科学どうこう
先端医療
02/01/07 オーストラリアでの肝臓移植事情
01/05/30 エイズ初の症例報告から20年
01/05/25 アルツハイマー病の原因物質ベータアミロイドを分解する酵素
01/05/22 アルツハイマー病による脳神経細胞の死を防ぐたんぱく質
01/05/21 豚の肝臓細胞を使った人工肝臓の臨床応用承認
01/05/10 自分の細胞を使った角膜の再生
00/12/18 食道がんの遺伝子治療
00/09/25 癌の遺伝子治療患者が死亡
00/06/05 癌の遺伝子治療
00/05/16 マニラにて
00/05/02 臓器売買

02/01/07 オーストラリアでの肝臓移植事情

 豪全国紙オーストラリアンは、クインズランド州ブリスベーンの州立病院で1990年代に、多くの外国人患者が18万豪ドル(約1500万円)を支払って肝臓移植手術を受けていたと報じた。大半は、医療ビザを取得して入国した日本人だったという。
 同紙によると、移植手術は豪州人の待機者が優先され、提供者の肝臓と血液型などが合わない場合に外国人に順番が回ってきた。昨年は、同病院で行われた36件の移植手術のうち、日本人患者は2人だった。

(私の意見) これ自体は違法ということでもないようだが、2000年5月16日の記録と合わせて考えるとどうか。大半という表現も、実数が無いとよくわからない。いずれにしても国際間の格差は倫理的には是正されなくてはならないだろう。

01/05/30 エイズ初の症例報告から20年

 国連エイズ合同計画(UNAIDS)は、エイズ初の症例が報告された81年6月から20年間で、世界で計5800万人がエイズウイルス(HIV)に感染、2200万人が死亡したとの報告を、ジュネーブで開催中のUNAIDS理事会に提出した。
 また、00年末の時点で3610万人がHIVに感染していると指摘。成人の15%以上が感染しているアフリカ8カ国では、現在15歳の青少年のうち少なくとも約3分の1がエイズで死亡する可能性があると警告した。
 エイズで死亡した人は99年が260万人、00年は300万人に達した。感染者の増加率は、世界保健機関(WHO)による91年の推計を5割も上回り、感染者の95%がアフリカを中心に途上国に集中している。
 アジアは感染率がアフリカより低いが、中国、インドの二大人口大国があり「活発な人口移動や性産業、麻薬密輸のまん延で、感染者数が一気に増える恐れがある」と警戒している。

(私の意見) 2200万人、5800万人という数字は軽いものではないが、少し考えさせられる。

01/05/25 アルツハイマー病の原因物質ベータアミロイドを分解する酵素

 アルツハイマー病を引き起こす原因物質と考えられる「ベータアミロイド」を脳内で分解する酵素を、理化学研究所などのグループが世界で初めて特定し、高い分解能力を実証した。この酵素の働きを維持すれば原因物質の蓄積を抑えることができ、発病の予防につながる重要な成果と注目されている。米科学誌「サイエンス」に発表された。
 アルツハイマー病は、ベータアミロイドという特殊なたんぱく質が長い年月をかけ、脳に蓄積し、それが付着した神経細胞が死滅して起こるとする説が有力だ。ベータアミロイドは脳内で常に作られ、健康な人ではすぐに分解されると考えられている。
 理研脳科学総合研究センターの西道(さいどう)隆臣チームリーダーらは、脳内での役割が不明だった「ネプリライシン」という酵素に着目。米ハーバード大が開発した、ネプリライシンを作れない特殊なマウスを使い、脳内でどんな働きをしているかを調べた結果、ネプリライシンがないマウスは、脳内のベータアミロイドの量が正常マウスの約2倍に増加しており、この酵素が分解に強く関与していることが分かった。また、ベータアミロイドは「海馬」と呼ばれる部分にとくに多く、人間のアルツハイマー患者の病状とよく似ていた。
 一方、カナダのグループが行ったアルツハイマー病患者の脳検査では、海馬の部分でネプリライシンの働きが弱まっており、今回のマウス実験の結果と合致する。

(私の意見) 22日の記事から時間を置かずにベータアミロイドを分解する酵素が確認された。アルツハイマー病の治療としてはヒューマニンの影が薄くなったようだが、不死の効果とかいうのは依然気にはなりますねえ。

01/05/22 アルツハイマー病による脳神経細胞の死を防ぐたんぱく質

 アルツハイマー病の原因となっている脳の神経細胞の死を防ぐ遺伝子を、西本征央(いくお)・慶応大医学部教授(薬理学)らの国際研究グループが世界で初めて発見した。難病のアルツハイマー病は、最初の患者が報告されてから約100年がたつが、この成果は根本的な治療につながる可能性もある。22日付の米科学アカデミー紀要に発表された。
 アルツハイマー病は、複数の遺伝子に異変が起きたり、「ベータアミロイド」という特殊なたんぱく質が脳内に蓄積して神経細胞が死んでいき、痴呆症が進行する。世界の治療法の研究は、ベータアミロイドを除去したり、その生成を抑える方法が主流。
 研究グループは、アルツハイマー病患者の脳で後頭葉の神経細胞がほとんど死なないことに注目し、後頭葉の神経細胞で働いている遺伝子を探す方法を開発。その結果、数十種類の遺伝子を特定し、その中の一つが、アルツハイマー病による神経細胞の死を防ぐことが分かった。この遺伝子は24個のアミノ酸で構成され、研究グループは「ヒューマニン」と名付けた。マウスの脳から取り出した神経細胞にベータアミロイドを蓄積させる際、この遺伝子が作り出すたんぱく質を加えたところ、ごく微量でも神経細胞は死ななくなった。

(私の意見) 脳神経細胞が死ななくなる遺伝子ということではなくて、アルツハイマー病によるベータアミロイド蓄積から神経細胞の死を防ぐたんぱく質を作る遺伝子の発見という意味ですね。不死遺伝子が発見されたということではたぶんないでしょう。
 ベータアミロイドの蓄積という問題は残ると思うのですが、たんぱく質を加えることで効果があるということなら早期に治療法として確立できる期待があります(たんぱく質をどうやって加えるかが問題でしょうが)。

01/05/21 豚の肝臓細胞を使った人工肝臓の臨床応用承認

 九州大学医学部の倫理委員会は、ブタの肝臓細胞と人工素材を組み合わせた「人工肝臓」を重い肝臓病の治療に用いるための、ガイドラインを承認した。人工臓器の臨床応用に事実上、道を開いたと言え、劇症肝炎患者などの代替臓器としての利用が期待される。
 人工肝臓はポリウレタンフォームを詰めた樹脂製円筒容器内で豚の肝細胞を培養し、その中に患者の血しょう成分を流してアンモニアなどを除き、再び体内に戻す。動物の細胞を使った「異種移植」に当たり、臨床応用されれば、国内初。

(私の意見) ある種の人工臓器。異種移植は同種間の移植に比べてより難しいと思うが、素材供給の容易さから考えると発展してもらいたい医療のひとつ。

01/05/10 自分の細胞を使った角膜の再生

 けがや病気で失明した人の傷ついた角膜を、口の中の粘膜細胞を使って再生する治療法を名古屋大医学部のグループが世界で初めて開発した。近く学内の倫理委員会に、患者に対する臨床試験の実施を申請する。角膜損傷の治療は、第三者のドナー(提供者)から死後、角膜提供を受けて行う角膜移植が中心だが、新治療法では提供を待つ必要がなくなる。角膜を大量に再生することも可能になり、再生医療の画期的成果として注目されそう。
 開発したのは名大口腔(こうくう)外科、眼科、組織工学科の研究グループ。まず、ほおの内側の粘膜を数ミリ切開し、深さ0・2〜0・5ミリの部分から、粘膜の幹細胞を取り出す。これを2〜3週間培養して薄い透明膜を作成。この培養膜をコンタクトレンズの内側に張りつけ、傷ついた角膜を切除した眼球にかぶせると、傷ついた角膜を部分的に切除した眼球にかぶせる。培養された膜が出す化学物質によって、角膜の再生が促進される。ただし角膜の内皮まで深く損傷している場合は、正常な再生が難しい。
 角膜を壊したウサギに新治療法を使ったところ、数週間で角膜が再生し、動きのある物体を目で追えるようになった。
 日本眼球銀行(アイバンク)協会によると、角膜移植待機患者は今年3月末で5216人。待機期間は4〜5年になる。

(私の意見) 私は前提知識がないので、単なる試行錯誤の結果なのか、最新技術を前提として発見された治療方法なのか判断が付かない。ともあれ、倫理的な問題が少ない分、再生医療には大いに期待したい。

00/12/18 食道がんの遺伝子治療

 千葉大学医学部付属病院の遺伝子治療臨床研究審査委員会は、進行性食道がんの男性患者に対する遺伝子治療の実施を承認し、同部第2外科の遺伝子治療グループ(責任者・落合武徳教授)は19日に治療を開始する。食道がんの遺伝子治療の実施は世界で初めて。
 第2外科によると、患者は関東地方の60歳代男性。進行性食道がんで、手術や放射線など従来の治療法では治癒が難しかった。
 今回の治療は、がん抑制遺伝子「p53」を組み込んだベクター(遺伝子の運び屋)を、内視鏡を使って直接患部に注入する方法。効果の有無は来年2月ごろ判明する見通し。患者からはインフォームド・コンセント(十分な説明に基づく同意)を得たとしている。
 同大は今後約2年間に、この患者を含め最大39人まで治療を実施する予定。

(私の意見) 遺伝子を用いたがん治療の試み。

00/09/25 癌の遺伝子治療患者が死亡

 名古屋大学付属病院で今春、初の国産ベクター(遺伝子の運び屋)を用いた遺伝子治療を受けた悪性脳腫瘍(しゅよう)患者が、腫瘍が再増殖したために、関西地方の病院で死亡していたことが分かった。
 名大病院によると、死亡したのは治療困難な「悪性グリオーマ」で入院し、4月3日から5月1日かけて計6回にわたり治療を受けた30代の女性患者。治療では、抗がん作用のあるインターフェロン(IFN)を分泌する遺伝子を人工膜に包み、腫瘍に注入した。

(私の意見) 亡くなった患者にはお気の毒だが、6月5日の記事に対応するもの。治療法が確立するまでには、さまざまな紆余曲折がある。

00/06/05 癌の遺伝子治療

 名古屋大学付属病院の遺伝子治療臨床研究審査委員会は初の国産ベクター(遺伝子の運び屋)を用いた悪性脳腫瘍(しゅよう)患者に対する遺伝子治療について中間報告した。この結果、ベクターから分泌された抗がん作用のあるインターフェロンが、腫瘍の約6割を壊死(えし)させるとともに、腫瘍の増大を抑制する効果が確認された。同委員会は約1、2カ月後に最終報告をまとめる。担当医によると、患者は30代の女性で、4月3日から5月1日にかけ6回にわたり、この遺伝子治療を受けた。経過は順調で、完全にまひしていた右半身は不安定ながら自力歩行ができるようになったほか、失語症もやや改善し、簡単な会話が可能になった。唯一の副作用として軽い頭痛を伴う脳のはれが認められたが、ステロイド剤の投与で改善したという。

(私の意見) いわゆる遺伝子治療の成果。個々の事例については今後も検討の余地はあると思うが、遺伝子を用いた治療というあらたな分野が着実に開拓されつつある。60%というのをどういう解釈をして良いのかがわからない。これ以上病気が進展しないのならば、それはすばらしい。また、もうすぐ0%になるというのならもっとすばらしい。そうではないのかも知れない。とはいえ臨床的にそのようなことが確認できるのはたいしたことだ。

00/05/16 マニラにて

 マニラ首都圏ケソン市の国立腎臓研究所は元プロレスラーのジャンボ鶴田=本名・鶴田友美=さん(49)が13日午後、入院していた同研究所で肝臓移植手術中に大量出血し死亡したことを明らかにした。鶴田さんは末期の肝臓がんだった。
 同研究所のエンリケ・オナ所長によると、鶴田さんは2日マニラ入りし、12日にドナー(臓器提供者)が見つかったため、同日深夜から移植手術を始めた。ところが、手術中に大量に出血し16時間に及ぶ手術の末、13日午後4時(日本時間同5時)、出血多量で死亡した。ドナーは事故で脳死状態となったフィリピン人男性(20)で、遺族は移植に同意しており、一連の手続きは合法的なものだったとのこと。
 オナ所長は「輸血を続けたが、体が大きく出血量が多かった」と説明。「がんの症状が進んでいて、仮に手術が成功していても、1年ももたなかっただろう」としている。
 鶴田さんは渡比前の数カ月間、オーストラリアに滞在して移植手術を待ったが、ドナーが見つからず、同国での手術を断念し、マニラに渡った。鶴田さんには妻や子が付き添い、手術の際も病院で待機した。
 同研究所は、腎臓や肝臓の移植手術を多く手がけ、同国のじん臓、肝臓病治療のトップ医療機関として知られている。

(私の意見) オーストラリアで提供者が現れなかったのに、マニラではすぐに提供者がいた。マニラでは提供者が現れやすい条件があるのではないか。
 あるいは、先の生存見込みが長くない患者に対してもそのような提供者を割り当てうるということに驚異を覚える。
 科学と言うよりは、社会機構面の話題と思うが、科学が社会生活にどう関わるかは科学にとっても重要な問題。

00/05/02 臓器売買

 1997年10月、日本で臓器移植法が施行され、1999年2月に最初の脳死移植が行われた。2000年4月に6例目が行われた。
 2000年4月29日に、古代マヤ遺跡で世界的な観光地になっているグアテマラで日本人観光客らが、約500人の地元住民らに石や棒で襲撃され、邦人1人とグアテマラ人運転手1人が死亡した。襲撃者は誘拐された子供を捜していた。現地では先進国の患者への臓器移植が目的とみられる子供の誘拐事件が多発している。
 毎日新聞は、2000年4月12日の記事で、東京都内の民間業者が1997年10月に臓器移植の有償あっせんを禁じた臓器移植法が施行された以降、日本人患者3人にフィリピンの病院を紹介し、生体腎移植や生体部分肝移植を受けさせていたことを報道した。
 「この業者は臓器移植法施行前の95〜97年、約10人の日本人患者にフィリピンでの生体腎移植を受けさせていた。法施行とともに一時は手を引いたが、その後も患者からの問い合わせが続いたため、昨年8月に約30万枚の折り込み広告を出して業務を再開。これまでにケソン市の病院で、2人の日本人患者にフィリピン人の生体ドナー(臓器提供者)の腎臓を使った移植をそれぞれ約2600万円で受けさせた。先月には、肝硬変を患う都内の50代の男性患者に生体部分肝移植を受けさせた。」(毎日新聞 2000.4.12)
 「厚生省は、この業者に対して法施行前から「倫理的に問題がある」と再三にわたり注意してきた。法施行後も移植ツアーを続けていたことが判明したことで、同省臓器移植対策室は「金さえ出せば外国で移植できるという風潮が強まると、国民が臓器提供にそっぽを向く恐れがある。ツアー実施が事実なら極めて遺憾だ」としている。」(毎日新聞 2000.4.12)

(私の意見) 臓器の売買が問題なのは、売り手の健康を損なう、場合によっては生命維持に絶対必要な臓器でも売買されかねない点。他人の命を縮めて、自分の命や健康を守ることは倫理的に許せない。
 臓器移植にはそれなりの医療技術を持つ者の存在が欠かせない。また臓器の入手も人手を介することになり、多数の倫理欠落者が関係している。移植を受けた人も、その後は継続した予後管理が必要で個人の秘密にしておくことは出来ない。手術以降も犯罪者集団との関わりを断つのは難しい。
 憤りを感じる。買春に似ているがより悪い。やめましょう。


 科学どうこう 
 ホーム