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ハーディ (トマス) イギリス 1840−1928
 テス  岩波文庫
 ハーディ短編集 新潮文庫
 ハーディ短編集 岩波文庫
 ウェセックス物語 トマス・ハーディ短編全集第一巻  (短篇集)大阪教育図書
ハートリー(ハートレー/ルイス・ポールズ) イギリス 1895-1972
 角川文庫
バーム  (ライマン・フランク) アメリカ 1856-1920
 オズの魔法使い 角川文庫
パール=バック  アメリカ 1892-1973
 大地
ハーン (ラフカディオ) 1850-1940
 怪談岩波文庫
ハイデンライヒ (エルケ)  ドイツ 1943-
 黒猫ネロの帰郷 文藝春秋
 ペンギンの音楽会 文藝春秋
 エーリカ  あるいは生きることの隠れた意味三修社
ハインライン (ロバート・A)
 夏への扉 ハヤカワ文庫
ハウゲン (トールモー)ノルウェー 1945-
 夜の鳥 (1975)福武文庫
バック  (リチャード) アメリカ
 かもめのジョナサン 新潮文庫
ハッケ  (アクセル) ドイツ 1956-
 ちいさなちいさな王さま 講談社
 キリンと暮らす クジラと眠る 講談社
 クマの名前は日曜日 講談社
バリ (ジェームズ) イギリス 1960-1927
 ピーターパン新潮文庫
バリッコ (アレッサンドロ) イタリア 1958-
 海の上のピアニスト (1994)白水社
バルザック フランス 1799-1850
 純愛 
ハンコック (グラハム) 
 神々の指紋 
ビアス (アンブローズ) アメリカ 1842-1914
 ビアス短編集 岩波文庫
ビーグル (ピーター・S) アメリカ 1939-
 心地よく秘密めいたところ (1960)創元推理文庫
ピーズ  (アラン&バーバラ)  イギリス
 話を聞かない男、地図が読めない女 主婦の友社
ビッスン (テリー) アメリカ 1942-
 ふたりジャネット (短篇集)河出書房新社
ヒルトン (ジェームズ)イギリス 1900-54
 学校の殺人 (1932)(ミステリ)創元推理文庫
 チップス先生さようなら 新潮文庫
ファーマン (ジョン) イギリス
 とびきり愉快なイギリス史ちくま文庫
フィッツジェラルド  (フランシス・スコット) アメリカ 1896-1940
 グレート・ギャツビー 新潮文庫
 フィツジェラルド短編集 新潮文庫
 マイ・ロスト・シティー 中公文庫
フィニイ (ジャック) アメリカ 1912-1995
 レベル3 (短篇集) 早川書房
 ゲイルズバーグの春を愛す (短篇集)ハヤカワ文庫
 クイーン・メリー号襲撃 (1959)ハヤカワポケミス
 マリオンの壁 (1973)角川文庫
フーケー  ドイツ 1777-1843
 水妖記 (ウンディーネ) 岩波文庫
ブラウン (フレドリック) アメリカ 1906-72
 さあ、気ちがいになりなさい (短篇集)早川書房
 まっ白な嘘 (1953) 創元推理文庫
ブラッドベリ   (レイ) アメリカ 1920-
 火星年代記 (1946)ハヤカワ文庫
 黒いカーニバル (1947) (短篇集) ハヤカワ文庫
 華氏四五一度 (1953)ハヤカワ文庫
 太陽の黄金の林檎 (1953) (短篇集)ハヤカワ文庫
 10月はたそがれの国 (1955) (短篇集) 創元SF文庫
 たんぽぽのお酒 (1957) 晶文社
 メランコリイの妙薬 (1959) (短篇集) 早川書房
 何かが道をやってくる (1962) 創元SF文庫
 よろこびの機械 (1964) (短篇集) ハヤカワ文庫
 スは宇宙(スペース)のス (1966)(短篇集)創元推理文庫
 恐竜物語 (1983) (短篇集)新潮文庫
 火星の笛吹き (短篇集)ちくま文庫
 二人がここにいる不思議 (短篇集) 新潮文庫
 十月の旅人 (短篇集) 新潮文庫
 瞬きよりも速く (短篇集) 早川書房
 塵よりよみがえり (2001)河出文庫
ブリッグズ (レイモンド) イギリス
 風が吹くとき  
 さむがりやのサンタ 
ブルーワー (ジーン) アメリカ 1937-
 K−パックス(光の旅人)角川文庫
フローベール フランス 1821-80
 ボヴァリー夫人 
ブロンテ (エミリ) イギリス 1818-48
 嵐が丘 角川文庫
ヘイエルダール (トール) ノルウェー 1914-2002
 コン・ティキ号探検記 ちくま文庫
ベイツ (ハーバート・アーネスト) イギリス 1905-74
 ベイツ短編集 (短篇集)八潮出版社
 クリスマス・ソング (短篇集)福武文庫
 サイラスおじさん (1939)王国社
ベック (ベアトリ) フランス 1914-
 ガラスびんの中のお話 (1953) (短篇集)ハヤカワ文庫FT
ヘッセ ドイツ 1877-1962
 車輪の下 
ヘッベル ドイツ 1813-1863
 ヘッベル短編集 岩波文庫
ヘディン (スウェン) スウェーデン 1856-?
 さまよえる湖 角川文庫
ベネット イギリス
 当世人気男 筑摩書房
ヘミングウェイ アメリカ 1899-1961
 キリマンジャロの雪 
ぺルニエール (ルイ・ド) イギリス 1954-
 コレリ大尉のマンドリン (1994) 東京創元社 
ぺロー (シャルル) フランス 1628-1703
 完訳 ペロー童話集 (短篇集) 岩波文庫
ボウエン (エリザベス)イギリス 1899-1973 
 あの薔薇を見てよ (短篇集)ミネルヴァ書房
ホーガン (ジェイムズ・パトリック) アメリカ 1941-
 星を継ぐもの創元SF文庫
ホーソーン アメリカ 1804-64
 緋文字 岩波文庫
ホフマン (エルンスト・テオドール・アマデウス) ドイツ 1776-1822
 黄金の壺 岩波文庫
 ホフマン短編集 岩波文庫
 クルミわりとネズミの王さま (1816) 岩波少年文庫
ボルヘス (ホルヘ・ルイス) アルゼンチン 1899-1986
 砂の本 (短篇集) 集英社
 ボルヘスとわたし (短篇集) 新潮社
(ポン) (見明(チエンミン)) 中国 1953-
 山の郵便配達 (短篇集)集英社


「ハーディ短編集」 トマス・ハーディ/井出弘之 訳 (岩波文庫 2000.3.2.16) 
短編8編を収録。久々に読みましたが、やはりハーディはいいですね。新潮文庫の「ハーディ短編集」と 重複しているものが3編あります。…主な短編の感想。

「夢見る頃をすぎても」
詩人のたまごのエラ(三児の母)は、あこがれている詩人トルーのいた下宿に偶然住むことに。 何度も手紙を出したり招待したりするのに、会えずにすれ違ってばかりのまま。その上男性の 名前で投稿していたエラを、トルーは男性だと思い込んでいる。ある時トルーは自分の詩を 酷評されたことを苦に自殺してしまい、結局二人は会えずじまい。その遺書に“ぼくを支えてくれる 姉や女友達のような人がいてくれたら”などと書いてあったために、エラは気も狂わんばかりになって、 四人目の子供を出産した後亡くなってしまう……。
 ここまでなら悲劇で終わりそうですが、その後もっと皮肉なオチ(?)が。 このタイトルがまたいいですね。主人公の気持ちがすっごくよく分かる(笑)  あとがきではエラは“女ストーカー”とか言われてましたが……。でも女性なら、 ここまで行かないにしても、こういうことってあるんじゃないだろーか。 むしろエラは“追っかけ”みたいなもんでしょか(笑)

「三人の見知らぬ客」
イングランド南部の丘陵地にぽつんと建つ、羊飼いの家。暴風雨の吹き荒れる夜で、 一家は二番目の娘の命名式を開いていた。そこへ一人の痩せた男が、雨宿りをさせてほしいと現れるが…。
 ミステリっぽさがなんともよいです。第三の男の存在がちょっと謎ですよね。 犯人はバレバレかもしれませんけど…。

「帰らぬひと」
この話はあらすじを書いちゃうとありふれたお話なんで書きませんが…。なんともいえない やりきれなさが心に残ります。ジョアンナ自己中で嫌い、っておっしゃる方も いるかもしれませんが、彼女の気持ちもよく分かる。女の嫉妬は怖いけど、 哀しいものでもあるのですよねぇ(笑)

「グリープ家のバーバラ」
顔もいいけど性格もいい男性の悲劇。まったく女ってものは、しょーがないですね。 谷崎潤一郎が翻訳までするほど惚れ込んだ作品だとか。日本の文学に疎い私(笑)は、 どの辺に惚れ込んだのかは分かりませんが、確かにおかしくも哀しい物語です。



 
「ウェセックス物語」トマス・ハーディ短編全集第一巻 トマス・ハーディ/藤田繁・内田能嗣 訳(大阪教育図書 2001.2.21)
 イギリスの作家トマス・ハーディ短編集。7編収録。
 収録作品…
  「見知らぬ三人の男」、「1804年の言い伝え」、「憂鬱なドイツ軍軽騎兵」、「萎えた腕」、
  「町の人」、「丘の家の侵入者」、「惑える牧師」


 ハーディの作品はとても好きなのですが、読むのは久々です(^_^;) ここに収録されている作品も 半分以上既読ですが、まぁ何度読み直しても楽しい(という表現も変だが…)作品 ばかり。ハーディの生まれ故郷、自然の美しいウェセックス地方を舞台にした人間模様を 描いた作品だけを収録した短編集です。悲哀と諧謔、皮肉な運命。日本のハーディ事情は 知らないのですが、長編の方が有名なんでしょか。短編だってこんなに面白いのにね〜。 むしろ短編の方が読みやすい上、いいとこ取り(?)という感じなので、 読まれたことない方にはまず短編をお勧めですね。この本は全集なのであまり手にする方もないか と思うのですが、岩波文庫があります。
 以下に、既読以外のお気に入りの短編の感想を。第2巻に続きます。そのうちに。

「町の人」
 裕福に暮らすバーネットは妻とうまくいっておらず、友人の弁護士ダウンの仲の良い家族を うらやましく思っていた。しかも彼にはかつて身分違いのために結婚できなかった ルーシーという女性がおり、今でも心のどこかに引っかかる存在だった。そんなバーネットを心配した ダウンは、自分の妻をバーネット夫人の話し相手にと散歩に誘う段取りをつけた。だが、 その最中で彼女たちに大変な事件が起こってしまう。
 短編ですが、かなりドラマチックな、そして人の純粋な心をあざ笑うかのような 皮肉な展開。あ〜もぉ〜なんでここでそーなんだよ〜、というもどかしくやるせない感じが 全体的に漂います(笑) 運命の一瞬を掴み損ねてしまった人たちの、切なすぎる 物語です。でも一番好きなお話(^_^;)

「丘の家の侵入者」
 地主の婚約者ダートンを待っていたサリーとその母親の家に、長い間音信不通だった サリーの弟フィリップが妻ヘレナと二人の子供を連れて帰ってきた。 そこへやってきたダートンは、ヘレナを見て愕然とする。ヘレナはかつて彼が 身分違いのために結婚をあきらめた女性だったのだった…。
 現代と違う結婚事情やなんかはともかくとしても、サリーはとても 自立心のある現代的な女性だったのかな〜。それとも単純に、一度でもあんな 運命が自分の人生に、しかもあんなタイミングで降りかかってしまったら、 もう二度と同じことをしようという気が起きないのかも。 運命に翻弄されておたおたするダートンがなんか情けなく思えてしまうけど、 別に彼だって特別な人間というわけじゃない。哀しいお話です…。



「恋」 L・P・ハートレー/森中昌彦 訳 (角川文庫 S46.11.30)
 古い書類を整理していた私ことレオ・コルストンは、半世紀以上も前の1900年、12歳の頃書いた 日記を前にしていた。その日記には、始まったばかりの輝かしい20世紀を生き始めた私の運命を 決定的に変えてしまった一つの事件が書かれていた……。
 13歳の誕生日を控えた夏休み、私は寄宿舎の同室の友人マーカスの屋敷ブランダム・ホールへ 招かれた。私はマーカスの美しい姉マリアンに憧れはじめる。彼女は屋敷の持ち主である トリミンガム子爵との結婚を望まれていたが、あまり乗り気がしない様子だった。そんなある日、 村の小作人テッド・バージェスが私にマリアンへの手紙を預ける。二人のために秘密のお使いを することに有頂天だった私だったが…。1953年。(原題 THE GO-BETWEEN)


 英国では有名らしいハートレーですが、日本ではさっぱりですね。アンソロジーでは短篇を時々 目にしますが、15編書かれた長編の翻訳は代表作のこれだけかな…。同名で映画化も されてますね(当然、見てませんが(^_^;))。原題は"仲介者"と いうような意味で、レオの立場そのままかな。それとも12歳のレオと、60歳を過ぎたレオの…という意味もあるのかも。
 12歳と13歳の間、恋(あるいはそれ以上のこと)についてはまだ何も知らないレオ。大人の することの意味もよく分からず、かといって分からないことを認めるのも嫌な年頃。憧れてみたり、 見下してみたり。ちょっと自意識過剰っぽくて、それは分かっているけどどうしたらいいか分からなくて…。 私はレオとマーカスのいかにも少年ぽいやり取りが好きです。子供から見れば、友達づきあいも楽しいだけじゃ ないというのがよっく分かりますね。言ってることは妙に大人びていても、やっていることは子供っぽい(^_^)
 そんな不安定に揺れる12歳のレオを静かに見つめているのは、60歳を過ぎ、変わるにはたぶん遅すぎる場所で 動けなくなってしまっている孤独なレオ。微妙な年頃のレオだけでも居たたまれないのに、 それを冷静に見つめるレオがいるということが余計に苦しいです。いろいろなものを見つめ、流されながらも それをなんとか受け止めようとする12歳のレオと、それを再確認する現在のレオ。 そして13歳の誕生日に起きたあの出来事…。誕生日に、というところがぞっとしますね。彼がどうしようもなく、 望んだわけでもない新しい自分に変えられてしまった日なんですから。ノーフォークの田舎のお屋敷での出来事が 淡々と描かれている古風な小説のようでも、このあたりがとても現代(といっても50年も前ですが)の 小説っぽいんですね〜。すごい……けど、そういう意味ではちょと苦手な部分もあるかな。そして、暗い中にも 仄かに灯りが見えるような結末。過去はもう、変えるには遅すぎるけど…。
 ちなみにこの本は絶版ですが、一つ注意することがあるとすれば、あとがきは絶対最後に読むべし、 ですね(^_^;)



「オズの魔法使い」 バーム (講談社文庫、他)
カンザスの大草原でヘンリーおじさんとエムおばさんと暮らす、ドロシーと子犬のトート。 ある日ものすごい竜巻とともに、ドロシーとトートは見知らぬ国に家ごと運ばれてしまいます。 カンザスに帰るため、ドロシーは偉大な魔法使いオズに会いに、オズの都へ旅に出ます。 途中でかかし、ブリキのきこり、臆病なライオンたちと出会い、ドロシーは数々の困難を 乗り越えてオズの都にたどり着きます。でも、肝心のオズは…。

→これまた超有名なストーリー♪ 子供の頃、すべてが緑色にきらきらと輝くオズの都に行ってみたくて仕方なかったです。せとものの国とか。しかし何より、 家が竜巻で吹き飛ばされないかなぁ〜などと、今にして思えばかなり物騒なことを考えていました…。続きは読んだことないんですけど、いちばん有名なのはやはりこれだと思うので。



 
「ペンギンの音楽会」 エルケ・ハイデンライヒ/絵 クヴィント・ブーフホルツ 畔上司 訳 文藝春秋
寒い寒い南極で、真面目そうな顔をして暮らしているのは、20万頭のペンギン。 彼らの服装はいつもエレガント。それはなぜかといえば……。

→ウィーンから来るオペラ船(…っていったいなんなんだよ〜(笑))をじっと待ってるのです。 南極のオペラ船で歌うパヴァロッティ。神妙な顔で聴くペンギンたちが実に奇妙です。 オペラのことは全然知らないけど(^_^;) 『黒猫ネロの帰郷』に続くコンビの大人の絵本。 ペンギンたちの絵が素敵です(*^^*) 内容はまあ……いいです(笑) 気に入ってくれたら お金を払って買ってねと、最後に著者が頼んでる辺り、なんともいえませんね(^_^;)



 
「黒猫ネロの帰郷」 エルケ・ハイデンライヒ/絵 クヴィント・ブーフホルツ 畔上司 訳 (文藝春秋 97.1.20)
右足先だけ白い黒猫ネロは、子猫の頃から気が強く、怖いもの知らず。イタリアの農園で気ままな 日々を送っていた彼は、近くの別荘に滞在していた老夫妻と共にドイツへ向かう。ぐずの妹、 ローザも一緒に……。

→いわゆる大人の絵本です。私は当然(笑)絵にひかれて買ったといういつものパターンなので、 物語は実は二の次です(^_^;) ドイツの絵本てみんな絵がきれいだな〜(T_T) い〜な〜。
……えと、ストーリーの方なんですが(^_^;) ローベルトとイゾルデ(特に後者)の夫妻は、猫に 目がなくてネロとローザをまさに猫かわいがり。ネロはそんなイゾルテをちょっと軽蔑しながら、 猫の狡さで甘える振りして餌とベッドを確保。長い間イゾルデに世話になって、愛着も覚えたものの、 年老いて再びイタリアを訪れた彼は、結局彼女の元に帰らない決心をします。それが猫と人の 違いなんだろーなぁ〜。世話にはなるけど、決して依存はしない。もちろん猫は人じゃないし、 人は猫ではないわけですけども。私はそういうドライなところは嫌いじゃないけど、少し、 寂しいですね(それが甘いとゆーのだ(^_^;)) それはそれとして、イゾルデはかわいそう(T_T)  個人的にあまりなごまないお話でしたが、とにかく絵は素敵です(*^^*)



 
「エーリカ あるいは生きることの隠れた意味
 エルケ・ハイデンライヒ/絵 ミヒャエル・ゾーヴァ/三浦美紀子 訳 (三修社 2003.11.15)
 一年を働きづめだった私ことヴェローニカは、クリスマスの数日前、イタリアに住む昔の 恋人フランツから遊びに来ないかと誘われる。クリスマスイヴに出かけることにしたヴェローニカは、 旅行の支度にベルリンのデパートへ出かけた。そこで私は思わずエーリカというピンク色の 大きなブタのぬいぐるみにひかれ、何も考えずに買ってしまう。そこにあるだけで、道行く人が 微笑んでしまうようなエーリカを抱え、私はイタリアへ向かう飛行機に乗った…。1992年。

 仕事づめで、心も体もくたくたになったヴェローニカ。昔の恋人に割り切れない気持ちを抱きつつ、 大きなブタのぬいぐるみを抱えてイタリアへ旅立ちます…。クリスマスだからって誰もが幸せとは 限らないけど、飛行機や電車の中でヴェローニカの抱えるエーリカを見た人たちは、ちょっとだけ 幸せな気持ちになれるんですね(*^^*) 何もかも皮肉な見方しか出来ないヴェローニカも、結局何も 変わっていないのかもしれないけど、エーリカがいなかったらあんな行動はしなかったでしょうし…。 この、ほんのちょっとじんわり幸せ、というところがいいんですよね。追い求めるほどの価値はなくても、 ふと感じる小さいけど確かな幸せ。
 全体的には、ちょと内省的というか、暗めのトーンで描かれた大人向けの童話…というより普通の 短編なんですが、これがまたゾーヴァの絵とぴったりなんです(^_^) ピンクのブタのぬいぐるみ、 というとなんか『ぶたぶた』を思い出して しまうんですけど、こういうのってどこも一緒なのかな(^_^;) ちょっとだけ幸せな気持ちになる、 素敵なお話です(^_^)



「夏への扉」 ロバート・A・ハインライン/福島正実 訳 (ハヤカワ文庫 1979.5.31)
 僕ことダニエル・ブーン・デイヴィスの飼い猫ピートは、冬になると必ず夏への扉を探し始める。 外へ向かうたくさんのドアのどれか一つが、夏に通じていると信じているのだ。…1970年の冬、 ダニエル自身も夏への扉を探していた。恋人ベルに裏切られ、親友のマイルズに会社を乗っ取られ、 自暴自棄になって長期の冷凍睡眠に心を惹かれていたのだ。次に目覚めるのは、西暦2000年。 だがダニエルは最後にもう一度、マイルズに会って事の真偽を確かめることにしたが……。1957年。

 良いです〜(T_T) こういうの大好きです(*^^*) ダニエルと牡猫「護民官ペトロニウス」 (ピート)のコンビが最高。人を疑うことを知らない生粋の技術者ダニエルは、恋人と親友に裏切られ、 自分の発明を盗まれ、その上思いがけない形で冷凍睡眠に入ってしまい、2000年に目覚たら一文なし。 そして迎えた21世紀の世界。そこで彼は思いもかけないものを発見し、戸惑うのですけども……。 未来だからって特に大げさなものもでてこないし、タイムトラベルもまだ実験段階。SFはあまり読まないのですが、 私としてはこの地面に片足ついてるくらいの感覚がたまらなく好きです♪(笑) ダニエルのキャラクターが また良いんですね。けっこう先の展開も読めてしまうかもしれない、でも、過去と未来と現在が複雑に 入り混じって…。そして、最後は…うう、やっぱり、やっぱりなんだけど、感動です(T_T) あの プロポーズの言葉(笑)に涙が〜(T_T) “世のなべての猫好きに”捧げられた、とても素敵な物語です♪



 
「夜の鳥」 トールモー・ハウゲン/山口卓文 訳 (福武文庫 1991.11.5)
 8歳のヨアキムは、パパとママと三人で暮らしていた。パパはママの反対を押して中学校の 先生になったのに、神経を病んで"登校拒否"しているし、ママはそんなパパのために、 夢を我慢してつらい仕事をしている…。不安に押し潰されそうになりながら、懸命に生きる ヨアキムの日常を描く連作第1作。1975年。

 福武のは絶版ですが、河出書房新社から復刊されてます。個人的に 絶版のままで良かったかもと思ったり(-_-;) 暗く長い冬の、冷たく澄んだ空気を 感じさせる作品ですね。しかしどんなに澄んでいても、冷たすぎる空気は吸い込むと痛い、という感じ……(謎)
 "骨の折れるパパ"を持つヨアキムは、どうしてもしっかりしないパパと、そんなパパに イライラするママに挟まれて、不安な日々を過ごしています。"夜の鳥"は不安の象徴なのかな。 現代的でかなりシビアな児童文学ですね〜。ヨアキムは日常生活でもあまりいい友達がいないし、 結構キツイ話かも。何故にそこまで?と思うほど(^_^;) 確かに、大人になってない両親の間で 生きるというのはこういうことかもしれないけれど…。だからって、ねぇ…(-_-;)
 こういう話を素直に楽しめる人は、ある意味幸せなんだと思いますね。私はただ疲れただけで…。 全体的にもちょとまとまりに欠けてるような気がして、幻想的といえば幻想的かもしれませんが、 あまり好みではないかな。好きな方は好きなんでしょう、こういう感じ。 私はただもうホント〜に疲れました(x_x) 2作目『少年ヨアキム』はたぶん読まずに、次は 『月の石』です。そのうちに……。



「ちいさなちいさな王様」 アクセル・ハッケ作/ミヒャエル・ゾーヴァ絵
那須田淳・木本栄 共訳 (講談社 96.10.15)
 ある日僕の部屋に、人差し指ほどの大きさの王様が現れる。名前は十二月王二世。 年をとればとるほどちいさくなっていく王様の住む世界は、何もかも僕の世界と違っていて…。

 大人のための童話…なのかな。生まれたときは一人前で何もかも知っているのに、年をとるにつれて どんどん小さくなっていろんな事を忘れて、最後には消えてなくなってしまう、不思議な王様。 平凡なサラリーマンの僕と王様の、妙に“深い”会話がとてもいいです。理由は定かではないですが、 いかにもドイツ、という感じの本。王様の話を聞くことで、“僕”も、たぶん読者も自分の生きている 世界がちょっと哀しくなったりしてしまうけれど、王様はどうすればいいかも教えてくれます。

「おまえはなんだって、壁の向こう側をわざわざ見ようなどと思うのかね? どうなっているか 知りたいのなら、想像してみればいいじゃないか。ゆっくり落ち着いて、目を閉じてだな、その向こうの 世界を自分で思い描いてみればいいのだ。おまえだって、子供のころは、それがあたりまえのように できたのだぞ、両目を開けたままでもな。もう、やりかたを覚えていないのかね? どうして忘れてしまったのかね?」 

 深い部分はさておいても(笑)、プードルを殺すことばかり考えている老人や、道路の真ん中で 交通を鎮静せしめようとする詩人、職場へ向かう人々を人知れず攻撃する竜など、変な登場人物も たくさんでてきて楽しいです〜♪ 何がよいといって、ミヒャエル・ゾーヴァの挿絵がとてもいいのです。 小さいくせにひどく太って妙にえらそうな王様の絵が、とても心に残ります。プードル救い機(特許取得済)も いいし、怒りのあまり“僕”のコーヒーに角砂糖をどんどん投げ込む王様は最高。



 
「キリンと暮らす クジラと眠る」 アクセル・ハッケ作 ミヒャエル・ゾーヴァ絵
那須田淳 木本栄 共訳 (講談社 98.7.1)
 ドイツの新聞記者で作家アクセル・ハッケの、大人のための童話集。身近な動物に ついての素朴な疑問に答える、情緒あふれる博物学入門書。

 ……と書いても、何のことやらさっぱりですね(^_^;) えー…たとえば、ヒキガエルの イボイボは何のためにあるのか、とか、ハト派とアンチ・ハト派の壮絶な闘いとか、クジラに 飲まれて丸一日過ごした人の話とか、はげた人を見るとそっと顔をそむけるフラミンゴの話とか。 ……ますますわけが分かりませんが、とにかくそういう不思議で心温まる(?)動物のお話が26編。 動物の生態やなんかは資料に基づいて描かれてるので、どこまで信じてよいのやら読んでても 分からないのです。ゴールデンハムスターの茶色い毛は、実は本当に黄金なのだ、という 話だけは嘘だって分かるけど(笑) 何よりミヒャエル・ゾーヴァの挿絵がいいのです〜。



 
「クマの名前は日曜日」 アクセル・ハッケ作 ミヒャエル・ゾーヴァ絵/丘沢静也 訳(岩波書店 2002.6.21)
「クマの名前は日曜日」  ぼくには、何をする時もいっしょのクマのぬいぐるみがいた。クマの名前は日曜日。でもぼくは、 クマが自分からは何もしようとしないことに、いつも苛立っていた……。2001年。

 ドイツの作家&画家、ハッケ&ゾーヴァのコンビでは過去に何作か大人のための絵本が出てますが、 これは子供向けかな。私はゾーヴァの絵が大好きなので、それにひかれて買いました(^_^;)
 子供の頃に誰でも体験したことがあるような少年とクマの心温まるお話から、奇妙な 世界のお話へ(^_^) ゾーヴァのちょっととぼけた絵が最高(*^^*) 翻訳もいいので、何度も 読みたい1冊です♪



 
「海の上のピアニスト」 アレッサンドロ・バリッコ/草皆伸子 訳(白水社 1999.11.15)
 客船ヴァージニアン号の楽団、アトランティック・ジャズ・バンドには、一人の天才ピアニストが いた。彼の名はダニー・ブードマン・T・D・レモン・ノヴェチェント。船の上で生まれ、 生涯船を下りることのなかった、史上最高のピアニストだった……。1994年。

 いいですね〜(ToT) 短いお話なんですが、胸に迫るものがあります。ヴァージニアン号に 捨てられていた、生まれたばかりの移民の赤ん坊。それが以来死ぬまで船を下りる事がなかった ピアニスト、ノヴェチェントです。死ぬまで船を下りなかった、というのもちょと違いますが…(^_^;)
 この物語は、ノヴェチェントの親友でヴァージニアン号の楽団のトランペット奏者が語る物語という形に なってます。楽しい語り口で(*^^*) ホントに楽しいエピソードがいっぱいあるんですよね。 ノヴェチェントの名前の由来、嵐の夜にピアノを弾く話、アメリカのジャズピアニストとの勝負…。
 そんなノヴェチェントも27歳の時、船を下りる決心します。でも結局降りなかった 理由は最後に明かされるのですが、生まれた時から船に乗っていた人らしい理由です(T_T) たぶん 誰も普段は意識すらした事がない、むしろ意識の外に追いやっているようなこと……。この 世界観が妙に新鮮です。時にはそんな風に世界を見つめることもいいですね。
 全体的にも〜ちょっと芝居っ気のない方が私の好みなんですが(^_^;)、それでも楽しかったです。 どこからともなくピアノの調べが聞こえてきそうな、とても素敵なお話でした(*^^*)



「ビアス短編集」 アンブローズ・ビアス/大津栄一郎 訳 (岩波文庫 2000.9.14)
 アメリカの作家アンブローズ・ビアス(1842−1914)の短編集。15編収録。  収録作品……
1…「月明かりの道」、「板張りの窓」、「死骸の見張り番」、「環境が肝心」、「男と蛇」
2…「アウル・クリーク鉄橋での出来事」、「チカモーガの戦場で」、「宙を飛ぶ騎馬兵」、
「哲学者パーカー・アダソン」、「行方不明者の一人」、「とどめのひと突き」
3…「ぼくの快心の殺人」、「猫の船荷」、「不完全燃焼」、「犬油」、「底なしの墓」


 『悪魔の辞典』で有名な…と書きたいんだけど、未読なので書けません(^_^;) 全体としては、 かちっとまとまっててリアルで皮肉で、ブラックユーモアのような短編が多いですね〜。1,2,3と 分かれてるのは、元の短編集『いのちの半ばに』がテーマごとに分かれてるからです。1が、 「恐怖の世界」、2が「戦争の世界」(南北戦争です)、3が「信じられない話の世界」。 個人的に1が一番好き。お気に入りの感想を以下に。
「月明かりの道」
 何不自由ない生活を送ってきたはずのジョエル・ヘットマンの母は、彼が大学生の時に 何者かによって絞め殺されてしまった。犯人は長い間分からなかったのだが…。
 事件に関わった3人(死人も含めて)が、それぞれ陳述をするんだけど、 みんな意見が食い違って、誰の言ってる事が正しいのかは謎……。芥川龍之介は これをヒントに『藪の中』を書いたのだそうですが、そんな感じ(^_^;) 

「板張りの窓」
 森の中に小さな小屋で一人寂しく生きていたマーロック老人は、なぜか小屋の たった一つの窓を板で打ち付けてしまっていた。その真相は、彼が若くして 亡くした妻の死に際をめぐる、恐ろしい物語に隠されていた…。
 そんなことがあったら、そりゃ窓のひとつも塞ぎたくなるでしょう(T_T) いやだー(T_T) 

「死骸の見張り番」
 無人の家の二階に、シーツをかけられた男の死体がある。やがて一人の男が部屋に入り、 外から鍵をかけられ、閉じ込められる。男の目的とは…?
 これもうちょっとあらすじを言いたいのですけど、作品の構成を ぶち壊しにしないために、あえてここまで(T_T) 面白いです〜。彼の目的も 面白いけど、その後の展開がミステリな感じですごくいいです。意外な結末。

「環境が肝心」
 真夏のある夜、道に迷ってしまった牛飼いの子供は、廃屋になっているはずの 空き家に奇妙な光を見つけた。近付いてみると、この世のものとも思えない顔を した男が一人テーブルに座り、ローソクの光で何かを読んでいる姿があった…。
 これも前作同様、怪談っぽい書き出しなんですけど、展開が似てるのでこれ以上 書けないという…。これも好きです。やっぱり、小説を読む時の環境って大事なのかな。 だからって何もここまで、しかも命賭けなくったって(^_^;) 暗いところで、一人では読みたくないお話。

「男と蛇」
 蛇の目は一種の磁力を持っていて、それに引かれた者は自分の意志とは関係なく 引き込まれ、蛇に噛まれて死んでゆく…爬虫類を専門に扱う動物学者のブレイトンは 本に書かれたそんな文章を一笑に付した。だが、ふと気付くと、ベッドの下に光る緑色の ふたつの点が。蛇が部屋に紛れ込んでいるのだ。今までに見たこともないその蛇を 見つめるうち、彼はいつしかその瞳に引きつけられ…。
 ばかばかしいけど、怖すぎます〜(T_T) 最後の2行を読むと、もう、 笑っていいのかなんだか。すっごく皮肉といえば皮肉なんですけど、 結末はそれ以上におかしいのです(^_^;) これも好き。

「チカモーガの戦場で」
 ある晴れた秋の午後、家を抜け出して近所の森を遊びまわる子供。いつしか眠り込み、 目を覚ました彼が見たものは、這いつくばって進む傷だらけの兵士たちの姿だった…。
 何も知らないって怖いです……。ホントに救いのない、悲惨なお話。 でもこの子供の無邪気さと、彼が後で目にするものの残酷さの対照が鮮やかなので心に残ったのです。

「とどめのひと突き」
 助けようもなく置き去りにされてゆく負傷兵の中に、マッドウェル大尉は友人の ハルクロウ軍曹を見つけた。彼は致命的な傷を負っており、死なせてくれと哀願しているかのように見えた…。
 もしかしたら…と考えると居たたまれないです。残酷で皮肉なタイミング…。

「ぼくの快心の殺人」
 母を殺した罪で逮捕された“僕”は、前にも残酷なやり方で 伯父を殺したことがあった。“僕”が誇りに思っている、その殺し方とは…?
 やめて(T_T) 間違ってもこんな殺され方はしたくない〜(T_T)

「猫の船荷」
 「メアリ−・ジェイン」号は、大量のマルチーズ猫を積み込んで、 マルタ島を出発した。その数12万7千匹。やがて船の上では大変な騒ぎが…。
 ひどい(笑) これ、笑い話なんですね♪ 猫に振り回される船員たちの、妙な行動がよいです〜(笑)

「不完全燃焼」
 盗んだ品物の配分でもめたので、“僕”は父を殺した。母に見つかると困るので、 母も殺した。警察署長のところへ言って今後について助言を求めると、死体を 本箱の中に隠して家に保険をかけ、その後家を燃やしてしまえばいい、と教えてくれた。 “僕”はさっそく実行に移すが…。
 ああもう、なんだかわけが分からない(笑) でも、皮肉な結末に笑えます♪ まさに不完全燃焼…(^_^;)



 
「心地よく秘密めいたところ」  ピーター・S・ビーグル/山崎淳 訳 (創元推理文庫 1988.11.4)
 ニューヨーク、ヨークチェスターの広大な共同墓地の古い霊廟。19年前にふとしたことからここに 住むことになったジョナサン・レベック。以来一歩も墓場を出ることなく、毎日友人の鴉に食事を 運んでもらい、平穏な生活を送っていた。ある日、彼のもとに一人の男が現れる。マイケル・モーガンと名乗るその男は、 最近死んで幽霊になったばかりだった。孤独な幽霊の話相手になったり、本を読んだりチェスをしたりするのが 長い間墓場に住んでいたレベックのしてきたことでもあったのだが…。1960年。

 この素敵なタイトルは…墓場のことです(^_^;) クイーンのは『心地よく秘密めいた場所』ですのでお間違えなきよう。
 …人生から逃げるように、生を否定するように、幽霊たちだけを相手に墓場で暮らすレベック。 ある日夫を失った素敵な女性クラッパー夫人に出会うけれど、やっぱり墓場の門を一歩も出ることが できなくて…。
 ファンタジーといえばそうなんですが、53歳のレベックが主人公、舞台が墓場なので明るくほんわかと いうわけにはいきません(^_^;) 外国の墓場は、広くてとても明るいですけどね…。 ストーリーも、例えばマイケルを毒殺したという奥さんの裁判のことや、クラッパー夫人の日常や、 マイケルとローラの生についての言い合いなんかは書かれているけど、それも妙に内省的というか…淡々としたものです。 唯一コミカルな存在といえば、レベック氏に1日2回食べ物を運んできてくれる鴉ですね。何故かみんな彼と話ができる(^_^;) 彼の皮肉なセリフもなかなかいいです。
 墓場に住み続けるレベック氏は、どんなにそこが心地よくても、 それがただの猶予期間であることは彼自身心のどこかで分かっていたんでしょうね。 でもそのことと、慣れてしまった状況を実際に変えるということは全く別のこと。 墓場を出たくない、でも誰にも傷つけられることなく自分の存在を認めてほしい…ということかな。 たぶん誰もが、特に若い頃に一度は落ち込むような、心地よい落とし穴のような考えでしょうか。 彼はずっときっかけを待っていたのかも。自分以外の誰かのために、というのは、そのきっかけとしては 悪くないですね(^_^)
 作者19歳の時の作とか。そのせいか…表現の初々しさに引かれつつも、なんかまわりくどさが 気になったり(^_^;) 好みの問題かもしれませんけど、全体的にも何もかも詰め込もうとして逆に 散漫になってるというような印象があって、もちょっと短くてもよかったかなと思うのですが…。 もっと後に書かれた作品を読んでみたいですね。



「話を聞かない男、地図が読めない女」 アラン・ピーズ+バーバラ・ピーズ/藤井留美 訳
 (主婦の友社 2000.4.25)
 「たまたま同じ地球上に住んでいるだけの異星人」くらいに、男と女は違う―――。何故男は 人の話を聞かないのか、何故女は地図が読めないのか、などという男女の違いを、 脳の違いから分かりやすく解説。1998年。

 ベストセラーになった本ですが、それもよっく分かります(^_^;) なんだかんだ言ったって、 男には女が、女には男が永遠の謎ですもんね〜(笑) …というか、この本自体もとても面白いんです。 ちゃんと脳の仕組みを生物学的に解説しながら、男女のいろんな行動の違いはそもそも脳の 違いであるというコトを突き止めてゆくわけです。しかも、かなりくだけた調子で、身につまされる よーな実例をはさみながら(爆)。これは、一読の価値はありますね(^_^;) 特に、身近な異性の 行動に不満を覚えておられるよーな方には(笑) でもこの本を読むと、他の本を読んでいても、例えば 男性の作家は女性の登場人物をこんな風だと思いながら書いてるのか、などと考えて密かに楽しいわけです(^_^;)
 これには「男脳・女脳テスト」がついていて、自分が母親の胎内にいる時、ホルモンによって どっちの脳になったのか、というのが、まあ遊び半分ですが分かります(^_^;) 私は時間を置いて 2回やったのですが、2回とも男脳という結果が(T_T) うう(T_T) まあ、楽しいことはとにかく楽しい本です(^_^;)



 
「ふたりジャネット」 テリー・ビッスン/中村融 編訳(河出書房新社 2004.2.18)
 米国のSF作家テリー・ビッスン(1942-)の短篇集。9編収録。
 収録作品…
  「熊が火を発見する」、「アンを押してください」、「未来からきた二人組」、「英国航行中」、
  「ふたりジャネット」、「冥界飛行士」、「穴の中の穴」、「宇宙のはずれ」、「時間どおりに教会へ」


 テリー・ビッスンは短篇の名手だそうですね〜。楽しい作品ばかりの短篇集♪ SFというよりちょっと不思議なお話 という感じですね。飄々とした語りのユーモアとペーソスがとても良いです(^_^) どの作品も甲乙つけがたいですが、 以下にお気に入りの感想を♪

「熊が火を発見する」
 タイヤがパンクして立ち往生したおれと甥のウォーレス・ジュニアは、松明を持った 熊に出会った。その後各地で焚き火を囲む熊たちの姿が目撃されるようになる…。
 想像するとなんだかほのぼのしてしまうお話です。でも、そこはかとない悲しみの余韻…。 味わい深いお話です(^_^)

「アンを押してください」
 映画を見にいくためキャッシュ・マシンでお金を下ろそうとしたエミリーとブルース。 と、お取引ボタンのなかに"お天気"の項目を見つけた二人は当惑してしまう…。
 会話だけで進むショート・ショート♪ どんどん暴走して妙なメッセージを表示する キャッシュ・マシンが笑えます(^_^) 実際こんな目にあうのは困るけど(笑)

「英国航行中」
 ブライトンに隠居しているフォックス氏は、毎日眺めている海がいつもと違うことに気付いた。 その後彼はイギリス全土がどこかへ向かって動いているというニュースを耳にする。 イギリスは一体どこへ向かっているのか…?
 いいですね、こういうとんでもないお話♪ でも語りが淡々と事実のみを語ってるので大事件という 感じがしませんね。それほどは(^_^;) イギリスはフォックス氏のために動いたんでしょか。 これもほのぼのした中になんとなく哀愁漂うお話。

「冥界飛行士」
 事故のため盲目になった画家のわたしの元へ、二人の学者がやってくる。彼らが研究しているのは、 死者を蘇生させる実験だったが、臨死体験によって見える死後の世界を描いてくれる画家を 探していたというのだった。死んでいる間は目が見えるようになる、という言葉に引かれて わたしは実験に参加することになる…。
 死んでいる間、目にする世界とその心地よさが彼をどんどんひきつけるようになって…。 このお話だけ他のと違ってちょっと暗いトーンの語りです。これが実は一番好き…というより 引かれるお話です(^o^;)

「穴の中の穴」
 ヴォルヴォの部品を見つけるため、アーヴィンは「穴」と呼ばれる廃車置場へ向かった。 最近何故かなかなかたどり着けなくなってきているというその場所は、 廃車になったヴォルヴォの山だった。彼はそこで友人のウィルスン・ウーがほしがっていた車を見つけるが、 その話を聞いて「穴」に向かったウーが興味を持ったのは別のものだった…。
 この話と「宇宙のはずれ」、「時間どおりに教会へ」の3作は、"万能中国人ウィルスン・ウー" シリーズです♪ このシリーズがこうしてまとまるのは世界初とか(^_^;) 面白いのに…。 物理学と法律と数学を学び、パン職人やら隊商の修行やらをし、身長が186センチもある中国系アメリカ人、 ウィルスン・ウー。ワケの分からない数式をひねくりまわし、そこから導き出す結論も意味不明。 胡散臭いようでいて、わりと自然に存在してるのが妙に不思議。そんな彼と 友人のアーヴが出会う宇宙の神秘(笑) どれも楽しいストーリーです♪



「レベル3」 異色作家短編集3 ジャック・フィニイ/福島正実 (早川書房 日)
 フィニイの短編集。11篇収録。
 収録作品…「レベル3」、「おかしな隣人」、「こわい」、「失踪人名簿」、「雲の中にいるもの」、「潮時」、
 「ニュウズの影に」、「世界最初のパイロット」、「青春一滴」、「第二のチャンス」、
 「死人のポケットの中には」


 フィニイの作品は初めて読みますが、ちょと幻想っぽく、SFっぽく、サスペンスっぽくもあって、でもほのぼのした感じ ですね。こういうのは好きです(^o^) 以下にお気に入りの感想を♪

「レベル3」
 ニューヨークのグランド・セントラル駅で、ぼくは奇妙な体験をした。あるはずのない地下3階に 紛れ込んでしまったのだ。しかも、そこは過去の世界だった。戻ってきてこの話をしたぼくは、 友人の精神科医にはいろんな忠告をされるが…。
 これはラストの1行のためのお話ですね(笑) 最高です〜(^o^)

「おかしな隣人」
 リュイス夫妻の隣に、ヘレンベック夫婦が越してきた。やがて近所づきあいを始めたリュイス夫妻だったが、 ヘレンベック夫妻にはどことなく奇妙なところがあるのだ。ある日彼らは、夫のテッド・ヘレンベックが書いたという 未来のSF小説の話を始める…。
 タイムトラベルもの、なんですが、なんて皮肉なお話なんでしょ(^_^;) タイム・マシンがこんなふうに 世界の終わりを招いてしまうなんて〜。

「雲の中にいるもの」
 チャーリイは友人の紹介で、まだ会ったことのないアニイに電話をかけてデートに誘った。お互いに相手の声を 聞いた瞬間、二人の頭の上にぽっかり雲が浮かび、想像上の相手の姿を映し出す。状況が変化するたびに、 雲の中の姿は変化していくが…。
 人間の想像なんて、ころころ変わるい〜かげんなものなのですね(^_^;) 想像より悪かったことへの落胆より、 想像ほど悪くなかったことへの安心の方が大きいんでしょかね〜。

「ニュウズの影に」
 クラリオン新聞の若き社主であり主筆のジョニイ・ドイッチは、大きなニュースがないことにくさくさしていた。 ある日彼は退屈しのぎに、警察署長ケイルが犬に尻を噛まれたという記事を書いていた。しかしその記事が手違いで 本当に新聞のトップを飾ってしまう。絶望したジョニイだったが、何故かその記事通りの事件が起こって…。
 いいですね(^_^) ホントに起こりそうな事件の記事しかホントにならない辺り。恋に悩むジョニイも なんだかほのぼのしていて良いです(^_^)

「青春一滴」
 同じ町に住んでいるが面識のないルイーズとラルフは、小説のような出会いが本当に起こるのを ひそかに望んでいた。同じ雑誌の「恋の手ほどき」という小説を読んだ彼らは、やがてバスの中で互いを認める。 そして小説のとおりに行動を起こそうとするが…。
 いいですねぇ、味気ない現実の人生をただ生きるより、人生を小説に近づけようという微笑ましい努力。 小説のようにはすんなりうまくいかなくても、確かに悪くない考えですね(^_^) 作者の言う「世界平和の鍵」と まではいかないかもしれないけど、人生がちょとだけ明るくなるかも(*^^*)



「ゲイルズバーグの春を愛す」 ジャック・フィニイ/福島正実 訳(ハヤカワ文庫FT 1980.11.30)
 ジャック・フィニイの短篇集。10編収録。
 収録作品…
  「ゲイルズバーグの春を愛す」、「悪の魔力」、「クルーエット夫妻の家」、「おい、こっちを向け!」、
  「もう一人の大統領候補」、「独房ファンタジア」、「時に境界なし」、「大胆不敵な気球乗り」、
  「コイン・コレクション」、「愛の手紙」


 フィニイは不思議な作家ですね。ミステリともSFともファンタジーともつかない、というより そんなジャンルを越えた、とても素敵な作品ばかり(^_^) 過去への憧憬、現実からの跳躍… ちょっと切ないけど何か胸の奥にじんと暖かいものが残る、そんなストーリーばかり♪  みんなすごくいいんですけど…以下に特にお気に入りの作品を。

「ゲイルズバーグの春を愛す」
 イリノイ州ゲイルズバーグの新聞社に勤める私は、この地に工場建設のためにやってきた マーシュの取材をする。マーシュはとある不思議な出来事に遭遇したために、工場建設の中止を 余儀なくされてしまったのだったが…。
 古き良きアメリカの面影を残す街、ゲイルズバーグ。気付いていないだけで、 ほんとはいろんな場所でこんな事が起きているのかも、と思えるような素敵なお話ですね。 一抹の寂しさを伴うお話でもありますが…。

「クルーエット夫妻の家」
 建築士である私は、ヨット会社を営む友人クルーエット夫妻の夏の家の設計を頼まれていた。 なかなか納得のいかない夫妻だったが、1880年代初期の家の設計図を見つけ、その家を 建てることに決める。莫大な費用をかけ、やがてその家は完成するが…。
 当時そのままの材料と建築法で建てた、新築の古い家(^_^) 夫妻が何かにとり憑かれてしまった のだとしたらちょと怖いけど、同時にうらやましくもあるのは何故なんでしょう…?

「おい、こっちを向け!」
 サンフランシスコの新聞社で書評欄を担当している私は、若くして死んだ作家マックスの 幽霊をしばしば見かけるようになる。生前の彼とは親しい友人だったのだが、彼の死をしばらく 知ることなく過ごしていたのだった…。
 幽霊は何故この世に現れるのか。認められない沈黙の叫びが、痛々しくもあり、 妙に滑稽でもあり…。なんだかとても哀しいお話です。

「大胆不敵な気球乗り」
 妻と子供が留守にしていたとある日、空を自由に飛ぶ鷹を見ていたチャーリイは、 突然同じように空を飛びたくなった。そこで彼は自分で気球を作り上げると、一人で 夜空を散歩し始めた…。
 淡々と気球を作って空を飛ぶという何の変哲もないお話なのですが、 何も起きなかったとも、すごい事が起こったともいえる…不思議なお話(^_^) 夜空を飛ぶ気球、 素敵な光景です。平凡な日常に戻っても、あんな記憶を胸に生きていけたらいいですね…。

「愛の手紙」
 骨董屋で古い机を買ったぼくは、そこに隠し抽斗があるのを見つけた。しかもその中には、 空想の恋人に宛てた一通の恋文が入っていたのだった。胸を打たれたぼくは、その手紙に返事を書くことにする…。
 時を越えて、ほんの一瞬だけ奇妙な出会い方をした二人……切ない、切な過ぎるお話です(T_T)  それでもやっぱり、出会えてよかったのでしょうか……。あ〜、もうほんと泣けてきます(T_T)



「クイーン・メリー号襲撃」 ジャック・フィニイ/伊藤哲 訳 (ハヤカワポケミス 1967.11.15)
 見送りで乗船した豪華客船クイーン・メリー号上で、ヒュー・ブリテンは昔海軍にいた時の知人ヴィックに出会った。 日々の生活に倦み、安定した生活を望む恋人とも別れたヒューに、ヴィックは途方もない話をもちかける。 それは40年前から海底に沈んだままになっているドイツの潜水艦U・19を引き上げ、とある計画のために 使おうというものだった…。1959年。

 これは一応冒険小説なのかな〜。映画化もされてますね。冒険という言葉に魅せられた男たちが、 古い潜水艦を引き上げ、それで豪華客船を襲おうってな話です。
 そういう風に分けるのもどうかなと思うのですが、やっぱしこういうのは男性向けでしょかね。 どうも私は登場人物たちが熱くなればなるほど冷めてしまって(笑) そこまでやっといてそれ?と 言いたくなる展開(というかヒュー)も、なんかもやもやと後味悪いです…。同じストーリーで 同じ結末でも、もうちょっと違う書き方もあったような。そんな中、唯一私が心惹かれたものは仲間の 一人リンクの夢ですね。そのためだったら豪華客船襲いたくなる気持ちも分かるかな(爆)  フィニイの他の作品が好きな人でも評価が分かれるんじゃないかな〜という感じの作品でした…(^_^;)



「マリオンの壁」 ジャック・フィニイ/福島正実 訳 (角川文庫 H5.2.10)
 サンフランシスコの古いアパートに住むことになったニックとジャンの若い夫婦は、 剥がした壁紙の下から口紅で殴り書きされた落書を見つけた。「マリオン・マーシュここに住めり…」 かつてこの部屋に住んでいたニックの父親の話によると、それは半世紀も前に彼と一緒に暮らしていた 無名の女優が残したものだった。その数日後、夫妻は偶然TVでマリオンの出演した映画を観る。 マリオンの魅力を痛感するニックだったが、彼女の幽霊が妻に憑依したから大変なことに…。1973年。

 映画好きならきっとたまらないファンタジーですね。とはいえ、確かこれ絶版ですが…。
 もう少しでハリウッド女優になれるという寸前で死んでしまったマリオン。1920年代に生きていた 彼女の語る当時の映画関係者の様子に魅了される映画好きのニック。なんかジャンだけが割を 食っているような気が…(^_^;)
 最初はマリオンの傲慢さとニックの勝手な解釈に腹が立った上、この二人の乱痴気騒ぎは ちと見ちゃいられなかったんですが(-_-;)、物語後半からは20年代の映画に魅せられる切羽詰った ような憧れの気持ちがひしひしと感じられて良かったです。 特に、ハリウッドのテッドのお屋敷。このシーンのためだけにこの作品が存在してるといってもいいような…。 映画のことは全然知らないのですけど、それでも胸が苦しくなるようなラスト。いいお話でした。 なにが好きって、犬のアルが一番好きですね…(^_^;)



「水妖記(ウンディーネ)」 フーケー/柴田治三郎 訳 (岩波文庫 1938.1.15)
 森の中で道に迷った若い騎士フルトブラントは、湖のほとりの猟師小屋を訪れる。 そこに住む老夫婦は以前生まれたばかりの子供をなくし、どこからともなく現れた 少女を養女にしていた。だが、湖のような青い目と目の醒めるようなブロンドの髪を 持つウンディーネは、魂を得るために人間の男と愛によって結ばれることを願う水の精だった…。1811年。

 こういうお話は、めでたしめでたし、で終わらないというのはお約束みたいなものですけど、 美しくはかないおとぎ話と言うには、ちょっと生々しいお話。一度はフルトブランドと結ばれて 魂を得る事のできたウンディーネですが、彼女の正体を知ったフルトブランドは徐々に他の女性に 目を向けるようになります。どうでもいいけど、これ、男女の立場が逆な話ってないのかな(^_^;)
 ついにウンディーネは、聖霊の掟に従ってフルトブランドを殺さなければならなくなります。 もしこんなやり方で人が殺せるなら、それはそうなっても仕方がないんじゃないかと思えるくらい、 哀しいシーンです。フルトブラントもベルタルダも、ウンディーネが良い子すぎるせいも あってとてもひどい人たちに見えるけど、普通の弱い人間なんでしょうね。ウンディーネの伯父の キューレボルンやハインルマン神父の気持ちも、すごくよく分かります。魂を持つというのも、 美しいことばかりじゃないというか…。短いけれど、とても心に残るストーリーです。



 
「風が吹くとき」 レイモンド・ブリッグズ/さくまゆみこ 訳 (あすなろ書房 98.9.30)
 第二次世界大戦を乗り切り、老後をイギリスの田舎で過ごすジムとヒルダ夫婦。ある時戦争が起こり、イギリスに 原爆が投下されます。しかし彼らはその後も普通に生活を続け、体の異常も放射能のせいだとは気付きません…。

 かなり昔に学校の図書館で読んだような記憶があるのですが、イギリスで1982年に出版されたなら、 私が読んだのはもっと後ということで、そんなに子供の頃でもなさそう (注:以前は別の出版社から出ていました)。 映画は確か高校生の頃見たような。最初読んだ時はとにかくこの夫婦の無知さというか、妙なズレがもどかしくて 仕方なかったのですが、よく考えると(考えなくても)そんな問題じゃなさそうだ。よくできたブラックユーモアと ゆー見方もあるかもしれないですが、笑えません。ブリッグズのほのぼのとした絵で語られるだけに、かえって怖い。 最後の方のページなんてもう、絵本とは呼べませんよね。放射能にやられ、歯茎から血が出て髪が抜けて…。それでも二人は 「歯医者に行かなきゃ」だの「女性ははげないから大丈夫」だの言うだけ。怖い…。とにかく怖い本です。


 
「K−パックス」 ジーン・ブルーワー/風間賢二 訳 (角川文庫 H7.11.25)
 ニューヨークのマンハッタン精神医学協会に、自らをプロートと名乗る男が収容される。 ドクター・ブルーワーの質問に対し、彼は自分が“K-PAX”という星からやって来た異星人だと 主張した。彼を疑いながらも、その知識の豊富さと他人を癒す力に、ブルーワーは興味を抱いて ゆくが…。1955年。

 まず、プロートってほんとは一体誰なんだろう、という謎にどんどんひきつけられてしまいますね。 精神病院に連れてこられ、いわゆる「治療」を受けながらも、彼は普通に見えます。ブルーワーと セッションをしていても、むしろブルーワーの質問にいらいらさせられてしまうような。それに “K-PAX”って、なんだか素晴らしい星みたいに思えるんだけど(^_^;) 一つ印象的な セリフが。「心の病とは、他人をそういうふうに見なす心の内面にあるんだ。しばしばこの地球でも、 大衆と異なる考えを抱いたり行動を取ったりする人々のことを精神病者って呼んでるよね。」 ……やがてプロートの謎が、ちょっとづつ明らかになります。でも、最後にはもっと大きな謎が 残りますよね。人間の精神て一体、どれだけのことができるんだろう? 琴座の方を向いて、 そんなことに思いをめぐらすのもいーかな(^_^)



「コン・ティキ号探検記」 T・ヘイエルダール/水口志計夫 訳 (ちくま文庫)
 人類学者のトール・ヘイエルダールは、ポリネシア人は南米から筏に乗って移住してきた人々なのでは ないかという仮説を証明すべく、5人の仲間たちと古代の筏に乗って太平洋に乗り出す。

 子供の頃に読んで以来、何度読み返したか分かりません。たった一隻のいかだで太平洋を漂流するなんて無謀を通り越して 自殺行為なのでは、と誰もが思う中、彼らは見事にやってのけます。仲間を集めることからはじめ、筏作りの一部始終、 海で出会う未知の生き物、激しい嵐など、大人になってから読んでも十分楽しめる作品です。学説の証明なんていうと 堅苦しいけど、ヘイエルダールの文章はユーモアにあふれ、6人の仲間たちの行動に笑ってしまうことも。ヘイエルダールの 学説は結局認められませんでしたが、夢がありますよね。



「ベイツ短編集」 H・E・ベイツ/八木毅 訳 (八潮出版社 1967.6.15)
 イギリスの作家ベイツ(1905-74)の短編集。9編収録。
 収録作品…「小さな農場」、「燈台」、「牛」、「仲秋の満月」、「愛ならぬ愛」、
      「ピーターという名の娘」、「ドイツ田園詩」、「きもの」、「水車場」


 イギリスでは有名な作家だそうですが、日本ではそうでもないみたいですね(^_^;)  どれもイギリスの何の変哲もない風景の中で展開する普通の人たちのストーリーですが、妙に やりきれないものが残ります。平凡な人生のきらっと光る瞬間を (といっても美しいものばかりではないですが)とらえたいい作品ばかりです。でもたぶん現代人には ちと刺激がなさ過ぎるんでしょう(^_^;) この本は絶版ですが、ベイツの作品は他にもいろんなところに 収録されてますのでそちら(例えばこれ)で。以下にお気に入りの感想を。

「小さな農場」
 亡くなった母から小さな農場を受け継いだトム・リチャーズだったが、人手が足りなくなり 新聞に求人広告を出す。やってきたのは、エドナ・ジョンソンという若い女性。彼女は てきぱきと働くが、やがていつも農場に牛乳を持ってくるエメットと険悪な雰囲気になってしまう。 それはエメットが、トムが無知なのをいいことに勘定をごまかしているのを知ったからだった のだが……。
 農場の情景が美しいですね。うまくいっていた二人だったのに、一体何が起こったのか…… ちょっと残酷なお話です。

「牛」
 小さな丘の上に住んでいるサーロウ一家の夫人は、ただ一途に働いて 息子のためにこつこつとお金をためていた。そんなある日、彼女の夫が血まみれになって帰ってくる。 翌朝夫は彼女のためた金を持って蒸発してしまう。やがて警察が事情を聞くために彼女のもとに やってくるが……。
 殺人を犯した夫の行方や罪よりも、お金のことしか気にならないサーロウ夫人。ただ目の前にある 草を食べつづける牛のような、善も悪もないところにいる彼女の姿が印象的です。

「愛ならぬ愛」
 リリアン・ジョーダンはいつも行くレストランでハリー・トラヴァーズという男性に出会った。 彼に心惹かれるリリアンだったが、やがて彼の足が義足であることに気付く。毎日のように 彼の農場に通い、彼の仕事を手伝うリリアンだったが…。
 小さな農場の描写がとても美しい作品です。ハリーに同情してるのか本当に愛しているのか 分からなくなってしまうリリアンが、妙に哀れに思えてきます。

「ピーターという名の娘」
 小さい頃から父親に男のように育てられてきたピーターという名の娘。年頃になった彼女は、 自分が人と顔を合わせられないことに気付く。ある日彼女は家の近くを測量していた技師に声を 掛けられる。女として認めてほしい彼女だったが…。
 彼の何気ない一言。何も知らずに言われただけに残酷です。切ない物語ですね。

「ドイツ田園詩」
 リチャードソンは友人カールの20年ぶりの帰郷に伴い、ドイツへと訪れた。彼らを温かく迎えて くれる人々の中に、美しい女性の姿があった。言葉が全く通じないながらも、やがて彼は彼女と 心を通わせてゆく…。
 ドイツの風景の美しい、旅情のあるお話ですね。ほんのひと時のはかない恋が、言葉が通じないだけに いっそう切ないものに感じられます。

「水車場」
 17歳になったアリスは、ホランド家に奉公することになった。病気で臥せっている ホランド夫人のためにアリスはかいがいしく働いたが、やがてホランド氏が彼女の元へ 忍んで来るようになる。何も分からないまま彼を受け入れつづけるアリスだったが…。
 無知だからという理由でもなく、無気力にすべてを受け入れつづけるアリス。すべてに 無感動だった彼女が、ホランド家から家に戻されて初めて見せる涙がとても痛々しいです。



「クリスマス・ソング」 H・E・ベイツ/大津栄一郎 訳(福武文庫 1990.5.11)
 イギリスの作家ベイツ(1905-74)の短編集。10編収録。
 収録作品……「クリスマス・ソング」、「軽騎兵少佐」、「水仙色の空」、「豊穣の麦」、「田舎の社交界」、
   「咲け、美しきばら」、「楡の木の上の恋」、「かわいい女」、「ロスト・ボール」、「セルマ」

 やっぱりどれもいい作品ばかりですね〜(T_T) 読んでいるととてもそんな気はしませんが、 ここに収録されているのはどれも第二次世界大戦以後に書かれた作品。田舎の人々の平凡な物語なのに、 心に残るかすかな哀しさ。人物は古風で特に変わった出来事も起こらないし、自然描写やら 情景描写やらが少々長いので、前にも書いたようにあんまり現代人向きじゃないかも。でも、 私はそういう小説がとても好きです。そしてここに収録されてるのもそうですけど、 ベイツは女性を描くのがうまいというか…あとがきにもありますけど、他の何である前に 女性であるという感じの女性。その女性たちの、善悪を超越している感じもけっこう好きです。 この辺はもう、読んでいただくしかないんですけど……この本も絶版です、残念ながら(-_-;)  以下にお気に入りの感想を♪

「クリスマス・ソング」
 楽器店を開きながら声楽を教えているクララは、今年のクリスマスはいつも招かれる パーティーに行くのはやめようと思っていた。クリスマス・イヴの夜、彼女が店を 閉めようとしていると、一人の客がやって来た。数フレーズしか覚えてない歌を 自分の彼女に贈りたいという客に、歌を思い出させようとするクララだったが…。
 手が届きそうで届かないもどかしさ。でも、彼女がつかまえようとしているのは、思い出せない 歌だけではないのかも…。なにがどうというわけじゃないのですけど、なんとなく心に残る 素敵なお話です(^_^)

「軽騎兵少佐」
 妻とスイスへ来ていた私は、軽騎兵少佐のマルティノーと知り合いになった。あとからやって くるという妻の到着を待ちわびているマルティノーだったが…。
 若い奥さんに振り回されるマルティノー少佐がすっごく哀れ(^_^;) こんなの目の前で 見せられたらいたたまれませんねぇ。 ユーモアと哀愁に満ち満ちた楽しい1篇です。個人的に、 ユングフラウの風景が懐かしい(^_^)

「豊穣の麦」
 子供に恵まれないことを気に病みつづけながら25年間暮らしてきたモーティマー夫人は、 自分の農場で生まれた子牛が死んでしまったのをきっかけにふさぎ込むようになった。医者に勧められ 引っ越しをしたモーティマー夫妻は、エルジーという18歳の女性を雇うことにした。 ある日モーティマー夫人は、エルジーにはかつて養子に出した赤ん坊がいると聞いて びっくりする。
 そしてその後、自分の夫とエルジーとの間にできてしまった子供を、モーティマー夫人は…。 な、なんか間違ってる気もするけど、モーティマー夫人がいいならいいのか(-_-;) 逆にそれほど これまでの彼女の苦しみは大きかったのかな…。しかし、スゴイ話なのになんて 爽やかなラスト…(ToT)

「咲け、美しきばら」
 19歳の娘スージーがボーイフレンドの家に行ったきり、真夜中を過ぎても帰らない。 心配で眠れない父親のカートレットは、パジャマのまま門の周りをうろつき始める…。
 娘を持つ父の行動が、哀しくも滑稽です。「子供というものは親をなんと道化じみて 見させることだろう」と自分で分かってて繰り返しつつも、落ち着いていられないカートレット。 それでいて妙に父親の威厳を保とうとするあたり、かわいいですね〜(笑) 短いけれど 素敵な作品です。

「楡の木の上の恋」
 ちょっと変わった一家として知られていたキャンドルトン家。私は幼い頃、一家の早熟な 7人姉妹のうちの五女ステラと、楡の木の上で結婚式遊びをした事があった……。
 幼い日の淡い恋、というか漠然とした憧れのような、ほのかな思いが爽やかに描かれてます(^_^)  時が流れて全てが原形を留めないほどに変わってしまっても、こういうほんのちょっとした 思い出がいつまでも忘れられないものなんですね〜。

「かわいい女」
 スラム街の「穴ぐら」で生まれ育ったバーサは、母親の気遣いでいつも美しい洋服を着、 男性の気を引かずにはいない姿をしていた。やがて17歳になった彼女は、金持ちの老人と結婚して周囲を 驚かせる……。
 何度結婚してもどんな男性と付き合っても、自分を相手の好む女性にくるくると 変えてしまうバーサ。それでいて、いつまでも無垢な姿のまま…。いろんな意味で恐ろしいですね(^_^;)

「セルマ」
 ホテル「ブレイナム・アームズ館」で働くセルマは、1日かかっても向こう側にたどり着けないと 教えられていた森を散歩するのが好きだった。18歳の時、一緒に森まで散歩した客ジョージ・ファーネス という男性に心を引かれ、いつかまた来るという彼をいつまでも待ちつづける。長い年月が経ち、 多くの男性が彼女を慕い、ホテルの中を通り過ぎていったが、彼女の心はジョージ・ファーネスを 求めつづけていた…。
 切ないお話です。ただ一度会っただけの男性が、長い歳月がたっても、相手も自分を 覚えていてくれたという哀しさ。でもそれだけでこの物語は終わってないんですよね。 彼が住んでいると聞かされたロンドンに、結局一度も行かなかったセルマ。それは、 1日かかっても果てが見えないと、確かめもせずに信じ込んでいた森にも似ていて…。なんだか やりきれないけど、こういうのは好きです(T_T)



「サイラスおじさん」 H・E・ベイツ/大島一彦 訳 (王国社 1990.4.30)
 私の大おじさんサイラスの思い出話を綴る、連作短篇集。1939年。14編収録。
収録作品…「百合」、「意外な話」、「結婚式」、「ゆびきりげんまん」、「可笑しな話」、
    「牝豚とサイラス」、「鳥撃ち」、「善人サイラス」、「幸福な男」、「サイラスとゴリアテ」、
    「サイラスの青春」、「競争」、「サイラスおじの死」、「再訪」


 見た目は醜く豪放磊落、酒と女が大好きで、口を開けば悪態かほら話。でも畑や庭を作ることに かけては一流の、田舎ならどこにでもいそうな(?)、93歳のサイラスおじさん。そんな彼の 眉唾モノだけど面白おかしい話が、連作短編という形で綴られてます(^_^) こういうおっちゃん 日本にもいますね〜。大人たちは大迷惑だけど、子供の目から見ると面白くて仕方がない♪  英国の美しい田舎を舞台にユーモアとペーソスを交え、時には子供に聞かせられないような話も ちょっとばかし織り交ぜながらも(爆)、じわりと心にしみいる素敵なお話ばかりです。 そしてまたサイラスおじさんの花咲き乱れる庭とか、じゃがいもやいんげんの畑、美味しそうな お酒とか(笑)、英国の田舎暮らしの描写が素晴らしい(T_T) サイラスおじさんの 昔話ですから、書かれた時代の割には古きよきイギリスを十分満喫できるんですね〜(*^^*)
 とはいえこれ、今までに読んだ他のベイツの作品とちょっと違う雰囲気ですね。連作ですから、 そこはシリーズでしか生かせないようなことも取り入れて、ちょっと軽い ユーモア小説という感じです。挿絵もいっぱい入ってるんですが、素朴で妙に笑えます(笑)  短い作品ばかりなのでひとつひとつ感想は書きませんが、 どれもそんなばかなと思いつつもついニヤリとしてしまう、素朴でおおらかな楽しい作品ばかり。 それだけに(?)最後の「再訪」にはちょとじ〜んときました。ホントによかったです(T_T)

 ……と、言うだけ言っといてアレですが、この本も他のベイツの本同様絶版です(x_x) こういうのは はやらない時代なんでしょかね。一抹の寂しさを覚えつつ…。でももったいないな、やっぱり。 こういうのがひっそり埋もれていくのは……。


「ガラスびんの中のお話」 ベアトリ・ベック/川口恵子 訳 (ハヤカワ文庫FT 1980.2.29)
 フランス妖精譚の伝統を継承しつつ、現代の視点から描かれたメルヘン集。20篇収録。
 収録作品……「イリドとイルリーヌ」、「姫泣き鳥」、「鏡のない宮殿」、「魔女の赤ちゃん」、
「小さなおばあさん」、「三人の花嫁の塔」、「風の子ども」、「雪のばら 砂のばら」、「ガラスの少女」、
「のろ公と妖精」、「月の王子」、「狐火のむすめ」、「ドッグ」、「魔法の晴れ着」、「ガラスの鈴」、
「りこうなムカデ」、「インク壺のカエル」、「小さな皿洗い」、「奇妙なクリスマス」、「三人の守り神」


 ベアトリ・ベックは初めてですが、作家としては有名なんだそうですね(^_^;) この本は 子どものために書かれた童話集だそうです。…が、この物語に含まれた皮肉とか矛盾とか、 人生の機微(?)みたいのはやっぱり、大人の方がよく分かるんではないかと思います。どれも 美しい言葉でつづられた一見きれいでかわいい小品なだけに、含まれた毒がいっそう苦く痛々しく 感じられます(^_^;) 一編一編の感想は述べませんが、お気に入りは……どうしても 子どもがほしくてたまらない醜い魔女のお話『魔女の赤ちゃん』、無報酬でパーティーの支度を てきぱきこなす不思議なおばあさんのお話『小さなおばあさん』、ガラスで出来た壊れやすい女の子の お話『ガラスの少女』、いつも皿洗いばかりさせられている少女のもとに訪れた奇跡『小さな皿洗い』、 絶対に結婚したくなかった娘が妖精に頼んで父親無しで生まれた娘の話『三人の守り神』などです♪



「ヘッベル短編集」 ヘッベル/実吉捷郎 訳 (岩波文庫 1971.12.14)
 ドイツの劇作家ヘッベル(1813−1863)の短編集。8編収録。
 収録作品…「理髪師チッターライン」、「アンナ」、「妙な晩」、「仕立て屋シュレーゲル」、「山小屋の一夜」、
「マッテオ」、「牝牛」、「ルビー」


 ヘッベルはドイツの有名な劇作家なんですが(^_^;)、それはこの際置いときましょう(爆)  この短編集は彼が若い頃書いた、ほとんどすべての短編作品だそうです。完成度はそれほど高くないんですが、 人間のどろどろした心理を深く突いた作品が多くて、とても150年位も前の作品とは思えないです。いいですね、 こういうのは好きです〜(*^^*) 凄惨で皮肉な結末のお話が多いです。以下にお気に入りの短編の感想を一言♪

「理容師チッターライン」
 妻を亡くしてから娘アガーテと二人暮しだった理髪師のチッターラインは、ある日一人の青年レオンハルトを弟子に迎えた。 だがチッターラインはアガーテを溺愛するあまり、レオンハルトの行動を監視し始める…。
 やがて狂気に取り付かれてしまうチッターラインがものすごいですね。歪んだ愛情が怖くなるお話です。

「山番小屋の一夜」
 友人同士のオットーとアドルフは、旅の途中でとある山晩小屋に泊まることになった。小屋に住む恐ろしげな老婆とその息子の 猟師に怯えきっていた二人。おまけに泊めてもらった屋根裏部屋でとんでもないものを発見してしまった二人は……。
 ばかばかしいといえばばかばかしいですけど、こういうオチ(?)は好きです(^_^;) 二人のさぞ長かったであろう 夜が目に浮かぶような(^_^;) 猟師の機転が最高です♪ なんとなく感動的なラスト……(T_T)

「マッテオ」
 若く美しい青年だったマッテオは、あるとき病にかかり、美しさが失われてしまった。誰からも 相手にされなくなり、誰でもいいから殺してやろうと夜の街をうろつくマッテオ。だが、ふとした出会いが彼の運命を変えてしまう……。
 これも皮肉なお話です。誰かを殺そうと思ってるのに、チャンス(?)があっても誰も殺せないマッテオ。 やっと殺したと思ったらそれは、という感じ(^_^;) こういうのもいいですね〜。

「ルビー」
 若いトルコ人アッサートは、バグダッドの宝石店でとても美しいルビーを目にする。あまりの美しさにそれを盗み、 死刑を宣告された彼だったが、不思議な老人に救われる。老人が言うには、このルビーはさる姫君の墓所だというのだ。 魔法を解いて姫君を自由にすることは誰にでもできるのだが、その条件はあまりにも簡単なために、誰にもできないというものだった……。
 童話なんですが、このルビーに閉じ込められた姫君を解き放つための条件がとても皮肉なところが、大人向きというか(爆)  姫君を解き放ってもあんまりかっこよくないんだけど、でも、それが妙に人間くさくて感動的なのです(*^^*)



 
「当世人気男」 アーノルド・ベネット/吉田健一 訳 (筑摩書房 S53.2.20)
 英国中部の五都市の中のひとつ、バースレーの洗濯女の息子として生まれたエドワード・ヘンリー・メーチンこと デンリー。彼は秀才でも勉強家でもなかったが、いつでも突拍子もないことをして人目をひく天才だった。 それは12歳の時、先生の目を盗んで答案の点数をちょこっと書き換えた時から始まった。以後彼は、 誰も思いつかなかったアイディアと行動力で、富と地位を手にしてゆく…。1911年。

 アーノルド・ベネット(1867-1931)は英国ではかなり有名な作家らしいんですが、私は初めてなのでした(^_^;)  まあ、翻訳されている本も少ないようですが…。
 でも、いいですね♪ 若くて生意気でとんとん拍子に出世、なんて、けっこう嫌味な人物になりがちだと思うんですけど、 デンリーはそうじゃないです。初めて出席した舞踏会でいきなり伯爵夫人と踊ってみたり、難破した客船を利用して 大もうけしたり、計画的じゃないのに、うまく機に乗じてバースレーの話題の人になる。自分を見下したりした人には 容赦なく手痛い仕返しを忘れない。でも、不思議と血が通っているんですね。まぁ人によってはデンリーみたいのは 嫌いという方もいるでしょうね。私もこんな人が身内にいたら、いつもひやひやさせられて嫌かも(^_^;) けれど、 見てて飽きないことは確かでしょうね(^o^) 彼のいたずらが時に爽快で、その後先考えない行動はとてもスリルが あります♪ いかにもイギリスっぽい小説で、とても楽しめました♪



「コレリ大尉のマンドリン」 ルイ・ド・ベルニエール/太田良子 訳(東京創元社 2001.9.20)
 第二次世界大戦下のギリシア、イオニア海に浮かぶ美しい小島ケファロニア島。島の医師イアンニスとの娘 ペラギアは、恋人のマンドラスと婚約し満ち足りた日々を送っていた。だが、やがてケファロニアにも 戦争の影が忍び寄る。志願兵としてギリシア本土へ赴いたマンドラスからは便りもなく、やがてケファロニアは イタリアの占領下に。ペラギアの家も、イタリア軍の宿舎となることを余儀なくされる。 彼女の家にやってきたのは、マンドリンをこよなく愛するイタリア人アントニオ・コレリ大尉だった……。1994年。

 美しくも残酷な、不思議な余韻の残る素晴らしい物語です(ToT) 主人公は気が強くて自己犠牲の精神に あふれた美しい娘ペラギアなんですが、物語は同時にケファロニア島の変遷も描いています。戦争と内戦と大震災を 強く生き抜いたペラギアと島民たち。状況の悲惨さよりも、どんな逆境に置かれてもそれを一種の諦めを持って 受け入れながら乗り越えていくケファロニア島民の強さが印象深いですね。
 「コレリ大尉のマンドリン」といいつつもコレリ大尉は小説の3分の1を過ぎても全然出てこないという(^_^;) でもまあそんなことは気にせず(爆)、さまざまなエピソードを積み重ねながら、じっくり外堀から埋めていく 感じの(?)物語ですね。戦時下と一口に言っても、そこに生きる人たちの戦いや生活を、いろんな角度から ユーモアも交えつつ描いてます。だからかどうか、読んでる途中も読後も暗く重くなったりはせず、どこか希望が 感じられます。戦争だからひどいことはかなりひどいのですが(-_-;) 個性的なキャラクターたちと、そして あらゆる思想や時の流れとは無関係のマンドリンの音色が救いです。
 コレリ大尉もかなり妙な人(笑)で、ペラギアとのやり取りもとてもいい雰囲気で好きですね(*^^*)  しかし読んでいて思ったのですが、喜ぶべきか悲しむべきか、日本語ってなんて罵倒の語彙が少ないんだろう(^_^;)
あの幸せだった日々はもう還ってはこないけど……それでも、今の彼女たちを思うと、不思議と心が温かくなる(^_^)  とてもとても素敵な小説でした。



「完訳 ペロー童話集」 新倉朗子 訳 (岩波文庫 82.7.16)
 シャルル・ペロー(1628-1703)の、民間伝承を元にした童話集。
収録作品……「グリゼリディス」、「ろばの皮」、「愚かな願い事」、「眠れる森の美女」、
「赤ずきんちゃん」、「青ひげ」、「猫せんせいまたは長靴をはいた猫」、「仙女たち」、
「サンドリヨンまたは小さなガラスの靴」、「まき毛のリケ」、「親指小僧」


 ほとんど小さい頃絵本で読んだ話ばかりですが、きちんと“ペロー童話”として読んだことはなかったのです。 グリム童話や他の童話ともごっちゃになってるかもしれない。たとえば私の覚えている「赤ずきんちゃん」の結末は、グ リム童話のハッピーエンドの方だし…。でもホントに懐かしい(T_T) 「眠れる森の美女」も「赤ずきんちゃん」も「シンデレラ」も、 何度も何度も読みましたから。ところでこれ、一編一編の話の最後に教訓なるものがついていて、それがとても面白いのです。 これを読むと、子供向けの童話とは思えない……。実際こういう童話の元になった民間伝承ってとても残酷なお話が多いらしいのですが、 それはこの際置いといて。そうでなくても、美しい思い出を台無しにするような感想…↓

「ろばの皮」
 美しい王妃を失った王は、悲嘆のあまり王妃よりも美しい自分の娘と結婚しようとした。王女は無理難題を言って 父の手から逃れようとする。しかし王が最も大切にしていた、金貨を生み出すろばの皮が欲しいという王女の願いも難なく 聞き届けられてしまい、彼女はやむなくそのろばの皮をかぶって姿をくらますことにする。ひどい身なりで誰からも 顧みられることのなかった王女の唯一の楽しみは、一人きりになったときに美しい服を着た自分の姿を眺めることだった。 しかしある時その姿を通りがかった王子に見られてしまい…。
 ろばの皮をかぶる? 挿絵を見ると長い耳が突き出ていたりしてちょっとかわいくさえあるけど、やっぱり妙です。 「女というものは自分は美人だと思い込みがちなので気をつけよう」、という教訓もあります(^_^;)

「愚かな願い事」
 今までに自分の望みが何一つ叶えられたことがないと嘆く樵の前に、ジュピュターが現れる。樵の願いを三つだけ、何でも かなえてやろうというのだ。樵は家へ帰って女房と願い事を相談するが、思わず腸詰が欲しいとつぶやいてしまい、願い事を ひとつ無駄にしてしまったことから言い争いになり…。
 これもどこかで聞いたです。二つめの願いは「お前の鼻に腸詰がくっつけばいい」で、三つめの願いはそれをもとにもどしてもらう、 というもの。…もし三つの願い事を叶えてもらえるとしたら何を…というちょっとむなしい空想にふけらずにはいられないお話(T_T)

「眠れる森の美女」
 あらすじを書くまでもないと思うので省略します。これは絵本の絵まで思い出せます。特に人食いの王太后が 子供の肉と偽って子羊の肉を食べさせられているシーンや、最後に王妃と子供たちが蛇やひき蛙でいっぱいの大桶に 投げ入れられそうになるシーン…… (ろくな場面を覚えてないですね〜)。しかし、何故王子の母親が人食い? と、 子供心にだいぶ悩みました(^_^;) 教訓、「結婚を少しばかり(って100年…)延期したところで、幸せに変わりはない」。 でもペローは、結婚にあこがれる女性にこれを説く力も勇気もないそうです……(-_-;)。

「赤ずきんちゃん」
 これもあらすじは省略。グリム童話と違いペロー童話では、赤ずきんちゃんが狼に食べられてしまうところでお話が終わってます。 教訓はもちろん(?)、「若い娘は、一見優しそうな狼に気をつけるべし」…。

「青ひげ」
 結婚しては妻を殺す、青ひげの男のお話。有名ですけど、これはさすがに子供のころ読んだ覚えはないかな…?  ここまで来ると、ほとんどサスペンスですね〜。

「猫せんせいまたは長靴をはいた猫」
 これも有名だと思うのですが…。三男だったので遺産に猫一匹しかもらえなかった男が、猫の知恵でお金持ちになって 王女と結婚するお話。教訓は、「才能があれば遺産なんて取るに足りない」。でもこの場合、才能があったのは猫なのです。 だから教訓は「猫を大切にしよう」でもいいと思うんです。少なくとも、その方が子供向きですよね?(T_T)

「サンドリヨンまたは小さなガラスの靴」
 あらすじを書くまでもなく、シンデレラ(サンドリヨン)のお話です。教訓、「女性は美しさよりも善意である」。 もうひとつ、サンドリヨンが名付け親である仙女の魔法を借りて舞踏会に出たことから、「出世をするには、自分の才能を 理解してくれる人も必要」。童話の域を越えてます…。



 
「あの薔薇を見てよ」ボウエン・ミステリー短編集 エリザベス・ボウエン/太田良子 訳(ミネルヴァ書房 2004.8.20)
 エリザベス・ボウエンの短編集。20編収録。
 収録作品…
  「あの薔薇を見てよ」、「アン・リーの店」、「針箱」、「泪よ、むなしい泪よ」、「火喰い鳥」、「マリア」、
  「チャリティー」、「ザ・ジャングル」、「告げ口」、「割り引き品」、「古い家の最後の夜」、「父がうたった歌」
  「猫が跳ぶとき」、「死せるメイベル」、「少女の部屋」、「段取り」、「カミング・ホーム」、「手と手袋」
  「林檎の木」、「幻のコー」


 英国の女流作家、ボウエンの短編集。副題がミステリー短編集となってますが、 どちらかといえばふつーの文学。なんで、 はっきり結末もなく、読者の前に謎だけ残されるような結末のものが多いです。 かすかな不安を漂わせつつ。
 全体的にけっこう暗いというか、なんとな〜く影のある作風ですね。 不吉というか不安定というか、そういう感じがいつも付きまといます…。 別にストーリーはどれも特に暗い話ではないのに、その辺がちょい不思議な感じ。 そういうところはわりと好きです。イギリスの風景描写は美しいし…。ただ、個人的にはこういうのは いくつも続けて読むと疲れます。少女が主人公の話が多いせいもあるのかな。 怪奇っぽい話もありますが、こっちの方が好きですね……もちろん…(^_^;)
 一つ一つの感想は書きませんが、「泪よ、むなしい泪よ」、「告げ口」、 「死せるメイベル」、「手と手袋」、「林檎の木」などが好きなお話です。
 続巻がありますので、そちらもそのうちに。


「クルミわりとネズミの王さま」 ホフマン/上田真而子 訳 (岩波少年文庫 2000.11.17)
 クリスマスイヴの日、フリッツとマリーの兄妹はたくさんのプレゼントをもらった。ワンピースや、絵本や、機械仕 掛けのお城…。しかしマリーの目をひきつけたのは、ドロッセルマイヤーおじさんからのプレゼント。それは、 頭でっかちでみっともないけれど、とても素晴らしい服装のクルミわりの人形だった……。1816年。

 子供の頃大好きだった「くるみ割り人形」のお話です。改めて読んでみると、やっぱりホフマンの物語らしく幻想的で けっこう不気味(^_^;) 怪しい(怪しすぎる)ドロッセルマイヤーおじさん(“ガラスのかつら”って一体どんな物?  想像を越えてます(T_T))、七つの頭を持つネズミ(うげ)、ガラスでケガして血まみれのマリー(T_T) ……  現実と幻想がお互いに干渉しあってて、こんなに不思議な話だったんだ〜、と今更のように感心してます。その上、 マリーの話を笑って馬鹿にする大人たちや、そのせいでひとり物思いにふけることが多くなるマリーのくだりとか、 大人が読んでもなんかいろいろ考えさせられますね…。作者がホント子供の味方なんだってよく分かります。「それを見る目が ありさえすれば」、大人も子供も関係ないですよね。でもこれ、すべてはドロッセルマイヤーおじさんが仕組んだことだったのでは、 と思う私は深読みしすぎでしょか(^_^;) でもだとしたら、どんなに怪しくたってほんとはいい人なんだ、おじさん(笑)  素敵なハッピーエンドです♪



 
「砂の本」 ホルヘ・ルイス・ボルヘス/篠田一士 訳 (集英社 80.12.10)
ボルヘス(アルゼンチンの作家、詩人 1899-1986)の短編集。13編収録。
収録作品……「他者」、「ウルリーケ」、「会議」、「人智の思い及ばぬこと」、「三十派」、「恵みの夜」、
「鏡と仮面」、「ウンドル」、「疲れた男のユートピア」、「贈賄」、「アベリーノ・アレドンド」、「円盤」、「砂の本」


→ボルヘスの本を読んだのははじめてなんですが、良いですね。こういう幻想的な感じは大好きです(…変?) 一編一編の 感想は述べませんが、特にお気に入りなのは……過去の自分の分身に出会うボルヘスの話『他者』、以前叔父の住んでいた奇妙な 空家を主人公が探検する『人智の思い及ばぬこと』、宮廷詩人の生み出した美しくも恐ろしい詩の話『鏡と仮面』、未来の世界に 迷い込んだ男の話『疲れた男のユートピア』、“わたし” が手に入れた不思議な本の話『砂の本』……などです♪
 一番好きなのは『疲れた男のユートピア』 “ある者”の語る言葉に、とてもひかれてしまいますね…。『砂の本』も よいです。始まりのページも終わりのページもない、そして一度開いたページは二度と見ることのできない砂の本。 主人公がそうしたくなる気持ちも分かる…。



 
「ボルヘスとわたし」 ホルヘ・ルイス・ボルヘス/牛島信明 訳 (新潮社 1974.11.15)
アルゼンチンの詩人・小説家ボルヘスの自選短編集。20編収録。
収録作品……「アレフ」、「バラ色の街角の男」、「アル・ムターシムを求めて」、「円環の廃墟」、
「死とコンパス」、「タデオ・イシドロ・クルスの生涯」、「二人の王様と二つの迷宮」、「死んだ男」、
「もう一つの死」、「自分の迷宮で死んだアベンハカーン・エル・ボハリー」、「入り口の男」、
「肝魂信仰」、「囚われ人」、「ボルヘスとわたし」、「創造者」、「じゃま者」、「不死の人びと」、
「めぐり合い」、「ペドロ・サルバドーレス」、「ロセンド・フワレスの物語」


→ボルヘス、やはりいいですね♪ ひとつひとつ感想いってるとすごいことになるので、お気に入りをざっと列挙します。
 ブエノスアイレスのなんの変哲もない家の地下室に出現した、地球上のあらゆる場所と時間が混乱することもなく存在している 場所の話『アレフ』、存在しない一人の人間を夢に見つづけた男の話『円環の廃墟』、ちょっと不思議な味のミステリ『死とコンパス』、 暗殺を恐れるあまり自分で作った迷宮の奥に閉じこもった王の死の謎を解く、これもミステリの『自分の迷宮で死んだアベンハカーン・エル・ボハリー』、 奇妙だけどなんだか分かるような気がする『ボルヘスとわたし』、小さな箱の中に押し込められた、死なない人のお話『不死の人びと』、 いわくつきの二本のナイフのお話『めぐり合い』……などなど。一編一編について、著者自身の丁寧な注釈がありますから、 私などが何も言うことはないです(笑) この本にはボルヘスの生い立ちを記した「自伝的エッセー」も収録されてますが、 これも面白い…というか、すごいですね…(^_^;) この環境で育って、これだけの小説というのも妙に納得……。



 
「山の郵便配達」 彭見明(ポンチエンミン)/大木康 訳(集英社 2001.4.30)
 中国の現代作家、彭見明(ポンチエンミン)の短編集。6篇収録。
 収録作品……「山の郵便配達」、「沢国(たくこく)」、
       「南を避ける」、「過ぎし日は語らず」、「愛情」、「振り返ってみれば」


 表題作は映画化された作品でもありますが、当然、見てません(^_^;) どれも中国の農村で 暮らす人々の生活を淡々と(でも力強く)描いた作品ばかりです。素朴で、静かで…。電気も水道も ないからとても昔の話のようでも、現代なんですよね〜。変わらない世代と、変わりつづける世代の微妙な交差が 深い味のある作品になってます。個人的な意見ですが、もうちょいとばかし翻訳がこなれてると 嬉しいかなぁ(^_^;) 以下に、お気に入りの短編の感想を♪

「山の郵便配達」
 歩きで何日もかかる山村地域の郵便配達をしていた老人は、引退し、息子にその職を 譲ることになった。配達の道中、山を歩く郵便配達員としての心構えを息子に語りながら、彼の心は 不安と期待が交錯していた…。
 素朴なんですが、過酷な仕事を選んだ父と息子がぎこちなくもお互いを思いやりあう、 素敵な物語です。はぁ……同じ郵便配達員でも、ここまでしなくてはいけないのですね。 週に一度の休み以外は、ほとんど家に帰ることもなく手紙を配りつづけるなんて。
 老人と息子のやり取りもいいですが、老人とその飼い犬もいいです。とても心の和む、 素敵なお話です。

「南を避ける」
 農村に住む若者は、誰もが南の広東へ行きたがる…。次女の容(ロン)が大人になってきたのを感じた 老田(ラオテイエン)は、娘を誘惑から守ろうと旧友たちに相談することにした…。
 娘を守ろうと必至に奔走する老田。不器用だけど本当に娘が心配なんですね。でも、昔とは 何もかも違っている。若者を止めることなんてできない…。老田の次女の話しか出てませんけど、 長女は一体どうなってしまったのかが個人的に気になるところです(^_^;)

「愛情」
 30歳まで独身を通した坤正(クンジョン)に、友人が一人の女性を紹介する。余娟(ユージュアン) という名のその女性は、心臓が弱く、結婚生活に耐えられないために今までずっと独身でいた 女性だった。付き合ううちに、お互いに惹かれていく二人。友人として一生を過ごす覚悟で 結婚した坤正だったが…。
 この作品では、男は30歳にもなると結婚しづらいらしくて、27,8の女は行き遅れ らしいです(-_-;) 今の日本の感覚で読むと、ちょっと違うかな…。
 夫婦生活が送れなくても、友人としてお互いを高めあっていく二人。いいですね〜。 孤独だった男女が、二人になって変わっていく様子が胸にしみます。ずっとこのままでも 良かったのかもしれないけど、でも坤正が事故にあって、死を意識した二人は……。 ありがちな展開かもしれませんが、こういうのは嫌いじゃないですね(笑) 



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