マ 行
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マキアヴェリ イタリア 1469-1527
 君主論 中公文庫
マクドナルド (ジョージ) イギリス 1824-1905
 黄金の鍵 ちくま文庫
マシスン (リチャード) アメリカ 1926-
 ある日どこかで (1975) 創元推理文庫
 奇蹟の輝き (1978)創元推理文庫
 13のショック (短篇集) 早川書房
マンスフィールド (キャサリン) イギリス 1888-1923
 マンスフィールド短編集 新潮文庫
ミドルトン (リチャード) イギリス 1882-1911
 幽霊船 (短篇集)国書刊行会
ミルハウザー (スティーヴン) アメリカ 1943-
 イン・ザ・ペニー・アーケード (短篇集) 白水Uブックス
 三つの小さな王国 (1993) (短篇集) 白水社
ミルン (アラン・アレクサンダー) イギリス 1882-1956
 クマのプーさん 岩波少年文庫
 ユーラリア国騒動記 (1917)ハヤカワ文庫FT
 赤い館の秘密 (1921) (ミステリ) 創元推理文庫
 四日間の不思議 (1933) (ミステリ)原書房
メーテルリンク ベルギー 1862-1949
 青い鳥 新潮文庫
メリメ (プロスペル) フランス 1803-70
 カルメン (1945)岩波文庫
メルヴィル (ハーマン) アメリカ 1819-91
 白鯨 講談社学芸文庫
モーパッサン (ギ・ド) フランス 1850-93
 女の一生
 脂肪の塊・テリエ館 新潮文庫
 ベラミ  
 モーパッサン傑作選 ハルキ文庫
 モーパッサン短編集 一〜三 新潮文庫
モーム (ウィリアム・サマセット) イギリス 1874-1965
 劇場 (1938)新潮文庫
 アー・キン ちくま文庫
 アシェンデン ちくま文庫
 カジュアリーナ・トリー ちくま文庫
 かみそりの刃 ちくま文庫
 コスモポリタンズ ちくま文庫
 中国の屏風 ちくま文庫
 魔術師 ちくま文庫
 お菓子と麦酒 新潮文庫
 月と六ペンス 新潮文庫
モリエール フランス 1622-73
 人間ぎらい新潮文庫
モンゴメリ (ルーシー・モード) カナダ 1874-1942
 赤毛のアン新潮文庫


ヤ 行

ヤンソン (トーベ) フィンランド 1914-2001
 たのしいムーミン一家 講談社文庫
 ムーミン谷の十一月 講談社文庫
 ムーミン谷の彗星 講談社文庫
 ムーミン谷の仲間たち 講談社文庫
 ムーミン谷の夏祭り 講談社文庫
 ムーミン谷の冬 講談社文庫
 ムーミンパパ海へいく 講談社文庫
 ムーミンパパの思い出 講談社文庫
 誠実な詐欺師 トーベ・ヤンソン・コレクション 2 筑摩書房
 ムーミン・コミックス 全14巻 筑摩書房
ユアグロー (バリー) アメリカ 1949-
 一人の男が飛行機から飛び降りる新潮文庫
ユゴー フランス 1802-85
 レ・ミゼラブル新潮文庫
ユング (ラインハルト) ドイツ 1949-1999
 おはなしは気球にのって (1998)早川書房




「ある日どこかで」 リチャード・マシスン/尾之上浩司 訳 (創元推理文庫 2002.3.15)
 1971年、脚本家のリチャード・コリアは、脳腫瘍であと半月足らずの命と宣告された。 あてどない旅に出た彼は、サンディエゴのホテル・デル・コロナードで一人の女性の写真を目にする。 それは1896年にこのホテルで撮られた、女優エリーズ・マッケナの写真だった。一目で恋に落ちた彼は、 彼女の生涯について調べはじめる。やがて彼が見つけたのは、1896年のホテルの宿泊名簿に書かれた 自分のサインだった。リチャードは彼女に会うために、75年前への時間旅行を試みるが…。1975年。

 初マシスンですが、この作品は彼の作品の中ではちょと異色なものらしいですね。でも、 私としてはかなり良かったです(ToT) 同名のタイトルで映画化されていますが、当然(?) 見てません(^o^;) タイムトリップものなんですが、SFというよりはラブストーリーに重きが おかれてるかな。読む人によって好みがはっきり分かれそうなタイプ(?)の作品だけど(^_^;)  マシスンの文章そのものがとても情熱的で、もの悲しくもロマンチックなお話なんですね。 リチャードの手記という形で書かれているので読みやすいし、かなり深く入ってしまった物語。
 たった一人で36年の短い人生を終えようとしていたリチャードは、色あせたポートレートの中の 29歳のエリーズに恋をし、ついに彼女にめぐり合います。こういうタイムトリップもありでしょう♪  でも時は1896年、女性に気安く声をかけることなど許されない時代。マネージャーのガードも固いし、 彼女はたった一日でホテルを去ってしまうことになっている。リチャードの焦りと、ストーカー すれすれ(そのもの?(爆))の涙ぐましい努力(^_^;)
 細かいところに文句つけ出したらきりがないけど、時にはこんな情熱一直線で押し切る、甘く切ない 物語もいいと思うのです(^_^) 個人的に好きです。かなり(^_^;)



「奇蹟の輝き」 リチャード・マシスン/尾之上浩司 訳 (1999.4.23 創元推理文庫)
 テレビの脚本家であるぼくことクリス・ニールセンは、不慮の事故で命を落としてしまった。 嘆き悲しむ最愛の妻アンや家族との別れに抵抗しながらも、クリスはやがて"常夏の国"と呼ばれている楽園で目覚める。 そこは死んだ者たちが暮らす死後の世界だった。若くして死んだ従兄弟のアルバートや犬のケイティと再会し、 天国で暮らすことになったクリス。だがやっと死後の世界に慣れ始めたクリスに、アンが悲しみのあまり 自殺したという知らせが…。1978年。

 映画化されてるんで有名な作品でしょうけれど、私は当然(?)、見てません。ストーリー的に、映画にすると かなり胡散臭くなりそうな気がするけどなぁ…(^_^;) 主に恐怖小説を書いてるマシスンの 作品としては『ある日どこかで』と同じく異色のものらしいですね。 情熱的で、ちとセンチメンタル。私はこういうのかなり好きです♪
 死後の世界"常夏の国(サマーランド)"、要するに天国。描かれる世界や概念自体は、たぶんどこかで 一度は耳にして、誰もが漠然と思い描いているようなもの。それでもこれだけ鮮やかに描かれていると とても楽しいです。生前に思い描いた夢が、すべてかなう世界。でも死んでからも常夏の国にたどり着けず、 苦しみつづける魂がある…。クリスはアンを救うため、彼女のいる地獄のような場所へと向かうことに なるのですが…。
 全編を貫いているのは、クリスとアンの夫婦愛。アンに会いたい、彼女を助けたいというクリスの一途な 思いと努力。そして、生きている間にベストを尽くせたのだろうかという、今となってはどうしようも ない問い…。切ない物語です。既に自分ではどうしようもなくなってから、生前に自分のしてきたことの結果を 背負わなければならないのは天国も地獄も同じ。なんか恐ろしいことですが、それを決めるのも…。
 これはあんまりくどくど書くより、読んでいただいた方がいいお話ですね。 クリスがアンに語りかける言葉に涙が(T_T) どんな夫婦も、生きているうちにこんな言葉を 伝え合えたら素晴らしいことなのに。自分はどうなんだろう?と考えずにはいられない物語です。



「13のショック」 異色作家短編集4 リチャード・マティスン/吉田誠一 訳(早川書房 S55.12.31)
 マティスン(マシスン)の幻想的な短編集。13篇収録。
 収録作品…「ノアの子孫」、「レミング」、「顔」、「長距離電話」、「人生モンタージュ」、
 「天衣無縫」、「休日の男」、「死者のダンス」、「陰謀者の群れ」、「次元断層」、
 「忍び寄る恐怖」、「死の宇宙船」、「種子まく男」


 マシスン、と表記させていただきます(^_^;) 幻想と怪奇に満ちた短編集です。SFもあるかな。 ちょと暗くて、妙にリアリティがあって、読む者を不安にさせる幻想的な作品が多いですね。 立て続けに読むと少々キツイものがありますが、一篇一篇は悪くないです(^_^) 
 お気に入りは…名もなき小さな村でスピード違反で捕まった ケチャム氏を襲った恐怖「ノアの子孫」、夫を愛するがあまり、自らの娘に嫉妬する母親の話「顔」、 人生を映画のように端折ってしまえたらと考えたオーウェンの皮肉な人生譚「人生モンタージュ」、 行った場所に関係のある知識をすべて習得できるようになってしまった男の話「天衣無縫」、 新惑星を調査に出かけた男たちが見てしまった戦慄の未来の話「死の宇宙船」…などです♪



「幽霊船」 リチャード・ミドルトン/南條竹則 訳 (国書刊行会 1997.4.25)
 英国の詩人、小説家のリチャード・ミドルトン(1882-1911)の短篇集。20篇収録。
 収録作品…
  「幽霊船」、「ブライトン街道で」、「羊飼いの息子」、「棺桶屋」、「奇術師」、
  「逝けるエドワード」、「月の子たち」、「園生の鳥」、「誰か言ふべき」、「屋根の上の魚」、
  「小さな悲劇」、「詩人の寓話」、「ある本の物語」、「超人の伝記」、「高貴の血脈」、
  「警官の魂」、「幼い日のドラマ」、「新入生」、「大芸術家」、「雨降りの日」


 あまり馴染みのない名前かもしれませんね。それも無理からぬこと、生きている間には1冊の本を出すこともなく、 29歳で自殺してしまった不遇の作家です。作品にもそんな空気(?)がにじみ出ていてちょっと暗めの 雰囲気ですけど、なんとなく、どことなくひかれるものがあります。もっと長生きして 書きつづけてくれていたら、もっと好きになったかも、というような…(^_^;)
 以下にお気に入りの感想を。叢書としては「魔法の本棚」(国書刊行会)5巻『奥の部屋』 (ロバート・エイクマン)に続きます。

「幽霊船」
 イギリス一の幽霊の名所フェアフィールドで、奇妙な出来事が起こった。春の大嵐によって、 遠い海から幽霊船が吹き寄せられてきたのだ。しかも幽霊船の船長ロバーツは、フェアフィールドの幽霊たちを 集めて毎晩どんちゃん騒ぎを始める始末…。
 幽霊がふつーに生活(?)している村での珍事件。真面目な幽霊譚というより、 ユーモアにあふれたお話ですね〜♪ どんな味のかぶだか……(^_^;)

「奇術師」
 うまくやればミュージック・ホールでの契約更新という舞台で、男はへまばかりしていた。 だが最後の取っておき、人間消失を見事にやってのけた彼だったが…。
 トリックのない奇術。恐ろしいです。解けない謎ほど怖いものはないのかも……。

「屋根の上の魚」
 11歳のジョージは他の子供のように活発に遊ぶことはなかったが、物語を作る事が得意だった。 そんな彼が好んで語るのは、アパートの屋根にある貯水タンクの中に住む美しい魚の話だった…。
 ひょっとして虹色の魚はジョージ自身だったのかも。他愛ない物語を、夢を疑うたびに、 子供達の周りで希薄になってゆく何か…。切ないお話です。

「ある本の物語」
 男は読書好きが高じて批評家になったが、たくさんの批評をするにつれ本を読む楽しみが 減っていくのを感じるようになった。もはや批評家の目でしか本を読めなくなってしまった彼は、 友人の勧めで自ら本を書くことにした。やがて本は世に出てそこそこの評価を受けるが、奇妙なことに 彼自身は自信を失いかけていた…。
 この短篇が一番好きです。彼の本を批評した人物のただ一行の言葉「貴兄は何故本を書きしや?」  こんな質問をぶつけられたら、作家はどう答えるんでしょう? 本のあらばかり探すように なってしまった批評家、伝えたい言葉のひとつもないまま本を書く作家。その向こう側に 人がいなければ、本なんて虚しい言葉の羅列ということかな…。考えさせられるお話です。

「幼い日のドラマ」
 幼い日の私は、学校が大嫌いだった。遅刻をし、宿題をさぼった言い訳にあらゆる嘘をつき、 無邪気な学友と無神経な教師たちにうんざりする毎日を送る僕。だが、ある日兄の 麻疹がうつって学校を休めることになった…。
 神経質で、どうしても学校に馴染めない僕…。多かれ少なかれ、誰もがそういう部分て あると思うんですよね〜。幼い"僕"にはまだそこが見えず、見えないだけに余計つらく、 またうぬぼれてもいる日々。周りの無神経さ加減も、ここまで延々書かれるとなんだか 小気味よいです(^_^;) 次の「新入生」もこの話の続きです。

「雨降りの日」
 人は何故、些細な記憶の断片をふとした瞬間に思い出す事があるのだろうか? 窓に伝う雨を見て 私が思い出したのは、幼い頃のある雨の日、退屈な時間を過ごしていた時のことだった…。
 本当に短い話なのですけど、不思議な余韻を残すお話です。ふと思い出す何の変哲もない 切れ切れの記憶がそんな意味を持っているのだとしたら……なんだか切ないです。



「イン・ザ・ペニー・アーケード」 スティーヴン・ミルハウザー/柴田元幸 訳 (白水Uブックス 98.8.15)
 アメリカの現代作家、スティーヴン・ミルハウザーの短編集。

 ミルハウザーの小説は初めて読みましたが、気になる作家の一人になりそうです。 以下に好きな作品など。

「アウグスト・エッシェンブルク」
 ドイツの時計作りの職人の息子に生まれたアウグストは、やがて若くして一流のからくり人形師と なる。デパートのショーウィンドウに陳列するからくり人形の製作を任された彼は、 芸術的に優れた人形を次々に作り、客の注目を集める。しかし新しく近所にできたデパートの ウィンドウに、アウグストのものより人目を引くからくり人形が現れ…。
 ストーリー自体が洗練されたからくり人形のようで、その動きから目がはなせなくなって しまう感じがあります。自分がやらずにはいられないことを、ただやっているだけというアウグスト。 彼自身は特に自己主張というほどのものをしてなくて、その控えめな感じがかえって、歩み寄れない 苛立ちやあせりや戸惑いなんかを静かに浮かび上がらせてて、すごくいいんですが…それは ともかく(^_^;)…短編集の中では、これが一番好きです。

「雪人間」
 ある朝“僕”が目を覚ますと、あたりは一面の雪景色だった。仲間と共に街に出かけた“僕”は、 細部まできっちり作られた“雪人間” をあちこちで見かけることになる。やがてそれは町じゅうで 見かけられるようになり、どんどんエスカレートして、雪でできた動物や家まで…。
 ようするに、町じゅうが雪祭り状態なわけですよね。ミもフタもない言い方…(^_^;) でも 白い芸術であふれた街が溶けたあと、はっと目をひくアオカケスが飛び、庭先には真っ赤な ボール転がって…。雪でできた幻想的な街もよいですが、その色の鮮やかさがとても心に残ります。

「イン・ザ・ペニー・アーケード」
12歳の夏、2年ぶりに遊園地のペニー・アーケードを訪れた“僕”。しかしそこにある ピンボール・マシンや射撃ゲームは、かつてのように“僕”の心を動かさなくなっていた…。
→こんな思いは誰でも経験があるかもしれませんよね。でもきっと、ほこりをかぶって 倦怠感につつまれたペニー・アーケード自体は、たぶん昔のままで…。最後に“僕”の中で ひらめく思いに、はっとさせられました。



「三つの小さな王国」 スティーヴン・ミルハウザー/柴田元幸 訳 (白水社 1988.4.30)
米国の現代作家ミルハウザー(1943〜)の、漫画(アニメーション)、物語、絵画を題材にした、 三つの幻想的な中編小説。1993年。
収録作品…「J・フランクリン・ペインの小さな王国」、「王妃、小人、土牢」、
「展覧会のカタログ――エドマンド・ムーラッシュ(1810−46)の芸術」


→以前読んだときも思ったんですが、なんだかアメリカの作家という気がしません。 幻想的で美しい部分と怪奇的でなんだか不安にさせられる暗い部分が入り混じってて、 こういうのにはかなり惹かれます…というか、大好きです(*^^*)。でも、やっぱり万人向きじゃ ないのかな。悲しいけど(^_^;) 以下に感想など。

「J・フランクリン・ペインの小さな王国」
1920年代のニューヨーク。新聞社「ワールド・シチズン」の漫画家フランクリンは、全てが 自分の自由にはならないにせよ人気のある連載がたくさんあり、仕事は順調だった。ある日彼は 友人のマックスを家に招き、すべて手作業による自作のアニメーションを見せる。自分だけで 一枚一枚を丹念に書きつづける気の遠くなるような作業にマックスはあきれ、時間を節約できる 方法をすすめる。だがフランクリンは耳を貸さず、彼自身の世界に没頭してゆくが…。
→搭の中にこもってひたすらアニメーションのドローイングを続け、ふと目を上げるたび窓の 外の季節が変わってることに驚くフランクリン。会社にも、友人にも秘密にして、黙々と白黒の 精緻な王国を築き上げていきます。…芸術というか、職人芸というか。一歩間違うと暗くて 孤独な作業と描かれてしまいそうなものですが、ただ淡々と時だけが過ぎてゆくような感じ。 好きなのは冒頭で、月明かりの中屋根の上を歩きながら、眠ってる妻と娘に「僕はただの夢だよ」と ささやきかけるフランクリン…。この物語は青い月明かりのイメージが妙に鮮明に残ります。 そして、本当に彼のことを分かってくれるのは、娘のステラだけだったけれど……でも、彼の してきたことが報われる最後の瞬間。感動しました。ホントにこういうのいいです〜(T_T)  三作の中ではこれが一番好きです。

「王妃、小人、土牢」
時代も場所も分からない、城の中で繰り広げられる王と王妃の悲劇と、それを川の反対側にある町の 中で想像しつづけ、語り継ぐ町民たちの物語。
→これ不思議な書き方をされてるので、あらすじも説明も難しいです〜(T_T) 王と王妃の 物語と、平和な日々を過ごす町の人たちの物語が交互に語られているんですが、この城の中の 物語、ホントにあったことなのか町の人たちの作った物語なのか分かりません。でも、二つの 物語はどっちが欠けても存在しないような、不思議な感じがあります。物語には語る人が 必要だし、人には語る物語が必要というような……?(-_-;)。町の人たちの中に息づいて想像力を 刺激しながら、決して終わらない物語。よいです♪

「展覧会のカタログ――エドマンド・ムーラッシュ(1810-46)の芸術」
エドマンド・ムーラッシュの遺した絵を追いながら、彼の妹エリザベス、そして友人ピニーと その妹ソフィアをめぐる悲劇を描く。
→これも不思議な小説ですね〜。美術館に置かれた絵のように、タイトルや製作年や画材や サイズが書かれていて、その絵の説明をしつつ、同時にそれを描いた時点でのムーラッシュの 生活を描いてます。実在の画家ではない(と思う)のですが、彼の描いた26枚の絵の説明を 読んでいると、その不吉なイメージが妙にはっきり浮かび上がってきます。言葉だけで、彼の 描いた絵が見えてしまうような気がして、ちょっと怖いです。もっと怖いのは、あるはずのない絵を ホントに見てみたくなることでしょうか(^_^;) ぞっとするような結末ですが……妙に惹かれて しまいます。



「ユーラリア国騒動記」 A・A・ミルン/相沢次子 訳 (ハヤカワ文庫FT S55.1.30)
 のんびりと朝食をとっていたユーラリア国のメリウィッグ王とその娘、17歳のヒヤシンス王女。 穏やかな朝のはずなのに、彼らの上空を魔法の"七里靴"をはいた隣国バローディア国王が何度も 横切るので、全然落着いていられない。たちまち二国は戦争を始め、ユーラリア国王はヒヤシンス王女を 残して戦へと旅立ってしまう。後に残された王女は、隙あらば女王の座を狙うベルベイン伯爵夫人と たった一人で対峙することに。心細い王女はアラビイ国のユードー王子を呼び寄せることにした。 だがやってきた王子は、ウサギとライオンが混ざったような、なんともいえない奇妙な姿をしていた…。1917年。

 言うまでもなく『くまのプーさん』等で有名なミルンの、"大人のための"童話です。 プーさんよりは以前に書かれたものです。そしてこの本は現在絶版です(-_-) 
 いかにもファンタジーで分かりやすい設定なのですが、一人だけいかにも大人向けな(?) ベルベイン伯爵夫人がユーラリア国に危機をもたらします。 これが典型的なイギリスの上流階級の奥様に見えるから不思議だ…(爆) ヒヤシンス王女の 危機を救うべく現れたはずのユードー王子も、自分をひどい姿に変えた当本人のベルベイン伯爵夫人に お熱……(^_^;) どう見ても童話なのに、そこかしこに大人でしか笑えない皮肉がこめられて ますね(^_^;) 全然王子らしくないユードー王子の行動も情けなくて笑えます♪ 全体的に ちょっと漫然とした印象がありますが、一味違ったミルンを楽しむのも良いですね(^_^)b 



「カルメン」 メリメ/杉捷夫 訳 (岩波文庫 1929.4.25)
 スペインを訪れた考古学者の私は、旅の途中一人の男と出会った。 ホセ・ナヴァロと名乗る何か訳ありげなその男と意気投合する私だったが、ホセは実は 賞金のかかった盗賊だった。後に私は、囚人となって絞首刑を待つ彼と出会うことになる。 そんなホセの口から語られたのは、カルメンシタという美しく奔放なジプシーの女性に翻弄され、 落ちるところまで落ちてしまった彼の数奇な人生だった…。1845年。

 名前だけはよっく知ってても、読んでなかった小説のうちの一つ(^_^;)  からすの濡れ羽色の髪に、猫が獲物を狙う時のような野性的な瞳の美しいカルメン。 そんな彼女にどうしようもなく惹かれ、密輸や追いはぎ、果ては嫉妬から殺人まで 繰り返してしまうホセ。馬鹿な男……などという一言では片付けられないような、暗い激情と痛々しさが ひしひしと伝わってくる物語です。そして避けようのない悲劇。カルメン自身分かっていたの だろうけど、既に決定付けられた運命に向かって、二人は成すすべもなく押し流されていきます…。 短いお話なんですが、とても心に残るお話です。ビゼーの歌劇「カルメン」はこのストーリーが 元になってるわけですが、そちらもちと見てみたいですね。



「白鯨」 メルヴィル/宮西豊逸 訳 (研秀世界文学全集14)
繁雑な陸の生活に疲れ、「私」ことイシュメエルは、偶然宿で知り合った食人部族出の銛打 クイークェグと共に、捕鯨船ピークォド号へ乗組員として乗船する。だが変わり者として 知られるエイハブ船長の胸の内にあったのは、彼の片足を奪ったモービィ・ディックと 名付けられた白鯨への狂気にも似た復讐の念だけだった…。

→ストーリーは知ってるのに読んだことはないという、そういう本のうちの一冊でした。 捕鯨……というと今ではなんか日本も肩身が狭いですが、19世紀半ば頃には盛んに行われてたの ですね。マッコウクジラの頭から取れる鯨油(燃料とかランプに使用)のために。 今から見ればたいして大きくない木製の船で、3年以上も世界の海を航行して、時には何百頭もの クジラを獲るのです。今でこそ糾弾の的になってる捕鯨ですけど、これを読んでいると 厳粛なもののように思えてきます。捕鯨というよりは、白鯨とエイハブ船長の闘いが、と いうべきかも。奸知にたけ、数多くの船乗りの命を奪った白鯨モービィ・ディックと、片足を奪われ、 復讐の念に身を焦がし、他の船員の忠告に耳も貸さないエイハブ船長。どちらも尋常でないものと して描かれてるのに、どちらかが悪である、とは私には思えません。普通の人の善悪の観念なんか、 寄せ付けないような気がしてくるのです。一等航海士のスターバックも、何度もエイハブ船長に 忠告し、懇願し、時には殺すことまで考えながら、最後まで彼と運命を共にします。そういう彼の 気持ちはなんだか分かる気がする。彼には、正気の沙汰じゃないと思いつつもどこかで エイハブ船長を理解している部分が、そしてひかれてしまうものがあるのでしょう。
 読み出すとけっこう引き込まれてしまうんですね。イシュメエルとクイークェグの奇妙な友情、 ニュー・ベッドフォードの街の“捕鯨者の礼拝堂”、捕鯨の島ナンタケットと、いつまでたっても 姿を現さないエイハブ船長、イライジャの不吉な予言……。出航する前だけでこんなに心に残る シーンが。この頃ってまだ、鯨が魚なのか獣の仲間なのか、はっきり分かってなかったのですね。 でも鯨の行動についてならよく知られていて、捕鯨に熟練した人なら広い太平洋でもたった一頭の 鯨を探し出すことができる…。この辺が、鯨と人間が過去にどう関わってきたのかを物語っていて、 なんだか皮肉な感じです。あ、日本もちょっとだけ出てきて不思議な感じでした。この本が 書かれたのは1851年のアメリカで、日本は江戸時代、鎖国中。謎の国だと思われてたみたい ですね(笑)
 長々と感想を書いてしまったついでに、心に残った言葉を少し。

「われわれが人生と呼ぶこの不思議な、こんぐらかった事象のなかでは、奇態な時と場合に 直面して、この宇宙ぜんたいを一つの巨大な冗談と考えることがあるものだ。……」

「人間の魂は、嫁がぬ母が産みながら死んで世に残した孤児に似ている。人間の父性の秘密は、 母の墓場の中にあって、それを知るためには、人間はそこへ行かなくてはならないのだ。」

 作者のメルヴィル自身も、相当波乱に満ちた人生を送ったようですね〜。…と、書き始めると さらに長くなるのでやめますが。物語自体が長いので感想も長く…。すみません(T_T)  船に乗りたい。海を、そして鯨を見たい…というのが私のいちばん率直な感想かも。



「劇場」 サマセット・モーム/龍口直太郎 訳 (新潮文庫 S35.11.15)
 舞台女優としての天賦の才能を持つジュリアは、富と名声を得て自由な生活を 送っていた。だが劇場経営者で俳優の夫に愛想を尽かし、 劇場の経理をしている青年トムと不倫の関係を持つようになる。 長年彼女に変わらぬ愛情を捧げ続ける貴族チャールズ、彼女と距離を置く息子ロジャーとの 微妙な関係や、芝居に情熱を捧げるジュリアの人生を描く長編。1938年。

 モーム63歳の時の、14番目の長編。最近読んでませんが、 モームの作品はわりと好きです(^_^;)
 物心ついたときから芝居の道に生きている、名女優ジュリア。早々と結婚して 貞節な妻としても誉れ高かったのに、夫が中年になっていろんな意味で 彼女を満たしてくれなくなったので、若い恋人に云々…と書くと単純そうに見えますが、 問題(?)は彼女が女優だということですかね…。満たされない思いを、芝居を演じることで 昇華して(時には逃避して…)きたけれど、成長した息子の言葉に ふと感じる疑問。もし息子がいて、こんなこと言われたら…と思うとぞっとします。 若い頃に読んだらそうは思わなかったでしょうが、今では彼女に共感できる部分も ありますね。男から見るとこういう女は怖いかもしれませんが、 かわいいというかかわいそうというか、そんな部分があります。 女の哀愁というか(^_^;) 勝手で何かが決定的に欠けているような彼女ですが、 なんか女として分かる部分がある……のが怖い(笑)  でもまぁ、描き方が生々しくないので気楽に読めて良いです(^_^;)
 読む人によって感じ方がけっこう変わりそうですが、 さらっと読めて楽しい作品でした。



「ムーミンパパ海へいく」 トーべ・ヤンソン/小野寺百合子 訳  (講談社文庫)
言わずと知れた、ムーミン谷に住むムーミン一家の物語シリーズの7作目。ある日、 平和すぎる毎日に物足りなさを覚えたムーミンパパは、家族を引き連れて海を渡り、 孤島の灯台守になることを決心します。でも、ムーミン一家のたどり着いた島では次々に 不思議なことが起こって…。

→迷いました。ムーミン・シリーズ8作中、ベストを決めるなんてはっきり言って困難です。 しかも迷った挙句、これを選ぶかなぁ(^_^;) 今もまだ迷っているんですよね〜。 『ムーミン谷の彗星』と『ムーミン谷の夏祭り』と『ムーミン谷の冬』と『ムーミン谷の11月』の 間で。甲乙つけがたい。このお話がすきなのはたぶん、私が海のない長野県に住んでいるから なんでしょう。それにこのお話、ちょっとミステリーです。



「誠実な詐欺師」 トーベ・ヤンソン・コレクション2   トーベ・ヤンソン/冨原眞弓 訳 (筑摩書房 95.12.25)
 カトリは10歳年下の15歳の弟マッツと二人で、雑貨店の屋根裏部屋に住んでいた。 買っているシェパードに名前もつけず、とても頭はいいが人を信じないカトリは、 ある計画を胸に秘めて丘の上「兎屋敷」に住む年老いた画家、アンナ・アエメリンに近づくが…。1982年。

 不思議なお話です〜。作品がそのまま、凍りついた冬の海のようなイメージ。ほとんど 感情を表さず、ただ弟のマッツと名もなき犬だけを信頼して生きてるカトリと、村人たちから 「兎屋敷」と呼ばれている家にたった一人住んでる画家のアンナ。やがて彼女の家に、カトリと マッツは一緒に住むようになるんですが…。
アンナはとても素敵な絵を書くのに、どうしてもそこに花模様の(!)兎を書き加えずには いられない。何故花模様なの?と尋ねる子供たちの手紙に、いつも必死で返事を書いて誠実に 対応しようとするんだけど、カトリはそんなのは合理的じゃないといってやめさせようとする。 一度出した返事の手紙は、次の手紙の約束になってしまう。とめどなく手紙を書いてくる 子供たちに、どうしたらいいのか悩むアンナ。スタンプやコピーを使って、署名だけ書けばいいと 言うカトリ。万事につけ、そんな調子の二人。……読んでいると、いつも冷たく計算高いカトリの 方が嫌になりそうなものなんですけど、何故かだんだんアンナの方がいや〜な気が してくるんです(^_^;) アンナは、自分のことしか考えてないのかな。それはカトリも 同じなのかもしれないけど、彼女はそのことで自分まで欺いたりはしてませんから…。 でも最後は、お互いの存在でお互いに自分の中の何かが乱れてしまうんですね。決定的に。 最後のシーン、アンナが何事もなかったように絵を描いているところが、とても不気味に 思えました。結局、誠実な詐欺師は誰だったんでしょうね……。



「おはなしは気球にのって」 ラインハルト・ユング/若松宣子 訳 
                          (早川書房 ハリネズミの本箱  2002.11.15)
 子どもの頃から背が伸びず、大人になってからも小さいままのバンベルト。ブリュムケ雑貨屋の 二階で人を避けて暮らしていた彼だったが、物語を書くという素晴らしい楽しみがあった。 だが紙に書き留めたとたん物語が凍り付いてしまったような気がしたバンベルトは、物語に 「自分の場所を探させる」ために、一つずつ気球にのせて旅立たせることにした。10編の物語と、 そして最後の物語が書き込まれるはずだった、白紙のページを乗せて…。やがて世界中の あらゆる場所から、物語を拾った人の返事が来るが……。1998年。

 ドイツの児童文学です(^_^) ひっそり暮らしながら、いつも作家の目で世界を静かに 見つめているバンベルト。物語を本物にするために、作中の地名を消し、 拾った人が書き込んで返してくれるようにして、気球で飛ばします。彼の書いた10編の物語は 幻想的なものばかり。クジラの話、お婿さんを探すお姫様の話、監獄の中に現れる不思議な子どもの話…。 この本全体のお話も素敵ですが、この10篇の物語がそれぞれとてもいいんです。
 次々に送り返されてくる物語は、それぞれ物語にふさわしい場所を見つけて帰って来たけれど、 白紙のまま送った紙だけがなかなか帰って来なくて…。最後の方の展開はちょっと哀しいけれど、 でも、物語だけはいつまでも消えずに残りますね。読む子どもたちは変わりつづけても(^_^)  心温まる素敵なお話でした。
 最後になりましたが、この本をくれたTさん、ありがとう(*^^*)



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