東洋経済日報                                                                   2003,8,22
 

◆ 韓国 歌の旅  安準模著

 10年程前、韓国人ビジネスマンの友人が涙ながらに歌ったもの悲しい歌が脳裏に焼きついている。その歌は「朝露」。1970年に作曲された韓国版フォークソングで、87年に学生ら100万人がこの歌を歌ってソウルの真ん中をデモ行進した。95年に東亜日報が選定した「韓国歌謡100曲」の第1位に選ばれ国民的な歌である。

 韓国には国民の誰もが愛唱する歌が数多い。1920年に洪ランパが作曲した「鳳仙花」はその代表だろう。植民地時代に抵抗歌として歌い継がれ、現在も南北ともに愛され広く歌われている。

 韓国の歌は、時代の影響を強く受け、芸術性と民族性が結合し歌詞と曲が一体となっているところに最大の特徴がある。芸術性の高いラブソング「待つ心」の歌詞にも、時代の影響が色濃い。

 新羅王の忠臣・朴堤上は、日本に人質としてとらわれている王子救出に成功したが自らは捕われ拷問死した。その妻は夫を待つ続け石になってしまったという説話に基づくものだ。

 植民地時代の30年代には「他郷暮らし」「木浦の涙」「涙にぬれた豆満江」など肺腑をえぐるような歌が数多く作曲されたが、時代を超えて歌い継がれてきたのは芸術性の高さゆえであろう。

 著者は日本の事情にも詳しく、『釜山港へ帰れ』は日本で韓国歌謡のブームをもたらしたが、日本語訳の歌詞には原詩の根っ子にある民族の歴史的意味が消し去られていると指摘。「韓国では『帰ってこい釜山港へ/恋しい私の兄弟よ』の『兄弟』は植民地時代に日本に強制連行され故郷に戻れない在日同胞を意味している、と思って歌っている」と、韓国と日本で歌のイメージに違いがあることに注意を喚起している。

 本書では、このように国民的に歌い継がれてきた歌の中から29曲を選んで、その背景や逸話などが紹介されており、歌の理解を促してくれる。29曲すべての楽譜と歌詞の原文と日本語訳も掲載されている。また、「朝露」など10曲を収録したCD付きだ。前田真彦訳。(白帝社、A5判、179n、2000円)

  アン・ジュンモ  1959年、全羅北道生まれ。横浜国立大学大
  学院教員研修課程修了。日韓合同授業研究会韓国側初代
  会長。98年から02年まで白頭学院建国中高等学校で音楽教
  師。

 

民団新聞                                                                2003,09,03

歌い継がれる名曲を時代背景と共に紹介
『韓国 歌の旅』

安準模 著
(白帝社、2000円+税)03(3986)3271
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 韓国人に歌い継がれているアリランなど、数々の名曲を、時代背景などの解説とともに紹介した本だ。掲載曲29曲の歌詞と楽譜はもちろん、そのうち10曲は付録のCDで聴くことができる。

 著者は大阪の民族学校、建国中高等学校で音楽教師を務めていた。訳者(前田真彦)も同校の中学校教師で、著者が授業で使うプリントに触発されたという。「サランヘ」という歌には、こんな悲しい物語があったのかと。

 苦難の近代史を送った韓国人の生を象徴しているのか、韓国には別れの辛さを歌った歌が多い。少女が雑誌に投稿して入選し、やがて全国民が知ることになったという「オッパ・センガク(お兄さんへの思い)」もその一つだ。

 絹の靴を買ってやるとソウルに行った兄は、妹の元には帰って来ることがなかった。なぜか。その理由が本書に書いてある。不幸な韓日史の犠牲になったのである。

 妹は縁あって、「故郷の春」の作詞者と結婚することになった。歌が取り持つ不思議なドラマを感じる。その「故郷の春」の作曲家は、「鳳仙花」の作者でもあった。民族主義者だったが、屈辱の「創氏改名」後に、43歳の若さで世を去ったという。