現代政治学入門」バーナード クリック(講談社学術文庫)

 イギリスの大学で政治学を学ぼうとする人のための、学部選択手引き書。と言っても、政治学とはどういうものかという導入を含むから、プラトン、アリストテレスから始まってマキアヴェリあたりまでの考え方についての紹介はある。議会政治、政党政治についてはいくつかの問題点の指摘、それ以降はさまざまな研究視点の列挙。
 そういうわけで、邦題から期待した現代政治学に関する考え方自体の入門書としては、食い足りない感じが残ったが(原題は"What is politics?"、政治(学)ってどんなもの?だからもちろんそちらの方が内容に近い)、少なくとも政治が”学”として成立しうること、”正義”を政党政治を通じて実現しうるという理論がありそうだということまではわかったから、さらに別の書籍にあたってみようという意欲が出てきたという意味では収穫はあった。
 読み終わって、さっそく書店で”政治学”の別の本を探したのだが、それらしいものが見当たらなかった。いま少し探索を継続したいところ。
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