読書して考えよう 分野別

科学技術

2007-5-30 「科学とオカルト」池田清彦 (講談社学術文庫)
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 オカルトを起源とする科学だが、科学がオカルトから分離するにあたっての差異とは何か。いまあらためて科学とオカルトが混同される理由、現代社会への洞察。

気に入り度:◎◎
 歴史認識や科学の意味についての解説はわかりやすいが、現代社会への洞察を語る上では、論証を欠いた主張からの演繹が多い。緻密な論証を展開するのではなく問題提起に終わる点が不満。

おすすめ度:★★★
 歴史認識としては正当だと思うから、論証を欠いた点について批判的な視点を持って対応すれば、科学のあり方について考える材料を得ることができると思う。

2007-1-27 「昆虫―驚異の微小脳」水波誠(中公新書)
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 昆虫は小さな身体で複雑な行動を取る。昆虫の行動を一つ一つのニューロンの働きに還元して理解したいという著者が、その研究の成果を語る。脳の働き、と言っても視覚などの感覚器の構造と情報伝達、飛翔の仕組み、学習、記憶など、いわゆる”思考”よりはいま少し幅広く説明されている。ミツバチのダンスなど、有名でありながらまだ完全に解明されていない昆虫行動の最近の研究成果も含む。

気に入り度:◎◎◎◎
 久しく忘れていた、あるいはすっかり当たり前のこととして受け入れてしまっていた昆虫の不思議にあらためて思いを致すことになった。感覚器−情報処理系とみても大変合理的にできているように思う。ロボット開発などの参考にもなる。
 著者が最後に言うように、進化の二つの戦略の結果として人間と昆虫を見ることで、人間としてのあり方を考える新たな視点を得たように思う。
 生物の実際の行動や構造を見て、新たな知見を引き出していくという姿勢には「解剖男」(遠藤秀紀)に共通するものを感じる。

おすすめ度:★★★
 非常に興味深い主題を見通しよく扱っているが、あえて神経系の模式図やその中での情報変換まで踏み込んで解説されている点で、読みこなすにはそれなりの素養を要求される。昆虫の行動に素直に驚異を読み取れる人や、情報処理分野での知見を求めている人など、いくらか強い動機付けを持たないと読みきれない部分があるように思う。

2006-12-24 「解剖男」遠藤秀紀(講談社現代新書)
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 解剖というナマの現実と向き合う行為によってしかわからないことがある。その学問的意味を信じ、主張する著者。その主張を裏付ける例としての遺体から導かれる事実。
 学問の現実を憂い、生命進化の驚異に目を見張るという盛りだくさんの内容だが、そのめずらしさについつい引き込まれてしまう。哺乳類の内臓はどうして左右非対称なのかという私の長年の疑問にこれほどわかりやすく答えてもらえるとは思いもよらなかった。

気に入り度:◎◎◎◎
 学問は現実と向き合うことがその本来のありかただということを、私にはなじみの無い分野であらためて気付かせてもらった。病気の治療などという目的論からは、進化に対する知見などは確かに無用だが、では学問とは何かの役に立たなくてはならないものなのか。商業的な意味で効率を重んじる時に、切り捨てられていく学問があることを見据えた上で、決断していかなくてはいけないという問題提起には重いものがある。

おすすめ度:★★★★
 光文社新書の「人体 失敗の進化史」よりも論旨が明快な分、一層読みやすい。普段は触れる機会の無い未知の分野をわかりやすく紹介してくれるという点では同じだし、内容の重複も特に無い。

2006-12-24 「人体 失敗の進化史」遠藤秀紀(光文社新書)
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 失敗とは意図に反してできるものだが、進化がなにものかの意図によって起きていると著者が主張しているわけではなくて、出版社側の事情による書名であろう。ともあれ、人体を特定の機能を付与するという目的において眺めた際に、一見不合理な部分があるように見える、それが種の進化の観点からどう説明されるのか、というような主題。
 しかしそれだけでなく、人体と言わず長年にわたって解剖に携わった著者は、学問のあり方についての独自の主張を展開する。ということで、論旨がいくらかゆがんでいる。それに、この本の出版の約4ヶ月前に同じ著者が講談社現代新書から「解剖男」を出している。「解剖男」が生物一般を扱っているのに対して、この本は人間に焦点を当てたその続編として読んだほうが著者の進化に対する考え方や、解剖に対する姿勢との対応がよくわかる。
 ともあれ、この道を深く極めたものとして、著者の人体構造に対する見識の深さには感心してしまう。

気に入り度:◎◎◎
 失敗という、意図を前提とした解釈に立って人体の進化を見ると、逆に何者かの意図が働いているとは信じられないくらい人体構造は不可思議だ。つまりは本の題名とは逆に、何者かの意図を否定することにつながる。著者の、死体に対する醒めた視点はそこまで見通しているのだと思う。

おすすめ度:★★★★
 道を究めていく人が、素朴さを失わず、また社会とのかかわりを深く保ち続けて、その究めたものをわかりやすく披露してくれている。解剖とか科学とかの前提をおかずに読める。

2006-12-24 「ホーキング、未来を語る」スティーヴン・ホーキング(SB文庫)
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 1988年出版の「ホーキング、宇宙を語る」の時期から変化した宇宙論について2001年にあらためてホーキングが語る。ただし、前作のような直線的な構成ではなくて、木のような構成にしたとのこと。
 一般向けの宇宙論を一流の科学者が書くというのは、それだけですばらしいことだが、十分に面白いかというのは別の問題になる。タイムマシンとかワープとか、人間原理だとかの実証されていない論理・技術の可能性を面白く解説するのは、一流科学者の能力とは別の能力であって、残念ながらホーキングが特にその面で優れた才能を発揮しているわけではないと思う。
 宇宙ひもの理論について、これほどにわかりやすい解説書を私は他に知らない。その他にも示唆に富んだ項目がたくさんある。ただ、多くの物事が日常的な解釈の中でできてしまうという誤った期待感を読者によっては抱いてしまうのではないかと心配にはなる。

気に入り度:◎◎◎
 複数の宇宙ひもの理論が、結局は同じところに落ち着いてくる、というような解説はさすがに最先端に身を置く科学者だと思った。人間原理(この世界は人間が生まれるようにできている)に言及されているとはいえ、宇宙論を突き詰めていくとあまりにも日常生活とかけ離れてしまって興味が離れてしまうような気がする。それがこの世界の真実ならばもちろん受け入れるしかない。

おすすめ度:★★★★
 矛盾も破綻も無く最先端の科学認識に触れられる、すばらしい著作だと思うが、日常生活との接点ということになると著者の努力にもかかわらず乏しい。宇宙とか科学の最先端の認識とかに興味があれば楽しく読めると思うが、一般教養書としては読み通すのがきついかも。

2006-12-17 「科学はどこまでいくのか」池田 清彦(ちくま文庫)
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 現代までの科学の発展史をふまえて、市場原理に裏付けられる現在の科学研究のありかたを問いかける。
 前半の科学の発展史は、真理に関する認識と、それをあきらかにするための研究方法がどう移り変わってきたのかをギリシャ哲学、キリスト教、ルネッサンスとたどりながら簡便にまとめている。コンパスを使う神の図などは、きわめて面白い。
 後半の、現代職業科学のパラダイムにとらわれた研究、巨大化する科学実験については、現役科学者として堅実な視点から述べられているが、私としてはいささか偏狭ではないかと思う。現代社会への警鐘と言う意味ではかまわないけれど。

気に入り度:◎◎
 最近の資本主義(商業主義)が、差異を売ることで発展してきており、その差異を科学的知見に求めることが困難になりつつあること、新たな知見のために巨大実験が企画されることはそのとおりだと思う。それでもだから科学の発展はもはや転機とするのは早計だろう。

おすすめ度:★★
 科学発展史の概略としてわかりやすくまとまっていると思うが、最近の科学・資本主義に関する著者の意見はひとつの見識ということだろう。

2005-5-15 (日)「感性の起源―ヒトはなぜ苦いものが好きになったか」都甲潔(中公新書)

 視覚・聴覚・嗅覚・味覚をヒトがどんな仕組みで、なにを知覚しているのか、というのが話の中心。しかし、前半の自己組織化の話とか、粘菌における環境への対応方法と主題は、直接的につながってはいない。味覚センサの製造や、味の合成などの研究を通じて、著者が日ごろから興味を持つ事項についていろいろと語ってくれている。
 感性といえば感覚器の仕組みというよりは、芸術性など感覚を総合化した結果の感情的反応のことを意味すると思うのだが、本書は感覚器の仕組みを中心の話題としている。本書の焦点がいくらか拡散している印象を受けるのは、著者自身がそうしたさらに高度な感情反応などまでも視野において自身の研究を進めているからであるようにも思える。
 ともあれ感覚の種類によって違っている、人間の知覚それぞれの仕組みは大変興味深かった。
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2005-2-10 (木)「量子論の発展史」高林武彦(ちくま学芸文庫)

 最近の量子力学のテキストを見ると、電子の回折による粒子と波動の二重性の話があって、次はいきなりハミルトニアンを確率密度関数とみなしたシュレーディンガー方程式の紹介と簡単な制約条件の下での解法へと進むようだ。
 ハミルトニアンは古典物理の方法論のひとつであり、なんでここでハミルトニアンなのか、またそれが確率密度関数とされるのはなぜか。
 そうした展開方法は悪いものではないのだろうが、古典的描像とのつながりがないままに話が進展していくとき、受けとめる側では、勝手にあれこれと古典イメージとの対応を考えてしまい、それが適切でないために量子力学の理解が進まないなどというのはありそうなことだ。
 古典物理と量子物理の対応は、実は量子論の発展過程において常に配慮され、そのことがまた直接的に量子論の発展とも関わる。現在の形で量子力学を知る上で、しだいに(しかし急速に)積みあがってきたその過程を知ることは、現在の量子力学の理論を見通す上で非常に役に立つように思う。
 科学のひとつの分野がどうやって形作られていくのかを具体的に知りえた点でも、興味深かった。
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2004-5-9 (日)「フルハウス 生命の全容―四割打者の絶滅と進化の逆説」スティーヴン・ジェイ・グールド(ハヤカワ文庫NF)

 私はグールドの著作としてこの他に「ワンダフルライフ」を読んでいて、その二冊の印象からは、本書の文庫版のための追記に書かれているようにグールドには「…複雑なものを複雑なまま説明する名手…」という形容が当たっているように思う。複雑なものを説明するにはなにかとっかかりを探して、そこから全体を展開していくことが必要で、グールドはたぶんそれがうまい。
 だが、複雑なものはさまざまな要素から作られていて、その一部には特定の人にとっては当然のことが含まれ、また、最初のうちはどんなふうに話が進んでいくのかわかりにくいといった説明上の困難がある。
 本書もそうした特徴を備えていて、まずは統計値を見る上で陥りやすいまちがい、その実例としてアメリカ大リーグにおいて四割打者が最近生まれない理由、それから本題の進化する生命体系の本流はどこにあるのかという話(もちろん人類ではない)と進む。
 だから読者は、いわゆる統計のウソについて、大リーグの記録について、進化の実相というそれぞれに面白くて深い話に触れることができるのだが、その話題の一部についてすでに知っていたり、興味がなかったりすると本書が少し読みにくいと感じるかもしれない。
 私の興味の中心は最後に出てくる話題で、特に地球上のバクテリアの多様性については感銘を受け、また進化について一層の認識を深めることができたと考えている。
 本書の中で”四割打者”は実体ではない、というような言い方がされているが、”四割打者”と呼ばれる人たちはもちろん実体である。ただし、”打率四割以上”というのは統計値であって、それに対応する実体があるわけではない。ここでは”四割打者”というのは”打率四割以上(のひと)”という意味で受け取った方がたぶん議論がよりわかりやすいと思う。
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2004-3-24 (水)「日本の魚―系図が明かす進化の謎」上野輝弥、坂本一男(中公新書)

 魚の分類表に沿う形で、日本に関わりの深い100種ほどにまつわる話を紹介する。マグロも、サバも、カツオもすべてサバ科の種であったのかとか、フグの毒は何に由来するかとか、シーラカンスはどう泳ぐかとか、ドジョウはどこで呼吸するかとかそうした話。食べ方とか味といった話も多少あるが、主体はやはり分類学。進化の系統の神秘とかを特に魚類を対象にして認識をあらたにさせてくれた。
 サカナとはいえ、タコやイカ、エビ、カニ、貝、ウニ、海草などは対象ではなくて、脊椎骨を持つ魚につながる進化系統の話なので、食卓という観点からは視野が限られる。それでも普通に口に入るかもしれない魚の話であるから、承知しておいて良いと思う。
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2003-12-14 (日)「相対性理論」佐藤勝彦(岩波基礎物理シリーズ)

 「相対論の正しい間違え方」に対して、大学生向けの入門書はどうなっているかと見たところ、こちらのほうがわかりやすかった。というか、”間違っている論者”的視点はむしろ瑣末に走っているように思えた。現代の相対論は、ローレンツ変換に対する共変な物理法則を記述するものだというのは私にとってとても良い説明だ。そこから説き起こされた本書で、テンソルの物理的意味づけがようやく納得できた。
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2003-12-14 (日)「相対論の正しい間違え方」松田卓也、木下篤哉(パリティブックス)

 雑誌「パリティ」の掲載記事をまとめたもの。”(特殊)相対論は間違っている”と思っている人たちへの解説を意図しているということで、取り上げるテーマはフツーのひとが興味を持ちそうなものがたくさん。”間違っている論者”がアヤシイと思うようなところに突っ込んで説明していて面白い。
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2003-12-13 (土)「医学の歴史」梶田昭(講談社学術文庫)

 細菌学は19世紀もなかばを過ぎてはじまった学問だ。それ以前の病気の治療といえば、やはり病気の原因を特定して対応するわけだが、この”原因”は現在から見るとかなりあやしい。とはいえ、治療せずにほうっておくよりは手当をした方が生き延びる率は高まる。むかしのひとはどんな考えでどんな治療をしたのか。
 という興味で読み出した本だが、たぶんもう少しマジメな読み方を期待して書かれたものだ。18世紀以降の状況についてもしっかり書いてあるし、それ以前の分についても広範囲に取り扱われている。医学生にも一般の方にもおすすめと、あとがきの廣川氏も書いている。
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2003-5-1 (木)「サンバガエルの謎」アーサー ケストラー(岩波現代文庫)

 科学論理は同一の実験を繰り返すことでその正しさを証明することができる。しかし、実験のために非凡な技術と長い時間が必要なとき、同じ実験を繰り返すのは限りなく困難だ。
 1926年に自殺したパウル・カンメラーが巻き込まれた遺伝学論争に迫る。
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2003-2-3 (月)「物理法則はいかにして発見されたか」R.P.ファインマン(岩波現代文庫)

 第一部は1964年にアメリカのコーネル大学で行われた講演の記録。対象は「物理法則とはどんなものか」について普通の言葉で話して欲しいという学生。第二部は、1965年のノーベル賞受賞講演。
 私は後半から読み始めて、はじめて”物理学者的考え方”に触れたような気になったと言う意味で、すばらしい講演だと思った。その後第一部を読むと、同様の考え方がいま少しかみ砕いて書かれていた。いまさら物理学の基礎なんてと思う方には第二部から読むことを勧める。
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2003-2-2 (日)「困ります、ファインマンさん」R.P.ファインマン(岩波現代文庫)

 岩波書店から出た「ファインマンさん」シリーズの第2巻。注目は本の半分以上を占めるチャレンジャー号爆発事故(1986)調査のいきさつだと思う。前半はファインマンの最初の結婚相手であるアーリーンとの恋の話が印象的。
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2003-2-2 (日)「月をめざした二人の科学者―アポロとスプートニクの軌跡」的川泰宣(中公新書)

 ナチスドイツが開発したロケット技術は、アメリカ合衆国とソビエト連邦に引き継がれ、フォン・ブラウンとコロリョフの二人が有人月ロケット開発を目指す。
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2003-2-2 (日)「YS‐11」前間孝則(講談社プラスアルファ文庫)

 名機とされる国産レシプロ機YS-11はなぜ、どうやって開発されたか。また後継機に恵まれなかった理由は何か。
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2003-2-2 (日)「戦艦大和誕生」前間孝則(講談社プラスアルファ文庫)

 太平洋戦争に敗れた日本は、なぜ早期に造船王国として再生することが出来たのか。戦艦大和をはじめとした名艦艇の製造技術はどのように生まれ戦後の日本に受け継がれたか。
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