ブー と まる!


生まれたときから、我が家では犬を飼っていた。
今では飼っていないのだが、特に思い入れのある犬がいる。

小学校から大学まで一緒だった犬である。

名前を「ブー」という。

もちろん通称であり、本名は別にある。
しかし、本名があまりにも長いので、いつしか家族全員ブーと呼んでいた。

もう一匹は、我が家で飼った最後の犬にして、まともな犬。
雑種ではないという意味で。

名前を「まる」という。

今や大人気の「チワワ」である。





「ブー」が、まともに写っている、たった1枚の写真。
これしか、ない。
小学校から一緒にいて、顔がわかる写真は、これしかないのよ。
ずっと一緒だったから写真なんかいらなかった。

でも、今は後悔している。
もっと写真とっておけばよかったよ。

この画像は写真をスキャンしたものであるが、右端にフジカラー純正プリントの証である
マークが年と一緒にプリントされているの、わかりますか?

81とある。
1981年ということです。

今から23年前です。
大昔です。
ブーは生まれて2、3年たっている頃。
手前に写っている影が私です。たぶん。





ブーの写真は、1枚目とこの2枚目のたった2枚しかありません。
坂本竜馬の写真より少ないですw

この写真、一瞬見ただけでは何の写真かわからないでしょう?
顔が何処やら、そもそも、こいつは何者だとw
布きれみたでしょう。

1枚目をみて、2枚目をみると、ちゃんと正面から写している写真ってのが
わかりますがw
こいつ、毛むくじゃらだったんです。

本名は、
ヨハン・セバスチャン・クリストファー・ルーズベルト・バッハ・ロッキー・ジュニア
と、いいます。

バカみたいに長いでしょうw
由来はあります。
確か、庄司陽子か誰かの少女漫画に出てくる犬の名前が、
ヨハン・セバスチャン・クリストファー・ルーズベルト・バッハだったんです。
その漫画でも、名前長ぇよっていうエピソードがあって、
おもしろそうだったんでもらいました。

姉がいるので、ガキの頃から少女漫画は、そこらへんにあったのですわ。
姉や妹がいる男子はわかると思いますが。

んで、こいつの母犬がロッキーって男らしい名前だったので、
ロッキー・ジュニアを後ろに付けたという訳です。

このロッキーは利口な犬でした。
我が家では雌犬は飼わない主義だったのですが、ロッキーだけは例外でしたから。
冬のバーベキューをした車庫で7匹の子供を産みました。

当時は、どこの家でも番犬を飼っていて、貰い手あまたで、ブーの兄弟達は
いろんなとこに旅だって行きました。

そしてブーだけが残りました。

臆病な犬で、繋いでいなくても決して敷地内から出ようとはしませんでした。
ま、よく遊んでやったんで。

ブーは歌を歌うことができました。
当時は、町内の伝言に有線放送ならぬ、
公民館の火の見櫓に取り付けられたスピーカーで周知事項が放送されていました。
とは言っても、関係あるのは農家がほとんどで、公民館の近くにある我が家では
朝からうるさいよってな感じでしたが。

んで、この放送がある場合は、目的によって違う曲を流します。
小学生が中心の子供会からのお知らせなら「およげたい焼きくん」とか。

朝はからなず、農業関連の放送でした。
曲は忘れたんですが、曲が流れるとブーは喉をならして歌ってましたねぇ。
最初は唸っていると思っていたんですが、途中からこいつ歌ってやがるって。
サビの箇所で、音程を変えたりしてましたからw
変な才能がある犬だなぁと笑いましたね。

それと、オヤジは車で役所に行っていたのですが、
帰りはブーが知らせてくれました。

多分、人間の耳には聞こえない数q先のオヤジの車の音を聞き分けて
しっぽ振って吠えるからです。

夕方になってブーが吠え出すと、あ、とーちゃん帰ってきた、ってな具合に。
数分後、車の音とともにオヤジ帰宅。
たいした犬だと思いましたわ。

まだブーが子犬の頃、数時間かけてノミ取りをしてあげたことがあります。
3、40センチくらいの頃かなぁ。
なんかの台に仰向けにさせて、ノミ取りの粉をかけて1匹ずつ取ってあげましたねぇ。
小学生だったので、けっこうな重労働だったのを覚えています。
そのあと体を洗ってあげた。

ものすごく気持ちよさげな表情をしていたのを覚えています。
かーちゃんも手伝ったと思います。

それ以来、ブーは私かかーちゃんが近づくと、仰向けになるようになりました。
お腹を見せるわけですね。

後年、ムツゴローさんの番組を見ていて、
「大きい犬ですねぇ、あ、咬んでいますねぇ。甘咬みですね、これは愛情表現なんですねぇ」
「遊んでいるんですねぇ」
「お腹を見せてますねぇ、これは服従の証なんですねぇ」
「動物が一番弱いお腹を見せるってことは、見せた相手に対して服従してるってことなんですねぇ」

っての見て、そうかブーのあれは、そういうことだったのかぁ、と思った。


ある日の朝、もう大学生になっていた私はランニングしようと玄関を出た。
祖母が既に起きていて、朝一番の洗濯物を干していた。
ブーは縁側の側で寝ていた。

なんだ、昨日はそこで寝たのか。と思い、ここ数日放し飼いにしていたのを思い出した。
祖母が唐突に言った。
「ブー死んだよ」

新鮮な朝日を全身に浴びて気持ちよさそうに眠っている。
としか見えなかった。

側に近づいた。
足を触って持ち上げた。

死後硬直していた。

なんだよ、ブー。黙って行っちゃったのか?
教えてくれよぉ。あっちに行くんなら。

その日はランニングは取りやめ、祖母と二人でお墓を掘った。
犬小屋の近く。
その周りには歴代の犬が眠っているはずだ。
よくは覚えていないが。
小学生の時からブーと一緒だったから。

スコップで一生懸命掘った。
中型の犬が入る穴を掘るのは大変な作業だが、
小学生は、いつしかたくましい若者に成長していて、なんなくその穴を掘った。

ゴザに簀巻きにして葬った。
線香と食べ物を備えた。

10年以上だ。
小学生の時から10年以上一緒にいたことになる。

オヤジに怒られ外で泣いた姿も、好きな子を誘いに行く気合いが入った姿も、
落ち込んだ姿も元気いっぱいの姿も、
血まみれで帰ってきた姿も、あれもこれも、ブーは知っている。

ブーは土に還った。

おい、ブー。おやじは、とっくに定年になったけど、まだ車に乗って居るぞ。
お前が死んでから2台も車変わったぞ。
ちゃんと車の音覚えているか?

最近は町内の放送はないが、たまにあるぞ。
まだ歌えるか?

おれは元気にやっているぞ。
おまえは、今なにをしている?


最近、庭いじりをオヤジがやっているが、
新しく樹を植えるために整地していたら骨が出てきた。
ブーの骨かもしれない。
違う犬の骨かもしれない。

ブーを埋めたあたりには、夏みかんやジャンボゆずが
たわわに実っている。

ブーはこれからも生き続ける。

ブー。ずっと先の話だけど、また遊んでやるからな・・・





我が家で飼った最後の犬。
チワワの「まる」である。

姪っ子中二と一緒に写っているが、姪っ子中二は1歳半か2歳くらい。
いま聞いても、当時のことは覚えていないという。





「まる」が我が家に来た時期は、私は大学を卒業し、既に東京に住んでいた。
ある年、帰省すると見知らぬ犬がいた。

「なんじゃぁ、この座敷犬は!」

最初の感想がこれである。

違うだろ、うちで飼う犬は、こんなんじゃねぇだろう。
なんかこう殺伐としていて、どっかB級な雑種だろう。
とも思った。

どう見てもチワワじゃねぇか!
うちに座敷犬は似合わねぇ!

それになんで名前が「まる」なんだ。
全然丸っぽくねぇじゃねぇか。
とも思った。

買ったのかどうか聞いてみた。
買ってないと言う。

盗んだのかと聞くと、盗んでいないという。

「まる」がうちで買われるようになった顛末はこうである。

ある日、一匹の首輪をした飼い犬がうちに迷い込んできた。
田舎のことである。
屋内で飼うような犬の持ち主はだいたいわかる。
ところが、心当たりの家では、うちの犬ではないという。

しかたがないので、張り紙や町内の放送を使って、
これこれしかじかの犬が迷い込んでいますよって周知した。

首輪をした飼い犬ではあるし、この手の犬なので、
飼い主もさぞや探しているに違いない。
すぐに持ち主はわかるだろうと思っていたらしい。

ところが、予想に反して、どこからも声が上がらない。
たぶん地元以外の人が何かの用事で連れてきて、それではぐれたに違いない。
となった。

随分手を尽くし、時間もかけたが持ち主が見つからない。
このまま捨てておくこともできないので、我が家で飼うことにした。

以上が「まる」が我が家で飼われる顛末である。




姪っ子中二と「まる」は仲良しだった。
当時、姪っ子中二は「まる」と発音できず「ある」と発音していた。

「ある、おいで。おいで」
とか。

「まる」に紐をつけて姪っ子中二が歩くんだが、
小型犬の「まる」に引っ張られる。
それがおもしろかった。

帰省のたびに、
「まる」元気だったか?土産はねぇぞ。
と言ったものである。

「まる」という名前の由来。
結局、我が家で引き取ることになった「まる」であるが、
名前がわからない。

新しく付けようということになったらしい。
んで、この犬は雑種じゃなく、なんて種類だったっけ?となり、
誰かが、
「これはマルチーズたい」
と言ったらしいw

この手の犬に疎い我が家人は、
「そうそう、マルチーズだったたい」と。

それで「マルチーズ」の「マル」。
すなちわ「まる」になった訳であるw

子犬なのか成犬なのかわからないってのも困った。
何を食ってきたのかもわからない。
でも、我が家では、ちゃんとペットショップに行って
こういう犬には何を食べさせるか聞いて買ってあげていたらしい。

ブーには聞かせられない話だw


「まる」の最後を私は知らない。
ある年に帰省すると「まる」はいなかった。

ブーの眠る近くに「まる」も眠っている。


「まる」以後、我が家では犬を飼っていない。



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