エネルギー生物

(1)定義
 エネルギー生物は一般の生物が物質に依存して自己を維持していることへのアンチ・テーゼ。つまり、物質に縛られない生命・知性を意味する。
 SFで登場する場合には不定形で神出鬼没で、宇宙船のエネルギーを吸収したり、武器からエネルギーを吸い取って無効にしたりする。物質に依存しないことから老化せず、また宇宙空間を移動できる。超光速で移動するとか、人間にとりつくとかいう能力を持つこともある。
 これをやっつけるためには外部からのエネルギー流入を遮断して飢え死にさせるか、エネルギーを大量に与えて満腹死させる。
 生命の意味からすれば、特定構造の維持、外界との区別、繁殖を行うエネルギーということになる。

(2)基本考察
 そもそもエネルギーは物質に依存した、というより物質と等価な概念なので、先に挙げた定義は不完全なものだ。あるいは”エネルギー”という独立したものは無くて、物質の状態としてエネルギーが定義されていると言うこともできる。
 生きているプラズマとかがあるとすれば”エネルギー生物”のイメージに近いが、そうなると定義における”物質に依存しない”は”通常の物質形態(液体+固体)(だけ)に依存しない”という読み替えが必要になる。これだと気体生物や液体生物、超科学形態生物を許容できる。

(3)純粋知性体
 まずはあこがれの未来技術という観点から、脆弱な感じのする気体生命などよりも、自分の存在を物質依存から解放する可能性を求めて、SFに登場するところの”純粋知性体”を最初の考察対象とする。
 E・E・スミス「ヴァレロンのスカイラーク」に登場する純粋知性体は、非物質で、知性を持ち、恒星の光を吸収して活動の基盤とし、破壊不能で、超光速で移動でき、テレパシーで人間と意志を通じ合い、どんな物質や製品あるいは人体をも合成できる。なれるものならそういうものになってみたい無敵の存在だ。
 彼らが何からできているのかというと、この作品世界では思考は6次元フォースという(その世界で)科学的に把握できる存在で、純粋知性体は永続性を持った6次元フォースから構成されていることになっている。つまり我々の科学ではわからない謎の存在形態ということになる。

 うわー、思考の媒体とかの未知の科学的発見が出てしまったのでは、未来技術としての考察を打ち切らざるをえない。原理が未知のものである以上は、技術的考察のしようがないもんね。

(4)エネルギーに本質を持つ生命
 高次あるいは未知の媒体ではなくて、通常物質には依存するものの、存在形態を選ばない生命を考えてみる。こいつは高温のマグマとか、電流とか、場合によっては風呂の湯とか比較的高いエネルギーを持つ物質の間で、自由に自分の実体を転移することができるかもしれない。
 さて、高温のプラズマとか、高温の湯とかがあってこれが生命だというのはどういうわけだろう。私の貧弱なイメージ能力では高温プラズマというものを想像できないので、とりあえず熱いお湯であるとしてイメージを進める。まず、均一な状態では普通の湯だから、生命の湯が普通の湯でないからには、お湯の中にもいっそう熱い部分(高エネルギーの部分)と比較的ぬるい部分(低エネルギー)があって、その間でエネルギーの交換が行われていることになる。そういう活動が何らかの仕組みによって継続することでそいつは生命としての自分を維持しているはずだ。
 これが均一に混ざってしまったら、普通のお湯になっちゃうもんね。こうしたエネルギーの不均衡を維持するためには、外部からエネルギーを特定の形で取り込み、別の形で排出していかなくてはならない。つまり、熱いお湯を取り込んだ後、均一に熱を排出することで外界を均一に保つ。その代わりに自己の内部状態をエネルギー的に不安定に維持するわけ。おそらくエネルギーの取り込み口から熱いお湯を飲み込んで、外皮からほぼ均等に熱を放出する。こいつを風呂の中に飼っていると風呂の温度を均一に保つ効果があるだろうなあ。
 問題は、そういうエネルギーの不均衡が自己再生的に継続していくようなパターンを取りうるかということ。そのパターンがお湯でもプラズマでも電流でも共通に移し替えができて、その移り変わる相手の物質存在を関知できて、その物質と相互作用することができればエネルギーを渡り歩く生物の出来上がり。移り変わりができないけど、そういうパターンが特定の条件を満たすプラズマ内に存在できるということなら、それはエネルギー生物ではなくてただのプラズマ生物(最初の考察からすれば、拡大した意味でのエネルギー生物になる)。

 未来技術考察としては、そういう同一の物質の中に自律的に維持するエネルギーの差のパターンを作って、そのようなものに知性を持たせるとか、実在する人物の人格を植え付けるとかしたいのだが、課題はあまりに大きく思える。

(5)エネルギーを蓄積・放出する生命
 一時的に肉体を電流に置き換えて、再び実体化するなどの能力については移動能力に関する項に譲ることにして、最後に比較的大量のエネルギーを出し入れする能力について考察する。
 電気ウナギに例を取るまでもなく、我々を含めた生命はすべてエネルギーの一時的な蓄積器として機能している。問題となるのは、より大きなパワーとかより長い持続とかそういうこと。これは超人追求の項で考えるのが適切と思うので、ここでの考察はこれまでとする。(2000.2.11)

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国際宇宙ステーション(写真提供:NASA)