科学どうこう
生命科学
03/10/23 6番染色体の完全解読
03/04/14 人間の全遺伝情報解読完了
03/01/02 14番染色体の完全解読
02/04/19 ヒト遺伝子を含むブタ
02/04/12 人間とチンパンジーの遺伝子の違いは脳に於いて著しい
02/04/10 無毒なエボラ出血熱擬似ウイルス
02/01/25 植物の遺伝子を組み込んだブタ
02/01/21 遺伝子による乳牛の選別
02/01/04 チンパンジーとヒトのゲノム比較
01/12/20 20番染色体の完全解読
01/10/04 遺伝子における個人差の特定
01/06/18 クローン動物の死は遺伝子作動スイッチの違いか
01/05/04 遺伝子改変人間?
01/02/10 ヒトゲノムの解読ほぼ終了
01/01/26 記憶想起の仕組みの一端
01/01/13 別種動物の卵子を使ったクローン
01/01/12 遺伝子組み替えの霊長類誕生
00/08/22 遺伝子組み換えトウモロコシの野外実験報告
00/07/10 クローン牛肉の表示販売
00/06/26 人間の全遺伝情報(ヒトゲノム)の解読完了?
00/05/10 遺伝子解読だけでは特許を認めないことで合意
00/05/09 腸内球菌ゲノムの解読完了
00/05/08 21番染色体の解読完了
00/05/01 ヒト・ゲノム計画
00/05/01 体細胞クローン

03/10/23 6番染色体の完全解読

 24種類の染色体で構成される人間の全遺伝情報(ヒトゲノム)のうち、6番染色体を英ウエルカム・トラスト・サンガー研究所が完全に解読し英科学誌ネイチャーに発表した。日米英など6カ国の共同プロジェクト「国際ヒトゲノム計画」の参加機関が染色体別に解読成果を発表するのは、これで7本目。

(私の意見) いやだから…解読と完全解読の違いってのは。(2003.11.7)

03/04/14 人間の全遺伝情報解読完了

 小泉純一郎首相ら日米英など6カ国の首脳は、人間の全遺伝情報(ヒトゲノム)の解読を完了したとの共同宣言を発表した。6カ国の計24の研究機関は、約31億文字分のDNAのうち、解析可能な約28億3000万文字の配列を非常に高い精度で解読し、約3万2000個の遺伝子があることを明らかにした。
 完全解読には1986年の計画提言から約17年かかった。53年4月にDNAの二重らせん構造が発表されてから、50年目に当たる。共同宣言は「人類の歴史において画期的な偉業」とたたえた。
 研究チームは00年に解読結果の概略を公表したが、この時点では病気の診断などに役立つ99.99%の精度(誤差が1万個に1個に相当)で解読されたものは、全体の3割に過ぎなかった。今回はすべての部分で99.99%以上の精度を達成した。
 国別の貢献度では、米国が全体の59%、英国が31%を解読し、日本は6%と第3位。残りをフランス、ドイツと中国が担当した。解読成果はインターネットで公開されている。

(私の意見) ついに完全解読完了宣言。ある種の節目ではあるが、それ以前の成果に基づいてすでに”解読後”の研究が進んでいるのは当然で、節目以上のものではない。(2003.4.15)

03/01/02 14番染色体の完全解読

 ヒトの24種類の染色体のうち14番染色体のゲノム(全遺伝情報)を、フランス国立シークエンスセンターや米システムズ生物学研究所などがほぼ完全に解読した。これら公的研究機関で構成する国際チームは、染色体別では既に22番、21番、20番の解読を終えており、これで4番目。研究成果は英科学誌ネイチャーの電子版に掲載された。
 14番染色体にはアルツハイマー病や、視覚と聴覚の重複障害をもたらすアッシャー症候群など約60の遺伝性疾患の原因遺伝子のほか、免疫にかかわる遺伝子群がある。

(私の意見) ”完全解読”の意味については、私は今だに良くわからないのだがともかく、この前の20番染色体の完全解読発表から1年以上が過ぎていることから、ともかくたいへんな作業なんだろうという感覚を持つ。(2003.1.2)

02/04/19 ヒト遺伝子を含むブタ

 台湾動物科学技術研究所が、血液凝固第9因子をつくるヒトの遺伝子と、豚の特殊な乳のたんぱくの遺伝子を組み込んだ体細胞クローン豚3匹を誕生させることに成功したと発表した。2種類の遺伝子を導入されたクローン豚は世界で初めて。同研究所は血友病患者の6人に1人は第9因子の欠乏が原因であり、血友病の治療薬開発に道を開く成果だとしている。研究は秘密裏に進められ、第1号は2月15日に誕生した。

(私の意見) 1月25日の植物遺伝子を含むブタには、生命の不思議を感じたが、今度は倫理の混乱を感じる。チンパンジーの遺伝子の98%以上は人間と同じだが、チンパンジーは人間ではない。同じように、このブタも人間ではない、と言えるか。仮に、チンパンジーと違う部分のすべての人間遺伝子を含んだブタがあるとするとそれはなにものか。(2002.4.20)

02/04/12 人間とチンパンジーの遺伝子の違いは脳に於いて著しい

 人間とチンパンジーで遺伝子の働き方の違いを比べると、脳での違いが他の臓器に比べて数倍大きいことが、独米オランダの国際チームの解析でわかった。脳が他臓器より急激に進化した可能性を示している。12日付米科学誌「サイエンス」に掲載。
 独マックスプランク研究所のスバンテ・ペーボ博士らのチームは、人間とチンパンジー、オランウータンを対象に、大脳皮質と肝臓で、DNAからたんぱく質が作られる過程でできるメッセンジャーRNA(mRNA)の量を、1万2000個の遺伝子について比較した。その結果、500万〜600万年前の人間とチンパンジーの共通の祖先からの変化が、人間の方が肝臓では1・7倍大きく、脳では3・8倍大きかった。
 人間とチンパンジーとアカゲザルを使った別の解析方法でも、mRNAの量の変化は血液や肝臓ではほぼ同等だったのに、脳では5・5倍人間の方が大きいことが分かった。
 一方、人間とチンパンジーの進化的関係と同様の関係にある2種類のマウスについて解析したところ、脳と肝臓でのmRNAの量の変化は2種類マウス間でほとんど変わらなかった。人間とチンパンジーでは、脳で作られているたんぱく質の種類の違いに比べて、量の違いの方が大きいこともわかった。

(私の意見) 1月4日の記事では、人間とチンパンジーの遺伝子の差異は1.23%とされたが、今度はその情報的な意味合いの違い。人間の脳がチンパンジーに比べて大きいのは既知だから、問題になるのはその差が遺伝的にどう発現したかということ、かなあ。(2002.4.14)

02/04/10 無毒なエボラ出血熱擬似ウイルス

 治療法がない感染症「エボラ出血熱」のウイルス遺伝子を使い、無毒な「疑似ウイルス」を作り出すことに、東京大学などのグループが成功した。疑似ウイルスは、内部が空洞状態でウイルスの遺伝子を持たず、毒性が復帰する恐れもない。細胞の表面にウイルスと同じように付着できる。毒性や増殖能力はないが、外見上はウイルスにそっくりなため、ウイルスの扱いが難しいため研究が進まなかった同出血熱の治療法、予防法研究に道を開く成果。
 エボラ出血熱は、血液や排せつ物によって感染、高熱を発し、消化管などから出血する急性感染症で、死亡率が9割に達することもある。東大医科学研究所の河岡義裕教授と北大大学院獣医学研究科の野田岳志さんらは、ウイルスを構成する8種類のたんぱく質のうち2種類を利用して、同じ立体構造を持つ、無毒のたんぱく質の殻を作り出した。エボラウイルスなどを取り扱うためには、厳格な安全基準を満たした「P4」施設が必要。河岡教授らはカナダのP4施設で、この合成法を開発した。日本国内にP4施設はほとんどない。

(私の意見) 殻だけのウイルスというものができるのだなあ。研究のためのあらたな方法を提供したという意味で、意義が大きい。(2002.4.11)

02/01/25 植物の遺伝子を組み込んだブタ

 ホウレンソウの遺伝子を組み込み、肉質を変化させた豚を開発することに、近畿大生物理工学部の入谷明教授(発生工学)、岡崎国立共同研究機構基礎生物学研究所の村田紀夫教授(分子生物学)らのグループが成功した。大型動物に植物の遺伝子を入れ、狙い通りに働くことが確認されたのは世界で初めて。
 豚に組み込まれたのは、飽和脂肪酸を、健康に良い不飽和脂肪酸であるリノール酸に変える酵素「FAD2」を作る遺伝子。植物の多くはこの遺伝子を持っている。しかし、人間を含むほ乳類は持たないため、リノール酸などの不飽和脂肪酸は体内で合成できず、食品から摂取するしかない。
 研究グループは、ホウレンソウの根から取り出したFAD2遺伝子を豚の受精卵に入れ、その受精卵を母豚の子宮に戻した。誕生した豚の脂肪組織を調べたところ、普通の豚よりも不飽和脂肪酸が20%多く含まれることが分かった。
 普通の豚と交配させた3代目まで生まれたが、FAD2遺伝子が受け継がれていることが確認された。同じようにFAD2遺伝子を組み込んだマウスの脂肪組織には不飽和脂肪酸が40%多く含まれ、7代目まで受け継がれている。

(私の意見) 異種(というか、界が違う)由来の遺伝子が、別の種の中で機能し受け継がれるというのは驚きではある。もちろん、ウィルスによる種を越えた遺伝子の移動とかはこれまでも言われていたことではあるが。観点を変えて言うなら、植物も動物も生命構造にたいした違いは無いのだろう。(2002.1.26)

02/01/21 遺伝子による乳牛の選別

 トーメンとニチメンの農医薬・バイオ部門が統合したアリスタライフサイエンス社(本社・東京、植木良彰社長)とベルギーのジャンブル農業大学は遺伝子解析の新技術を使い、産乳量の多い乳牛を判別する検査受託事業を始めると発表した。同社は今回の事業化を世界初の事例としている。
 同大学内に新設したプロジェニュス社は、各国から送られてくる牛の毛根の遺伝子を検査することで産乳能力を判断する。

(私の意見) 乳牛とはいえ、遺伝子による選別が現実に行われることになるわけで、倫理的な問題(本来、人間が知り得ない事項に基づいて、区別/差別をして良いのかどうか。何に基づいたとしても差別は許されないのではないか)をあらためて提起していると思う。(2002.1.22)

02/01/04 チンパンジーとヒトのゲノム比較

 理化学研究所とドイツ、中国、韓国などの研究機関は、チンパンジーの全遺伝情報(ゲノム)をヒトゲノムと比較した「ゲノム地図」を初めて作成し、米科学誌サイエンスで発表した。ヒトとチンパンジーは約500万年前に分かれて進化したとみられるが、ゲノムの違いは1.23%しかないことが判明した。
 研究グループはこの地図を基にチンパンジーのゲノム解読に着手しており、人間だけが持つ言語機能など知的活動に関する遺伝子を突き止められそう。また、ヒトのエイズはチンパンジーから伝染したとの説があるほか、チンパンジーはアルツハイマー病にかからないとも言われており、これらの病気の原因解明にも役立つと期待される。

(私の意見) 1.23%という数字は刺激的だが、数値自体にはたいした価値はない。むしろゲノムの差異が種としての差異にどう関連してくるのかを解明することの方に価値があるだろう。それらの差異の研究成果が期待されるきっかけが与えられたことを評価したい。(2002.1.4)

01/12/20 20番染色体の完全解読

 英国のウエルカム・トラスト・サンガー研究所は、24種類の染色体で構成される人間の全遺伝情報(ヒトゲノム)のうち、20番染色体の遺伝暗号配列を完全解読した。染色体の完全解読は22番、21番に続き3番目。今回の解読結果は、人間の遺伝子数が3万〜4万個程度とするこれまでの分析を裏付けるとともに、原因遺伝子が含まれるクロイツフェルト・ヤコブ病や糖尿病などの解明に役立つと期待される。論文は20日付の英科学誌ネイチャーに掲載される。

(私の意見) いやまあその、ヒトゲノムの解読ほぼ完了というのと、染色体毎の完全解読というのがどう違うのか、どこまでが”ほぼ”なのかに戸惑ってしまう。ヒトゲノムの完全解読はまだなんだということと、とりあえず3つの染色体については終わったのだなあということ。それでどこまでなら”ほぼ”なんだよお。(2001.12.20)

01/10/04 遺伝子における個人差の特定

 科学技術振興事業団と東大医科学研究所は、病気へのかかりやすさなどを左右する遺伝子の個人差であるSNPを15万カ所特定したと発表した。政府のプロジェクトの一環として実施されてきた研究で、当初の予定より目標を達成した。個人個人に適したオーダーメイド医療や遺伝子情報を利用した薬作りに役立つと期待される。

(私の意見) 遺伝子研究もついに個人差を扱うまでになってきたのかと感心する。社会問題としての遺伝子による差別にどう対処するかがそろそろ問われなくてはならないのかな。(2001.10.6)

01/06/18 クローン動物の死は遺伝子作動スイッチの違いか

 体細胞クローン作りでは、体細胞の核を、核を除いた未受精卵に移植し、子宮に戻す方法を用いる。英国のグループが乳腺の体細胞を使いクローン羊・ドリーを初めて誕生させ、最近は牛などで広く実施されている。しかし、死産率が高かったり、生まれても病気にかかりがちで成功率は数%と低く、原因は解明されていない。
 その原因は遺伝子を作動させる「スイッチ」の状態が、普通に生まれた動物と異なっているためではないか、とする研究結果を、東大農学部の塩田邦郎教授(応用動物科学)らのグループが、米専門誌「ジェネシス」6月号に発表した。
 塩田教授らは、炭素1個と水素3個で構成される「メチル基」という原子の集まりが、DNAに付く(メチル化)と、その部分の遺伝子が働かなくなることに注目し、体細胞クローンマウスと普通のマウスの各細胞のDNAでメチル化の状態を調べたところ、胎盤や皮膚など4カ所の組織で、違いがあることを確認した。いったん分化した細胞は、それぞれ特定のメチル化のパターンを持つが、体細胞クローン動物にもその状態が残るため、異常が出ると推測される。

(私の意見) 遺伝子作動スイッチは、細胞を分化させるために必要な生体機構だ。クローンがうまく育つためには、スイッチがリセットされた状態から始める必要があるだろうという推測は当然だが、実際の細胞で確認されたところがすごい。(2001.6.18)

01/05/04 遺伝子改変人間?

 不妊症の女性の卵子に健康なドナー(提供者)から採取した卵子の細胞質を注入する治療で、米国で約30人の赤ちゃんが誕生していたことが分かった。赤ちゃんは両親だけでなく、ドナーの遺伝情報も受け継ぐ。英BBCテレビは、「世界初の遺伝子を改変した赤ちゃんの誕生」と報道した。
 この不妊治療は米ニュージャージー州の民間不妊治療施設「セント・バーナバス生殖医学科学研究所」を中心に実施されている。同研究所は、卵子の細胞質に問題があって受精、妊娠できないと判断した症例に対し、ドナーの卵子から取り出した細胞質を卵子に注入する治療法を開発し、英医学誌「ランセット」で発表した。
 両親の遺伝情報は主に、精子と卵子の核内の染色体上にあるDNAによって子供に受け継がれる。一方、細胞質にあるミトコンドリアにもDNAが存在し、遺伝情報を伝える。この手法で誕生した赤ちゃんは両親から受け継いだ遺伝子DNAのほか、母親とドナーのミトコンドリアDNAを持つことになる。
 人間の遺伝子を操作する治療として、遺伝子治療が世界各地で試みられているが、不妊治療で遺伝子を改変する技術が使われたのは初めて。同研究所は「核内遺伝子の設計図は変わらない」との理由から、「遺伝子操作に該当しない」と主張している。

(私の意見) ミトコンドリアは細胞の代謝に関わる機能を担うもので、直接的には顔つきとか体つきとかいわゆる”個性”を定める上では関係していないと思う。それに、遺伝子が混ぜ合わせられたとはいえ、人間に由来するものだから「遺伝子操作に該当しない」という主張は(これだけのことからすると)妥当だと考えるけど。(2001.5.5)

01/02/10 ヒトゲノムの解読ほぼ終了

 人間の全遺伝情報(ヒトゲノム)の解読を進めてきた米国のバイオ企業「セレラ・ジェノミクス」と、日米欧政府機関の出資による「国際ヒトゲノム計画」の研究成果が同時公開された。遺伝子の数が従来の推定の約10万個をはるかに下回る3万〜4万個で、ショウジョウバエの2倍しかないことが分かるなど、ゲノムの全体像が初めて明らかにされた。解読データは無料で研究者に提供され、遺伝子と病気との関連の研究、新しい治療法や薬剤の開発に結びつくと期待される。
 研究論文はセレラ社が16日発行の米科学誌「サイエンス」、国際チームが15日発行の英科学誌「ネイチャー」に掲載する。
 セレラ社は染色体を小さな断片に切断して塩基配列を読み取り、コンピューターで順番通りに並べる「全ゲノムショットガン」という手法を駆使し、国際チームに先駆けて約29億の塩基対を解析した。分析の結果、確実に遺伝子と見なせる配列は2万6383個で、遺伝子の可能性のある配列1万2731個を加えても4万個に満たないことが分かった。同社は3万個程度だと見ている。
 一方、国際チームは染色体断片の染色体上の位置を決めてから、それぞれの塩基配列を読み取る「階層的ショットガン」で解読した。遺伝子は3万〜4万個と推定している。
 遺伝子数が予想外に少なかったことについて、セレラ社と国際チームは「1個の遺伝子が1個のたんぱく質をつくるのではなく、数多くのたんぱく質をつくっている」と分析している。
 セレラ社は解読データをサイエンス誌を通して、研究者に無料で公開する。企業の利用には、登録制など一定の条件を設けた。国際チームは無条件に公開する。
 ヒトゲノムの解読がほぼ終了し、今後、このデータを用いた遺伝子の機能の解明や臨床応用が課題になる。それぞれの論文では、がん遺伝子や免疫と遺伝子との関連などについて、専門家が詳しく分析している。

(私の意見) えーと、解読終了って去年の6月にそう言っていたと思うのですが。今回の発表によると遺伝子の数は約10万個ではなくてショウジョウバエの倍程度の3〜4万個ということらしい。ショウジョウバエはとても小さくて、染色体の数も少ないけれど、人間の遺伝子がその倍と言われるとなんか抵抗がある。この半年、何があったのか良くわからないが、たぶん検討を進めていたということで、このたびサイエンス誌やネイチャー誌を通じた一般公開になったわけですね。バンザイ。今後この解読の結果からどのような解釈や応用が生まれるのかとても期待しています。(2001.2.11)

01/01/26 記憶想起の仕組みの一端

 記憶された情報を思い出すとき、脳の内部では記憶を保存するのとは逆の経路で信号が伝わり、記憶の入力の35倍の時間がかかることが、科学技術振興事業団プロジェクトチームと岡崎国立共同研究機構生理学研究所などのグループによるサルの実験で分かった。記憶をよみがえらせる時の脳の活動の一端が明らかになったのは初めてという。26日発行の米科学誌「サイエンス」に発表される。
 研究グループは、サルに約20種類の図形を二つ1組で覚えさせ、一つの図形を見せた後で選択肢の中からそれと対になっていたもう片方の図形を正しく選び出せれば餌を与えるという実験を行った。この時、サルの脳の神経細胞の電気的活動を観察したところ、最初に古い皮質が反応し、続いて新皮質が反応することを確認。古い皮質の神経細胞が活動しただけでは記憶がよみがえらず、新皮質に情報が伝わった時点で記憶として認識されることが分かった。
 さらに、この視覚情報の信号が古い皮質から新皮質に伝わる速さは平均で100分の35秒かかり、情報が入力される際に新皮質から古い皮質に伝わる100分の1秒より遅かった。

(私の意見) こんぴゅーたーみたいだ。FDもDVDも読み出しと書き出しの速度は異なる。記憶想起の機構がわかれば、記憶想起障害の治療とかに応用ができるだろう。でも脳の機械化とかはちょっと抵抗がある。(2001.1.27)

01/01/13 別種動物の卵子を使ったクローン

 絶滅の危機にひんする野生牛ガウルのクローンが米国で初めて誕生した。2日以内に死んだが、死因は生まれたての動物によくある感染症で、クローン・ガウルを作った米バイオ企業「アドバンスト・セル・テクノロジー」(ACT)は「死亡はクローン技術と直接の関係はない」とみている。
 ACTの担当科学者であるフィリップ・ダミアニ博士は「ノア(クローン・ガウル)の死は悲しいが、その誕生によってこの技術を絶滅の危機にひんする動物に応用できる見通しが立った」とコメントした。
 これまで動物の細胞を同種の動物の卵子に核移植したクローン動物は、羊、マウス、ブタなどで作られている。しかし、今回のクローン・ガウルのように、別種の動物の卵子を使ってクローン動物を作ったのは初めて。

(私の意見) これもまた、生命操作の可能性を大きく広げる技術。(2001.1.17)

01/01/12 遺伝子組み替えの霊長類誕生

 遺伝子を組み換えたアカゲザルを誕生させることに米オレゴン健康科学大の研究グループが成功し、米科学誌「サイエンス」に発表した。遺伝子組み換え霊長類の誕生は世界で初めて。アルツハイマー病やエイズなどの難病の治療法開発に役立つと期待されている。

(私の意見) とうとうここまで。ヒトに似たものをいじるというのは、実現するとやはり心理的に抵抗を感じてしまう。(2001.1.17)

00/08/22 遺伝子組み換えトウモロコシの野外実験報告

 遺伝子組み換え(GM)トウモロコシの一つ、Btコーンの花粉がついた草を食べたチョウの幼虫の約20%が死んだとする野外実験報告が、米アイオワ州立大学の2人の研究者から発表された。
 Btコーンは害虫防除に用いられる微生物バチルス・チューリンギエンシス(Bt)の遺伝子を組み込んだトウモロコシ。Btコーンの花粉でチョウの幼虫が死んだとする報告は米コーネル大学が昨年5月に発表し、GM作物全般に対する国際的な批判を高めるきっかけとなった。だが、同大の報告は実験室という限定的な空間での試験に基づいたものであり、自然界では起こり得ないとする見方も専門家の間で強かった。より自然環境に近いアイオワ州立大の実験はBtコーンが他の生物に及ぼすリスクが大きいことを裏付けるものとなった。

(私の意見) 遺伝子組み替えで、有毒(この場合はチョウの幼虫に対して)な作物が製造しうるという実例。仮に、人体に有毒な食用作物が作られ、仮に故意でないとしてもその成果が花粉や種子の形で拡散し一般化してしまう可能性を示唆するもの。研究の有用性を吟味し、研究者が独善に陥らないような機構の必要性を感じる。研究の自由や科学的進歩への欲求とどこで折り合いをつけていくのか、難しい課題が示されている。

00/07/10 クローン牛肉の表示販売

 奈良県は受精卵クローン牛の肉を「受精卵クローン牛」と表示して県内のスーパーなど4店で15日から試験販売すると発表した。クローン牛の表示販売は近畿で初めて。
 販売されるのは1997年9月に県畜産試験場で生まれた黒毛和種のメス1頭分約70キロ。肉質は最高級の「A―5」。このランクは通常100グラムあたり1500〜1600円で売られているが、今回は試験販売のため500〜600円にするという。県は93年に受精卵クローン牛の出産に西日本で初めて成功し、9頭を表示なしで販売。これに対し、消費者団体などから表示を求める声が上がった。

(私の意見) 科学とは違う話だと思うが、「クローン肉」から連想すると、牛丸ごとでなくて特定部位だけが培養されているとか、巨大試験管の中でチューブにつながれて液体の中で育成された牛とかを連想してしまって、現実とイメージの乖離が大きいところが興味深い。実体は、受精卵の遺伝子を、別の牛の生体細胞から取り出したそれと置き換えて、自然分娩、自然育成で育てた牛ということのはず。
 食肉牛の遺伝子を操作するのと、食べるために牛を育てるのは倫理的には同等の地平にあると思うが、なにか違いがあるだろうか。

00/06/26 人間の全遺伝情報(ヒトゲノム)の解読完了?

 人間の全遺伝情報(ヒトゲノム)解読を行っている日米欧の公的機関代表のコリンズ米国立ヒトゲノム研究所長と、米バイオ企業セレラ・ジェノミクス社(メリーランド州)のベンター社長は、ワシントンで共同記者会見し、年内の解読データ共同発表や合同会議開催を通じ、官民協力を進める方針を確認した。
 ベンター社長によると、セレラ社はDNAの塩基配列の99%について、大まかな解読と配列を正しく並べ直す作業を完了。塩基の総数は31億2000万個であることが分かった。同社長は、世界最高速のコンピューターの利用が短期間での解読完了を可能にしたと語った。
 一方、コリンズ所長によれば、国際グループが解読した塩基配列は全体の97%以上で、うち85%を正確に並べ直したという。塩基総数は31億5000万個だった。塩基の総数が違っているのは、双方が異なる手法で解読を行ったためで、今後データの交換を行って調整する。

(私の意見) 99%がどうして解読完了になるのか、大まかな解読なのか解読なのか、共同発表の骨子はなんなのか、報道されるニュースを追いかけていても良くわからない。今後の調整が必要らしいし。ヒトゲノムの解読がかなりのところまで進んでいて、一般公開も年内であるとか。
 社会生活者としては、その結果がどう活用されていくのかに興味がある。”完全解読”かどうかはともかく今後の展開に期待。
 遺伝子解読が特許にならないということで、セレラ・ジェノミクス社がどういう戦略を採ったのかについても興味を持つところ。

00/05/10 遺伝子解読だけでは特許を認めないことで合意

 主要先進7カ国(G7)の特許庁長官の非公式会合が英国で開かれ、ヒトの遺伝子研究について、病気の原因究明や、新薬の開発につながらない分析結果は特許として認めない方針を確認した。日米欧の特許実務者は昨年、遺伝子の断片の塩基配列を解読しても特許を認めないことで合意したが、今回はこれを一つの遺伝子全体を解読した場合にも拡大した。今後、どのような成果について特許を認めるか、実務者レベルで基準について意見交換を進める。
 ヒトのゲノム(全遺伝情報)は約30億の塩基で構成され、この中にたんぱく質の作成などを指示する遺伝子が約10万個あるとされる。米特許商標庁は2年前、米ベンチャー企業の申請した遺伝子の一部の断片の塩基配列を解読した情報について特許を認めたが、政府や研究者レベルで「遺伝子の機能が分からなければ意味がない」と批判を受けた。このため日米欧は昨年5月、遺伝子断片の塩基配列を解読しても、機能が解明できなければ特許として認められないとの見解で合意した。

(私の意見) これは科学ではなくて知的所有権の話。とはいえ、科学と人がどう向き合うかは、(いまの)社会生活では重要。

00/05/09 腸内球菌ゲノムの解読完了

 アメリカのリチャードソン・エネルギー長官は、抗生物質が効かないため、日米両国などで問題となっている腸内球菌の全遺伝情報(ゲノム)の解読を完了したと発表した。解読は、日欧の公的機関とヒトゲノム計画を進めるエネルギー省の共同ゲノム研究所などが行った。
 コンピューターを使って塩基配列をつなぐ作業が残っているが、同長官は「極めて早期に完了したこの成果は細菌に関する巨大なデータを提供し得る」と強調、今後新規の抗生物質開発などに役立つと述べた。

00/05/08 21番染色体の解読完了

 人間の全遺伝情報(ゲノム)の解読計画に参加している日独の国際共同チームは人間の染色体の1つである21番染色体の解読を完了したと発表した。人間の染色体は23対あるが、染色体の全容が分かったのは22番染色体に次いで二つ目。21番染色体上にはアルツハイマー病、筋萎縮性側索硬化症、急性骨髄性白血病、ダウン症や先天性難聴、そううつ病などに関連する遺伝子が少なくとも225個存在することが分かり、今後、詳細な病気の原因解明や治療法の開発が進むと期待される。
 21番染色体は、23対の染色体の中で一番小さく、ヒトの全塩基対(約30億)の1%余を占める。
 21番、22番の解読結果から推定すると、人間の全遺伝子は約4万個となり、現在10万個とされる遺伝子の数が実際にはかなり少ない可能性が強まってきた。

 2000年1月17日の発表では、21番染色体の解読はあと数週間以内、7、14、20については2000年夏までに終わる見通しとのこと。
 22番染色体は1999年12月に解読を終えている。

(私の意見) すごいなあとしか言いようがないが、染色体=遺伝子ではないのね。言葉の問題だけど。

00/05/01 ヒト・ゲノム計画

 米エネルギー省共同ゲノム研究所が2000年4月13日に23対あるヒトの染色体のうち5番、16番、19番染色体の全塩基配列をおおまかに解読することに成功したと発表した。3対の染色体には白血病や前立腺がん、糖尿病、動脈硬化などの病気に関連する1万〜1万5000個の遺伝子が含まれている。

00/05/01 体細胞クローン

 2000年4月28日、体細胞クローン技術を使って誕生したクローン牛の細胞がクローン羊ドリーと違って老化していないという研究結果を米バイオテクノロジー企業の研究グループがまとめ、米科学誌「サイエンス」に発表した。細胞は同年齢の通常の牛に比べてむしろ若返っているという。
 細胞分裂を繰り返すとテロメアは次第に短くなることが知られており、テロメアの長さは細胞老化の指標とされる。体細胞クローン技術によって誕生した初のほ乳類であるドリーはテロメアが短いと報告され、クローン動物は老化が早い可能性があるとみられていた。
 これに対し、マサチューセッツ州アドバンスト・セル・テクノロジー社のロバート・ランザさんらは細胞分裂の回数が残り数回しかないと推定される細胞を用いて、体細胞クローン牛を6頭誕生させた。このクローン牛の細胞を採取して調べたところ、いずれも90回以上分裂したという。

(私の意見) テロメアが長くなる理由がわからないところ。今後の研究に期待したい。もし事実なら、不老・不死の手がかりになるかも知れないだけに、ついつい望みを持ってしまう。


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