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<まえがき>
時代がかわりました。
韓国のテレビドラマが大人気です。
韓国のドラマは日本が失ってしまった何か大事なものを見せてくれます。一途な愛や家族間の葛藤など,日本は中途半端なところで適当にごまかしてしまうことを,韓国のドラマではとことん追い求め,涙を流しながら真摯に向かっていきます。そのまじめさに日本人はおどろき,ひきつけられます。
このような韓国ブームは「冬のソナタ」が火付け役になったわけですが,韓国の魅力は別に今に始ったわけではなく,ワールドカップの韓国チームにも,またソウルオリンピックにも,どこかに何かしら人を酔わせる力があって,単に「好き」という次元から,「あこがれ」や「恋」に発展して,さらには「尊敬」を感じる日本人も多いのではないでしょうか?
感動渇望症候群の日本人が,韓国ドラマの感情表現に圧倒され,感動してしまって,気がついたら一緒になって涙を流していたのです。
日本の閉塞状況を打破する力をそこに見出しているのかもしれません。日本の薄っぺらなドラマに比べると,韓国のドラマは恋愛が軸でも,家族との絆,出自の秘密,不治の病などがからまって,その葛藤の度合いが日本のものとはまるで違います。
男の涙,センチメンタルな垂れ流しのおセンチではなく,戦後日本が意識して忘れ去ろうとしてきた「男らしさ」のにおい。
そういう韓国の言葉を勉強したい,ヨン様のしゃべっているせりふを直接韓国語で理解してみたいと思う人があらわれても不思議ではありません。
私の教室に通っているT(40代女性)さんの事例を紹介します。
旅行会社に勤めるTさんは,韓国のドラマにはまって韓国語学習を始め,今や通訳ガイド試験に挑戦する上級学習者です。Tさんは家で韓国のドラマを見るときは辞書を手元に置いて家族と一緒に見るんだそうです。お母さんの真剣な姿勢に受験期のお嬢さんも影響を受けて,韓国語に興味を示し簡単な会話なら聞き取れるようになったそうです。それに受験勉強も真剣に取り組むようになり,学習面でもプラスの影響が出ているとのこと。しかも思春期の難しい年頃に,家族間の葛藤をじっくりまじめに描いたドラマを見たことによって,精神的にも成長し,思春期にありがちな反抗的な要素がきれいになくなったということです。
Tさん自身,韓国ドラマが持っている力を娘さんの変化を通してより深く理解したといいます。そのTさんは,近所の奥さん仲間にどんどん韓国ドラマのすばらしさを語り,DVDの貸し出しをしているそうです。
韓国語学習にも火がつきました。街の韓国語教室は受講生が2倍3倍に膨らみました。学習本もたくさん出版されました。本屋には韓国語学習のコーナーができ,CD屋さんには韓国ドラマのDVDのコーナー,韓国人歌手のCDのコーナーもできました。
私のホームページを見て,質問メールをくれる人も増えました。丁寧にお返事を差し上げたこともありますが,ほとんどはお返事を書く時間もなく,そのままになってしまっています。
私に送られてきたメールを見ながら,次のように感じました。
「韓国語学習を始めた人は皆不安を感じているのではないか。ハングルというなじみのない文字を一生懸命覚えてみたけれど,これからどういう風に学習していけばいいのか? 一通り文法を終えるまでどのくらい時間がかかるのか? 将来通訳ができるレベルまでどんな勉強をしなければいけないのか,などなど,いろいろ不安を抱えて,誰かに聞いてみたいのではないか?」と。
メールの文面からは,韓流に影響されて韓国語の勉強を始めた30代以上の主婦の方が多いように感じます。趣味として韓国語の勉強を始めたけれど,この先どのように勉強を続けていけばよいのか分からない,というそういう不安を抱えながら勉強している人が多い,そんな印象を持ちました。
この連載では,そういう皆さんからの質問にお答えしながら,韓国語学習の入門から通訳までを道案内しようと思います。
旅の道程がわかっていると,心理的には随分楽になると思います。
道案内役の私の自己紹介をしておきます。
富山大学で韓国語を学び,その後東京外国語大学の研究生を経て,韓国系の民族学校に勤務,天理大学で朝鮮語教員免許取得特別講座で朝鮮語の中高等学校の免許取得,勤務しつつ大阪外国語大学大学院博士課程前期で学び,2006年3月に無事終了する予定です。専攻は,
卒業論文は韓国の現代文学,修士論文は韓国語音節末鼻音の聴き取りについて書きました。
韓国語通訳ガイド試験合格,韓国語能力試験6級(最上級)合格。
著作としては『韓国語上級表現ノート』
『韓国語上級演習ノート』『韓国語概説』(翻訳)などが刊行されてり,『韓国語ジャーナル』14号以降は連載を執筆しています。建国ランゲージセンター
では<通訳翻訳演習>という授業を担当しています。
韓国語学習と韓国語教育については長くかかわってきました。経験が豊富です。
それではまず,韓国語学習の楽しさということからお話ししたいと思います。
(言語名が韓国語となったり朝鮮語となったりしていますが,いずれこの連載のなかでもくわしく述べますので,ここではこだわらずに読み流してください。)
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