源資料
- (1)「ゴルゴ13」(さいとう・たかを さいとうプロ)
- 128巻「ゼロ・エミッション」1997年9月作品に登場。自動車革命をもたらしたガソリン・エンジンは、内燃機関として低価格で効率の良い動力を提供したことで、自動車や交通網を発達させ、現代文明に寄与した。しかし、ガソリンの燃焼は大気における二酸化炭素や窒素酸化物の目に見えた増加をもたらし、環境汚染の元凶とされる。また、化石資源に由来した燃料を消費することから、資源の枯渇問題を招いている。
ガソリンを消費しない/消費量の少ない電気自動車が開発途上にあるが、電池を用いたエンジン性能がガソリンエンジンに追いつかないことから、ガソリンエンジンに代わることができないでいる。
水素の燃焼によるエンジンが開発できれば、ガソリンエンジンに劣らない性能と、燃焼反応の結果排出されるのが水であるから、クリーンで資源消費の心配のない、問題の少ないエンジンとなることが期待される。
作品では、水素爆発の危険を回避するために水素吸収合金を用い、また燃焼時に水素の気圧を80気圧として一気にシリンダー内に送り込むことでバックファイアを防いでいる。ゴルゴ13は自動車の発表走行でエンジンを狙撃、自動車を爆発炎上させることでその普及を阻止した。依頼者は石油メジャーであったらしい。(2000.7.9)
- (2)水素燃料電池自動車を国土交通省が認定
- 国土交通省は2001年6月18日、トヨタ自動車から申請のあった水素を燃料とする燃料電池自動車を、公道で試験走行できる自動車として初めて認定した。
認定を受けた自動車は同社の「クルーガーV」に燃料電池を搭載。高圧タンクに詰めた水素を使う。最高出力109馬力、最高速度150キロ、航続距離250キロ。水素燃料は窒素酸化物や二酸化炭素などの温室効果ガスを一切排出しないことから、クリーンな次世代低公害車として有力視されている。
燃料電池自動車としては、2月にメタノール燃料方式でマツダとダイムラー・クライスラーの2社が認定され、6月、日本ガス協会と日産ディーゼルが液化天然ガス(LNG)自動車の認定を受けた。ということで、燃料電池自動車の普及もかなり現実味を帯びてきた。水素蓄積の方法はゴルゴが標的にした車に使われていた水素吸収合金とかではないようだが、ガソリンに比べて危険性が高いのではないかと思える圧搾水素をどう扱っているのかには興味がわく。
起動に時間がかかるのではとか心配になったりするが、今後の動向と情報開示には注目しておきたい。
ところで、トヨタが同時に発売を発表したハイブリッド車は、100V電源を室内に備える(車内でご飯が炊けるぞ)とか、アイドリングしなくても室内のエアコンを動かしておけるとかこれまでの車には無かった特徴があるようで興味深い。(2001.6.19)
考察
- (a)基本概念
- 太陽風に含まれるヘリウムが、月の地殻に蓄えられているとか、固体の格子状分子構造が気体分子を吸着することはあるらしい(私は良く知らない)。気体分子の吸収/放出は単純に圧力をかけるとかで起こるようなものではないと思うのだが(知らない)どういう機構で水素の固定化に成功したのだろうか。
「ゴルゴ13」のことだから、意外に身近なところでヒントになるような書物があるはずだが、残念ながら私の目についていない。
バックファイア防止機構も、もっともらしい単語を並べている割に具体性が感じられない。大部分の燃料水素が固定された状態で、特定の機構が破損したからといって爆発炎上するというのは、たとえその原因が狙撃であっても、工業製品としては不完全だから、メーカー側の自信からみてそのような危険解析が不十分だったというのは信じられないことではある。狙撃→爆発は、作品の趣旨からいって避けられないことではある。1発の銃弾が、安全機構自体を破壊するような超人的狙撃だったと考えておきたい。作品にそこまでの言及はないけど。(2000.7.9)- (b)応援
- 水素の燃焼が、危険物質の生成を伴わない反応であることは良く知られている。自動車のような日常的道具への応用は、基礎理論だけでは十分ではなく、安全性確保等の工学的配慮が必要な具体例として見ることができる。
水素は軽い気体で、分子が小さいことからわずかの隙間でも通過してしまう。また酸素と混合することで爆発性を持つようになるから取り扱いが困難だ。
快適で便利な暮らしのために、自動車などに利用できる安全で実用的な水素エンジンが開発されることを願ってやまない。(水素エンジンと言えば例えば日本のH−IIロケットのLE−7エンジンのように、日常的でない場所ではすでに実用化されている。)(2000.7.9)