ブラッドベリ

海外の文学
ブラッドベリ   (レイ) アメリカ 1920-
 火星年代記 (1946)ハヤカワ文庫
 黒いカーニバル (1947) (短篇集) ハヤカワ文庫
 華氏四五一度 (1953)ハヤカワ文庫
 太陽の黄金の林檎 (1953) (短篇集)ハヤカワ文庫
 10月はたそがれの国 (1955) (短篇集) 創元SF文庫
 たんぽぽのお酒 (1957) 晶文社
 メランコリイの妙薬 (1959) (短篇集) 早川書房
 何かが道をやってくる (1962) 創元SF文庫
 よろこびの機械 (1964) (短篇集) ハヤカワ文庫
 スは宇宙(スペース)のス (1966)(短篇集)創元推理文庫
 恐竜物語 (1983) (短篇集)新潮文庫
 火星の笛吹き (短篇集)ちくま文庫
 二人がここにいる不思議 (短篇集) 新潮文庫
 十月の旅人 (短篇集) 新潮文庫
 瞬きよりも速く (短篇集) 早川書房
 塵よりよみがえり (2001)河出文庫


「恐竜物語」 レイ・ブラッドベリ/伊東典夫 訳(新潮文庫 S59.12.20)
 ブラッドベリが描く恐竜の詩と短篇集。6編収録。1983年。
 収録作品…
  「恐竜のほかに、大きくなったら何になりたい?」、「いかずちの音」、
  「見よ、気のいい、気まぐれ恐竜たちを」(詩)、「霧笛」、
  「もしもわたしが、恐竜は死んではいない、と言ったとしたら」(詩)、「ティラノサウルス・レックス」


 ブラッドベリの短編から、恐竜ものだけを集め、多彩なイラストと共に楽しめる短篇集♪  …でも、たぶん絶版(^_^;) 見るだけでも、すごくかっこいい本なんですけどね…。
 いつの時代も、少年の心を持ってる人を捕らえて放さない恐竜たち♪ ブラッドベリの小説の登場人物たちも、 いろんな形で恐竜に関わっています。恐竜そのものよりも、それに憧れてやまない人たちの物語です(^_^)  以下にお気に入りの感想を。といっても1編だけ。短編のうち3編は既読なので…(^_^;)
 「いかずちの音」「霧笛」「ティラノサウルス・レックス」は以前の感想をどうぞ。

「恐竜のほかに、大きくなったら何になりたい?」
 幼いころに両親を亡くした12歳のベンジャミンは、祖父のスポールディング氏と二人暮しだった。 ある日、大きくなったら恐竜になりたいと言い出したベンジャミンを、スポールディング氏はシカゴの博物館に 連れて行く。ますます恐竜に魅了されてしまうベンジャミンだったが……。
 最初は子供の夢を壊すまいと色々付き合ってくれたおじいちゃんも、このままでは大変なことに なると気付いて…(^_^;) 枕元でとつとつと語るおじいちゃん、とても素敵です。 少年の夢を卒業するベンジャミンがちょっと切ないけど、ほのぼのとしたいいお話(*^^*)



「火星年代記」 レイ・ブラッドベリ/小笠原豊樹 訳 (S51.3.15 ハヤカワ文庫NV)
 火星へ向けて何度も送り込まれた探検隊は、金色の目をした火星人たちに迎えられ、誰も戻っては こなかった。やがて人類はさまざまなものを求めて火星へ向かい、町を造り始める。だがそれとは 反対に、優れた文明を持っていた火星人たちは姿を消していくことになる…。1946年。

 26篇のオムニバス短編でつづられた、1999年から2026年までの火星年代記です。優れた精神と文明 を持ち、次々にやってくる地球の探検隊を、彼らなりのやり方で出迎える火星人たち…。ストーリーは 淡々とした書かれ方ですが、そこにあるのは物質文明への痛烈な批判です。う〜ん、半世紀以上も 前の作品とは思えません。人類は周りのものを進化させるのに一生懸命で、自分が進化するのを 忘れてしまってます。すかすかの物質文明。探検隊と火星人の妙におかしいやり取りを読むうちに、 だんだん心が寒くなってきました。とはいえ…これが人類というものなのかもしれませんが。 人類といってもこの作品には米国人しか出てきませんけど、米国は100年たっても米国だな〜、 という感もあります(^_^;) こんな形でしか未知のものと触れ合えないのだったら、そりゃ人類も 滅びますわね(爆) まぁちょっと極端なお話ではあると思うんですが、いろいろ考えさせられます。 個々の短編にもとても素敵なストーリーがあって、読み応えのある作品です。最後の一文には 思わず涙しそうになりました(T_T) 感動的ですが、皮肉なラストでもありますね。



「華氏四五一度」 レイ・ブラッドベリ/宇野利泰 訳 (ハヤカワ文庫 1975.11.30)
 テレビ室の映像のなかの人々を"家族"と呼び、耳には常に"海の貝"と名付けられたラジオを付け、 あらゆる不幸を排斥して幸せに生きる人々。モンターグはそんな世界で、焚書官と呼ばれる 本を焼く仕事をしていた。夜毎の密告により、本を持っている人々の家に駆けつけて家ごと焼き払う モンターグだったが、隣に住むクラリスという奇妙な少女に出会い、自分の仕事や世界に対して 疑念を抱き始める…。

 本のページに火が付き、燃え上がる温度、それが華氏451度。この世界(近未来のアメリカでしょうけど)では、 本は持っているだけで罪悪。人々に憂鬱や悲しみや迷いを与える本は全部焼き払うのが、 焚書官(ファイアマン)の仕事…。ファイアマンというのは本来消防士を指す言葉なんですから、 皮肉といえば皮肉です。人々は考えることを忘れ、テレビの画面に没頭し、夜毎刺激を求めて 車で暴走し、ふと衝動に駆られて睡眠薬を大量にあおる…。読んでて苛立たしくなってくるような、 そしてまぁ現代と基本的にそれほどは変わらないような世界。本も、読みようによっては空虚な世界に 変わりはないけれど…。…う〜ん、焚書というのは昔からありますけど、焼くという行為そのものが 必要なんでしょうね。本当に大切なものは燃やせない部分にあったとしても…。
 いいお話なんですが、ちょと一方的で先を急いでるような感じが残るかなぁ。もっと根本的な 解決を望んでしまった私もいけないんですが(^_^;) それはそれとしても、かなり楽しめた 作品でした。炎の中から蘇るもの。暗い中にも希望を感じさせる物語です(^_^)



「十月の旅人」 レイ・ブラッドベリ/伊藤典夫 訳 (新潮文庫 S.62.2.25)
   ブラッドベリの初期短編の傑作集。10編収録。
収録作品……「十月のゲーム」、「休日」、「対象」、「永遠と地球」、「昼さがりの死」、
「灰の怒り」、「過ぎ去りし日々」、「ドゥーダッド」、「夢魔」、「すると岩が叫んだ」


→この短編集もジャンルはさまざま…。シリアスで重めのが多いでしょうか。こっ、怖いのも(T_T) 以下にお気に入りの短編。

「十月のゲーム」
妻のルイーズとうまくいっていないワイルダーは、彼女の手から最愛の娘マリオンを 奪うことに決めた。時は十月、ハロウィンの夜のパーティ。訪れた人々を地下室へと誘い、 ワイルダーはゲームを始める…。
→もしかして、回されてたのって……と考えると、怖すぎです(T_T) 灯りをつけると怖いホラー……。

「休日」
ある休日の夜、ビルは息子のジョーと友人のチャーリーとで、花火があがるのを待っていた。空に青く光る地球を眺めながら…。
→短いのですけど、こういうのは好きです。自分がそんな光景を目撃するようなことになったりしたくはないですね。それとも、案外平気かな。

「永遠と地球」
ある日フィールド氏は、本棚から300年前の本を引っ張り出してむさぼるように読みつづけた。 その作者トマス・ウルフに魅せられたフィールド氏は、死を目前にしたウルフをタイムマシンで呼び寄せ、 6週間の間に作品を書いて欲しいと頼み込む。
→トマス・ウルフは実在した作家ですが、私は読んだことがないので 感じが分からない(^_^;) 誰でも一人や二人、タイムマシンで呼び寄せて作品を 書いてもらいたい作家っているのでは。一人や二人じゃないかもしれませんが…。

「昼さがりの死」
 ふとしたことから命を狙われる羽目になった血友病のジェリーは、血を流すことを 何より恐れていた。だがカミソリを仕込んだ郵便物が彼の手を切り、やすりがかけられた 車のドアの取っ手が手を切り、研ぎ澄まされたレストランのフォークが舌を刺す……。
→こ、こういうのはダメなのですが、最後のトリック(というか…)が意外で面白いので、あらすじだけ、な、なんとか(T_T)

「過ぎ去りし日々」
深夜、懐中電灯を手に表へ出てきた老人。おもてで落ち葉の中を転げまわる子供たち。そして家を訪れる謎の夫婦。彼らは誰なのか……。
→あらすじにならないのですね、こういうお話は。でもこの独特の雰囲気が気にいってしまったので。 すべての時間が同時に存在してるような、この不思議な感じがよいです。

「ドゥーダッド」
 ひょんなことからギャングに付け狙われるクローエルは、通りかかった店の奇妙な看板に目をとめる。 聞いたこともない、奇妙な言葉の羅列…。思わず店に入った彼は、ドゥーヒンギーという名のわけの分からないものを買い求めるが…。
→不条理というかなんというか、こういう妙なストーリーは好きです。

「夢魔」
レナード・セイルは、生物が住んでいない小惑星に不時着した。6日後に救援がくることになり、 安心したレナード。しかし眠りにつこうとした彼を、突然恐怖が襲う…。
→自分以外の思念が入り込んでくるって、どんな気持ちなのかなぁ。あまり体験したくはないですが。皮肉な結末ですね。



 
「二人がここにいる不思議」 レイ・ブラッドベリ/伊藤典夫 訳 (新潮文庫 H.12.1.1)
アメリカの作家レイ・ブラッドベリ(1920〜)の短編集「The Toynbee Convector」(1988)の全訳。
   収録作品……「生涯に一度の夜」、「トインビー・コンベクター」、「トラップドア」、「オリエント急行、北へ」、
「十月の西」、「最後のサーカス」、「ローレル・アンド・ハーディ恋愛騒動」、「二人がここにいる不思議」、
「さよなら、ラファイエット」、「バンシー」、「プロミセズ、プロミセズ」、「恋心」、
「ご領主に乾杯、別れに乾杯!」、「ときは六月、ある真夜中」、「ゆるしの夜」、「号令にあわせて」、
「かすかな棘」、「気長な分割」、「コンスタンスとご一緒に」、「ジュニア」、「墓石」、「階段をのぼって」、
「ストーンスティル大佐の純自家製本格エジプト・ミイラ」


→こうしてみると、SFとかファンタジーとかホラーとか、色々ですね。私はブラッドベリの本はほとんど読んだことがないので、 こんなに多様な作品を書いているとは知りませんでした。好きな短編を挙げると趣味がわかりますね(^_^)。 半分以上好きですけど、たくさんなので一部の感想を一言だけ。あらすじの方が長いって一体… 。

「生涯に一度の夜」
トムがあこがれていたのは、離婚したヘレンとはついにかなわなかった春の夜の散歩。 丘に登って月明かりの下、星空の下で女の子とただ手を取り合って、一夜を過ごすことだったが…。
→きれいでちょっと切ないストーリー。こんな夜があってもいいですよね。私もやはりトム側の人間なので。はい。

「トインビー・コンベクター」
ちょうど百年前に時を越え、未来を見たただ一人の男、スタイルズ。百年前の過去から 彼が現れるはずのまさにその日、年老いた彼はシャムウェイという一人の若い記者を招く。彼に真実を告げるために…。
→スタイルズ氏はきっと偉大な人なんですよね〜。最後はちょっと皮肉な感じ。でもシャムウェイの行動は感動的(T_T)

「トラップドア」
十年も住んだ我が家の階段の踊り場の天井に、屋根裏部屋へ続くドアがあることを発見した クララ。やがてそのドアの上で、かすかな物音が響くようになる。物音は日に日に大きくなり、 たまらなくなったクララは消毒サービスを頼むが…。
→こっ、怖い…(T_T) スティーヴン・キングにこういうストーリーがあっても おかしくないですね〜。形の見えないものの方が、やっぱりこわいです。「階段をのぼって」も怖いけど、 怖さではこちらの方が上かな〜(T_T)

「オリエント急行、北へ」
オリエント急行の中で、老看護婦のミネルバ・ハリデイは不気味な男に遭遇する。 今にも死にそうに見えるその男の正体を、彼女は一目で見抜く。男は隠れ家を探して 旅を続ける幽霊だったのだ。彼女は男に付き添ってエジンバラまでゆくことを決心するが…。
→私もそれほどではないにせよ、やはりミネルバ・ハリデイ側の人間なので。はい。

「ゆるしの夜」
クリスマスイヴも終わりに近付いた真夜中、メロン神父はどうしても誰かを待たなければ いけないような気がして目がさめた。果たして教会には、ざんげをしたいという一人の男の姿が……。
→メロン神父?? 妙な名前(笑) 名前はともかく、とても感動的なストーリー。 すごく重い罪を負っているというのでどんな悪いことかと思えば…。でも子供の頃は、 そういうことがこの世で一番悪いことのように思えてしまうのですよね。子供のころでなくたって、 本当に悪いことというのはこういうことなのかもしれませんが…。

「号令にあわせて」
ホテルのプールサイドで、父親にいつも軍隊式の号令をかけられながら訓練されていた男の子。 彼らの未来が気がかりだった“わたし”は、三十年後のある日、電車の中で偶然その息子と出会う。 “わたし”は彼からその後の父親の運命について聞かされる…。
→これも皮肉なお話。最後の余韻がなんともいえなくて好きです。私も号令をかけたくなってしまった(^_^;)

「気長な分割」
離婚することになったある夫婦。共に暮らした間に増えた蔵書を分けるのにひと騒動。でも本当の問題は…。
→あらすじ書こうとして気付きましたが、この夫婦名前なかったのね(^_^;) それにしても、 本好きの二人が結婚して離婚するとなると、どこのご家庭でもこうなってしまうものなのでしょうか?  いや…このお話の場合、根本的な問題は本のことじゃないんですが(^_^;)。

「ストーンスティル大佐の純自家製本格エジプト・ミイラ」
平和で退屈なグリーン・タウンにひと騒動巻き起こすべく、ストーンスティル大佐と チャーリーは偽物のミイラを作った。案の定、町は大騒ぎになるが…。
→稚気にあふれた大佐が好き(笑) 大人から見れば、子供をそそのかすちょっと困った おじいちゃんかもしれませんね。でもこういういたずらならいいですよね。チャーリーが うらやましい。素敵な大人になりそうですね♪



 
「瞬きよりも速く」 レイ・ブラッドベリ/伊藤典夫、村上博基、風間賢二 訳 (早川書房 99.11.15)
レイ・ブラッドベリ短編集。21編収録。 収録作品……「Uボート・ドクター」、「ザハロフ/リヒタースケールV」、「忘れじのサーシャ」、
「またこのざまだ」、「電気椅子」、「石蹴り遊び」、「フィネガン」、「芝生で泣いている女」、
「優雅な殺人者」、「瞬きよりも速く」、「究極のドリアン」、「何事もなし、あるいは、何が犬を殺したのか」、
「魔女の扉」、「機械の中の幽霊」、「九年目の終わりに」、「バッグ」、「レガートでもう一度」、「交歓」、
「無料の土」、「最後の秘跡」、「失われた街道」


→傑作ぞろいです。ブラッドベリはやはり良いですね♪ 収録数が多いので、お気に入りも多いのですが、 以下に簡単な感想など。本当にたくさんなので、あらすじも一言だけ。これでも減らしたつもりなのですが…(^_^;)

「ザハロフ・リヒタースケールV」
過去に世界で起こった戦争、地震の影にあった、建築家たちの陰謀とは…?
→例えあらかじめそれが分かっていたとしても、そこまでするでしょうか? 恐るべし、建築家(笑)

「フィネガン」
 チャタム森林の奥で13日ごとに発見される、干からびた死体の謎に名探偵ロバート卿とダグラスが挑む。
→フィネガン、というのは地面の穴の中にいて、獲物が通りかかるとさっと捕まえる蜘蛛だそうです。 なんだかぞっとするようなお話。森に行きたくなくなる(^_^;) …すごい結末。

「芝生で泣いている女」
 ある夜、自宅の庭から女性の嗚咽が聞こえてくる。聞き覚えのある声とその姿に、彼はある女性を思い浮かべる…。
→女性が誰なのか分かると、ちょっと切なくなるのは何故なのでしょう…。 

「優雅な殺人者」
老人になって楽しみを無くしたジョシュアとミッシー夫妻は、寿命切れゲームをはじめることにした。 以来二人は、他人に悟られないように、お互いの命を狙いあうが…。
→怖いけど、妙に楽しいです。でもこんな夫婦、近寄らない方が身のためですね〜。

「究極のドリアン」
怪しげな店に連れて来られたわたしは、どう見ても二十九歳にしか見えない男に、 自分は七十歳の老人だと告げられる。そしてわたしにも、若返りの方法を教えてくれるというのだが…。
→…タイトルだけ見て、果物の話かと(笑) そんな訳はなく、ワイルドの「ドリアン・グレイの肖像」のような、 奇妙な若返りのお話。怖い…。二十九という年も、いずれ甘美なひびきに聞こえるようになってしまうのかぁ…(T_T)  あーあ〜…(妙に落ち込む(笑)

「何事もなし、あるいは、何が犬を殺したのか」
二十年もの間家族の一員だった、犬のドッグが死んでしまった。ベントリー家はドッグのお葬式をすることに決めたが…。
→これって結局……笑っていいのでしょうか。

「機械の中の幽霊」
1853年のイギリス、近所の人に狂人だと思われている発明家エゼキエル・ウェザビーの元に、ある調査員がやってくる…。
→この機械っていうのは、あの乗り物のことですよね。そういえば、いつ、どこで、誰が発明したのか知らない…(^_^;)

「九年目の終わりに」
今日で九年目なので家を出て行くというシーラに、何のことか分からないトーマスは狼狽して訳を尋ねるが…。
→だいたい結末は予想できましたが、それでも心温まるお話です。

「レガートでもう一度」
庭先で鳴く小鳥たちが、素晴らしいメロディを奏でていることに気付いたフェントリス。笑う友人を無視し、彼はその曲を紙に書きとめ始めた…。
→こんな鳥がいたらいいですね。神経は磨り減りそうですけど。

「交歓」
 閉館間際の図書館に訪れた一人の青年。彼は小さい頃通いつめた図書館に、思い出を求めてやってきたのだが…。
→本を読むのが好きで、図書館に通ったことのある人なら、涙が出そうなお話です。一度読んだ本は、 たとえ手元になくてももう自分の本になってしまってるんだな、と思うと、持っている本が倍以上に増えたような気持ちになります。

「無料の土」
 無料の土、という看板にひかれて墓場にやってきた青年は、墓守の老人から奇妙な話を聞かされることになる…。
→そこまで聞いて、それでも持っていっちゃうかな〜(^_^;) そんな土…欲しくないです(笑) 

「最後の秘跡」
タイムマシンを発明したハリスン・クーパーは、ある3人の人物の死に際を訪れる…。
→作中に名前は出てきませんが、読んでいれば分かるし、あとがきでブラッドベリ自身が書いてますね。最後の人物はたぶん…。

「失われた街道」
 ドライブに出かけたトラヴァース一家は、今は通る者もない昔の街道へと車を乗り入れた。やがてさびれた町へたどり着く…。
→失われた街道は、やっぱり、もう過去のものなのでしょうね。お父さん、妙にその気になっていたのに、最後はなんだか皮肉で寂しい。



 
「太陽の黄金の林檎」 レイ・ブラッドベリ/小笠原豊樹 訳(ハヤカワ文庫NV S51.1.15)
 ブラッドベリの短編集。22編収録。1953年。
 収録作品……「霧笛」、「歩行者」、「四月の魔女」、「荒野」、「鉢の底の果実」、「目に見えぬ少年」、
   「空飛ぶ機械」、「人殺し」、「金の凧、銀の風」、「二度と見えない」、「ぬいとり」、「白黒対抗戦」、
   「雷のような音」、「山のあなたに」、「発電所」、「夜の出来事」、「日と影」、「墓地」、「ごみ屋」、
   「大火事」、「歓迎と別離」、「太陽の黄金の林檎」


 ブラッドベリの短編はいいです(^_^) どれも幻想的で素敵なお話ばかり(*^^*)  以下にお気に入りの感想を♪

「霧笛」
 孤独岬の灯台守の、ぼくとマックダン。もうすぐ休暇に入るぼくに、マックダンは奇妙な話を 始める。それは、毎年同じ日になると現れるという、奇怪な動物の話だった…。
 霧笛に答えて鳴く、その動物の姿。とても悲しくて哀れです。

「四月の魔女」
 どんなものの中にでも入り込んで、その心を乗っ取る事ができる魔女のセシー。十七歳になり、 恋をしたいと思ったセシーは、ある少女の体に入り込むが……。
 切ないお話ですね。アンはちょとかわいそうだったかもしれないけど(^_^;)

「荒野」
 火星に旅立った婚約者に、土壇場でついていこうかどうしようか迷うジャニス。親友の リオノーラと一緒に、住み慣れた町へ最後の見納めに出かけるが……。
 これ2003年のお話なんですねぇ(^_^;) でも、時代がいつだろうと、距離が遠くなっても、 やっぱり女は男を追っかけて旅立つ、という切ないお話。……ふぅ(-_-;)

「鉢の底の果実」
 妻を奪ったハクスリーを、絞め殺したアクトン。指紋を消そうと、触れた覚えのあるものを 拭き始める。
 人間の心理って恐ろしいですね〜(ToT)

「人殺し」
 精神科医の元を訪れたブロック氏は、目についた機械を片っ端から壊してしまうという 手におえない男だった。機械は便利だが人間を支配すると訴えるブロック氏だったが…。
 どっちが狂っているのか…。50年前の作品とは思えないですね(-_-;)

「金の凧、銀の風」
 長い間争いを続けてきた二つの町は、壁の形を変えることで常にお互いを牽制していた。 だが町の人々は壁を作ることに熱心になりすぎ、他に何も出来なくなってしまった…。
 タイトルどおりの素敵なお話です(*^^*) いいですね〜。

「雷のような音」
 タイムトラベル社が企画した恐竜狩りに参加したエッケルスたち。未来を変えないために 厳しいルールのなかで恐竜狩りを開始したのだったが…。
 だったら最初からそんなことしなければいいのに、なんて考えてはいけないんでしょうねぇ(^_^;)

「山のあなたに」
 読み書きが出来ないコーラは、甥のベンジーが来るのを心待ちにしていた。彼がやってくると コーラは家事そっちのけで、次々に手紙を書いたり読んだりしてもらい始めた。
 コーラの夫のトムがふてくされてるのもなんかかわいい(^_^) お隣のブラバムさんの意地の 張り合いも、最後はなんとなくほのぼのしてていいです(*^^*)

「墓地」
 取り壊されることになった映画のセットの中に、警備員のスミス老人は立てこもった。 こんなすばらしいセットを取り壊させるのは惜しいというのだ。プロデューサーのダグラスが呼ばれ、 二人は話し合いを始めた…。
 ほのぼのした素敵なお話です。古きよき物を、もう少しだけ、という感じがいいですね(*^^*)

「歓迎と別離」
 外見はいつまでも12歳の少年ウィリー。だが、彼は本当は43歳なのだ。どこへ行っても 子供扱いされ、職も得られず気味悪がられるウィリーは、ある時天職を見つけた…。
 それでもいいのかなぁ。良かったのかもしれないけど、最後にはやっぱり寂しげな雰囲気の漂うお話です。

「太陽の黄金の林檎」
 太陽に向けて飛ぶ宇宙船。乗組員たちの目的は、太陽の火を一掴み取ってくることだった。 すべてが順調に思えた旅だったが…。
 太陽まで行って、火を一掴み、というのがスゴイですね(^_^;) 太陽のすぐそばにもかかわらず、 さわやかなお話です(*^^*)



「10月はたそがれの国」 レイ・ブラッドベリ/宇野利泰 訳 (創元SF文庫 65・12・24)
アメリカ幻想文学の第一人者レイ・ブラッドベリの処女短編集『闇のカーニバル』に5編を加えた作品集。19編収録。
収録作品……「こびと」、「つぎの番」、「マチスのポーカー・チップの目」、「骨」、「壜」、「みずうみ」、「使者」
「熱気のうちで」、「小さな殺人者」、「群集」、「びっくり箱」、「大鎌」、「アンクル・エナー」、「風」
「二階の下宿人」、「ある老母の話」、「下水道」、「集会」、「ダッドリー・ストーンの不思議な死」


 ブラッドベリの短編は、何を読んでも期待を裏切られません〜♪ ちょっと怪奇的で怖いストーリーが 多いですが、それでもいいです(^_^;) 以下に好きな短編の感想など。

「骨」
いつも体のどこかの骨が痛むと言いつづけ、医師にも愛想をつかされたハリス氏。ある日彼はやっと、 自分の病気を理解してくれる医師ムッシュー・ムニガンに出会う。もらった骨格図を眺めるうちに、 ハリス氏は骨が内側から自分を支配しようとしているという観念に悩まされるようになってしまう…。
 こ…怖い…。骨が自分を思い通りにしようとしていると思い込んで、骨のことしか考えられなくなったハリス氏も変ですが…想像するのも怖い結末。

「みずうみ」
12歳の時、ハロルドは同級生のタリーに幼い恋心を抱いていた。一緒に遊んだ湖で溺死したタリーを 忘れられないまま、十年後に結婚した彼は、妻と一緒に思い出の湖を訪れる…。
 そんなことはしないほうが良かったのかも。でも、それでも美しいお話です(T_T)

「使者」
病気で寝たきりのマーティンと外の世界のつながりは、彼の犬だけだった。外の匂いで季節を教えてくれ、 たくさんのお客を連れてきてくれた犬だったが、ある日ふっつりと帰ってこなくなってしまった。悲しみに沈むマーティンだったが…。
 犬に名前がない…。それとも「犬」という名前なのかな。そんなことはどうでもいいけど(^_^;)  彼が本当に会いたかった人が、犬には分かっていたのかな〜。

「小さな殺人者」
アリスとデイヴは幸せなカップルだった。彼らの間に、子供が生まれるまでは。何故かアリスは子供に 愛情が持てないと言い出し、子供を恐れるようになってしまったのだが…。
 望まれて生まれた赤ちゃんでも、決して自分から望んで生まれてきたのではなくて……という怖いお話(T_T)

「群集」
交通事故に遭ったスポールナー氏は、朦朧とした意識の中で奇妙なことに気付いた。野次馬の集まって くるのが早すぎる。誰に話しても一笑に付された彼だったが、退院の日偶然目撃した交通事故で、彼はまたしても おかしな事に気付く。自分の事故の野次馬と、同じ人間が数人混ざっているのだ…。
 早く集まりすぎる野次馬……。群集というものの恐怖をひしひしと感じます(T_T) 

「びっくり箱」
森の中の大きな屋敷に母親と二人きりで住む少年エドウィン。外に出ることを許されない彼にとっては、 屋敷が世界の全てだった。母親と“先生”に、ゆがんだ世界観を教え込まれた彼だったが……。
 開かなくなってしまったびっくり箱をこじ開けようと、ついに壊してしまうエドウィンが 象徴的ですね。こういう雰囲気の話って好きです(^_^;) 壊れたびっくり箱から飛び出したものは…。

「大鎌」
不安定な生活から逃れるために旅に出たドルーと家族たちは、広い麦畑のある農場へとたどり着く。 中では男が死んでおり、ここを訪れた者に農場を残すという遺書が。喜んで農場の管理を始め、大鎌で 麦を刈り始めたドル―。だが、広大な麦畑には何か尋常でない気配が漂っていた……。
 なぜなら、ドルーの刈り取っていた麦は…。今も誰かが、麦を刈りつづけているような気がしてきます……。

「ある老母の話」
死ぬことぐらいつまらないものはない、という哲学を胸に抱き、死を否定しつづけたティルディ伯母。 だがある日、そんな彼女にもついに死が訪れようとしたのだが……?
 ティルディ伯母さん最高です(T_T) 信念というのは素晴らしいものですね(笑)

「ダッドリー・ストーンの不思議な死」
三十歳という若さで、突然文壇を去った流行作家ダッドリー・ストーン。その後二十五年というもの、 彼は一編の小説も発表していない。何が彼をそうさせたのか…。それを確かめるべく、ダグラスは 彼の住むニューイングランドへ向かう……。
 彼がそれでよければ、それでいいんだとは思いますが(^_^;) それでも……それでいいのだろうか(……訳が分からない(^_^;))



 
「何かが道をやってくる」 レイ・ブラッドベリ/大久保康夫 訳 (創元SF文庫 1964.9.30)
ある年の10月のこと、13歳のジムとウィルの前を避雷針のセールスマンが通りかかる。彼はただでよいから 必ずジムの家の屋根にこれを取り付けなければいけないと言い残し、奇妙な形の避雷針を置いていった。その深夜、 町に奇妙なカーニバルの一団が現れる。その怪しい魅力のとりこになってしまうジム。こっそりカーニバルに忍び込んだ彼らは、 そこで妙なものを目にする。それは、逆に音楽が流れ、逆に回転している回転木馬だった。そこには男が一人乗っていたのだが…。 大変なことが待ち受けているとも知らず、ジムとウィルは男の後を追いかける……。1962年。

 怪奇と幻想の世界をめぐる、素敵なファンタジーです♪ トムとハックみたいに毎日元気に遊びまわってる、ジムとウィル。 13歳、微妙な年齢ですね。子供と大人の間。でも、ジムとウィルはある夜を境に大人になってしまい、もう子供には戻れなくなって しまいます。こう書くと、それはなんだかとても悲しいことのように思えます、が…。
 ウィルは、図書館で管理人をしている54歳の父チャールズのことがどうしても分からなくて、チャールズは息子のことが 全然分からなくて、お互いに気まずい思いをしてました。でも、この奇妙なカーニバルをめぐるいろんな事件をきっかけに、 二人はいろんなことを話し合うようになります。そしてチャールズは自分がかつて子供だったことを、ウィルはやがて自分が 大人になることを、それぞれの胸に刻んでいく、というか…。大人とか子供とかいう区別はかなり曖昧ですね(^_^;) どちらにせよ、 人は自分が生きてきた時間を素直に受け入れることができないものなんでしょか…。早く大人になりたい、とか、もうちょっと若ければ、とか…。 もちろん、それは時間だけの問題じゃないのですが、このお話で全て語られてます。ブラッドベリの、あの独特の口調で。特にチャールズが 訥々と語る物語は、“大人”にはたまらないと思います(T_T) 読み終えると、ジムとウィル、そしてチャールズの笑い声が聞こえて きそうですね〜♪ そして、道をやってくる「何か」というのは……読んでお確かめ下さい(笑)


 
「よろこびの機械」 ブラッドベリ/吉田誠一 訳(ハヤカワNV S51.2.29)
 ブラッドベリ短篇集。1964年。21篇収録。
 収録作品……「よろこびの機械」、「待つ男」、「ティラノザウルス・レックス」、「休暇」、「少年鼓兵」、
 「少年よ、大茸をつくれ!」、「この世の終わりか」、「おれたちは滅びてゆくのかもしれない」、「海より帰りて船人は」、
 「死者の日」、「刺青の女」、「ラザロのごとく生きるもの」、「夜にも稀なる趣向の奇蹟」、
 「かくてリアブチンスかは死せり」、「オコネル橋の乞食」、「死神と処女」、「飛び立つカラス」、「この世の幸福のすべて」、
 「ホアン・ディアスのライフワーク」、「シカゴ奈落へ…」、「国家演奏短距離選手」


 ブラッドベリの短篇はホントにいろんな味を楽しめますね(^o^) ほのぼのあったかいものから、触ったら 切れそうな鋭いものまで。以下にお気に入りの感想を♪

「ティラノザウルス・レックス」
 恐竜のミニチュアを使ったアニメーションを製作しているターウィリジャーは、プロデューサーの クラレンスにいつも作品をけなされてばかりいた。ある時彼の作った恐竜がクラレンスの逆鱗に触れてしまい…。
 こういうの大好きです♪ 世の中を上手に渡ってくには、こうでもしなきゃやってられませんね(^o^;)

「休暇」
 ある朝目覚めたら突然、三人の一家を残して全人類が消えていた。無人の世界に残された一家は、 トロッコに乗って長い長い夏休みの旅行へと出かける…。
 かなってしまった夢は取り返しがつかないという皮肉なお話ですね。トロッコに乗った一家がとても悲壮感にあふれてて 悲しい…。

「少年よ、大茸をつくれ!」
 ある休日、フォートナム家へ一通の書留が送られてくる。同封されていたのは、きのこの栽培キット。息子のトムは 喜んできのこを育て始めるが、その頃からフォートナムは世界の異変に気付き始めていた…。
 何がどうなったのか分からないだけに、きのこがとても不気味ですぅ(>_<)

「海より帰りて旅人は」
 航海中に妻を亡くして水葬にしたトム船長は、自分も死んだら海へ葬ってほしいと従者に言いつけていた。だがトムは年老い、 海から離れた場所で暮らすようになっていた…。
 ちょっともの悲しいけど、とても爽やかなお話ですね。どこまでも続く麦畑が心に残ります(*^^*)

「刺青の女」
 精神分析医ジョージ博士のもとへ、一人の太った女がやってきた。彼女が訴えたのは、夫の心変わりを止めたいということ。 刺青芸術家であった彼女の夫は、刺青を入れ尽くしてしまった彼女の体に興味を無くしてしまったというのだが…。
 あっけない解決方法だけど、そこからまた一ひねりきいてるところがいいです♪

「世にも稀なる趣向の奇蹟」
 何をやってもついていないボブとウィリーは、砂漠の真ん中に不思議な場所を見つけた。それは、見るものが望んだ 場所を描き出してくれる蜃気楼が見える場所だった。彼らはそこで、一儲けしようと思い立つが…。
 信じることの奇蹟。素晴らしいですね。とてもほのぼのとした、素敵なお話です(*^^*)

「死神と処女」
 若い時から誰も信じず、ただ家の中にこもって他人を拒否しつづけてきた一人の老女。そんな彼女の元に、 ある日一人の美しい青年が現れる。彼は彼女を説得して、なんとか表に出そうとするが…。
 これが死神というものなら、なんて恐ろしい誘惑なんでしょ(^_^;) 不思議に心惹かれる物語です。

「この世の幸福のすべて」
 とある駅で隣り合わせた二人の男。その前を駆け抜ける、一人の若い女と、それを追いかける男…。 それを見た二人の男は、世にも幸せな男と、その妻の話を始める。一体男の幸せとは…?
 まあ、なんでしょうねぇ、男っていうものはしょうがないですねぇ(苦笑) でもまぁ気持ちは分かるけど(^_^;)



「スは宇宙(スペース)のス」 レイ・ブラッドベリ/一ノ瀬直二 訳 (創元推理文庫 71.10.8)
 米国のSF作家レイ・ブラッドベリの1946〜1956年にかけて書かれた短編集。16篇収録。
 収録作品…
  「さなぎ」、「火の柱」、「ゼロ・アワー」、「あの男」、「脱出する者の時間」、「孤独な散歩者」、
  「別れも愉し」、「透明人間」、「ぼくの地下室へおいで」、「遠くて長いピクニック」、「泣き叫ぶ女の人」、
  「微笑」、「浅黒い顔、金色の目」、「市街電車」、「飛行具」、「イカルス・モンゴルフィエ・ライト」


 わりと初期…の短編集かな? ちょい暗めのSF、ファンタジーっぽいのが多いです。 世界はまだ機械に支配されていないし、火星に移住もしてないけれど、 人間そのものはブラッドベリの描いた未来に近づいてるような。それだけに、 過去への憧れや郷愁のようなものが、よりいっそう切なく感じられます。 他の作品集と重複している作品(タイトルは違うけど)も少しあるので、個々の感想は書きませんが、 お気に入りは…体が固く緑色になったまま生き続ける奇妙な男の行く末「さなぎ」、 子供たちの間に流行する奇妙な遊びの正体「ゼロ・アワー」、夜中に散歩する男を呼び止めたものの正体 「孤独な散歩者」、土の中から響く女の叫び声を聞いた少女の話「泣き叫ぶ女の人」、空飛ぶ機械を発明した男を見た 皇帝の話「飛行具」…などです♪



「たんぽぽのお酒」 レイ・ブラッドベリ/北山克彦 訳 (晶文社 <ベスト版>文学のおくりもの 97.8.5)
イリノイ州グリーン・タウンに、夏がやってきた。12歳のダグラス少年は、今年も弟のトムと一緒に、おじいさんの たんぽぽのお酒作りを手伝う。夏に起こった不思議な出来事を通して、ダグラスは少しづつ成長していく。たんぽぽのお酒に、 1928年の夏を詰め込んで……。1957年。

 ブラッドベリの、ちょっと切ない、夏のファンタジー。ホントに素敵な本です(*^^*) 12歳のダグラスと、10歳の弟トム。 「トム……世界のだれもがね……自分が生きているのを知っているんだろうか?」 ダグラスは1928年の夏、突然、自分が 生きていることに気がつくんです。世界が目の前で、たった今始まったことに気付いたような、そんな喜びにあふれたダグラスが、 グリーン・タウンで起こる不思議な出来事について考えたり、トムと一緒にノートに書いてみたり。
 主人公は彼らですけど、どちらかといえば二人自身のストーリーは少ないかな。幸福を生み出す「幸福マシン」を作ろうと 躍起になって、不幸になってしまう発明家レオ・アウフマン。生まれた時から老人だったと子供たちに思われ、必死に否定する 72歳のベントレー夫人。廃止される市電、遠い町へ引っ越していく友達、古い細胞が剥がれ落ちていくように死んでいく老人たち、 出没する「孤独の人」という名の殺人鬼……。一見何の関連もない出来事が、二人の周りで起こります。それについて、ダグラスは考える。 考えて、やがて、もう一つの事実に気付いてしまいます。生きているということは、自分もいつか死ぬということ。ブラッドベリらしく、 ただ甘いだけのファンタジーじゃないですが、とてもみずみずしい、輝くような一夏の物語です。
 私が好きなエピソードは、31歳の記者のビル・フォレスターと95歳のミス・ヘレン・ルーミスのお話(*^^*) 彼女の若い頃の写真を 見て恋をしたビルが、今度は彼女の内面に惹かれてゆくという素敵な物語です。楽しい出来事も、哀しい出来事も、どれも これもホントに奥の深いお話ばかり。小さな体とあたまで一夏の間にこんなにいろいろ経験してしまい、ついに耐え切れなく なったダグラスに、ジョウナスさんがくれたきれいな贈り物もすごくいいです(T_T) そして、壊れたタロット占い人形の 出した白紙のカード。自分もいつか死ぬんだと悩むダグラスへの、一つの答えなのかな…。夏は突然終わってしまうけど、 1928年の夏はダグラスとトムの中でいつまでも続いていくんでしょう(*^^*)
 夏のお話ですけど、むしろ夏じゃない時に読んだ方がいいのかも。その方がもっとずっと、たんぽぽのお酒が 味わい深くなるというものですね♪


 
「黒いカーニバル」 ブラッドベリ/伊藤典夫 訳 (ハヤカワ文庫 S51.7.15)
 ブラッドベリの初期短編集。24編収録。
 収録作品……「黒い観覧車」、「詩」、「旅人」、「墓石」、「青い瓶」、「死人」、「ほほえむ人びと」、
  「死の遊び」、「時の子ら」、「全額払い」、「監視者」、「再会」、「刺青の男」、「静寂」、「乙女」、
  「夜のセット」、「音」、「みずうみ」、「巻貝」、「棺」、「ダドリイ・ストーンの素晴らしい死」、
  「戦争ごっこ」、「バーン! おまえは死んだ!」、「遊園地」


 やっぱりブラッドベリはいいですね〜♪ 初期の短編は、ちょとおどろおどろしい、暗いものが 多いですね。いくつか読んだことのあるのが混ざってましたが、中からお気に入りをご紹介(^_^)

 「死人」
 自分は死んでいると言い張り、毎日をただぼんやりと過ごしているマーティン。町の住人から いつも馬鹿にされていたが、そんな彼に思いを寄せる女性がいて…。
 やがて結婚することになった二人。でも、彼らの向かう先は……。 ほのぼのとしてるけど、ちょと不気味な後味が残ります。

 「時の子ら」
 タイムマシンで、1928年の世界へやってきた未来の子供たち。はじめのうちは、過去の 子供たちが遊ぶ様を馬鹿にしていたのだが……。
 いつの時代も子供は子供ということなんでしょうか。なんだかかわいそう……(T_T)

 「監視者」
 虫が大嫌いで、全ての虫を殺しつづけてきたティンズリー。その異常なまでの執着ぶりに、友人の スティーブは、精神科医のスーザンに相談にのってもらうことにする……。
 虫がうじゃうじゃくらいで恐れていてはダメだという事ですねぇ〜(ToT)  皮膚がむずむずしてくるようなお話(-_-;) 

 「棺」
チャールズとリチャードの兄弟は、とても仲が悪かった。発明家のチャールズが亡くなった後、 弟のリチャードは彼の部屋で不思議な棺を見つけた。好奇心にかられたリチャードは、 その中に入ってみるのだが……。
結末は見え見えですが、こういう皮肉なお話は大好きです〜(^o^ゞ)



「メランコリイの妙薬」異色作家短篇集5 ブラッドベリ/吉田誠一 訳(早川書房 S56.8.31)
 ブラッドベリ短編集。22編収録。
 収録作品……「穏やかな一日」、「火龍」、「メランコリイの妙薬」、「初めの終わり」、「素晴らしき白服」、
 「熱にうかされて」、「結婚改良家」、「誰も降りなかった町」、「サルサの匂い」、
 「イカロス・モンゴルフィエ・ライト」、「かつら」、「金色の目」、「ほほえみ」、「四旬節の最初の夜」、
 「旅立つ時」、「すべての夏をこの一日に」、「贈りもの」、「月曜日の大椿事」、「小ねずみ夫婦」、
 「たそがれの浜辺」、「いちご色の窓」、「雨降りしきる日」


 ブラッドベリ、やっぱり良いですね〜(*^^*) ちょっと哀愁の漂う、皮肉なお話が多いかな。以下にお気に入りの短篇を♪

「穏やかな一日」
 休暇でフランスにやってきたジョージとその妻アリス。近くの漁村にピカソが滞在していることを知り、 絵を描いてもらうためのお金がたまったらと夢見るジョージ。そんなある日、彼は海岸で一人の老人に出会う…。
 一瞬で消えゆく芸術。短いお話ですが、ジョージの受けた感動がばしばし伝わってきますね(*^^*) こんな経験を してみたいな〜。

「火龍」
 広大な荒野を旅する二人の騎士が、そこに現れるという火龍の話をしていた。炎の目をもち、瘴気を吐くという怪物。 やがて数マイル先から唸り声をあげ、龍が姿をあらわす……。
 なんのこっちゃと思いながら読んでると、納得の結末(^_^;) 今もどこかで同じことが繰り返されてるのでしょうか(^o^;)

「メランコリイの妙薬」
 原因不明の病に冒されたカミリアは、医者にも見放されてしまった。両親は思い余って、道行く人たちすべてに 病の特効薬を聞き始める。やがて一人のゴミ屋がやってきて、彼女を治すためには月の光の中に出して おかなければいけないと言う…。
 そんなことだろうと思いましたよ(笑) ありがちな話だけど、なんかほほえましいですね(^_^;)

「初めの終わり」
 夕暮れの庭に出て、息子ボブのことを心配する老夫婦。やがて一台のロケットが、天を目指して飛び去る……。
 一つの時代の、終わりと始まり。ロケットの打ち上げ一瞬が、まるで永劫の時間のように感じられます(^_^)

「素晴らしき白服」
 ある日マルティネスは、仲間のゴメスにさそわれ、6人の仲間で一着の白服を共有することになった。体型も身長も 体重も同じでお金のない6人で、上等な服を順番に服を着ようというのだった。順番が回ってきたマルティネスは、 気にかけていた女性のもとを訪れる…。
 楽しいお話です〜(^o^) みんなで服のことだけやきもきするのがとてもおかしい(笑) 一人が交通事故にあっても、 とにかく服の方が心配だったり(^_^;) でも結局、人間は中身だったということなんでしょか(^_^) ほのぼのしたお話です。

「熱にうかされて」
 熱を出して寝込んだチャールズは、自分の体がだんだん自分のものでなくなっていくと医師や両親に訴えつづけた。 だが、皆は気のせいだと彼をなだめつづける…。
 怖いですぅ〜(ToT) 何になっちゃったんだチャールズ〜(ToT)

「すべての夏をこの一日に」
 1年中雨の降りしきる金星で、最近地球から移住してきたマーゴウだけは太陽の輝きを知っていた。 金星で生まれた子供たちは、そんなマーゴウをいつもいじめていた。今日は7年に一度だけ雨が降り止む日。 皆はそれを楽しみにしていたが……。
 酷いの一言(-_-;) 子供って……。ちなみにこのお話は、私が初めて(そして原書で)読んだ、 思い出のブラッドベリ作品です(^_^;)

「誰も降りなかった町」
 わたしはいつも通いなれた電車の路線で、ふとした気まぐれから今まで一度も降りたことのない駅に降りてみた。 ホームには一人の老人がいて、あなたのような人を待っていたと話しかけてくる…。
 誰も降りない町で、こんな老人がじっと自分を待ちつづけていると思うと背筋の寒くなるようなお話(-_-;)

「贈りもの」
 重量オーバーでクリスマスツリーもプレゼントもロケットに載せることができなかった家族。プレゼントを欲しがる 少年に、父親が贈ったものは……。
 ほんっとに短いお話なんですが、素晴らしいお話です(ToT) こんなプレゼントが欲しい(ToT)


「いちご色の窓」
 火星に移住したボッブと妻キャリイと子供たち。地球とは似ても似つかぬ火星の光景に、彼らは移住半年目にして早くも 郷愁に悩まされていた。だが、ここですべてを投げ出して帰るわけには行かないと、ボッブは貯金をはたいて あることを実行に移す……。
 これも素敵なお話ですね(ToT) ここまでしちゃったら、もう帰れないでしょ(^_^;)



「塵よりよみがえり」 レイ・ブラッドベリ/中村融 訳 (河出文庫 2005.10.20)
 北イリノイにある古い屋敷に集う“一族”。ひいが千回つくばあちゃん、三千年の時を生きた猫アヌバ、 万物に心をもぐりこませることのできるセシー、翼の生えたアイナーおじさん、唯一血と肉をそなえた普通の子供ティモシー…。 大勢の一族が集い彼らなりに楽しくやってきたのだが、やがて彼らはとある疑問を抱くようになる…。2001年。

 長編という形こそとっていますが、特に一貫したストーリーがあるわけでなく、 連作短篇という感じですね。ブラッドベリが長年にわたって書き継いできた、 “一族”ものの集大成。最初の作品は1946年に書き始められ、 55年の歳月をかけて完成したというから驚きですね〜。個々の章には過去に短篇として 発表済みのものもあるので、私はあらかた既読といってもいいのですが…。
 闇に住み、昼間は眠り、長い長い歳月を変わらないまま生きて(?)きた、でも今はちょっと時代の流れに 押され気味な一族。ハロウィンなんかには一族が集まって まさに百鬼夜行って感じのパーティーを繰り広げたりして、面白おかしくやってきたのに…。 自分たちの力では変わりようがない彼らの苦悩が切なくもあるけれど、 幼いティモシーが最後に出す答えがいいですね。一人だけ人間の彼の行く末が ちょと心配だったです(^_^;) 過去に個々のストーリーを短編として読んでいるせいか、 やっぱりちょっとばらばらな印象が拭いきれないんですが、“一族”ものをまとめて読めるのは 嬉しいですね。個人的に好きなのは第十章のセシーと第十五章のアイナーおじさんのお話、 そして短篇で読んだ時もそうだったけど、一番好きなのは第十二章の不気味な乗客の話です。



「火星の笛吹き」 レイ・ブラッドベリ/仁賀克雄 訳(ちくま文庫 1991.9.24)
 ブラッドベリの初期のSF短編を集めた作品集。20編収録。
 収録作品…
  「ホラーボッケンのジレンマ」、「振子」、「生きているルアナ」、「青い蝋燭」、「火星の笛吹き」、
  「偽装大作戦」、「死体回収ロボット」、「よみがえるラザルス」、「海中の監視者」、「防衛機能」、
  「宇宙のヒッチハイカー」、「ロケット・サマー」、「未来を救った男」、「苛立った人々」、
  「木星行きの予言者」、「地球のはぐれ者」、「火星の足跡」、「草の葉」、「天国への短い旅」、「名前の付いた弾丸」


 1938〜51年くらいまでの作品を集めた短編集。 「ホラーボッケンのジレンマ」は、作者が17歳の時の作品だそうです(^_^;)  若さゆえなのかは分からんですが、初期の作品にはけっこう暗めの作品が多いですね。 文明は高度に発展したけれど、どこかへ何かを置き忘れてきた人間の未来。 この短編集の収録作品も、皮肉で救いがないお話が多いかな。 でも、後々の心温まるストーリーばかりでなく、こういうのもけっこう好きです(^_^;) 
 一つ一つの感想は書きませんが、好きなのは… 金物店に置かれていた最強の武器であるという蝋燭の正体「青い蝋燭」、 地球征服にやってきた金星人が、地球で目にした驚くべき光景「偽装大作戦」、 火星へ来てホームシックから子供時代に戻ってしまった船員に、船長が取った対処法 「防衛機能」、人類初のロケットの打ち上げに浮かれる人類を懸念する スタンレーが打った大芝居とは…「ロケット・サマー」、 五百年後の世界から、とある人物の抹殺を依頼された男の運命「未来を救った男」、 戦争を禁じられた世界で、クロスレーが敵国に対して仕掛けた恐るべき攻撃とは… 「苛立った人々」、自分を女帝エカテリーナだと思い込んでしまった女性が連れて行かれようとしている場所 「地球のはぐれ者」、ロボットたちだけになってしまった世界で、 彼らが恐れるものとは…「草の葉」、などです。 …こうしてみると、けっこう突拍子もないストーリーもあります。 そういうのもいいですね(笑) ブラッドベリの作品てホントに多彩です。



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